百十三年ぶり不吉奇数!!はパワハラ城全員集合に関してだと解釈。
憎伯天が『雷神なら風神バージョンもあるよね、と思った。

五十年前なら鱗滝さんの前任だよね。きっと。

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※pixivにも掲載してます。


卑劣なる按摩の血戦【猗窩座VS半天狗】

「また尊い剣技が失われてしまった……」

 

連なる山の中腹、夜の帳に囲まれた深い森の中。

猗窩座は血に塗れた拳を解きながら、地に伏せた水柱を前に哀しみに暮れていた。

──この水柱は急務に向かう途中、近道としてこの険しい山道を選んだのだが、それが運の尽きだった。『青い彼岸花』を探すために徘徊していた猗窩座と運悪く、本当に偶然出逢ってしまったのだ。

そうして二人は互いの姿を認めると即交戦、そのまま一昼夜死闘を繰り広げた。

そして今、とうとう限界を迎えた水柱は倒れ、猗窩座はそんな彼に賞賛を贈っていた。

 

「素晴らしい太刀筋だったのに残念だ。鬼になる事に同意すれば、俺と共に更なる高みへと昇れただろうに」

 

猗窩座は横たえた水柱をひとしきり褒めると、その身を喰らうために膝を折った。質の良い肉を喰らうことは強さに直結する、柱ともなれば極上の肉だ。

名を聞いても答えてくれなかったのが残念だが、この好敵手に餞を贈る気持ちで咀嚼しようと口を開いた、その時。

猗窩座の第六感とも言うべき直感が何かに反応した。

 

「……」

 

ザアァ、と木々がざわめく。水柱との激しい戦闘で周囲に生物は皆無のハズであるが、猗窩座の勘が警告を発する。

 

(何かが居る……)

──術式展開【破壊殺、羅針】

 

猗窩座の血鬼術、闘気を感知する羅針盤が暗闇に光る。

そして精確無比な羅針が捉えたのは、四方八方から発せられる明確な殺意だった。

次の瞬間、カッ!と雷光が闇を切り裂いて襲ってきた。

だが猗窩座は既にその場から離れ、恐るべきスピードで羅針盤が示す標的に向かって走る。

瞬きする間に辿り着くと、その先に居たのは見知った顔であった。

 

「……どういうつもりだ、半天狗」

 

そこに居たのは上弦の肆、半天狗──の分身体、積怒だ。彼は錫杖の先端に雷を纏わせながら「カカ」と『怒』の舌を覗かせて叫んだ。

 

「どうもこうも、こういう事よ!」

 

再びの雷撃。文字通り雷の速さで繰り出される技だが、猗窩座は闘気の感知と数多の戦闘経験から先読みしてコレを避ける。

 

「ぬっ!?」

 

「どういう事だが知らんが、来るのなら潰す」

 

雷の間を縫って接近、鉄拳を振りかぶる。──が、猗窩座は急に方向転換して横に飛んだ。

直後、積怒の目の前の地面がズドン!!と八つ手形に陥没する。

 

「チィ!しっかり当てんか可楽!!」

 

「ハハ!真後ろからの攻撃を避けおったわ此奴!!」

 

樹上から可楽と呼ばれた者の弾んだ声が響いてくる。猗窩座は前方に積怒、後方に可楽と挟まれた形だ。

さらに上空から風を切る音が聞こえてきた。

 

「フハハハ!死ねィ!!」

 

バチィ!と猗窩座の肩が抉られる。半人半鳥の空喜が凄まじいスピードで滑空、金剛石をも砕く爪で引き裂いたのだ。だが──……

 

「死ぬのはお前だ」

 

「ぬぉ?」

 

飛び上がろうとした空喜がガクン、と地に落ちた。交差の一瞬、猗窩座も拳を振るい相手の背骨を砕いていたのだ。抉られた肩は刹那で治る。

 

「哀しいほどの実力の差。流石は上弦の参だ」

 

背後の暗闇から十文字槍の刺突が繰り出される。しかし闘気を感知していた猗窩座はそれを屈んで避け、カウンターを放った。

 

【脚式・冠先割】!!!

