東方異世界生活記 壱   作:ジシェ

52 / 71
第十二話

飛来する妖を倒し続ける内に、徐々に雲は晴れていった。

強い力は感じなかった。

おそらくあの人型の妖は来ていない。

一つ確かな情報は、あの馬の妖…牙銀の立場は幹部級。

敵の戦力はかなり削がれただろう。

既に雑魚をけしかけることしか出来ない程。

 

(でも…油断は出来ない。)

 

あの刀は結界を切る。

あの話術は味方を裏切らせる。

あの気配は皆を萎縮させる。

あの存在一つで…戦況は変わる。

頭領なら倒せるだろうけれど、あの速さは人間に追い付ける速度じゃない。

もし戦うのなら…

 

(私が…)

 

「動ける者は――」

 

頭領の指示が飛ぶ中、時音さんが叫ぶ。

 

「良守が…いません!」

 

―――――

 

戦闘終わりに主な守護者の行方不明。

ざわつく皆に指示を出した頭領の冷静さは流石の一言。

とにかく雪村家にて全員の治療へ向かった。

 

「……」

「どうしたの?」

「刃鳥さん…いえ…何か嫌な予感がして…」

「サポートする対象が片方消えたから?」

「…私と志士尾さんの傷を付けた敵…そいつが今回いなかったんです。それにもし…良守さんが一人でそいつに会っていたら…」

「…少しごめんね。…はい。」

 

頭領からの電話のようだ。

顔を見るだけで何があったかよく分かる。

 

「…予感…当たりよ。全員注目。」

 

良守さんは拐われた。

その会話を見ていた影宮さんまで。

今すぐ黒芒桜へ向かう連絡が頭領から来た。

動ける者全員で、黒芒桜を潰しに出る。

 

―――――

 

黒芒桜への抜け道…その場所に、夜行、墨村家当主、そして雪村家の結界師が集結していた。

時子さんの話では、抜け道は完成したものの、既に先の世界の崩壊が始まっていると。

その危険を考え、行く人数は絞られた。

 

「まず俺と―蜈蜙。それと白道、黄道。それから―」

 

箱田さん、保護者として行正さん、そして良守さんのお祖父さん。

当然私は呼ばれない。

しかし…

 

「頭領。私も行きます。」

「…人数を絞る上で、君を連れて行くわけにはいかない。例えそれが…出自不明の子だとしても…」

「…相手に二刀流の剣師がいます。あの人とは…私が決着を付けなければなりません。」

「堂々と命令違反を行うと?」

「はい。」

 

二人を救う任務を放棄、戦いを目的とした潜入。

正に命令違反そのものだろう。

それでも…私には必要なこと。

 

「必要なら、夜行を抜けます。」

「…分かった。但し、良守達を回収次第撤収は変わらない。例え決着が付かなくとも、無理矢理にでも連れ帰る。」

「!ありがとうございます!」

 

氏名された全員が蜈蜙さんに運ばれ、入り口を抜ける。

 

―――――

 

箱田さんのおかげで飛行中に二人を見つけた。

白い世界に飲まれた二人を。

 

「なんだあれは!?」

 

結界師本人が言う以上、まともな結界ではないのだろう。

しかし声は届くようで、中にいる影宮さんに頭領が確認した。

良守さんの意識もなく呼吸もしていない。

とても危険な状態のようだ。

しかしそれほど巨大なものの端、遥か真下に、私はあるものを見つけた。

偶然視界に捉えたもの…刀の破片を。

 

「頭領…すみません…」

「魂魄さん!?」

 

呼び止める声も無視して飛び降りる。

人間なら死ぬ高さでも、私なら特に問題はない。

着地した私は、その破片に少しずつ近づく。

拾い上げた時に確信した。

あの結界で、あの剣師は消されたのだと。

 

「…迷いは…断ち切れましたか…?」

 

破片は彼の魂の現れ…彼そのもの。

戦うことが叶わなず、救うことも出来ない。

そんな私に出来ることはただ一つ。

魂の籠ったこの破片だけでは意味はないだろう。

それでも…

 

「どうか…素晴らしい来世を…」

 

私の持つ二刀は、その破片を切り裂いた。

これが私に出来る、最後の供養だ。

 

―――――

 

二人を回収して(回収してもらって)、蜈蜙さんにもう一度結界に向かってもらう。

道中下を見ると、城が消え、黄金色の野原が出来上がる。

黒芒桜は終わった。

それを表すようなすすき野原が…私達を見送った。

 

 




火黒出番なし!そして計二巻分完全カット!話に出来るとこ少ねぇよ…
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。