僕がこうだったらいいな………と言う話を思いついたときや、何らかの祭りのときに投稿する形になります。
もしかしたら一話投稿後、逃亡するかもしれません。
追々変えていきますので、適当なのは許してください。
ユラくんの思考回路で訳がわからないことになったので、途中雑ですが、数日以内に改稿できればな………と思います。
これ、3周年の直前に諸々やってるので、割とミスが多いと思いますが、追々なんとかします。
シャンフロ3周年、おめでとうございます。
『ユラ様、オ母様ヨリ手紙ガ届イテオリマス』
「…………返信?」
『ハイ』
とある富豪が所有する屋敷の一部屋。必要最低限の物と、一般人には考えられない量の機械が置かれているその部屋で、ユラは生活していた。
彼は幕末と呼ばれるゲームに置いて“レイドボス”と呼ばれる程の実力を持つ。
しかし、その人間離れした強さの代償の様に、絶望的なほどにコミュニケーションを取ることができない。
最近は文通によって両親との関係を修復できているとは言え、音声的コミュニケーションは未だにできていないのだ。
この日は、昨日ユラが母親に書いた手紙の返信が来た。関係の修復が進んでいることを示すかの様に手紙を書く頻度が上がっている。
それをなんとなく感じ、少し嬉しく思いながらユラはロボットから手紙を受け取った。
ニコニコと幕末で浮かべる瞳孔を開いた笑みとはまた違う笑みを浮かべて、手紙を読み始める。
最初の数回のやり取りで必要な話を終えているため、最近は良かったことや面白かったことを伝えあっているだけだ。
「…………ふふっ」
母親からの手紙の内容は、昨日ユラが書いた部屋であったことへの言及と、散歩中に見つけた花の話。それと育てているらしい金木犀が咲いたらしい。
「金木犀かぁ………」
数日前送られてきた両親の写真と数回だけあったことのある母親が、金木犀の花に水をあげる姿を思い浮かべる。………………金木犀がどんな花かなどユラは知りもしないが。
『金木犀ノ花モ送ラレテキテオリマス』
「花瓶………」
『ドウゾ』
窓の近くにある花瓶に植えろ、と言う意味だったんだけどな…………と無意識に考えながらも、受け取った花瓶に金木犀というらしい黄色の花を入れ、ロボットに渡す。
もっと前のユラなら、叩き壊していただろうが思いとどまった。
「紙………」
『ドウゾ』
「ありがとう」
特にお腹は空いていないが、せっかく手紙を書くならば、と、なんとなくで抹茶を入れるようにロボットを操作しつつ、紙を受け取る。
この会話ロボットは、ユラが母親に手紙で頼み込んで買ってもらった物。既に6台目だが、いつか普通に会話するためにと、できるだけコミュニケーションする様にしている。
高性能AIを使っているとはいえ、そこまで頭が良い訳ではないため、細かな支持は機械に入力しなければならないが。
練習の成果か、あまり話すこともないからか、最近では偶にコンビニに行くことすらあるほどだ。小学校低学年以降、学校に行ったこともなければ働くこともできるか分からない。
それでも、少しずつ前に進んでいるのだ。
それが幕末と言う金魚鉢のお陰であることは皮肉なのかも知れないが。
「花…………、写真?」
『ドウカサレマシタカ?』
「………」
ユラはロボットを無視してスマホを取り出す。植えた花を一枚適当に撮って、スマートフォンをポケットに戻した。
「………喜んでくれるかな?」
柔らかに微笑みながら、撮った写真を現像する様にロボットに指示、チェキ並の速度で写真が現像された。
◇
何を書こうか、とユラは考える。前回の手紙は、ロボットを壊してしまったことと、散歩中に見つけた猫の写真を送った。
もっと前なら今までのことやこれからのことなど書くべきことが多くあったが、今はそうではない。
書きたいことを書けて、伝えたいことを伝えられる。
ユラは、最近あったことや母親に言いたいことを考えるが、特に思い浮かばない。
「……………前に書いた……………駄目だよね?」
それなら、“あの”幕末の世界であったことでも………と考えるが、何故か、そう、何故か、AIであるはずのロボットから止められるのだ。
お前に何が分かる…………と、ロボットに天誅をしてしまったことは既にユラの記憶にはない。
漠然と、書かないほうが良いんだろうな………と思うだけだ。
「猫……………うん。いいね」
書くことがないなら、書きたいことを作ればいい、とでも言うようにユラは立ち上がる。
「コンビニ…………行ってきます」
『行ってらっしゃいませ』
散歩に行けば何かあるだろう、と適当に考え、上機嫌のままロボットから財布を受け取り、部屋を出る。
髪はボサボサ、服も普段部屋で着ているもの。最低限の準備もできているとは言い難いが……………………そこはユラだ。気にするわけがない。
「………散歩」
「行ってらっしゃいませ、ユラ様」
そのまま屋敷を出て、門番(とユラは認識しているが実は屋敷の使用人であり、毎回違う人)に挨拶をしながら、走り出す。
数ヶ月前なら確実に舌打ちされていたし、挨拶も無視されていたが、今では話しかければ答えるようになっている。
他人に深く興味を持たないユラだが、流石になんとなく思う所はある訳で。
(………? 優しくなった…………感謝の100人斬り、かな?)