 

ドギャ!と相手の顎を穿つ。そのあまりの威力に十文字槍の持ち主──哀絶の脳漿がブチ撒けられた。

 

「愚か者め!隙だらけだ!!」

 

「ひゃはは!潰れろ!!」

 

そこに積怒の雷撃、可楽の暴風が叩きつけられる。それらは猗窩座に直撃したが、彼は全く堪えた様子もなくギロリと静かに睨んだ。

 

「俺に血戦を挑むつもりか?やめておけ、貴様の血鬼術では俺には勝てん」

 

猗窩座の気迫がビリビリと空気を震わす。その気迫に半天狗たちが思わずたじろいだ瞬間、猗窩座は突然誰もいない方向に向かって駆けた。

 

「ッ!?奴を行かせるな!!」

 

積怒が雷撃を放ちながら叫ぶ。

猗窩座が向かった方向には半天狗の本体『怯』がいる。羅針盤で感知した『怯』の闘気は非常に微弱だったが、それを見逃す猗窩座ではない。

「止まれぇえ!!」

 

可楽が横薙ぎに暴風を巻き起こすが、猗窩座はジャンプしてこれを避けた。

 

「ワシの領域に来るとは喜ばしい事じゃ!」

 

そこへ傷を再生し終えた空喜が飛来する。彼は猗窩座に無闇に接近せず、口にキイィ、とエネルギーを溜めて放った。

 

【狂鳴波】!!!

 

【空式・昇曲】!!!

 

猗窩座は空を蹴ってさらに上昇、衝撃波を避ける。さらに空中を縦横無尽に駆けると、空喜の足首を捕まえて地に投げて叩きつけた。

 

「彼奴め、空を駆けよったわ!」

 

「楽しそうにしている場合ではないぞ可楽!!」

 

積怒の怒鳴り声は、既に猗窩座の耳には入っていなかった。空を駆け地を駆け、半天狗の本体が居るであろう場所へ既に辿り着いていたのだ。

 

(羅針盤の反応はこの辺り……、しかし見当たらん)

 

鬱蒼と生い茂る草木に囲まれ、半天狗の姿は見当たらない。そうでなくても半天狗の隠密性は上弦でも随一、もう一度術式を展開しても見つかるかどうかだ。

悩んでいては折角撒いた分身体に追いつかれてしまう。猗窩座は直ぐに答えを出した。

 

「面倒だ。炙り出す」

──【砕式・万葉閃柳】!!!

 

地面を殴り、周囲全てを吹き飛ばす。轟音が鳴り響く中、猗窩座は「ひいぃ」という情けない声を耳聡く捉えた。

 

「そこか」

 

ギロリと睨む猗窩座。そこには指一本程の大きさの半天狗──本体の『怯』が喚きながら、目を見張る速さでこの場から去っていくところだった。その方角は分身体たちのいる方だ。

 

「俺から逃げられると思うな」

 

半天狗の逃げ足より疾く駆ける猗窩座。逃げ道を塞ぐようにして立ち塞がると、半天狗は「ひいい!」と一層情けなく悲鳴を上げた。

 

「さて、何故俺を襲った?血戦なら無限城で堂々と申し込めばいいだろう」

 

参の瞳が半天狗を射抜く。その視線を受けた半天狗はブルブル震え、目も合わせず俯いてボソボソと喋り始めた。

 

「そ、それは……、彼奴等(きゃつら)が勝手に……」

 

「血鬼術の制御が出来ない上弦など居るわけないだろう。巫山戯ているのか?」

 

即座に論破され、半天狗は「ひいい」とさらに縮こまるだけだった。

半天狗のそのあまりの情けない姿に、猗窩座はため息を吐いた。

「貴様のせいで水柱との戦いの余韻が台無しだ。こんな山奥に何故貴様……、が……」

 

猗窩座の声が小さくなっていく。何かに気付いたように半天狗を見つめると、一歩詰め寄った。

その雰囲気には明確な怒気が孕んでいた。

 

「まさか貴様、俺の戦闘直後を狙ってやってきたのか?少しでも消耗したところを狙って……」

 

猗窩座の問いに変わらず「ひいい」としか言わない半天狗だが、猗窩座は心底軽蔑した目で半天狗を見下し「フン」と鼻を鳴らした。

 

「弱い上に性根も腐っているのか貴様。救いようのないクズだな」

 

そのまま踵を返す猗窩座。

彼にとってこんな弱く卑しい存在の事など嫌悪感しか感じない。いっそ殺してしまいたいが、鬼で、仮にも上弦の肆ともなると面倒しかない。

そうして去ろうとする猗窩座の背に、ワナワナと震える半天狗の声が轟いた。

 

「──……くない。ワシは、悪くないィイ!!」

 

