Fate/天照   作:yuto/ギルガメッシュ

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彼は「我園」というルパン

~聖杯戦争開始半年前(2010年)~

 

「出たぞ。怪盗ルパンだ!」

 

 警報音とともに複数の警察が鹿児島のある博物館の廊下を走っていた。

 

「あのコソ泥、いつも何か盗む度に派手な予告状を出しやがって。いつもしょうもないものばかり盗み出す愉快犯め」

 

「だがこんなコソ泥すら捕まえられないと市民からは非難の嵐だ。事実、現れてからすでに一年は経過してるが捕まえられてない。これでは警察の沽券に関わる。だから警官が派遣されている。とにかく奴をすぐにでも捕らえる」

 

「わかりました。今、鉄砲の模型の近くで警報機の反応がありました。今回の狙いはおそらくそれです。しかし奴はルパンを名乗るだけあって本当に変装の名人です。油断は禁物はです」

 

 警官はリーダーを先頭にしてこの博物館に保管されている『鉄砲』の模型が置かれたコーナーに向かっていた。

 

 話を聞く限り、どうやらこの博物館にルパンと名乗る変装の名人の泥棒が侵入したらしい。そしてここにある展示品を盗み出したようだ。今、鳴り響いている警報はその展示物を取られて機械が反応した時の音なのだろう。

 

「ここを曲がったら展示場所だぞ。皆、構えろ」

 

 しばらくして警官達はその反応があった場所にたどり着いた。だが残っていたのはガラス張りショーケースのみ。展示してあった『鉄砲』の模型品は丸々無くなっていた。

 

 

「くそ、しかもこんな大胆にガラスに大穴開けやがって」

 

「張り紙して『盗んじゃったよ。てへ』なんて書いてある。ふざけやがって。どうします?」

 

「まだこの館内にいるはずだ。我々以外は出入り口に二人ずつ設置して、建物の外にも待機命令を出している。そうそうは逃げられん。まずは二手に分かれて探すぞ。出入り口と外の連中にもすぐに連絡をし、むやみに探し回らないように待機を続行させろ」

 

「「分かりました」」

 

 警官達はリーダーの案で二手に分かれることを考えた。盗まれたものがない以上ここに留まる理由もない。一人の警官は指示通り、他のメンバーに連絡を回した。

 

 そして展示スペースの通路は直線上の一方通行だったので来た道と先の道の二手に分かれて『ルパン』の追跡を始めることにした。

 

「俺たちは先に進む。お前たちは来た道だ。ここはシンプルな間取りだから隠れにくいとは思うが、くれぐれも念入りにな」

 

 そして合図とともに、警官たちは二手に分けれて追跡を再開した。

 

 

 

 

 

 二手に別れたあと、元の道を戻った警官達の組には別段問題はなかった。

 

 戻った道のりにはには潜伏するスペースもないし、逃げれるような窓もあるが頑丈にしまっており、無理にこじ開けたような形跡もない。出入り口付近からも誰かが逃げたという連絡はなかったのだ。

 

 問題は道を先に進んだリーダーを含めた組で起きた。

 

「連絡はあったか?」

 

「いえ、通路を戻った方は特に異常なしのようです。どの出入口からも連絡は無し」

 

「どういう事なんでしょうね。ここはそこまで広い場所でもないのに一向に見つかった連絡もなし。防犯カメラからの何故か連絡もありませんし」

 

「わからんな。この館内を探索しているのは我々A班だけだから探すのは時間がかかるのはわかる。しかし待機しているB班の出入り口からも連絡がないのはおかしい。となるとやはり建物内にいるとしか考えられん。まだ探し切れてないのかもな。注意をしろよ」

 

 状況を把握し合いながらも必死に探索をして走る警官達。辺りを見渡す限り、おかしいことは特に起きていない。だがさらに奥へ向かっている最中、警備員の一人が前方に何か発見したのであった。

 

