BLEACH ユーハバッハ打倒RTA   作:アタランテは一臨が至高

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他者視点というか一方その頃彼らは…的な感じです。


裏話4 一方その頃

「のう砕蜂、そろそろ…」

 

『貴様と話すことなど何もない』

 

「っ…」

 

 

 四楓院夜一は応答の無くなった通信機を思わず投げ捨て、床に横たわる。

 そしてそのまま数秒の沈黙が訪れた。

 

 

 しばらくして、夜一は部屋の外でコソコソと様子を見ていた浦原喜助に対し口を開く。

 

 

「のう、喜助や…儂は藍染の悪事が明るみになればまた元の関係に戻れると、剣人のやつとも茶を飲めると、そう思っとったんじゃが…」

 

 

 どこか震えた言葉を発した後また沈黙が訪れ、答えが返って来ないとわかると夜一は溜息をついてゆっくりと起き上がる。

 

 

「もう、元には戻らんのかのう……」

 

 

 黒猫の姿をとった夜一は窓から外へと跳び出て行く。

 

 その夜一へ返す言葉を、浦原喜助は持っていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 虎徹勇音は思い返す。かつての上司を、今は敵となってしまったあの人を。

 

 

 初めの出会いは入隊式。あの人は既に副隊長を長く務めており、遠い存在であった。

 

 しかし、共に働いていく内にその印象は全く別のものへと変わっていく。

 非常に勤勉なお人で、部下の仕事をいつの間にか片付けていて私達は何もすることが無くなってしまい逆に困るなんてこともあったが、何よりも優しいお人であるというのが皆の共通の認識である。

 

 何かに困っているとすぐに助けてくださり、わからないことがあればすごく丁寧に教えてくださった。

 四番隊にて、あの人に助けてもらわなかったという隊士は一人もいないだろう。そのくらい面倒見が良く、また困っている人を放っておけないという性分の方であった。

 

 そんな方であるからこそ私もあの人のことを尊敬し、席官となってあの人に頼られる立場になった時は非常に喜ばしい気持ちとなったのだ。

 

 

 当然私も何度もあの人に助けられたのだが、その中でも一つ、私にとって強い心の支えとなったものがある。

 

 それは入隊して程なくのことである。当時、というか今でもそうだが私はどうしても闘いに対する恐れが拭えない。

 これは四番隊に入隊を希望した理由の一つであり、私のコンプレックスでもある。

 

 これではいけないと何度も克服しようとしたのだが、どうしても足が竦んでしまう。

 困った私は、当時から何度も私を助けてくださっていた頼れる上官である剣人副隊長に相談した。

 

 

「その、私…どうしても闘いになると、足が竦んでしまって…恐怖で、動けなくなってしまうんです…。私、これじゃ、十三隊失格、ですよね…」

 

 

 そう言うと、剣人副隊長は頼れる言葉でこう言って下さった。

 

 

「安心するんだ、虎徹君。闘いを怖れるという感性はごく普通のものだ。君が闘う必要などどこにもない。四番隊とは救護の隊。人を救い、護るのが任務だ。闘いなど任務ではない。

 無論、必要に迫られて我々が闘う時も来るだろう。その時は、私を呼ぶがいい。私の剣は常に君を護り続ける。君の敵は全て斬り捨ててみせよう。だから安心して、君の任務を果たすんだ。

 そしてもし、闘う覚悟が出来たというのならば剣を抜くと良い。その剣は、きっと君の道を切り開いてくれるとも」

 

 

 その言葉の通り、剣人副隊長は現れる敵を全て斬り伏せて下さった。

 その背中を見て、いつか私も剣を抜いて誰かを護れるようになりたいと、そう思ったのだ。

 

 思って、いたのだ。

 

 

 

「…ああ、聞こえなかったのかい? ()()()()()()()()()()()()と言ったのだよ」

 

 

 

「―――!!!」

 

 

