ボーイ8メンタルアウトアウト   作:真夜中のミネルヴァ

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■ キャラクター設定 

食蜂操祈 二十二歳 常磐台中学教諭
 元メンタルアウト(能力ほぼ消失、ただし美巨乳はレベル5)

密森黎太郎(レイ)十四歳 常磐台中学三年男子 レベルゼロ

栃織紅音 十五歳 常磐台中学三年女子 クラス委員 レベル1

そのほかの生徒たち


■ 物語の背景

京都奈良の修学旅行中のラブホテルでの淫らな火遊び、という場面設定です。
また原作の設定とは異なる部分があることをご了承下さい。



シャワーブースは危険がいっぱい 

          Ⅰ

 

 

「操祈先生、時間がもったいないからボクも一緒に入りますねっ」

「ええっ!? な、なにっ、ちょっと来ないでっ!」

 シャワーを浴びようと蛇口に手を伸ばしかけたところへ、いきなりドアを押し開けてレイ――黎太郎――が飛び込んできたのだった。それも素っ裸で。

「出ていって! いますぐっ!」

 操祈は、いきなりの無礼に声を尖らせたが、

「もうおそいです、ボクも脱いじゃったので」と、相手は怯むどころか裸の操祈に抱きついてくる始末。狭いシャワーブースにはどこにも逃げ場などなく、結局は肌と肌とを接して揉みあうことになるだけだった。

「イヤぁっ! イヤな子ねっ、ここ鍵がかからないのっ?」

 操祈はロックのついていないノブを呆れたように見やった。

「きっとそんなの必要ないんですよ、その鏡もマジックミラーになってるみたいですから」

「マジックミラー?」

「先生が服を脱ぐところを見ていたら、ボク、もうガマンできなくなって」

 少年は悪びれる様子など微塵も窺わせずに言い放った。

「ほらっ」

 と、壁のスイッチを押して浴室の室内灯を消すと、それまで全身鏡だとばかり思っていた正面がとたんに透けて、ガラス越しに薄暗いベッドランプの灯った部屋が見えるようになってしまうのだった。

 これでは煌々とした浴室の一部始終が反対側からは丸見えだったのに違いない。

「イヤだ何なのよぉ、これぇっ」

 ショックのため思わず黄色い声になってしまう。常の怜悧そのものともいえる操祈からすると、彼女らしからぬとりみだし様である。

「いろいろと変わってますよね、この部屋って」

「だまって盗み見するなんてひどいわねっ、そういう時は目をつぶるのが節度のある男の子のやるべきことでしょっ」

「そんなの無理ですよ。だって先生があんまりキレイだから」

 操祈は、やれやれ、とため息を吐いた。こういう時――デートの際でのささやかな行き違い――はいつも年上である自分の方が譲るしかなかったからだ。

 この密会場所にしてもそう。操祈はシティホテルを利用するつもりでいたが、レイには別の考えがあるらしく、結局、いま居るこの場所になってしまった。

 浴室にマジックミラーのようなおかしな仕掛けのある、この民泊ホテルの一室に――。

 

 

 

 

 

          Ⅱ

 

 

 引率をしていた生徒たちの一団から離れ、ようやく一人になった操祈があらかじめ伝えられていたアドレスに足を向けると、そこはメインストリートの賑わいから離れた、ひと気のない寂れた寺院の裏手にある古ぼけた小さなマンションだった。

 一見したところ建物の外観は廃墟のようにも見えなくもない。外周りの塗装はところどころ剥げかけているし、正面玄関の上に掲げたマンション名のプレートも、文字の一つが欠け落ちていてそのままにされている。

“ここが、そうなの……?”