「前方に人影があります!」

 

「なに!?」

 

 一人の声をきっかけに全員がその場に止まる。そして一斉に持っていたライトで照らした。するとライトの先には一人の警官が光の中に映し出された。

 

「なんだ、同じ警官隊の者か。確かお前は……」

 

 そこには怪盗ルパンを追っている警官たちと同じ制服を着ている男がいた。どうやらリーダーの警備員はこの者の事を知っているらしい。

 

「B班所属の山崎だったな」

 

「隊長、よく別の班の顔を覚えていましたね」

 

「当たり前だ。相手は怪盗ルパンだぞ。そういう所に隙が生まれるんだ。な、そうだな」

 

「は、はい。おしゃっる通りB班の山崎であります。警報が鳴ったもので急いで信長の鉄砲の所に行ったのですが、盗まれた後でして。今まさに探索していた最中です」

 

「うむ、そうか。我々もさっき盗まれたのを確認したところだ。出入り口からの連絡がないのでな、やつの探索を続けていたわけだ」

 

「そうですか。では隊長達がそちらに行かれるのでしたら私は引き返して探索を続けますね」

 

 そういうとB班の山崎という男はリーダーの警備員とすぐさま別れようとした。

 

 しかし、リーダーの男はこの山崎という男の違和感をすぐに看破していた。引き返そうとする山崎に声をかける。

 

「待て。きさま、なぜB班なのに待機していないのだ」

 

「た、待機!?」

 

 そう問われた瞬間山崎は深く動揺していた。

 

「B班にはあらかじめ出入口にて待機命令がしてあった。ここを探索しているのはA班以外ありえない。なのになぜここにいるのだ」

 

「そ、それはその……」

 

「それとだ、普通盗まれた物を発見した時はすぐに連絡するようのは当然だ。お前は聞いたところ我々より先に見つけたらしいが、なぜ連絡をしなかったのだ?」

 

「う、うう」

 

 リーダーの質問に山崎はどんどん顔を青ざめていっている。しかしリーダーが言っていることは尤もな事なのでなにもおかしくはない。

 

「もう、大体お前の正体は検討はついている。極めつけにもう一つ確認だ」

 

「な、なんでしょう?」

 

 リーダーが言い追い詰める中、ほかの警官たちもそれを察して徐々に山崎を取り囲んでいた。

 

「なぜ、貴様探索中に暗闇の中でライトの一つも照らさないのだ?」

 

 完全に山崎という男の行動はおかし過ぎた。そしてもはや言い逃れができないと山崎は理解したのだろう。がっくりと肩を落とした。しかし……

 

「ヌフフフフ。いやいや隊長さん。ちゃんとライトは持っていますよ。ただ小さいのでポケットに入れていただけ」

 

 山崎はそう言うと内ポケットから掌に収まる小さいペンライトを取り出していた。そしてそれを前にいた警備員達に光を出して当てたのだった。

 

 紫色の不気味な光だった。

 

 

「さてと、隊長さん。そしてみなさん。注目してください」

 

 そして山崎はリーダー達にそう促した。するとなぜかリーダー達はそのペンライトの先から目が離せなくなっていた。そして光を見るごとに徐々に目が虚ろになっていった。

 

 山崎は続ける。

 

 

「僕、山崎はB班です。しかし例外的にここにいるのを許されている。盗まれた物を見つけても連絡はしなくていい。そうですね?」

 

「「「はい……」」」

 

「では今一度、私におかしいところはありますか?」

 

「な、ないな。山崎、君におかしいことなんてなにもない。皆もそうだな」

 

 

「「はい」」

 

 なんと山崎に軽く言われただけで警官たちは自分の意見をあっさり変えてしまったのだ。

 

「では、疑問がないようなので探索を続けてください。僕は戻りますから」

 

「わかった。では行くぞお前たち」

 

「「はい」」

 

