~日時不明~
「う、うう」
ある所、ある病室、ある時間、ある青年がベットの上で目覚めた。
顔立ちは日本人らしくなく、少し背が高い茶髪の青年だ。袖の短い黒シャツに紺のジーンズを身に着けている。
青年が目覚めて視界に入ったのは白い天井。真っ白で、部屋を照らす蛍光灯がいくつも並んでいた。
「どこだ、ここ?」
青年は体を起こし、そして足をベットから降ろした。ベットには白いカーテンがかかっていたので、外を見渡すためにカーテンを払った。
だがその先に見えたのは全く見覚えのない空間だった。部屋全体は少し広めの部屋である。そこにはベットが他にもいくつか置かれており、同じく白いカーテンがかかっている。
他の家具は自分のベットの前に椅子が一つ置いてあるだけ。そのほかには何にもなく、壁や先ほど見つめた天井も含め、すべて白い部屋だ。扉はあるがそこには窓も何もない。
「殺風景な部屋だ」
正直な感想が口から洩れる。だがまさにその通りの部屋なのだ。青年は立ち上がり、まず気になったその椅子を調べることにした。
「温かい、誰か座っていたのか?」
椅子に触ると暖かさを感じる。どうやら少し前に誰かがいたようだ。だが何のためにだろう。考えてみるが情報が乏しすぎて全くもってわからない。
「部屋出てみるか」
ならば行動あるのみ。部屋の外になら何か手がかりでもあるだろう。そう思い、青年はすぐに扉の前に向かった。そしてドアノブを開けようとしたその瞬間、急に部屋のドアが開いた。
「うお!?」
不意を突かれた青年は思わず声をあげてしまった。
「あら、気が付いたのね」
扉を開けたのは紫の髪をしたスタイルの良い長身の女性だった。赤いセーターとピンクの丈が長いスカートを穿いている。突然現れた女性に驚き、青年は思わず尻餅をついてしまう
「いてて……」
「何もない部屋だから退屈するのはわかるけど寝たきりだったんだから急に動いちゃだめよ」
「ね、寝たきり…?」
女は扉を閉めると、倒れた青年に手を伸ばす。
「はい、手をつかんで」
「ああ…」
意図を察した青年は女性に手を伸ばす。そしてそのまま力強く引き上げてもらった。
「病み上がり君に立ち話させるのもなんだから、ほらベットに座りなさい」
そして女性はそう促して、青年をベットに座らせ、自分は椅子のところに座った。
「まったく、大変だったんだからね……」
「な、なにがだよ……?」
座った直後、女性はため息をつきながら青年の方を見つめながら再び口を開く。
「私が今さっき言った言葉のこと」
「寝たきりって言ってたな。なんなんだ」
「唐突過ぎたかしら。実はね、あなたはずっと昏睡状態だったのよ」
そして青年は女性が言ったことに大きく動揺してしまう。
「ど、どういうことだよ」
「数日前の話よ。夜も遅かったし、人通りも少ない路地だったわ。そこを歩いていたんだけども、どういうわけかその場所にボロボロになっていたあなたとあなたの連れがいたのを発見した」
「ボロボロって」
「文字通り、あなたは瀕死の重傷だった。すぐに処置をしなければ死んでたでしょうね。連れの子は私をずいぶんと警戒していたわ。にも関わらず、他に助ける手段がなかったのでしょうね。あなたを助けるために必死に懇願してたわ」
「瀕死…」
「で私は処置を承諾した。自分の体を見てみなさい。私としてもよく頑張った方だと思うわ」
青年はそう言われて着ていた上のシャツを脱ぎ、自分の体を見る。するとそこにはいたるところに包帯が巻かれており、若干血がにじんでいるような跡も見えた。体中も少し痛む。
「そうか、あ、ありがとうあんた……」
「へぇ、見ず知らずの私の言葉を素直に信じるのね? 私がいま語ったことはすべて嘘で、本当は単にあなたを実験対象として監禁してる変態かもしれないわよ」
「監禁ねぇ。確かにあんたは怪しいが、部屋の鍵も閉めない監禁なんてあるのか?」
「ふふ、確かに、そりゃそうよね」
そう言って女性は軽く微笑んだ。意地の悪そうな奴だが、笑顔だけはかわいげに見えてしまう。だがそれを悟られるのはなぜか癪に感じたので顔を逸らしながら青年は別の話を振った。
「い、いやそれよりもさっきあんたが言ってたことの中に他にも気になることがあるんだが」
「あら、何かしら?」
「さっきあんた、『連れ』とか言ってたよな。俺を助けてと懇願していたという連れが……」
「あなた、彼女と一緒にいたのに知らないの?」
「その彼女って誰だよ?」
「どういうことかしら。あんな強烈な娘、嫌でも覚えちゃうと思うけど」
どうも話がかみ合わない。連れとは、彼女とはいったい誰なのだろう。なぜか青年には寝ていた前までの記憶がなかった。思わず頭を抱える。
だがそんな悩める瞬間をぶち壊すのを狙ったかのように何やら部屋の外からうるさい声が聞こえてきた。
「みこーん、みこーん!! ややや、わたくしのケモ耳巫女レーダーにご主人様の復活をお知らせを受信受信!!」
そのまま扉が勢いよく開かれた。
「ご主人様を尽くしに尽くす愛の良妻、耳としっぽがチャーミング、メインヒロイン玉藻ちゃん。盛大に帰還しました~~!!」
そこに現れたのはなんと蒼を基調とした露出度の高い和装の狐娘だったのだ。
「すごいのが現れた………」
青年はそのキャラを見てがっくりと肩を落としてしまった。しかしそんなことはなんのその。その狐娘は扉を開くとすぐさまかけ寄ってきた。
「そんな連れない反応もまた魅力の一つではありますが、ご主人様が起きるのを待っていたこの玉藻の気持ちをお察しくださいよ~~、ううう、ちら」
寄ってきた狐娘の表情はまさに百面相。喜んだと思ったら、悲しんで、あからさまに青年の顔を疑っている。
「………」
流石のハイテンションに青年はついていけない。むしろ体に触れてくる大きな胸が気になってしまう。
「なぜかマスターの反応が今一つ。確かに髪の色や背丈は以前より変化しましたが、その至高極まるイケ魂は変わらずです。よってご主人様本人には変わらないはずですが……」
「な、なに言っているのかわかんなんだが。そもそもご主人様って?」
「こらこら、玉藻君。青年君が困っているじゃない。目覚めたばかりで君のテンションに当てられたら誰でもそうなるわよ」
「外野は黙っててください。治療に関してだけは感謝しますが、それ以外はあなたは不要な存在ということをお忘れなく。わたくしとご主人様のラブラブライフにケチをつけないでください」
見かねた女性が話に割って入るも、その狐娘は舌を出して子供らしくいじけている。
青年はなぜこんなにもこの狐娘が自分に好意的にかまってくるのはよくわかなかった。
「な、なぁ。君は俺をそんなにがっつくんだ? 俺って君と初対面だよな」
「は?」
自分への対応の理由。それを聞いた瞬間、狐娘は思い切り凍り付いてしまった。
ストーリーや世界観の評価
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