半天狗が突如巨大化し、鋭い爪で猗窩座に襲いかかる。

だが猗窩座は振り向きざまに蹴りを放ち、巨大化した半天狗は彼方へ吹き飛ばされた。

『恨』の舌がベロンとだらしなく垂らされる。

 

「とことん腐った奴だ、貴様は」

 

猗窩座は吐き捨てるように言うと、今度こそその場をあとに……──

 

「のう、弱い者虐めは楽しいか?」

 

ぞくりと怖気が立った。

直後、地面から竜の頭をした大樹が生えて猗窩座に襲いかかる。猗窩座は飛び上がって回避するが、そこに雷が直撃した。

 

「ッッぐ!?」

 

先の積怒とは段違いの威力。痺れて動きの止まった猗窩座に、竜樹が追撃を仕掛けてくる。その頭の上に、一人の少年が立っていた。

 

「極悪人が。成敗してくれる」

七体目の半天狗、『憎』の憎伯天だ。

彼は背中の太鼓をドン!と鳴らすと、空から万雷の雷が降り注ぎ、周りの木々が次々と竜樹に変化していった。

それらが一斉に猗窩座へと降り注いで貪り喰らってくる。

 

「ッこの、調子に乗るな!!」

 

四肢に纏わりつく竜樹をへし折り、雷を受けながらもムリヤリ前進する猗窩座。眼前に迫った僧伯天に拳を振り上げるが──……

 

【狂殺鳴波】!!!

 

寸前で僧伯天の叫びが放たれる。

 

「ぐッ!?……っアァぁあ!!」

 

直撃した猗窩座の肉体が振動で破壊されるが、端から超再生して拳を振るい首をへし折った。

首が180°捻れる僧伯天。しかしその状態のまま太鼓を乱打し次々と血鬼術を展開していく。

 

【血鬼術、無間業樹】!!!

 

【破壊殺、鬼心八重芯】!!!

 

猗窩座も術式を展開、必殺の破壊殺で全てを薙ぎ払い突き進んでいく。

余波で周囲が更地と化していくが、二人の猛攻は止まらない。

両名による壮絶な血鬼術は、夜明けになる頃にはそこにあった山をひとつ平らにしていた。

 

 

暁闇(ぎょうあん)の暗さに目が慣れた時機。

二体の鬼による演舞は終焉に差し掛かろうとしていた。

 

「おおおお!!」

──【破壊殺、脚式・飛遊星千輪】!!!

 

「ッッ゛!!」

 

猗窩座の飛び蹴りが僧伯天を天高く吹き飛ばす。

雷、竜樹、衝撃波など多彩な技で猗窩座を翻弄した僧伯天だったが、遂に動きを見切られ直撃を喰らってしまった瞬間だった。

 

「ぐっ、悪童めが……、ッ!?」

 

忌々しく地上の猗窩座を睨んだ僧伯天だが、そこで真横からの光に目が眩んだ。

 

「しまッぐぁああああ!?」

 

黎明(れいめい)の光が僧伯天の体を灼いていく。竜樹を伸ばし太陽の光から身を守ろうとするも、地上から離れすぎてしまって間に合わない。

彼は地に足をつけることは叶わず、そのまま空中で塵芥と化した。

竜樹たちもボロボロと崩れていく。

(此処では俺も不味い。早く陽光の届かぬ場所へ移動しなければ)

 

この場は山々の影になってまだ日が差さないが、直ぐに夜明けだ。戦いの余波で周りに日陰もなく、流石の猗窩座も焦燥する。

が、そこで思いがけない邪魔が入った。

「うわあ!?コッチにも鬼が居るぞ!!」

 

「また別の鬼だ!!」

 

「ッ鬼狩りだと!?」

 

現れたのは憎き鬼殺隊員たちだ。

彼らは突如崩れた山の異変を確かめに来た先発隊で、突然の出来事のため階級の低い者たちばかりであった。

猗窩座も闘気から全員が取るに足らない雑魚だと認識したが、それが問題だった。

猗窩座は瞬時に状況を理解する。

 

(コイツらの台詞から察するに、半天狗と遭遇して逃げてきたか。マズいな)

 

鬼狩りとはいえ柱クラスでもなければ、上弦の鬼にとってそれは食糧も同義。僧伯天で消耗した体力を、彼らの血肉を喰らって補給している可能性がある。

そしてその予感は当たっていた。

 

【激涙刺突】!!!

