BLEACH ユーハバッハ打倒RTA   作:アタランテは一臨が至高

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可愛い女の子視点だと思った?残念!石田視点でしたー!


裏話2 VSうりゅー

「ああ、全く、四番隊の方の更木のヤツはいつの間にか死んだっていうし本当に今日は厄日だネ…!」

 

 

 恨み言を言いながら体を液体と化し、どこかへ去っていった敵のことを思い返しつつ懺罪宮へと向かう。

 

 

「はは…こっちにとっても厄日だよ…」

 

 

 己の滅却師としての力が消えつつあるのを感じながら体を引きずって階段を登っていく。

 

 

「まあ、でも、朽木さんを僕の手で助け出して黒崎の奴が悔しがる顔を見れたらイーブンかな…」

 

 

 特に誰に向けるわけでもなく言葉を発して痛みから気を紛らわせ、何とか体を動かしていく。

 

 しかし、あの敵が言っていた更木という名前は聞き覚えがある。他の一般隊士も皆騒いでいたが有名な人物なのであろうか。涙を流している隊士も多くいた。

 どこで聞いたのだったか。確か、昔、師匠(せんせい)が言っていたような…。

 

 

 そんなことを考えていると、階段を登りきった。

 意識を切り替え、さあ朽木さんを助けようと前方を見れば、一人の男がこちらに背を向けて立っている。

 

 奇妙な男だ。初めに目につくのは恐らく鬼道とやらで背に括り付けられている抜き身の刀。

 身長は自分より少し高く、黒い髪は肩で綺麗に揃えられている。感じる霊圧は先程の隊長に少し劣る程度か。手には木刀を持っている。黒いリストバンドを着けているが、オシャレだろうか?

 

 こちらから仕掛けても良かったが、不意打ちのような形になるのは滅却師としての誇りが許さないため声をかけることにした。

 もしかすれば、先程の隊長の娘だという少女のように話せばわかる相手かもしれない。力を失いつつある自分にとって避けられる戦いは全て避けなければいけないのだ。

 

 

「石田雨竜、滅却師だ。この先に囚われている朽木さんを助けに来た」

 

 

 相手が急に襲い掛かってくることも考えて弓に手をかけつつ声をかけると、相手の男は振り向く。

 

 

 その瞬間、僕は矢を放っていた。

 

 

「やっと来たか」

 

 

 相手は難なくその矢を木刀で弾く。しかしそんなことは僕の目に入っていなかった。

 目に入るのは、痛々しくも感じる、額についた、刀傷――!

 感じる霊圧はそう高くない。しかし、僕は本能ではなく理性で危機を捉えていた。

 再度弓を構え、乱装天傀に意識を向けて臨戦態勢を整える。

 

 

 滅却師には一つ言い伝えがある。「額に傷のついた死神とは戦うな」というものだ。

 

 かつて滅却師がここまで衰退する原因となった大戦における伝説は数多くあるが、その中でも一番有名なものはその額に傷のついた死神の話だ。

 

 

 曰く、「最も滅却師を殺した死神」

 

 

 かつての大戦を終わらせたのは死神側の大将の一撃であったというが、それは最早最後の一押しのようなものであったらしい。

 むしろその大戦における決定的な敗因は、滅却師の死者の実に6割を手にかけた一人の死神の存在だ。

 

 その死神は常に前線を駆け、敵を見れば駆け寄り斬って捨て、その死神の後には真っ二つになった滅却師の死体が列となって並んでいたという。

 

 滅却師の部隊もその死神と出会えば全滅。振るわれる刃は防御不可能の一撃、こちらからの攻撃はその高い霊圧によってほとんど防がれ、仮に通ったとしてもその死神は回復の術を心得ており全くの無駄にしかならなかった。

 

 何かに駆られるように出会う全ての滅却師を斬ってゆく姿はまさしく死神。

 戦場にて高らかに謳ったその名は――――

 

 

「更木…剣人…!」

 

 

 僕がその名を呟くと更木剣人は眉を動かす。

 

 

「何だ、私の名を知っているのか?」

 

 

 敵は首を傾げながらも木刀を構える。

 

 

「まあいい――戦いだ」

 

