嵐山
2010年12月。いよいよ京都での聖杯戦争が本格的に勃発する。それぞれの参加者は強力なサーヴァントを引き連れ、願望器である聖杯を求めて戦いあう。
それがある陰謀の手段とは知らずに。
セイバー ??? マスター ???
アーチャー ギルガメッシュ マスター 美麗(メイ・リー)
ランサー ??? マスター ???
ライダー ??? マスター ???
キャスター 玉藻の前 マスター 神無木せつ
アサシン 真名不明 マスター 茶髪の青い髪の女性
バーサーカー ??? マスター ???
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場所は嵐山。そこは木々が生い茂る森林地帯。
今では観光地として有名だが、ここには地元の者たちはあまり近づきたがらない。
かつて奈良の平城京から平安京に都を遷す間に7年の間、都は長岡京にあった。
この長岡京には呪われた歴史がある。この地を治めていた桓武天皇の周りには様々な厄災が起き、京に都を遷したときに多くの、そして強力な結界を張り巡らせた。
だがその結界が外れていた場所があったのだ。そこが嵐山だ。強力な結界故に、都に悪霊の類は入れず、そこにたまり続けて様々な怪奇現象を起こしていたという。
だから人はここに近づかない。
そして時間は午前二時、最も魔が盛んになる丑三つ時。
本来静まり返るはずの深夜の呪われた森林地帯。
だが人が近づかないこそ、呪われているからこそ、恰好の場所となりえる場合がある。
ガキィィィィィィィン!!!!
そこでは今まさに壮絶な戦いが繰り広げられていた。何かがぶつかり合う音が響き渡っている。
交わるのは剣と杖。そこには二つの影があった。
交わる刃から出る火花と雲から漏れ出した月明りで、その二人の姿が明らかになる。
「森で戦うことになるとは、動物相手にここでは人間は不利だ。あんたは卑怯だな。だからここに誘い込んだな、ライダー」
二つの影の内一人の正体は、金の鎧兜を身に着けた男であった。全体に反りのある刀を打ち付けていた。
「ふん、多対一の者がそれを言うのか。セイバー」
そしてもう一方は犬の姿をしていた。全身が漆黒に溶けるような真っ黒な毛に、相手を威圧する赤い瞳をしている。
そしてその犬は口に翼が付いた杖を咥え、杖からは雷光を走らせている。
お互いの言動から分かるように、彼らはサーヴァントである。金の鎧兜をつけた方がセイバー、黒い犬の方がライダーである。
二人は森林地帯を移動しながら、お互いの間合いや隙、技の分析をして、そして打ち合っている。
だがそそれぞれが持っている自身の武器の威力はほぼ互角らしく、両者の技量もほぼ互角のようだ。
だが戦いの時間が経つにつれ、徐々にライダーが押している。
その原因はセイバーの足元にあった。
「やはり、お前とは直接打ち合いたくないものだな。足に大量の木々がめり込んでる。なんという運のなさだよ。お前といるとな」
セイバーが押されている原因、それは彼自身が語った通り、足に突き刺さる無数の木の枝だった。血が溢れ、足の感覚が悪くなり、動きが鈍くなってきている。
「周りの者すべての幸運値のランクを下げる。言わば呪いのようなものだ。力が拮抗するサーヴァント戦では凶悪な能力だ」
しかし、セイバーは追い詰められているのに何故か顔は笑っていた。
当然、ライダーもその表情から何か企んでいる事ぐらいすぐにわかる。そして一瞬の時、殺気を感じた。
「上か!!」
「ち、気づいたか」
ライダーが声を出すと同時に、セイバーはすぐさま後方へ跳びあがり、離れる。するとライダーの頭上に向かって新たな二つの影が突如として現れて攻撃を仕掛けてきたのだ。
「スキルが凶悪なのはお互い様だな!! セイバー!!」
ライダーは上からの攻撃に気が付くと、素早く身をくねらして二つの影からの攻撃を寸前によけた。とたん攻撃は地面にぶつかり、衝撃で土が膨れ上がり、周りの木々や岩も破壊された。
ライダーはそれを逆手に空中に飛び散った岩を足場に利用する。うまく岩を蹴りこみ、現れた影に対して岩を飛ばしたと同時にその反作用を用いて自身は後ろに跳び、セイバーと同じくその場所から大きく距離を取った。
「その分身。本当に厄介だな」
遠くへ着地したライダーは一呼吸置くと、攻撃を防いだ影たちを見つめた。そしてライダーからはため息がこぼれる。
なんとそこに立っていたのは全く同じ外見の金の鎧兜を着けたセイバーが二人いたのだ。
「多対一ではどうやっても防戦一方にならざる負えないのがつらい。セイバーらしくない戦い方だ。アサシンにでもクラスを変えればどうだ?」