 荒れた佇まいにはちょっと心細さを感じ、操祈は渡されていたメモにあった住所とマンション名を確認した。

“やっぱりここよね……ふーん……211号室か……”

 見上げると四階建の壁面に並ぶ窓という窓がみな嵌め殺し状態、どの部屋のカーテンもぴったり閉められていて、なんとなく近寄りがたいような陰気な雰囲気が醸し出されている。

“なんだかなー、お姫さまを迎えるお城には見えないわよね、悪い魔法使いが出てこないといいんだけど……”

 それでも一歩、建物内に足を踏み入れると無人のロビーや廊下はそれなりに手入れがされているらしく、ゴミや廃棄物が放置されているというのではなかった。ホールの隅には見慣れない種類の自販機がいくつか並んでいるのが目に入る。

 待ち合わせの部屋番号が二階ということでエレベーターを探した。が、低層階の集合住宅ではときに備え付けられていないものもあって、これもその類いだったのだ。

 不満げに唇を窄めた操祈は、仕方なく階段を上がることにしたのだが、秋とはいえ京都はまだまだ蒸し暑く、少し体を動かしただけで体がじっとりと汗ばんでくる。

 不快――。

 操祈は貼りついた前髪を鬱陶しげに払いのけ、広い額に滲む汗を手の甲で拭った。

 サマースーツを脱ぎたかったが、白いシャツブラウスに汗沁みが浮いているかもしれないと思うと、生徒たちの手前、そうもいかないというのが教師としての辛いところだ。

「……いくら古都だからってこのビル、いったいいつの時代のものなのよっ、エレベーターぐらい用意しておきなさいよね……きっとここの四階は人跡未踏の未開地に違いないわ……探せば未発見の新種のイキモノでも見つかるんじゃないかしらっ……」

 息を乱しつつ毒を吐きながらようやく二階廊下にたどり着くと、一階と同様のレイアウトで内廊下の左右に扉が並んでいた。番号の若い順に五部屋ずつ、どうやらいちばん奥の突き当たりがレイとの約束の部屋のようだった。

 廊下はしーんとしていて、外からの鳥の鳴き声が聞こえるほど静か――。

 だが利用者がいないわけではないらしい。いくつかの扉の上の表示灯には在室中のサインが出ていて前を通る時、扉越しにかすかに人の声が聞こえたからだ。

 やはり住居、という利用のされ方はしていないようだった。

“おかしなホテル……まぁいいけど……”

 めざすドアの前まで来ると、指示されていたとおりにノックはせずに、メモにあった八桁の暗証番号を電子錠パネルに入力する。

 カチリ――。

 施錠が解ける音がして、操祈がドアノブに手をかけるよりも先に、部屋の奥からタッタッタと床を走り寄る気配がした。扉が開いて、ひんやりとした中の空気とともに少年が顔を覗かせる。先入りしていたレイは、操祈の顔を見るなりうれしそうに破顔するのだった。操祈がドキッとするくらい無防備な笑顔で。

「よかった、ボク、もう来てくれないんじゃないかと思って……」と、廊下の先を窺いながら囁く。

「どうぞ中へ入って下さい。嬉しいな、本当に来てくれるなんて、嬉しいなっ」

 はたして自分がちゃんと現れるかどうか、今の今まで案じてくれていたのをと思うと、炎天下の長散歩にささくれかけていた操祈の心も軽くなってくる。

「遅くなってごめんなさい、ちょっと道が入り組んでいて途中で迷いそうになってしまったの」

「それはボクの責任ですね。きちんとした地図を書かなかったということから」

「うん、ゲストの案内はホストの責任よね、後で反省文を提出なさい」

「ハイ、先生、そのようにいたしますっ」

 素直な反応に操祈が白い歯並みを覗かせて笑むと、

「良かった、やっと操祈先生が笑ってくれた」

「あら、わたし、そんなに不機嫌な顔していたかしら? そりゃこの暑さの中、ちょっと長いお散歩だったかもしれないし、階段を上ったり降りたりするのは好きじゃないわよ、でもそれぐらいでむくれたりするほどわたしは心が狭くないつもりよ」

「知ってますよ、先生がただの超絶美人ってだけじゃなくて、心やさしいステキな女性だってことぐらい」

 ド直球で返されては逆に操祈の方が言葉に詰まってしまった。

「ああ、つまんない。そんなことあたりまえすぎて、つまんない返事ナンだぞ」

 そう言ってからはにかんだ笑みを返す。こうした軽口を交わしているときの操祈は年齢以上に若く愛らしくなって、それを間近にしていた少年の頬にも朱がさしてくるのだった。

 

 

 

 

 

 




初出稿、ちゃんと投稿ができていますかどうか・・・

タイトルのアウトアウトというのは誤植ではありません
ドラマをシンボライズしたちょっとした危ない意味を持たせてあります
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