 

鬼殺隊員の背後から凄まじい刺突が繰り出され、悲鳴を出す間もなく彼らの体が穴だらけになる。

ドチャリと倒れた死体を足蹴にして半天狗──哀絶が猗窩座を睨んだ。その後から積怒、可楽、空喜が続々と集まってくる。

 

「……ワシは哀しい。よもや参と肆でここまでの実力差があるとは」

 

「フン、また分裂したのか。鬱陶しい」

 

振り出しに戻った状況に辟易した猗窩座は、今度こそ半天狗の本体を叩きのめす為に術式を展開した。

 

「二度と増殖出来なくしてやる」

 

「あまり強い言葉を吐くな。哀しくなる」

 

言うと同時に哀絶が槍を捨て、おもむろに両腕を掲げた。すると他の半天狗たちが全てそこに吸収され、哀絶の肉体もギュルリと渦巻く。

──僧伯天は積怒を元に顕現した。今度は哀絶を元にして、更なる半天狗を召喚しようというのだ。

風がやにわにザワついた。

顕現したその半天狗は、僧伯天より小さい[[rb:童 > わらべ]]だった。赤子と言ってもいい。その体には風に揺蕩う羽衣を一糸だけ纏い、小さくも大きい肆の瞳がジッと猗窩座を見上げた。

その視線を受けて猗窩座は眉根を顰めた。

 

「八体目、か。貴様も懲りないな、まだ俺に敵うと思って……」

 

「……悲しいんじゃ」

 

幼子の半天狗が猗窩座を求めるようにして腕を伸ばした。その手の平は八ツ手状で、奇妙な形をしている。

瞬間、メコッと猗窩座の腹部が八ツ手型にめり込んだ。バキバキとあばらが折れ、口から逆流した血が流れ出る。

 

「な……ッ!?」

 

「ワシは……おヌシを殺さなくてはならない事が悲しいんじゃァぁあああああああ!!」

 

半天狗の甲高い叫びがビリビリと超音波の如く響く。猗窩座の耳から血がドロリと垂れるが、それに構わず術式を展開した。

 

【脚式・流閃群光】!!!

 

ドドド!!と連撃が放たれる。数多の敵を蹴散らしてきた技だが、猗窩座は相手の異変に気付いた。

 

(コイツッ、硬い……いや、動かない!!)

 

全力の蹴りにも関わらずその場から微動だにしない幼子の半天狗。まるで地面から直接生えた岩のようだ。

呆気に取られた猗窩座の動きが一瞬止まる。

 

──【血鬼術、阿鼻廃海(あびはいかい)

 

その一瞬の隙に半天狗の血鬼術が発動される。

辺り一面の地面がヘドロのようにぬかるむと、泥状の喜怒哀楽の半天狗たちが大量に出現、猗窩座の体にしがみついて自由を奪う。

 

「鬱陶しい!!」

 

泥半天狗に拳を振るってその肉体を穿つが、逆に拳が飲み込まれて埋まり、さらに身動きが取れなくなる。

ならばと足に力を込め飛び上がろうとするが、幼子の半天狗の手が猗窩座の小指をガシリと掴んだ。

 

「置いてかないでくりェぇえ!ワシを独りにするなァぁあああああああああああ!!」

 

零距離での超音波に脳を揺さぶられる猗窩座。離れようにも掴まれた指が離れない。

 

(ッコイツ、俺より力が……!)

 

幼子の体躯からは想像もつかないこの腕力。さらに泥半天狗たちが体にまとわりつき、身動きを完全に封じられてしまう。

 

(マズい!!この場では陽光が差す!)

 

山向こうでは既に朝日が昇っているのか、窪地になったこの場所に周りの山の影が落ちる。

この半天狗は分身体だ、このまま粘って猗窩座諸共太陽の光で消える魂胆だ。

この瞬間、本体の半天狗──『怯』は遥か彼方の遠方で一人、安全な物陰で殺した鬼殺隊員の血肉を貪り喰らっていた。

 

「ぜんぶ悲童地蔵(ひどうじぞう)の奴が勝手に動いてるんじゃあ!ワシは悪くない、悪くないんじゃあ……!」

 

本体が絶えず血肉を補給している事により八体目の半天狗──悲童地蔵の血鬼術が更に力を増す。

 

「ワシは目が見えないんじゃあ!一緒に来てくれェえええ!!」

 

