学校まではまだ三日ある。
その間に多少を学ぼう。
最もそれは勉強ではない。
学生の本分は勉学だが…はっきり言って私の役には立たない。
幻想郷では必要ないし、この世界で一生を終えるつもりもない。
故に学ぶのは剣。
私の剣技である魂魄の流派は、段幕に流用することや直接戦闘、また基本的な威力も速さも強い。
だがこの世界では段幕が出せないようで、私には遠距離からの一方的攻撃に対策が出来ない。
そのカバーは結界師のお二人がしてくれるが、一人で戦う場合も想定する必要はある。
更に言えば結界のような一般人には不可視の攻撃も、志士尾さんのような速度もない私には、妖を一般人のいる場所で倒せない。
学ぶ必要があるのは主にその二つ。
遠距離戦闘、そして人の目を掻い潜る術。
夜行の方々に聞いて回ろう。
―――――
「それでまず俺の所に来るとは…随分信用してくれたね?」
「頭領なら当然当てがありますよね?」
「………まあいくつか言いたいことはあるけど…まずは短刀でも携帯するといい。」
「短刀?」
「そもそも学校で刀を持たせるわけにはいかないからね。精々携帯出来ても短刀くらいさ。」
「……あ…」
刀を一時でも手放す思考がなかった。
この国では銃刀法違反とやらで刃物を持ち歩けない。
学校内でも当然だ。
もはや体の一部の二刀を置いていく必要があるのか。
「……」
「まあ君なら短刀でも十分だろう。それに君の刀は長過ぎる。短刀なら振る速度は当然上がる。この三日間、とりあえず短刀を扱ってみるといい。三日もあれば君なら出来るさ。」
「……そうですね。三日間、夜は短刀を使います。どうにか支給頂けませんか?」
「裏会の基本装備の一つだよ。装備を使う人だけだけど。刃鳥の所に行くといい。」
「ありがとうございます。
「ああそれと…遠距離での戦い方についてだけど…」
「はい!それも課題で…」
「無理に遠距離で戦う必要はない。」
「……?でもそれは…以前に烏森に現れた馬のような例も…」
「あのタイプが現れたら、他の誰かに任せればいい。そうでなくとも今の君なら…それも切れると思う。」
今の私。
紫様からの助言で成長したであろう私。
しかし何故頭領はそれを知っている?
紫様の存在は、ここでは私しか知り得ないというのに。
「俺は部下のことはよく見るよ。…複雑だが良守や時音ちゃんもね。だから何となく君が変わったように感じた。今の君なら炎の上から敵も切れる。」
「…そう…でしょうか…」
「ああ。それにそのタイプ以外なら、君の速さで追い付けない者はそう現れない。苦手なことは、得意な者に任せればいい。それでも手に負えないなら…
絶対の自信。
頭領が頭領たる所以。
この精神、能力、頭としての器、これが若くして裏会の組織の一つを纏める彼の実力。
「…頼もしい限りです。」
頭領との会話を区切り、私は刃鳥さんの下へ向かった。
―――――
「…っ!…っ!」
剣を振る速度を上げるのは簡単じゃない。
長年の修練の末、速度も威力も上がるものだ。
その基本は素振り。
こと桜観剣は長い故に筋力が必要になる。
素振りをすれば腕力は自然と強くなる。
それは振る速度にも影響する。
力強く振ることが基本的な素振りだ。
しかし技を学ぶ者なら、それに更に流れ…流麗さが重要だ。
力だけでは技にならない。
自分に合う形、構え、振る速度の緩急、同じ動作の繰り返しに見えても、全ての動きは違うのだ。
それが全て一致した振り…それを基本の動きと出来た時、初めてその動作を極めたと言える。
あくまでその副産物として、速度は上がる。
剣を振る速度を上げるというのはそういうことだ。
とても三日で出来ることじゃない。
だがだからこそやりようもある。
短刀なら構えが逆さになるのは必然。
自由な動きが短刀の魅力。
時音さんの結界なら、自由な動きの練習にはもってこいだ。
短刀を振るなら必ず結界は見る。
目を養えれば、自然と反応も速くなる。
反射的に体が動く程に目を、脳を鍛えれば、日常内で誰にも気付かれることなく、妖を倒すのも容易となろう。
幸いその基礎は学んだ。
それが出来ないなら、私に魂魄妖忌の弟子である資格はない。
目や脳を鍛え、神経伝達の速度を上げる。
それが今の私の目標となる。
学ぶべき…そして今しか学べない新しい挑戦だ。
まあもしかしたら、必要なのも今だけかもしれないけれど…
剣のことは適当…ではないです。流石に調べます。検索すれば以外と出るんだよねこういうの…