「……」
結局私が狩った妖は雑魚ばかり。
それからしばらくしても、強い妖など一体も現れなかった。
私が来た意味はあったのか。
この三人で十分ではないか。
そういう疑問を、三人が特訓(と言いつつ遊び)している横で考えていた。
どうにも今は…退屈だ。
―――――
(退屈とは思ったけど…)
先日とは打って変わり、異常な量の妖が攻めて来た。
曇天は空を黒く染め、そこから大量の妖が飛び交う。
ほとんどが雑魚とはいえ、数が多過ぎる。
千にも昇る妖の数々、それを私達は、四人だけで狩っていく。
良守さんが巨大な結界で大量に囲み、時音さんが細かい結界で串刺し。
志々尾さんが爪で八つ裂きにし、私が剣で切り落とす。
あまりに単調、しかし一向に数は減らない。
(数が多い…普通こんなに湧くもの…?)
そう考えながら狩り続ける。
ふと結界師二人を見ると、時音さんが良守さんを諭していた。
やはり、この数は以上らしい。
時音さんは大物を警戒している。
そして…その警戒は正しかった。
上空の雲の中から、炎の塊が一つ。
妖をも焼きながら飛来した。
「……おい。お前らだけか?」
そいつは面倒そうに言う。
そして何故だか激怒した。
「こちとら殺る気で来とんじゃ!手ぇ抜いてんじゃねぇぞ!」
強者がいないことに激怒している。
その妖は残念そうに、攻撃を開始した。
(二人のとこに…!)
結界師は身体能力は一般人と大差ない。
故に攻撃の的になるのはとても危険だ。
(間に合わないな…なら…)
二人が結界で防ぐことに賭けて、私は志々尾さんと攻撃を狙った。
更に二人には火球が二つ、左右から襲う。
二人が最初の火球を弾くのを視認、直後志々尾さんが投げた木を目眩ましに、弾幕を放つ。
あまり威力が出ないとは言え、妖一体くらいは倒せる。
それが雑魚ならば。
その妖は木を叩き割り、弾幕を受けたが無傷だった。
「…だーっはっはっー!」
突然笑いだし、こちらにみくびっていたと謝罪する。
そしてその妖は、本気を出すと言った。
姿は男性から六本腕の馬となり、全身に炎を纏い始めた。
火球を二方向に放ち、志々尾さんを殴りに向かう。
私も斬りかかり、翻弄するように攻撃をする。
ものともせずに殴打を繰り出す。
「がっ…」
殴打は回避したものの、燃える腕で志々尾さんの足を掴む。
間一髪結界で弾きはしたが、なければ足はなくなっていたことだろう。
「結!」
良守さんが一瞬立ち止まった妖を結界で囲う。
滅しようと手を振り下ろすが、纏う炎をそれを防ぐ。
(滅も出来ない…まともに斬るのも…志々尾さんの爪も防がれる…)
全員が攻めあぐねていると、妖は志々尾さんに狙いを定めて猛攻を始める。
火球、連打、突進、その攻撃の全てを一人に注ぐ。
私も加勢に入ろうと刀を構えた―瞬間、別方向から『刀』に襲われる。
「!?」
受け流すことに成功し、体制を直す。
そして眼前には、スーツを着た男性が立っていた。
「……」
「…やっぱりお前からも似た匂いがする。」
…変態か!?
まあそういうことではないのだろうが…男性の姿でそれは…誤解されてもおかしくないと…
「お前からは孤独を感じる。俺や志々尾限のような不自由さだ。」
「……そんなことはありませんが?」
「惚けるなよ。似た者同士、よく分かる。お前…俺達と来ないか?」
妖の仲間になれ。
暗にそう言っているのだ。
「なるわけがないでしょう。敵の甘言に乗る程、安くはありませんよ。」
「こっちに来れば不自由さもなくなる。好きに生きて、死すら消える。あいつは断ったが、お前でも良さそうだ。」
「志々尾さんがならなかったのは、孤独も、不自由さも、解いてくれる友人がいたからです。私にも…大切な人がいる!貴方に付き、その方に顔向け出来ない愚か者になるなら…いっそ腹を斬る!」
「……残念だ。お前もあいつも、選択を間違えるから…死ぬことになる。」
その男は私に斬りかかる。
さっきの馬の妖や志々尾さんをも凌ぐ速度で。
「!くっ…」
「それで防いだつもり?」
「ああああ!」
防いだと思った刀は、突然軌道を変えて腹を刺す。
「宣言通りお腹刺してあげたよ。」
「くぅ…!」
横薙ぎにした剣は軽々と避けられ、次々繰り出す剣撃は、尽く防がれる。
技ではない。
生物としての圧倒的速度の差。
そこには、あまりに実力の差があった。
(…強い…!)
私は純粋に、そう思った。
この人作中かなり強い部類だったと思う。序盤なのにラスボス感ヤバかったですよね。…まあ後半化け物(文字通り)ばっかか。