ボーイ8メンタルアウトアウト   作:真夜中のミネルヴァ

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間奏曲 アフターシックスエイトウイズボーイ その2

 

 

「腕を上げてください……」

 操祈が言われるままに片腕を持ち上げると、ひときわ白い二の腕の内側と腋の下に湯をあてながら、手でさすって唾液で(けが)したところを洗い流していく。

 次いで、乳房、腹、臍……。

 最後に少年の手は下腹部へと伸びた。

「脚をもう少しだけ開いてください……」

 操祈は鏡の中の少年に哀訴の眼差しをちらりと送ってから、命じられた通りに閉じていた大腿の間を開くのだった。

 少年は、荒淫の名残りにむごたらしく毛羽立っていた小麦色のヘアにあたたかい湯をかけて水気をたっぷりと含ませると、掌で貯めた湯を操祈の股間にあてがって、そこをポンポンと軽く叩くようにしてやさしく洗い落としていた。少年の手がもう悪いことをしないとわかると、それまで身をかたくしていた操祈だったが何も言わずに睫を伏せるのだった。

「愛してます……ボク……先生のことを誰よりも……」

「……うん……」

「先生はボクのこと、好きですか?」

「……うん……」

 こくん、と頷く。

「さっきから、うん、ってしか言ってくれないんですね」

「……うん……んっ」

 形のよい小鼻を鳴らして、操祈はまた体を緊張させた。

 少年の手が尻たぶの肉の合間をやさしく(ひろ)げていて、隠れていたとてもあいせつな場所に湯をかけられたからだった。すぐにそこにも指先を送ってきて丁寧な(さす)り洗いになっている。

「あっ……レイくんっ……」

 鏡に映る操祈の顔は当惑と愁いに瞳を潤ませて、長い睫を何度も(しばた)かせている。女の急所をとらえられて、か弱い表情を隠しきれずにいるのだった。

「大丈夫です、もう何もしませんから……ただボクが汚したところを元どおりの綺麗な状態に戻すだけなので……」

「………」

 少年は約束したとおりに何もせず、デリケートな部分の(そそ)ぎが済むと、後は操祈の全身に湯をかけて丁寧に仕上げを行っていった。

 長い金髪を濡らさないようにしながらの細やかな気遣いのあるシャワーが済むと、今度は自分の体にも湯をかけはじめる。

 湯勢を強めて勢いよくザーっと流している。

 猛々しく屹立させたままの股間にも、いかにも雑なやり方でしごき洗いをしていて、操祈はちょっと不思議なものを見ている気持ちになってくるのだった。

「……あなたは……いいの……?」

「え――?」

 少年は愛しあった後でも、いつも情熱を滾らせたままでいるからだった。操祈の体には惜しみない愛情を注いでくれても、自身の欲望の充足には関心がないように見えるのが気になっていた。

「コレですか? コレはいいんです。先生のことが大好きだって言ってるだけなんですから、それ以上の意味なんてありませんよ」

 鏡の中で少年は股間のものを、いささかぞんざいに指で弾いてみせた。まるでできそこないの弟分を小突くように。

「でも……」

 操祈は、ゴクリ、と喉を鳴らした。

 レイと睦みあうようになってから、いつしか少年に対しても自分にしてくれたことと同じようなことをしてお返しをしたい、そう願うようになっていたのだった。

 ところが意外なことに、レイは今も彼女がそれに触れることすら許してはくれないのだ。

 いちばん最初は操祈先生の膣内(なか)挿入(はい)りたいから――。

 少年はいつもそう言って拒むのだった。それがいつのことになるかも明かさずに。

「わたしばかりを散々いじめておいて、自分だけは弱みをにぎらせないなんて、ずるいんだゾ」

 (しとね)で、操祈はレイの胸の中で精一杯の強がりを言って甘えたが、その一方で自分を愛してくれる時には手抜きも妥協もしないのに、自らはストイックでありつづける少年に心を動かされてもいたのだった。

 とてもレイらしい、そんなふうに感じて。

 それは自分に対する形を変えたロイヤリティーのようにも思える。

「先生は心配しないで下さい……それに実はコイツ、今日はもう四回も空打ちをしてますから」

 少年は頬笑みを浮かべながら言った。

「下側の椅子ではボクは両手を自由に使うことだってできたんです。だから先生の体がとっても貴重な蜜をボクに分けてくれている間に四回も……ちがった! 最初に先生がボクの前で椅子に座ってくれた時、やさしいステキな香りを嗅いだだけで暴発しちゃったことをいれたら五回だっ」

 少年は満足げにそう言い放って、操祈は恥ずかしさに頬を朱くした。

「もうわたし……あなたには何も隠し事が出来ないのね……」

 そう感じるほど、女が他人には見せられないと思っていたもの、恋人には見せたくないと思う姿をどこまでも晒してしまっていた。

 レイについて言えば操祈のプライバシーは失われたも同じだった。

 自分ですら知らない事を、彼だけは知悉(ちしつ)しているのだ。

「ちがいますよ、先生……」

「………」

「ぜんぜん違いますよ、先生はいつだってボクにとっては甘い謎の塊なんです……絶対に解き明かされることのない永遠の秘密……今だってそうです、ボク、もう先生の秘密が恋しくて……でも時間が許してくれない……本当はいつまでもずっと、こうしていたいのに……」

 たとえ嘘だったとしても、()()を無くしてしまったように感じて、心細い気持ちでいっぱいの女にとってはあたたかな救いとなる言葉だった。

 操祈の胸にまた熱いものがこみあげてくる。

「……愛しているわ……あなたのこと、心が壊れてしまいそうなくらい……好きよ……大好きなんだゾ……」

 

 

 

 

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