 今日もまた、夢を見た。あの日、藍染の裏切りが発覚したその日に藍染から剣人副隊長の裏切りを告げられた瞬間の夢を。

 

 

「は、は…やだなあもう…あの人は敵、なんだから…」

 

 

 自分にそう言い聞かせる。ここ最近、毎朝行っていることだ。

 しかし、その言葉を何度発しても裏切られたという実感がまるで湧かない。彼の善性は、誰もが知っているのだ。

 

 その内に段々と、言葉が言葉にならなくなってくる。

 

 

「嫌、です…私は、あなたに向けるために剣を抜く覚悟を決めたんじゃないんです、よ…。

 戻ってきてくださいよ…剣人、副隊長…」

 

 

 枕は今日も、乾かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 卯ノ花烈は刃を研ぐ。

 

 己の部下であり、弟子であり、敵となった男を想いつつ。

 

 

 彼の裏切りが発覚したその日、彼は己の動機を私に話した。

 この世界は間違っているのだと、正さねばならぬことがあるのだと。

 

 嗚呼、それはまさしくそうなのだろう。大罪人である私が生き永らえている以上きっとこの世のどこかは間違っている。

 

 

 だが。だが、しかし。そんなことは()()()()()()

 ただそこには、彼は護廷の敵となり、私の敵となったという事実のみがある。

 

 その事実があるならば、私は何の障害も無く彼と斬り合える。何の理由もなく、命を奪える。

 敵同士が向かい合ったのならば、そこに生じるは戦いのみ。

 

 それを理解させるために、彼を斬った。狙ったのは額の傷。彼にとっての戦いの象徴。更木にて付いたのだと彼はよく話していた。

 

 気に入らなかった、彼の戦いの心を独占しているあの傷が。しかし最早あの傷は私のもの。

 

 彼はただ私のみを見ていれば良い。私を斬ることのみを考えていれば良い。

 

 敵と相対したのならば、他のことなど考える必要はない。理由など、正義など、そんなことは戦いには関係がないのだ。

 

 彼は私の一撃を避けなかった。それはきっと薄皮一枚で止まるとわかっていたからではなく、私と戦う覚悟が出来たということの証左なのであろう。

 

 

 更木剣人。私の敵となった男よ。正義を語りたくば、世界を正したいというのならば、私を斬って進むが良い。

 

 ここに座すは剣の獣。その罪は数知れず、その手は血に塗れている。

 

 私の心の臓を貫き、首を断ち、息の根を止めるが良い。

 私もあなたの胴を斬り、手足を断って抗うだろう。

 

 獣の討伐とは、そういうものだ。

 人を目指すあなたは私を越えていかねばならない。

 

 敗者が悪、勝者は正義と為るがこの世の理。

 どうか私の悪を暴くが良い。私の罪を裁くと良い。

 

 しかし私には護廷という大義がある。そう簡単にこの首は差し出せない。

 戦いこそ全て、その場にて全ては決まる。

 

 願わくばどうか、最高の戦いを。

 

 

 卯ノ花烈は、刃を研ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「刀を納めるんだ、グリムジョー」

 

 

 そいつは、突如としてグリムジョーの後ろに現れた。

 抜き身の刀に、額の傷。石田のヤツが気をつけろと言っていた死神だとすぐにわかった。

 

 

「現世侵攻、五体の破面の動員、及びその敗死。どれも命令違反、と言えばわかるか?」

 

「ッ…! まだ、戦いは終わっちゃいねえ! これから帰刃するとこだったんだ、もう少しやらせてくれたって…」

 

 

 グリムジョーのヤツがそいつに抗議した、その瞬間だった。

 

 

 

「抜かねばわからないか、グリムジョー」

 

 

 

 霊圧。

 

 それはあの藍染にすら比肩する程のもの。

 その威圧の前では俺も、グリムジョーも何も出来ずに立つことしかできなかった。

 

 