 リーダーはそういって仲間に合図をする。そして山崎に言われたままに先に進んで行ってしまった。そうしてその場には山崎が残される事になった。

 

「あらら、現場の情報が足りなさすぎたな。暗示はうまくいったおかげで助かったが、変装は完璧だったから監視は騙せたんだがなぁ」

 

 しかし一人になった途端、山崎の態度と急変した。

 

 そしてなんと自分の顔をマスクのように剥ぎ取ったのだ。すると中から別の人物の顔が出てきたのだった。

 

 顔はその声と口調に似合う青年であった。だいたい20代後半だろうか。人をからかうのが好きそうな憎たらしさを感じさせる顔だ。髪は軽く逆だっており、その髪色は日本人を感じさせる黒色だ。

 

 もうお分かりかと思うがこの男こそ泥棒。ここに予告状を出して侵入した『怪盗ルパン』なのだ。

 

「だが泥棒としてはまだまだだなぁ。暗示頼りとは少々心もとない。しかも今のところこれしか実用的に扱えてない、周りは魔術師とは認めてくらないのは当然と言えば当然か」

 

 ただ、この男は今発した口ぶりからしてただのコソ泥ではなさそうだ。

 

 この男は自分のことを『魔術師』と言った。そう彼はれっきとした魔術師なのだ。

 

 そして彼が言った『暗示』いう言葉。

 

 『暗示』とは言葉や合図によって、相手の行動、感情などを操作したり、誘導したりすることである。ただこれくらいは魔術師でなくても誰でも知っている事柄だ。ただ彼はその『暗示』に長けており、今の通りあっさりと人の認識を変えて見せた。

 

 彼の家系は魔術を始めてせいぜい四代。魔術師は代を重ねるごとに子孫に自身の魔術回路を託すため、彼は圧倒的に魔術回路が少ない。ろくに魔術が使いこなせない。

 

 唯一出来たのがその暗示だけ。この程度の事だけでは魔術師としての歴史を重んじる一般の魔術師たちから認められるわけがない。

 

 彼自身はその世界に嫌気がさし、自身は創作の中で見た人物に憧れて怪盗をやり始めた。魔術師の才能はなかったが、手先は神業とさせるほど器用であり、運動神経も抜群であった。自由気ままに生きられるこの泥棒に自分に合っていると感じたのである。

 

 しかし、そんな彼にある情報が入る。それは『聖杯戦争』のことである。

 

 ある極東の地、冬木市で行われたのとはまた違う聖杯戦争。それが行われるという事を知った。

 

 聖杯戦争の事は腐っても魔術師。聞いたことぐらいはあった。調べた結果、その戦いには彼は魔術師としても怪盗としても心が躍った。

 

 聖杯戦争で成果を挙げれば、魔術師として一目置かれる。そして何よりの商品だ。聖杯いう宝を手に入れるという泥棒冥利につきる代物である。

 

彼はすぐさまその準備に取り掛かったのだ。それが今回、彼がここにいる理由だ。

 

「さてと」

 

 怪盗ルパンは歩きながら盗み出した鉄砲を服から取り出していた。ただこの姿で鉄砲を出しているのが見つかるのはまずい。暗示はさっきの連中には成功したが、ほかの連中が来るかもしれない。

 

なのでしっかりと周囲の様子を確認して取り出していた。

 

「ふん、模型といえどなかなかの出来だな。これほどの品はそうは見れないな。まぁこれを触媒にしてあの方を呼び出せればこの地においては最強だろうな。何しろ知名度が違う。まぁ世間知らずの小僧に扱いきれるかは別問題だがな」

 

 怪盗ルパンはそういって盗み出した物に満足気に見つめな がら再び服の中にしまった。

 

「じゃあ、この『我園』(がえん)さんに勝利の女神が微笑むことを祈るぜ」

 

 『我園』と名乗った怪盗ルパンはその場を後にした。

 

ストーリーや世界観の評価

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