ライダーはそう言いながらその二人のセイバーを通り越して、さらに奥地の木の上に立つ今まで戦っていたセイバーに視線を合わせていた。
その視線の先、セイバーの横には学生服を身に着けた女性が立っていた。格好は白と赤を基調としたカッターと紺のスカートを着けた一般的な学生服だ。ただ、辺りの暗さのせいで顔の部分はよく見えない。
だがサーヴァントと共に行動する者、すなわちサーヴァントとの契約者という事はマスターであることははっきりしていた。それを示す確固たる証拠に彼女の右手には令呪が光っていた。
「馬鹿言うな、俺は暗殺者向きな性格はしてねぇよ。で、下らん話し合いよりさ、バトルを続けようぜ」
セイバーは確実に疲労しきっているが、未だに好戦的だ。闘争心が全く消えていない。
だがそんなセイバーを制止するようにマスターは口をはさんできた。
「セイバー、今宵はここまでに致しましょう。もう限界でしょう? 魔力も枯渇しますし、戦えば戦うほど戦術が相手にも覚えられます」
「それは向こうさんも同じだろうさ」
「あの規格外のキャスターとの戦闘の後、マスターもろとも飲み込んだ出た正体不明の影。そしてその場に居合わせていたライダーとの連戦。無理はしない方がいいです。それに……」
「ああ、わかってる。こちらの闘いをこそこそ見物している他の組のサーヴァントもいるな。いい機会じゃねぇか。見せつけてやろうぜ、俺たちの強さ!」
セイバーのマスターは撤退を考えているようだ。だが闘いを楽しみたい彼は彼女の言葉を華麗にスルーしているようだ。流石にマスターである彼女も感情的になり、セイバーに叱咤する。
「セイバー!!」
「わかった。わかりましたよ。撤退すりゃいいんだろ」
だが叱咤を受けるとセイバーは意外と素直にそれに応じた。そして臨戦態勢を止め、マスターを抱きかかえる。
「じゃあな、ライダー。なかなか楽しかったぜ」
そう言ってセイバーは二人の同じ外見のセイバーに軽く指を振るう仕草をする。するとその二人のセイバーは空間に溶けるように消滅した。それを確認するとセイバーはマスターを抱えて森の奥へ去って行った。
「終わったか……」
ライダーは後を追わなかった。むしろこうなってくれてありがたいと彼は思っていた。実際、彼も魔力もかなり消耗していた。
そうしてライダーは戦い疲れた体をよろつかせながら森の後ろを見た。
ライダーがその場でしばらく待っていると草木をかき分ける音がする。そして奥からは中性的な外見の男の子が現れた。
青いセーターを羽織っている少年だ。だがどうも顔色が悪く、病弱な印象である。
「ありがとう、ライダー。その、大丈夫?」
「死神相手に気遣うな。お前の病を悪化させている私に」
少年の言葉にライダーは冷たく言葉を返す。心配してくれるのはありがたい。だがライダーにとってはこの少年の方が心配に見えるのだ。
「君のせいじゃないよ。僕が病弱なのは生まれつき。一族の体質だよ。どうせもうじき死ぬしね。う、けほけほ」
「だからと言ってわざわざ激しく命を削りこの戦いに身を投じる意味が分からない。まして私を呼び出すなど理解に苦しむ。そこまでして聖杯が欲しいのか?」
ライダーは自身の体を顧みないマスターに呆れ果てている。自らもう死ぬと言っている少年がこんな殺し合いに参加して願いを叶えたいとはどういう事なのか。
「だからこそだよ。この命一つを賭けることで膨大な魔術回路のために短命だった一族を救える。次世代はそれらを持って長寿のものにできるんだ」
「………。どんな生き物も元来、自分の命を惜しむものだが。やはり魔術師は生き物ではないな。頭のねじが外れてる」
「ふふ、僕もそう思うんだけどね……。こればかりは……ね」
「…………」
この少年、自身の言葉を理解しながらもどこか理解できない所もあるらしい。だがそれを放棄することもできないらしい。この少年は精神的にも危うそうだ。ライダーはこれ以上その話をするのを止めた。
ライダーは何も言わず少年に顔で合図を送り、拠点に帰ることを促す。そして自分は足を引きずりながら歩き始めようとした時、今度は少年が質問をしてきた。
「じゃあなんでライダーは僕の召喚に応じてくれたの?」
そう言われて、ライダーは思わず振り返る。だが少年の瞳を見てから再び前を見て歩き始めた。
「セイバーも言っていたが、敵が近くにいる。拠点に早く戻るぞ」
「ねぇ、僕の質問に答えてよ……」
「さぁな……」
ライダーはその真意を答えず、ただただ地面をかき分ける草の音だけが響いていた。
ストーリーや世界観の評価
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