『そういえば紫からもう一つ贈り物って…』
『あら?まだ何かあったのかしら?』
『忘れてたわけじやないわよ!鈴仙にあったら開けろって…これこれ。』
『箱ですか?』
天子が箱の束から小さな箱を取り出す。
その箱は大きくした匣のようで、開匣のための炎の注入口もあった。
しかしどの属性で開けるかの説明もなく、中身の説明もない。
『…開匣してみる?』
『するよう言われたんですよね?』
『紫が意味なく渡すとも思えないわね…それに…』
私はリングに炎を灯し、注入口に炎を注ぐ。
その匣は開くことがなく、しかし炎は吸収していた。
匣はそれぞれの属性で開くことが出来るが、大空の属性を持つ者は、全ての匣を開くことが出来る。
匣の基本情報だ。
つまり天子に開けない匣はない。
『貴女も炎を。』
天子も炎を注入する。
しかし匣は開かない。
大空の属性に開けないのだ。
『あれ?』
『紫のことだから予想はつくけれど…優曇華以外に開けない匣か…もしくは炎の総量で開くか…』
『全員の炎が必要か…ですね?』
『考えられるのはそれくらいね。』
『なら三人で全力で注いでみよーじゃん!』
天子が炎を灯す。
家から溢れる程の炎量を、叩きつけるように注入する。
それに習い私と美鈴も炎を注ぐ。
開く気配は微塵もない。
『ぐ…』
『無理ね。全員が集まるか…もしくは優曇華なら開くようになっているのかもしれないわね。』
『今は諦めますか…』
『……こんな箱壊せばいいのよ!』
微動だにしない匣を見て苛ついた天子は、突然自分の匣を開匣した。
緋想の剣にも似た大空の剣。
刀身が激しく燃え盛るその剣を、力一杯に叩きつける。
『この馬鹿…!』
予想外に、しかし想像通りに、その衝撃はこのボロ屋を吹き飛ばした。
幸か不幸か荷物類は自重で残ったが、家は跡形もなし。
『……』
『あ…』
『…天子。』
『…はい…』
その時の私は、きっと阿修羅のような顔だったのだろう。
何せあの天子が、大人しく言うことを聞いたのだから。
私達の荷物は確かに箱に纏めて、しかも箱同士も重ねてたため無事だった。
しかし表に出ていた私の実験器具や、必要になるやもしれないと作った薬品類は全て消し飛んだ。
そこにあるのは粉々の残骸だけだ。
『何をすべきか…分かるわね?』
『…はい…』
こうして拠点は無くなった。
―――――
「やっぱり…」
「今考えると美鈴も連れてきた方がよかったわね。」
「それで二人は今は…「ボンゴレの支部に頼み込んでるわ。まあ永江衣久を助けるだけなら、私達だけで十分よ。」
「…そうですね…」
「それに貴女の初の実戦でしょう?匣の試運転と行きましょうか。」
「はい!」
私は雲の匣を開匣する。
小さい上に数の多いこの子達は、索敵においては最高のものだろう。
霧の幻覚で可能な限り姿を隠せば、余程でなければ見つからない。
更には不意討ちなら無力化するのも難しくない。
こういった作戦なら独壇場だ。
永江さんを見つけたら、壁を壊して脱出してもらえばいい。
匣自体が永江さんを知らずとも、私が知っていれば伝わってくれる。
本当に不思議な技術だ。
「なるほど…合理的で効率的で…とても安全な作戦ね…」
「これなら無意味に戦う必要も…」
「でも優曇華。」
「?何ですか?」
「これは貴女の匣の試運転であり、貴女の初の実戦よ。」
「…まさか…」
師匠の匣は開かれた。
そしてその手に持った弓を、躊躇いなく引き…
「…ついでに私の憂さ晴らしでもあるわ。」
振り抜いた。
強力な炎の奔流、門は粉々、門番は意識不明、集まるマフィア達。
そんな中、笑顔の師匠は言った。
「死ぬ気で暴れなさい。」
こんな冷笑を前にして、反逆の精神など…私にはなかった。
悲惨に進撃の巨人を一から見たくなりました。…見ませんよ?更新しますよ?(フラグ)