 

 それは、偶々だった。

 

 偶々、刀が主体の相手ならば間合いは取りすぎて困ることはないと一歩足を後ろに退いただけだった。

 あるいは、少し怖れの気持ちもあったのかもしれない。とにかく、僕は大した理由もなく一歩退いていた。

 

 

「『韋駄天』」

 

 

 僕の体は、後ろへ吹き飛んでいた。

 

 

「ガ、ハッ…!」

 

 

 全く、目で追えなかった。僕の体が万全でないというのもあるかもしれないが、今までの敵の動きとは比較にならない位の速さでこちらへ移動するままにその木刀で僕を吹き飛ばした。

 今、一歩退いていなければこの一撃で決着が付いていたかもしれない。僕は今更ながらの危機感を感じて、何とか体勢を整えてとにかく相手の正面に回らないよう飛び回って矢を放ち続ける。

 

 衰えたとはいえ滅却師(クインシー)最終形態(レットシュティール)状態での攻撃の威力は尋常ではない。敵も回避に専念している。

 

 …このまま、押し切ればいける。先程の速さはそう連続して出せないらしい。敵は回避に手一杯になっている。簡単に覆されうる優位ではあるが、僕が戦局を握っていた。

 唯一背にある刀が気がかりであるが、相手は一向に使う様子を見せない。後は、僕の体が持ってくれている間に一撃を当てれば勝ちだ。

 

 一度、細かい攻撃を連続して放つ。

 すると、相手は僕の予想通り足を止めて木刀で僕の矢を全て弾いた。

 

 今だ。敵は知らないだろうが、僕にとっては戦いが長引くだけで致命的だ。この隙は逃さない。正面に立ち、回避させないよう力を溜めて一際大きな一撃を放つ。

 

 正面に立ったことで相手は先程の技を使ってこちらに駆け寄ろうとしたのか回避は間に合っていない。咄嗟に敵は木刀で防御する。

 

 

 命中。そしてその瞬間、僕は自身の死を確信した。

 

 

 爆発的に敵の霊圧が上昇し、それは最早質量を持ったかのように辺りを圧迫する。吹き飛ばしたのは木刀とリストバンドのみ。目の前に立つは無傷の敵。しかも感じる霊圧は先程の倍どころの話ではない。なんだこれは、隊長なんてレベルを遥かに超えている――!

 

 

「ああ――外れてしまったか。あれは特別製でね。トレーニング用でマユリに私の霊圧を吸って重りになるよう作ってもらったんだが…丁度良いか」

 

 

 目の前の敵はプラプラと手首を振って拳を構えた。

 僕は再度特大の攻撃を放った。しかしその莫大な霊圧を纏った敵の拳の一撃で相殺される。

 

 

「そう言えば君が先に私の名を言ってしまったせいかちゃんと名乗っていなかったね。四番隊副隊長、更木剣人。別に覚えなくとも構わないよ」

 

 

 最早相手の声など耳に入らず必死に矢を放ち続ける。動くのも限界で、威力の減衰した一撃など眼前の敵には通らないと頭では理解しているのに体は生き延びるために足掻いている。

 そんな僕を見つめながら、遂に敵が動き出す。

 

 

「暗殺拳法“四楓”の弐『石火』」

 

 

 それは、技と呼ぶにはあまりにも粗暴な一撃であった。先程ですら目で追えなかった速度が更に上昇し、眼前へ刹那の時で現れてその溢れ出る霊圧が叩きつけられる。

 まだ未完成なのか、何かの動きを辿るようでまるで技とは呼べなかったけれど、ともかくその一撃で勝負は決した。

 

 僕は拳で吹き飛ばされ、かなりの距離があった筈の壁に叩きつけられる。そこで、僕の意識は暗転した。

 

 吹き飛ばされながら意識を失う直前、何故彼は木刀が破壊された時に笑ったのだろうかと、どこか場違いな疑問を抱いていたのであった――

 

 

 




前回の分の感想まだ返しきれてませんが今日は絶対に投稿したかったので投稿してしまいました。
許してくださいなんでもしますから!

ちゃんと返すのでいっぱい感想ちょうだい(はぁと)

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