東方異世界生活記 壱   作:ジシェ

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第十一話

結界師の家二軒には、現在夜行の面々が集まっている。

男女に別れ、雪村家には女性のみ。

しかしそこにアトラさんの姿はない。

それとなく時音さんが聞いていたが、アトラさんは志士尾さんと行ったらしい。

せっかくの機会だったから、また話したいと思ったのだが…

 

「…あの…刃鳥さん。」

「どうしたの?」

「志士尾さんの家、しばらく誰もいないんですよね?」

「そうね…でも掃除くらいなら私が…」

「…しばらくそちらで過ごしてもいいでしょうか…?」

「…そう…そうね…一人くらい定住した方がいいかもしれないわね…」

「ありがとうございます。少し…一人になりたくて…」

 

私は弱い。

本気の殺し合いも知らない私は、戦闘における赤子も同然。

志士尾さんが命掛けで戦う中、最も得意とする戦法で、完全な敗北を喫した。

強くならなければならない。

 

―――――

 

「悩んでるわね~」

「…紫様?」

 

集中のために瞑想していると、背後から声がした。

聞きなれた声だ。

 

「どうして紫様が?」

「私は貴女達をそれぞれの世界に送ったら、時々眺めてるのよ。主力が外界に出てる状況、博麗大結界の管理や妖怪の管理、他諸々確かに大変だけど、貴女達の状況を監視するのも必要なのよ。」

「それで…私が悩んでいるから見にきたんですか?」

「まあそうね。他は楽しくやってたり、思いがけない成長を見せたり、貴女だけなのよ。そこまで悩んでいるの。」

「…情けないですね…」

「いいえ。そんなことないわ。貴女は貴女。他の何者でもないただ一人の少女…私が来たのは、貴女がいらない悩みを抱えているからよ。」

「いらない悩み…?弱いことを嘆いて、強くなりたいと苦難することがいらないことなんですか…?」

「ええ。貴女に一番足りないのは…強くなりたいっていうことに固執して失った自信。」

「自信…」

「思えば貴女の周りは強い人が多いわ…その上学んだ剣は中途半端。祖父を失った喪失感による失うことへの不安。主人の望みさえまともに叶えられない。その心は、貴女の才能を殺し続けてる。」

 

才能など私にはない。

努力しても努力しても、才能のある努力家には勝てない。

どれだけ戦いを挑んでも。

どれだけ鍛練を積んでも。

長い間生きているのに、その高みにはたどり着かない。

二十に満たない友人にも、師と扇いだ祖父にも、勝つことは出来ない。

 

「貴女は何のために強くなるの?」

「幽々子様を守るために…」

「もう何年何十年と共にいる主…守っているのは他でもない貴女よ。自信を持っていい。自らを誇っていい。貴女は既に…十分に強いのだから…自身が思うよりも…ね。」

「……」

「…そろそろ夜ね。」

 

そう言い紫様は帰って行った。

 

「……」

 

―――――

 

夜の学舎にこれ程人がいることなどあり得るのか。

しかし以前の奴らが来ることに警戒するのは、決して間違いではない。

ただ…

 

「過剰戦力ですよね…」

「そうでもない。」

 

一人言を呟くと、頭領に窘められる。

 

「黒芒桜の連中が総出なら…楽に勝てはしない。少なくとも数体は別格のものがいるはずだ。」

「……」

 

以前にここを襲った馬の妖。

確かに別格の強さを誇っていた。

そいつは倒したが、まだあの剣士がいる。

この場の何人が闘えるだろうか。

それほどに強い。

馬の妖でさえ勝てないだろう。

 

(そんなのがまだ何体も…)

 

警戒をし過ぎて損はしない。

 

「……」

 

小物を幾らか仕留めながら、いつも通りに過ごしていた。

しかし状況は一変した。

黒芒桜の奴らが再び攻めて来た。

黒い雲をの中を蠢く虫、数は過去最高だろう。

しかし私が何もしなくとも勝てるだろう。

凄いのは数だけだ。

一体一体は野良の小物と変わりない。

 

(それでも…)

 

一歩を踏み出すには十分だ。

私は二刀の剣を振るった。

その瞬間はいつも以上に、早く感じた。

普段よりも早く、鋭い二太刀が、数十の妖を仕留めた。

 

―――――

 

「迷いのある剣じゃ真っ直ぐ振ることさえ出来ない…妖忌の言った通りね…」

 

 




紫は他の世界でも出るかもしれないです。そもそも全部思いつきですし。
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