「ッ゛ッこの……!舐めるなァア!!」

 

正に泥沼の混戦。陽光から逃れようともがく猗窩座に、足止めに徹する悲童地蔵。

数多の泥半天狗たちが次々と猗窩座の全身にまとわりつく中、ヒュウウ、と独特な呼吸音がその場を両断した。

 

──『水の呼吸、肆ノ型・打ち潮』

 

泥半天狗たちが一瞬の内に斬り裂かれる。

猗窩座の肉も斬られたが、泥半天狗たちが緩衝材になったようで切断は免れた。

猗窩座は堪らず叫んだ。

 

「お前は……ッ水柱!!」

 

半天狗と戦う前、殺したと思っていた水柱がそこに立っていた。

猗窩座の殴打により一時的に心臓が止まっていた彼は、数時間の時を経て奇跡的に復活を果たしたようだ。

しかし全身の傷が癒えたワケではない。寧ろ骨は余す所なく折れているし、内蔵は破れ血が止まらない。止まった心臓が再び動き出す負荷も尋常ではなく、持って数分でまた屍と成り果てるだろう。その証拠に瞳には光がなかった。

だが最後の命の灯火は、彼ら鬼と共に消える覚悟のようだ。

 

「……悪鬼……ッ滅殺!!」

──『水の呼吸、捨ノ型・生生流転』

 

死に体ながらも滑らかで淀みのない流麗な太刀筋。日頃の鍛錬の質の高さが窺える。

一撃ごとに威力が増大していく斬撃は泥半天狗たちを次々と屠っていき、まるで濁流が全てを攫っていくかのような勢いだ。

これが『柱』、これが鬼殺隊最高位の一人『水柱』の実力。その底力。

これに焦ったのは悲童地蔵だ。

 

「ヒィい!?いぢめないでくれェえ!!」

 

言いながらも八ツ手の掌を向け、指向性を持った突風を放とうとする悲童地蔵。猗窩座の脇腹を砕いた技だ。

猗窩座は泥半天狗から解放されたお陰で一目散に離脱しようとするが、そこで水柱のその姿(・・・)見た。

 

(コイツ、こんな『痣』があったか?)

 

──『水の呼吸、弐ノ型:改・横水車』

 

流転から繋いで放たれた横薙ぎの一撃。

その一撃で猗窩座の胴体を真っ二つに、悲童地蔵の腕ごと頭蓋が掻き斬られる。

「ひぃいい!?斬られたァああ!!」

 

「ッく!?」

 

猗窩座は斬られた下半身をムリヤリ動かし、自身の上半身を蹴って日陰へと吹き飛ばす。次の瞬間、今まで居た場所に柔らかい陽光が差し込んだ。

 

「ギィィイイヤァアァアアアアア!!!!」

 

悲鳴を上げる悲童地蔵。ボロボロと崩れる猗窩座の下半身。

そんな中で水柱は悲童地蔵の頸を斬って確実なトドメを刺すと、今度は日陰に逃げ込んだ猗窩座に向かって突進、一瞬で距離を詰め刀を振りかぶった。

 

(ッ不味い!!再生が間に合わな──……)

 

一昼夜血肉を喰らわずに水柱と、立て続けに上弦の肆との連戦が影響し下半身の再生が遅い。

鬼気迫る水柱を前に、鬼になって初めて『死』がよぎる猗窩座。

──だったが、その切先が振り下ろされることはなかった。

 

「……?、コイツ……死んだ、のか?」

 

日陰に倒れる猗窩座は、陽の光に照らされて動かなくなった水柱の姿を見上げた。

日陰と日向の境界線。

あと一歩、あと一秒で届かなかった鬼を滅する刃。見開かれた焦点の合っていないハズの目は、ゾッとするほど猗窩座の首の位置に添えられていた。

 

(コイツの最後の斬撃、闘気をまるで感じなかった……。俺の目指す『至高の領域』に達していたとでもいうのか……)

 

遅い再生で立ち上がった猗窩座は、太陽の光に護られる水柱の死体をジッと見据える。

猗窩座は弱者が嫌いだ。正々堂々やり合わない醜い弱者は、すべからく殺すべきだと強く認識している。今宵の半天狗など万死に値する愚行だ。

そしてそれは、日陰に逃げ果せた自らも……──

 

「クソッ!!俺はもっと、強くなる……」

 

悪態をつく猗窩座は、そのまま踵を返して闇の中へ去ることしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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