俺の家に巫女がいる   作:南蛮うどん

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第四話 いつかどこかのこんな結末

「食べていい人類なのかー?」

「いや、普通に食べちゃダメな訳ですが――」

「でもおなかすいたからどうでもいいのだー」

「いや、ちょちょちょ! ストップ! いたっ、マジ噛みっ! つか、なんで女の子なのに、こんなに怪力ですか!?」

 ばくばく、ぐちゃぐちゃぐちゃ、ごっくりんこ。

 あわれ、×××君は金髪ロリ妖怪に食べられてしまいましたとさ、物理的に。

 きゃははははっ! 主人公力が足りないから仕方ないね! 紫さんが元々『食糧』として用意した人間だから、容赦なくデッドエンド逝きだね! ざぁーんねん!

 徳を積んで、来世から出直して来な!

 さぁて、ここで××君の物語は終わってしまったけど、まだまだ物語は続くよ! 続きはCMの後で! なーんてね!

 

 

●●●

 

 

「うー、おなかすいたのだー」

 いつかどこかの薄暗い森の中。

 金髪ロリの、可愛い宵闇妖怪のルーミアちゃんは困っていました。

 そう、おなかがすいていたのです! つい数日前に人間を一人平らげたばかりでまだ栄養的には余裕ありますが、腹が減ったものは減ったのです。仕方ないのです、本能なのです。

「次はいつまでなのかー?」

 食べてもいい人間が配給されるのは、結構不定期です。それを待っていてばかりでは、腹は膨れないので、自分で食べられる者を探して生きなければなりません。

 ルーミアちゃんは最近、妥協を覚えたので、人間が食べれないときは大人しく獣を狩って空腹を癒していたのですが、今日はそんな気分ではありません。そう、人間! 今日は人間な気分なのですよ!

『それじゃ、人里の人間を食べればいいじゃないか』

 そんなルーミアちゃんに、どこからか悪魔の誘惑が。

「むー、ダメなのだー。人里の人間は食べたら怒られるのだー」

『えー? あんなにたくさんいるのにかい? そりゃ、ケチな奴もいたもんだね』

「そーなのだー。あんなにいるんだから、一人ぐらい……」

『そうそう、一人ぐらい大丈夫だよ。君の能力をうまく使えば、子供の一人ぐらいかどわかすなんて簡単さ!』

「どーやるのだー?」

『大丈夫! 俺も一緒に考えてあげるから! さぁ、一緒に頑張ろうぜ! よりより食生活のために!』

 悪魔は姿も見せずにルーミアちゃんを籠絡しました。

 彼女の欲望を肯定してあげて、彼女にうまく人を浚う方法を教えてあげて、美味しい人間の料理の仕方を教えてあげました。

 ルーミアは美味しい物をたくさん食べれて幸せです。

「うー、おなかいっぱい、むねいっぱいなのだー」

 でも、食べ過ぎて身動きが取れない時に、博麗の巫女がやってきて、ルーミアちゃんをあっさりと殺しちゃいましたとさ。

 仕方ないね! ルールを破っちゃたんだからさ! 悪い妖怪は人間に退治されるのがお話の決まりって奴なのです。ばいばい、来世では食い意地はほどほどに!

 

 

●●●

 

 

 ここは幻想郷の人里。

 妖怪たちとなぁなぁな関係を築いている人間たちの住処だよ!

「おい……大丈夫なのか?」

「馬鹿言うな、もうあの妖怪は退治されただろ?」

「大丈夫さ。賢者様がそう言ったんだ」

「でも、ここ最近、妖怪たちの動きが――」

 おやおや、いつもは活気で溢れている町に不穏な空気が流れています。

 いけませんね! ここはひとつ、盛り上げてあげなくては。

『だったら、先に妖怪を討てばいい』

 どこからともなく、人里の人たちに悪魔の声が囁かれます。

「なんだ?」

「今の声はなんだ?」

「おい、誰だよ?」

『俺だよ、俺! そんなことよりもさぁ。大丈夫? 博麗の巫女や、退治屋さんだって、数に限りがあるんだよ? いつ、自分の子供や妻が、大切な人が妖怪に襲われるかわからないじゃないかー』

 けたけたと、悪魔は心底可笑しいといったように笑います。

『ある程度間引いた方がいいじゃないのかなー? 下級妖怪ぐらいだったら、きちんと装備固めたら行けると思うしー。大体、おかしくね? なんでわざわざ危険因子を見逃すの?』

「だ、だって、賢者様が」

『はぁーん? んじゃお前、賢者様が死ねって言ったら死ぬのかよ? 違うだろ? 生きたいだろ?』

「うぅ……」

『大丈夫! 大丈夫! ちょっと理性のない化物を狩るだけ! 獣狩りの延長線上だから。自分たちの生活を守るためなんだし、きっと賢者様も許してくれるって』

「そう、だよな?」

「……少しぐらい」

「せめて子供が襲われないぐらいには……」

 皆、心の底では不満が溜まっていたのでしょう。

 仲には大切な人を妖怪に食べられてしまったかわいそうな人もいたかもしれませんね? その所為か、『妖怪廃絶!』の動きは驚くほどあっさりと蔓延していきました。

 まるで、悪い悪い病のように。

 さぁ、頑張れ諸君!