幕末のありもしない平和が踏みにじられることが彼らの知らぬ内に確定した。
「〜♪」
母親からの手紙に、花、それに門番の態度の軟化等、ユラの上機嫌が加速していき、ついには歩きながら鼻歌を歌い出す。
散歩とは言ってもユラの家は金持ちである。当然そこそこの都会に住んでおり、コンビニまでの道のりなど、5分も掛からない。
「…………ついた」
「いらっしゃいませ〜」
お馴染みの音楽と共に入店し、適当に店内を散策する。そのまで広いわけではないが、ユラにとっては未知多き場所である。
ニコニコと笑いながら、一般人からすれば小さな贅沢であろうコンビニスイーツを片っ端からカゴに入れていく。
◇
ユラが買い物を終え、レジに並ぼうとしたとき、ソレは起きた。
ユラは特に気にしていなかったが、コンビニには既に客が数人おり、その中の一人が騒ぎを起こしたらしい。
『あぁ!? 俺は客だぞッ!!!』
『そ、そうは言われましても………』
『客の俺にッ!! なんだって!? 万引きだとッ!!!』
『ですが、た、確かに………』
『証拠でもあるのかよ!!』
騒ぎの原因は、万引き。男が商品を服の中に隠すのを店員が目撃、止めようとした所、男が反抗し始めたと言うことだ。
(うるさいな……………なんだろう?)
この時点では、ユラにとって何の感情もなかった。手紙に書けることかな……?と少し考えた程度で、本当にどうでも良かった。この時点では。
「どうしたの?」
ユラは、店員と男が会話している中に割り込み、特に目的もなく、話を聞こうとする。
「テメェには関係ないだろッ!!」
男がユラの突然の乱入に苛立ったように叫ぶ。
ソレは、ユラにとってのキルゾーン。会話が上手くいかないと言うだけで、問答無用の天誅が始まるキーになる。
───が、動かない。思考を捨てない。
「…………お母さん……」
そして、男はユラを振り払った。万引きは事実であり男が100%悪いとしても、ユラは実際に部外者である。
焦っているときに、苛立っているときに、割り込まれたのだ。当然の反応であるだろう。
「天誅」
だが、それはユラの地雷である訳で。
ボソリと、ユラが呟く。
それは、確かにユラの成長なのだ。元の彼ならば、会話が成立しなかった時点でキレている。
だが、実際に彼はその時点では何もしていない。耐えた訳ではない。理性が働いたのだ。
「ひっ………、なん、なんだよっ!!」
殺意が男を貫く。ユラの左手は存在しないUIを探して動いていて、右手は架空の鞘を持っている。
「お、お客様……?」
男が怯えたように後ろに下がり始め、状況を把握できていない店員がユラの顔色を伺う。
「天誅」
「ひっ……!」
瞳孔が限界まで開かれ、架空の刀、錆光が抜き放たれる。同時にUI操作の左手が止まり、“レイドボス“が動き出す。
「近寄んな、き、気色悪ぃ!!」
「天誅」
それは一瞬。何の躊躇もなく踏み込んだユラに、武道の経験がある訳でもない男が反応できるわけもなく、さりとて架空の刀が敵を切り裂く訳もなく。
数分後、腰を抜かして服の下に隠した大量の充電器の一つをポトリと落とした男と、スイッチが切れたように微動だにせず佇むユラがいた。
◇
その後の対応は早かった。正気を取り戻した店員が腰を抜かしたまま動けない男を店奥に連れていき、警察を呼んだ。
ユラ自身は何もしていないこともあり、話を深く聞かれることもないままに釈放された。
「…………」
沈み始めた夕日をバックに、トボトボとコンビニからの帰り道を歩く。
(また……………繰り返すの?)
ユラは今回のことで自身に問題があった訳ではないと思っている。
前よりも我慢したと言う確信があり、自信がある。
けれど、思い浮かぶのは何年も前の記憶。泣き叫ぶ母と、怒る父の姿。やはり自分は何か人と違うのか………と、落ち込んでしまう。
唐突に、近所の高校生らしき声が聞こえてきた。
「優香! そういえばもうすぐ夏祭りだよ!」
「そういえばそうね……………。今年もアンタと回るのはちょっと嫌だけど………」
「えっなんで? 酷くない!?」
(お祭り………?)
ユラの脳内が少しづつ切り替わる。“祭り”と言う単語から一瞬で“祭囃子”が連想される。
それは、幕末の合言葉を言った直後だからだろうか。
「祭囃子……………イベント」
ユラが思い浮かべる光景が、両親の姿が朧気になり、般若の面を被った志士が鮮明になる。
(楽しかったなぁ…………)
それは、先日の幕末世界でのイベント。当千とサンラクが、命を賭けて自身に挑んでくる、その姿。
先程の腰を抜かしていた男の怯えた目とは、全く違う眼。
「〜♪」
ユラの脳内から、手紙のことも両親のことも万引き男のことも、消え失せる。
この上機嫌は、サンラクと言う男一人に向けた、レイドボスの心だ。
「はやく殺りたいなぁ………」
……………今日もユラの楽しい天誅生活が始まる。
読んでいただきありがとうございました。
また何らかの祭りのときに…………投稿するかも…………です。はい。