蜈蚣さんのムカデに乗って脱出を謀る。
しかし予想外に早い世界の崩壊に、尾の先端が飲まれ始める。
折角無事に二人を回収出来ても、世界に飲まれたらもともこもない。
なんなら私の来た意味は実質なかったし…
更に言えば静止無視で飛び降りたし…
(帰ったら説教覚悟しないと…まぁ…)
後悔はない。
何にしても生きて帰ることが出来なければ後悔してしまうだろう。
ただの剣士の自分には、この状況で出来ることはない。
それがとても歯痒い。
そう考えていると、ムカデを白い何かが覆う。
聞けば頭領のお祖父さんが、この一角のみを支えているらしい。
これで少し猶予は伸びた。
しかし間に合うかどうかは本当に賭け。
蜈蚣さんと結界師の方々の頑張り次第。
本当に…何の役にも立てない。
外では時音さん達が頑張ってくれてるのだろう。
網のような結界術が迫る。
外から時音さんとお祖母さんが回収しようとしてくれてる。
それに捕らわれた私達は、そのまま引き抜かれるように脱出した。
―――――
良守さん以外は受け身を取って着地した。
ただでさえボロボロなのに傷は大丈夫だろうか。
などと眺めていたら…
「あ、時…」
名前を言い切る前に良守さんは吹き飛んだ。
時音さんの渾身の一撃が頬を叩いたようだ。
とても少女とは思えない程の怒声を上げ、泣きながら良守さんに説教している。
その様子に戸惑った良守さんは、自分の心情や周りへの影響を連ね謝った。
時音さんはそれを抱き締め、自分を大事にするよう囁いた。
恐らく彼女がずっと思い、彼が知らないふりをしていたことなのだろう。
こうして黒芒桜は滅んだ。
大勢の人を巻き込みながら、たった一人の少年によって…
―――――
「それでは、お世話になりました!」
頭領率いる夜行の方々は、今日を持って烏森を撤退する。
良守さんと個人的に仲良くなった人はお別れをし、また頭領は良守さんを嗜める。
そのやり取りを眺めている私は…見送る側だ。
「それじゃあ…後は任せるよ。」
「はい。」
「それから限のことだけど…僕の命令でしばらく夜行には戻らない。彼らには…時間が必要だ。アトラはもう数日で戻る。そしたら限の部屋に二人で過ごしてもらうから、そのつもりで。」
「戻る目処は立ってるんですか?」
「まだ…けれどそう遠くはないよ。限はとても…優しい子だからね…」
懐かしむような遠い目。
志士尾さんとのやり取りを思い出しているのだろう。
「…頭領も大概ですけどね。」
「ん?」
「何でも…お疲れ様です。」
「…最後に一つ。良守も君も…何なら時音ちゃんも、無茶はしないように。これは命令だ。」
「はい!」
そう言い残して彼らは去った。
―――――
数時間前…
―――――
「罰を…免除ですか…?」
「ああ。君は十分働いてくれた。一度や二度の命令無視には目を瞑ろう。」
「私は何も…」
「今回の戦いでは確かに。しかし先日、限や良守、時音ちゃんと共に敵の幹部級を討伐。並びに同格の撃退を単独で行い、雑魚狩りの数も決して少なくない。十分だ。」
「……」
「…納得しないならもう一つ、君の最大の功績を伝えよう。」
「?」
「三人の命を救ったのは、紛れもなく君の働きによるものだ。」
「…私が…?」
「君はどうにも…自信がないな…もっと誇っていいんだよ。君は全然、役立たずなんかじゃない。」
「……知り合いにも…同じことを言われました…」
「…良い友人がいるようだね。とにかく罰を与える気はない。これは決定事項だ。」
「ありがとうございます。」
「それじゃ、話はおしまい。ああそれと…君には引き続き結界師の補佐を命じる。最後に…補佐の範囲を広げるために、烏森に通ってもらう。」
「…え?」
文字縮小とか初めて知った…