 自らの希望と理想生活を手に入れるのだー! なーんてね、きゃははははっ。

 

 

●●●

 

 

 人里の人間に攻撃された妖怪たちは当然、正統な怒りを持って報復を。

 報復はやがて憎しみの連鎖を生み、戦火が幻想郷を焼き尽くすでしょう。

 殺せ殺せぇ! 人間を殺せ! 妖怪を殺せ! 逃がすな! 恨みを晴らすんだ! 俺の母親を! 私の輩を! 同族を! 殺された恨みを今こそ晴らせ!

『大丈夫。君たちの行動は正しい。それは歴史が証明してくれているさ! 安心して殺し殺されするといい!』

 悪魔は慈悲深く彼らを見つめます。

 ああ、なんて素晴らしい人間賛歌。

 悲鳴と怒号。

 満ちる痛みと嚇怒。

 そこから生まれる勇気と希望の物語!

 さぁ、窮屈な幻想なんかに留まってないで! この素晴らしい物語を『外』に――

 

「そこまでよ」

 

 おや?

「可視と不可視。生と死。主観と客観の境界を弄って、ようやく見つけたわ……×××。いえ、今ではもう立派な祟り神かしら?」

 あららら、これはこれは妖怪の大賢者様。

 境界を操りし妖しい隙間妖怪様。

 八雲紫様。

 二度目まして? あるいは初めまして?

「どちらでも構わないわ。貴方と会話するのは、これで最後になるでしょうから」

 ひっどーい! そっちから俺を呼んでおいて、用事が済んだらもうポイですかぁ? 幻想郷はなんでも受け入れてくれるんじゃないんですかぁ?

「死後発動する能力は盲点だったわ。そこから派生して祟り神にまで至ることも……でも」

 おおう?

 ありー? おっかしなぁ、体というか、思考というか、魂が…………ああ、なぁるほど。

『レミリア嬢の能力かなー? 俺の消滅を運命として固定されちゃったかー。あははは、油断しちゃった。まさか、こんな昼間まで起きてるなんてねぇ?』

「これで詰み、よ。哀れな祟り神。存在と非存在の境界を漂い、消え去るがいい」

 うっはぁ、たまんないねぇ。やっぱりメアリー・スー殿のようにはいかないか。いやぁ、やってみたいねぇ、最強蹂躙とか。まっ、愛がないとかアンチとか言われて終わりでしょうけどさぁ。

『けらけらけらけらけらけらけら』

 さてさて、ここで俺の物語は終了!

 哀れな祟り神は信仰を失い、消えていきます。ああ、けれど、けれどもしも。俺のように調子に乗らないような存在が似たような境遇に遭ったら?

 もしも、俺の『××を××××能力』をもっと賢く狡猾な奴が発動させていたら?

 あるいは――――俺よりももっと、この世界に××していたら?

『そうしたら、蹂躙というよりは破滅の物語になりそうですけどねぇええええええ』

 では、失敗した俺はここまで。

 つまらない夢はもうおしまい。

 ばいばい、また来世。

 

 

●●●

 

「――ちょ、それ俺のカルビぃいいいいいいいいっ!!」

「うるさい」

「へぼすっ!?」

 夢から覚めたら、二秒で鉄拳。

 これでも俺、病み上がりなんですけどねぇ?

「あー、最近博麗さんが鳩尾を的確に殴ってくるんだけど……地味に殺人狙ってる?」

「その気になれば、アンタの頭をトマトみたいにつぶせるけど?」

「すみません、ナマ言いました」

 看病された翌朝。

 まぁ、色々ありましたが何とか起床しました。若干、腹部に鈍痛が残っている以外は問題ありません。

「で、どんな夢見てたのよ?」

「えーっと、金髪幼女と一緒に焼肉屋行って『扱いがひどい』だの『どうせやられ役』とか『リボン取ればワンチャン』とか愚痴ってた夢」

「カオスね」

「でも焼き肉は美味しかった気がしますねー」

「そう」

 てなわけで、今日の夕飯は外食だ。

 せめて、生きている内は美味い飯を食っておこう。

 少しでも、後悔を無くしておけるように。

 

 

 

 

 


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