結界師の家二軒には、現在夜行の面々が集まっている。
男女に別れ、雪村家には女性のみ。
しかしそこにアトラさんの姿はない。
それとなく時音さんが聞いていたが、アトラさんは志士尾さんと行ったらしい。
せっかくの機会だったから、また話したいと思ったのだが…
「…あの…刃鳥さん。」
「どうしたの?」
「志士尾さんの家、しばらく誰もいないんですよね?」
「そうね…でも掃除くらいなら私が…」
「…しばらくそちらで過ごしてもいいでしょうか…?」
「…そう…そうね…一人くらい定住した方がいいかもしれないわね…」
「ありがとうございます。少し…一人になりたくて…」
私は弱い。
本気の殺し合いも知らない私は、戦闘における赤子も同然。
志士尾さんが命掛けで戦う中、最も得意とする戦法で、完全な敗北を喫した。
強くならなければならない。
―――――
「悩んでるわね~」
「…紫様?」
集中のために瞑想していると、背後から声がした。
聞きなれた声だ。
「どうして紫様が?」
「私は貴女達をそれぞれの世界に送ったら、時々眺めてるのよ。主力が外界に出てる状況、博麗大結界の管理や妖怪の管理、他諸々確かに大変だけど、貴女達の状況を監視するのも必要なのよ。」
「それで…私が悩んでいるから見にきたんですか?」
「まあそうね。他は楽しくやってたり、思いがけない成長を見せたり、貴女だけなのよ。そこまで悩んでいるの。」
「…情けないですね…」
「いいえ。そんなことないわ。貴女は貴女。他の何者でもないただ一人の少女…私が来たのは、貴女がいらない悩みを抱えているからよ。」
「いらない悩み…?弱いことを嘆いて、強くなりたいと苦難することがいらないことなんですか…?」
「ええ。貴女に一番足りないのは…強くなりたいっていうことに固執して失った自信。」
「自信…」
「思えば貴女の周りは強い人が多いわ…その上学んだ剣は中途半端。祖父を失った喪失感による失うことへの不安。主人の望みさえまともに叶えられない。その心は、貴女の才能を殺し続けてる。」
才能など私にはない。
努力しても努力しても、才能のある努力家には勝てない。
どれだけ戦いを挑んでも。
どれだけ鍛練を積んでも。
長い間生きているのに、その高みにはたどり着かない。
二十に満たない友人にも、師と扇いだ祖父にも、勝つことは出来ない。
「貴女は何のために強くなるの?」
「幽々子様を守るために…」
「もう何年何十年と共にいる主…守っているのは他でもない貴女よ。自信を持っていい。自らを誇っていい。貴女は既に…十分に強いのだから…自身が思うよりも…ね。」
「……」
「…そろそろ夜ね。」
そう言い紫様は帰って行った。
「……」
―――――
夜の学舎にこれ程人がいることなどあり得るのか。
しかし以前の奴らが来ることに警戒するのは、決して間違いではない。
ただ…
「過剰戦力ですよね…」
「そうでもない。」
一人言を呟くと、頭領に窘められる。
「黒芒桜の連中が総出なら…楽に勝てはしない。少なくとも数体は別格のものがいるはずだ。」
「……」
以前にここを襲った馬の妖。
確かに別格の強さを誇っていた。
そいつは倒したが、まだあの剣士がいる。
この場の何人が闘えるだろうか。
それほどに強い。
馬の妖でさえ勝てないだろう。
(そんなのがまだ何体も…)
警戒をし過ぎて損はしない。
「……」
小物を幾らか仕留めながら、いつも通りに過ごしていた。
しかし状況は一変した。
黒芒桜の奴らが再び攻めて来た。
黒い雲をの中を蠢く虫、数は過去最高だろう。
しかし私が何もしなくとも勝てるだろう。
凄いのは数だけだ。
一体一体は野良の小物と変わりない。
(それでも…)
一歩を踏み出すには十分だ。
私は二刀の剣を振るった。
その瞬間はいつも以上に、早く感じた。
普段よりも早く、鋭い二太刀が、数十の妖を仕留めた。
―――――
「迷いのある剣じゃ真っ直ぐ振ることさえ出来ない…妖忌の言った通りね…」
紫は他の世界でも出るかもしれないです。そもそも全部思いつきですし。