「わ、かった…」

 

「おや…案外物分かりがいいんだね」

 

 

 その言葉と共にアイツは刀を納め、俺を圧迫していた霊圧も消えていった。

 

 その後、アイツと闘うことは無かったが一つ気がかりなことがある。

 それは正体が知りたくて呼び止めた時にアイツが話した言葉だ。

 

 

「なあ…じゃあ、お前は誰なんだ?」

 

「…私か? 私は更木剣人。ああ、剣八と何か血縁がある訳ではない。同じく出身からとっているだけだ」

 

 

 その言葉は拍子抜けする程好意的で、ごく普通の自己紹介を聞いている気分だった。

 しかし、その次に発せられた言葉。それが問題だった。

 

 

「…ああ、そうだ。一つ忠告をしておこうか、YHVHを宿す少年」

 

 

 何か、聞いてはいけないことを喋っている気がした。

 しかし同時に、聞かなくてはならないことのようにも感じた。

 

 

「君が受け継いだ虚、大事に使ってやると良い。きっと君の力になるだろう」

 

「っ…! 待て、そりゃどういうことだ…」

 

 

 俺が問い返そうとした時には既に空間の割れ目に入っていってほとんど姿が見えなくなっていた。

 

 

「さようならだ少年。惣右介は君と戦う時を待っているよ」

 

 

 その言葉を最後に、更木剣人の姿は消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日番谷冬獅郎は総隊長の計らいで雛森桃と通信を行っていた。

 その通信の中で何とか元気を取り戻した雛森の姿を見て安堵していた、その時だった。

 

 

『ねえ、日番谷くん…日番谷くんはこれから、剣人先生と戦うの…?』

 

「…そうだ」

 

『剣人先生を、殺すの…?』

 

 

 不穏な空気を感じた。何か、致命的にズレている気がした。

 

 

『ねえ。先生を、助けてあげて…!』

 

 

 止めなければいけない。その確信があった。

 

 

「雛森…」

 

『勿論先生がやったことは良くないっていうのはわかってるんだよ?でも先生が本気で私達を裏切るようなことをする人じゃないっていうのは日番谷君もわかってるよね。絶対にあれは何か理由があってのことだと思うんだ。だって先生は私が隊長になったら私の副隊長になってくれるって言ったんだもん。あの女の下にいるより私の方が良いって、私が一番だって、私を選んでくれたんだもん!先生は約束は絶対破らない人だから裏切るなんてそんなことする訳がないんだよ。普段だって先生の部屋の周りを歩いてるだけで毎朝出会えたし私の作ってきたものも全部食べてくれたんだもの、運命で繋がってるんだ!だからあの裏切りも藍染とか市丸とかその辺の奴らがそそのかしたに違いないよ。うん、そうだね。そうに決まってる。それにそもそもあの虎徹勇音とかいう女が先生の裏切りを伝えたっていうけどそれも怪しいものだよね。大体三席の癖に先生に馴れ馴れしくってふざけてると思うんだ。私が先生と同格になるためにどれだけ苦労したかわかってるのかな。うん、そうだね。考えてみるとこの泥棒猫も怪しいね。もしかしたら皆には先生が裏切ったって伝えて本当はどこかに監禁してたりするんじゃないかな?…うん、そうだよ、そうに違いないって!だって私ならそうするもの…』

 

 

 紡がれる言葉を遮って総隊長が顔の前に手を置いた。

 すると、雛森は意識を失って倒れる。

 

 

『…すまんの、少々気圧されておった。まだ表に出すのは早かったようじゃの』

 

 

 通信が途切れた後、やり場のないぐちゃぐちゃの感情を持ったまま日番谷は空を仰ぐ。

 

 

「更木…お前、何してんだよ…俺たちを、裏切ってんじゃねえよ…。お前は一体、何をしてえんだ…」

 

 

 見上げた太陽は、暗雲に包まれていた。

 

 

 

 

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