あと三日という時間はもう過ぎた。
ついに明日からという段階まで来たのだ。
学校の制服は得物を隠せる部分が少ない。
だからスカート丈を長くし、以前見掛けた咲夜さんのように足に固定具を巻き付け、短刀を嵌められるようにした。
取り出すのは一息に、振るまでに一秒と掛けない。
そしてしまうまでを流麗に。
誰の目にも止まらぬように。
「……どうでした?」
「いや…見えないわ。」
時音さんに見えないのならば、少なくとも一般人に見えることはないだろう。
あとは不意に出来れば問題ない。
「明日から…」
「気負う必要ないわよ。普通通り…あー…えっと…」
私が普通を知らないばかりに、時音さんを困らせてしまった。
しかし万一に備えるなら少し気負う程度で丁度いい。
まあそれをおくびに出す必要はない。
「大丈夫です。戦闘時とそれ以外の時の区分は出来ます。」
「そうじゃないんだけど…まあ魂魄さんがいいならいっか…」
「……?」
「あれ?良守どこ行った?」
「さっきまで門に…」
『門と外行ったり来たりしてたよハニー。』
「それは見てたけど……―!」
「何か侵入しました…向こうです!」
『やれやれ…これじゃ役に立てないねぇ…』
「早く行くよ!」
―――――
(良守さんが前に…これならもう…)
「!」
追う必要を感じず足を止める直前、背後から何かが勢いよく妖を撃ち抜いた。
どうやら釘のようだ。
『破!』
声と共に妖は爆散した。
怒る良守さんを無視し、妖の方に駆け寄る。
「間違えた…」
「…おい…」
「これは俺の得物だ!俺が狙って俺が仕留めた!文句のある奴はかかってこい!」
何とも元気声量につい押されてしまう。
良守さんが自分達の説明をしても、烏森についてしか反応しなかった。
それからも言い合う二人を抑え(首根っこ掴んで)事情を聞かせるよう伝える。
「私はここの結界師雪村時音。貴方は?」
「女性に聞かれては答えぬわけにもいくまい!俺は最強の封魔師、名を金剛毅!以外とシャイな乙女座の17歳!よろしく!」
常に叫ぶような声量…耳元なら鼓膜が破れかねない。
ずっとこれなら近所迷惑だ。
そんな彼だが…突然倒れた。
スタミナ計算を忘れたと叫び、倒れる直前にも関わらずかなりの元気だった。
「…魂魄さんは先に帰ってて。明日の準備必要でしょ?この人はこっちでどうにかするから。」
「それならお願いします。」
流石の気遣いだ。
今回はお言葉に甘えよう。
…正直厄介そうと思ったのはここだけの話だ。
―――――
「……よし。そろそろ行きましょうか。」
先日の騒音少年が気になるが、任せた以上はどうにかしてくれるだろう。
自己紹介では彼を参考にしてもいいかもしれない。
…いや紹介出来る程開示出来る情報がないか…
―――――
「……」
廊下で待つよう先生に言われてしばらく。
教室前で五分程佇んでいた。
「――じゃあ入れー」
「!はい!」
満を持して教室に入る。
入ってすぐに良守さんの姿が写った。
同じクラスらしく少し安心した。
まあ今も寝てて普段からサボって寝てるらしいが。
つくづく式神は便利だ。
「初めまして!魂魄妖夢です!これからよろしくお願いします!」
「席は神田の隣な。」
「はい!」
「転入生だからってまた囲むなよ。それじゃ授業始めるから準備しろー」
―――――
あっという間に放課後になった。
質問されても答えられないことの方が多くて申し訳ない。
しかし授業も問題ないし、交友関係もある程度構築出来そうな程皆友好的だ。
これなら問題なさそうだ。
そうして校門前まで出て来たのだが…
「……」
流石に幻覚と信じたい。
真っ黒の旅装束にフードまで被った釘持ち…
先日の少年だ。
正直言おう…相手したくない。
というのも理由はある。
まず個人行動の能力者には私のことが伝わっていない。
霊とみれば消し去る者も少なくない。
次にあの釘。
一本だけ、私も触れたらまずそうに感じるのがある。
何故か今はないが、隠し持ち私を狙うのは難しくない。
あとはシンプルに面倒くさい。
以上のことから私が取った行動は…
「……」
(さようなら。)
完璧な反転、そして校舎に戻る。
少し図書室で時間を潰そう…
短刀て30cmくらいらしいですよ。丈伸ばせば全然隠せるくらい。