「昼間っからご苦労なことね。」
「あんたのせいだけどね。」
「は、はい…ごめんなさい…」
あの天子さんが普通の子供に見える…一体どんなしかり方をしたのだろうか。
「貴女のお師匠様を雇えませんか?」
「無理です。」
「私もごめんよ。」
「私はいいのだけれどねぇ…?」
「ひっ…」
「まあとにかく全員揃ったわね。」
「え?美鈴さんは…」
「お待たせしましたー!」
少し離れた所から美鈴さんの声がする。
私達は今小屋があった河原にいるが、斜面の反対側から来た美鈴さんに何故気付いたのだろうか。
「それじゃ…この匣を開けてみようじゃない。」
「はい。」
開かない匣について、先に話は聞いていた。
全員揃った今ならきっと開く。
むしろこれで開かないならただの箱だ。
「まあまずは前の三人から…」
天子さん、師匠、美鈴さんの順に炎を注ぐ。
しかし開く気配はなし。
「次は私が。」
「衣玖は両方注いでね。」
「分かりました。」
永江さんの属性は嵐、雷。
当然この作業の前に炎の使い方は指導済みだ。
バリエラリングも匣も、永江さんの分も渡してある。
これで五つの属性の炎が注がれた。
後は私の雲、霧の炎のみ。
霧の炎を注ぎ、最後に雲の炎を匣に注いだ。
すると匣は開いた。
中身は…空だった。
「…は?」
「空?」
「ここまでやって空とかないでしょ!?」
ひっくり返しても探っても何もない。
本当に空だ。
開けた意味は全くなかった。
…というわけでもなかった。
「!?永江さんの匣が…!」
「私のもです!」
「これは…『動物型』匣だけが光ってる…?」
私の匣も光っていた。
師匠以外の匣も一つずつ。
「…開けてみる?」
「開ければいいじゃない。」
「あんたは動物ないからね!…まあいいわ…鬼が出るか蛇が出るかってやつよ…!」
何の躊躇いもなく、天子さんは自分の匣に炎を叩き付ける。
中から出てきたのは蛇…真っ青な蛇だ。
「………何も変わってないわね…」
蛇は甘えるように天子さんの首に巻き付いた。
天子さんが言う限り、何の変哲もないようだ。
「私達も試してみますか。」
そう言って永江さんは匣を開いた。
中からは亀が現れた。
人より大きい亀だ。
「…こんなのが入っていたのですか…」
「亀…それにトビに蛇。そして虎…ね…」
意味ありげに呟く師匠を尻目に私は匣を開く。
いつも通りの二匹が姿を現す。
やはり何も変わってない。
結局あの匣のことは分からずじまい。
「わけわかんない…何なのか説明しなさいよこの隙間!」
「怒鳴ってどうするのよ…まあ害がなければそれでいいわ。それより優曇華、そろそろ学校に行ったらどうかしら?」
「え?」
確かに既に辺りは暗くなっている。
しかしまだリング争奪戦の時間には早い。
それを師匠が分からないはずもないのに…
「いいから行きなさい。」
「?…はい。」
師匠のことだから何か考えがあるのだろう。
少し早いが学校に向かうとしよう。
―――――
「……さてと…」
「何であの子だけ先に帰らせたの?」
「あの子にはまだ必要ないのよ…」
「ふーん…まあ…知らないのもあの子だけだしね。」
「いえ…私にも何のことだか…」
「あ、ごめん衣玖もね。実はさっきの匣…中身については何となく分かるのよ。と言うのも…」
天子は一冊の本を取り出す。
本というにはあまりに薄いが。
「いずれ必要になるけれど、今は違うのよ。紫が言うにはだけどね。」
「……なるほど…とにかく『唱えて』みましょうか?」
「ええ。お願いするわ。」
「まあ害はないだろうしね…じゃ行くわよ…『
―――――
「…やっぱり誰もいないですね…」
門から学校に入るが、周りを見ても誰もいない。
時間はまだ十時。
やはり早かったようだ。
「………」
とりあえず以前のような危険に対処するために匣を開けておこう。
隠れてやるにも限度がある。
先に開けておけば見つかる可能性は低いだろう。
トビの匣を開き、空から見ているよう伝える。
匣の持続時間は注ぐ炎の量によって決まる。
後は力を使うか、または私が戻すか。
多目に炎を注いだ上力を使うことがない今なら、数時間くらい余裕で保つだろう。
後は皆さんが来るのを待つだけだ。
形態変化をうどんちゃんが知るのはいつでしょうね…リアルに時間換算したら本当に不明です。