(くくく、作戦成功です。泣き落としをすれば必ずなでなでをしてくると踏んでました。玉藻ちゃん天才天才!! アーンドなでなで最高ぉぉぉ~~!!! すべてが満たされそうです。このまま一線超えるのもそう遠くはない未来はずです!! ぐふふふ!!)
「お前、心の声がそのまま出てるぞ」
狐娘は自分の思惑がうまくいったと確信したことでそのどす黒い感情が思い切り顔に出てしまっていた。そしてまんま声にも出してしまっていたようだ。
神無木せつなはなでなでからまたぐりぐりに変更した。
「いたいいたい、ぐりぐりはノープリーズですよ、マスター~~~!! 今のはその、私はもともと悪霊ですから、原点に立ち戻り悪者の演技の練習を~~~~~!!!」
「どこにセクハラを練習する悪霊がいるんだよ~~~~~!!!」
「せ、セクハラなんて違うまするぅぅ~~! それは愛がある故の行いですので~~~!! いた、いたた、玉藻ちゃんの頭が潰れますよぉぉ~~~!!」
その変わりゆく光景を見ていた遠坂の表情は苦笑いになっていた。だが惚気はここまで、重要な話はここからなので二人の絡みに遠坂は割って入る。
「しかしまぁ、よかったじゃない青年君! 『神無木せつな』、なかなかいい名前だと思うけど。ただ、君の見た目にはあまり合わない名前だねぇ。その日本人的な名前が」
「そうなのか……?」
「えぇ、染めたわけではなさそうなのに茶髪だし、あとは瞳の色が碧眼ってこともそうだしね。顔立ちがそもそも日本人顔ではないわ」
「そんなこと言われてもな……」
「別に広げなくてもいい話題だったわね、話を戻しましょう。青年君、いや『神無木せつな』君。まずその娘は君と契約したサーヴァントであり、君はその娘のマスターということ、もうこれは疑ってもしょうがないよ」
「あぁ、それは受け入れるよ! こいつの気持ちも多少なりとも伝わって来たよ。邪な感情がありきだがな」
「た、玉藻ぉぉ~~。悪いことなんて考えたことないからなんのことやらさっぱりわかりませぬ❤」
「ふん」
「あいた!!」
神無木せつなは横の女狐の一言に軽くチョップした。その様子と神無木せつの言葉を聞いて、遠坂は軽く微笑む。
「だけど肝に銘じておいて。今、君が関わっているのは『聖杯戦争』という儀式。君がその娘のマスターである以上、他の参加者から命を狙われることになるわ。儀式の商品である願望器は最後に残った一組しか使えないから。この儀式に闘いなどない、あるのは完全な殺し合いよ」
「殺し合いか。その仕組みならそうなりうるのか………?」
納得しかけて、神無木せつなに少し疑問がよぎる。
「……いやでもよ。確かになんでも叶う願望器ってのはすごいが、ただ奪い合うだけで全員が殺し合いになるんだ? もちろん殺しに走るやつもいるだろうが、そうしない道もあるだろ?」
神無木せつなの素朴な質問に遠坂は鼻で笑った。
「なかなかに甘い考えを持っているのね。でもね人の欲望とはおぞましいものよ、極限に追い込まれている者は他人の命の気づかいなど出来ないわ」
「俺が言ってるのは……」
「確かにそういうことも言えるわね。でもそういうわけにはいかない理由があるの」
「理由?」
「サーヴァントなんて大規模なものを使っての聖杯戦争は元々冬木という地で行われていたの。そこではサーヴァントが死亡するたびに、その魂が特殊な聖杯にくべられていた。それが最後の一体にならないとその聖杯は出現しない仕組みだったそうよ。サーヴァントの魂は一生かけても手に入らないような魔力量、それが脱落した人数分、くべられる。まさに聖杯とは無限の魔力の貯蔵庫なの」
「無限の魔力……」
「そんな途方もない魔力があればある程度の願いなら叶うでしょうね。さっき言ったけど、新たな魂が入っていない状態でサーヴァントを呼び出す代物なのよ、それが願望器と言われる意味。ここで行われているのがまるまる同じ仕組みかはわからないけど……」
「なるほど、聖杯の仕組みはよくわかったよ。だがサーヴァントの命だろう。だったらなおさら『マスター』に関しては必ず命を取る必要なんてないじゃないか?」
命について軽んじているようで、遠坂の言葉に気に食わない様子の神無木せつなは意見を曲げようとしない。
「話は最後まで聞いて。さっきサーヴァントはマスターと契約で結ばれているといったわね。契約の証は令呪」
「あぁ、言っていたな」
「その契約は非常に重要な要素。この契約においてマスターはサーヴァントに魔力を供給させてこの世に現存させているの」
「じゃあ、俺もこの娘に魔力を送っているのか? あまり実感がないが……」
神無木せつなは横目で狐娘を見る。
「はい、さようでございます。今もマスターの中の熱くたぎるものが私の中に入ってくるのをひしひしと感じています。あぁ、どういったらいいでしょう、この感覚……!!!」
神無木せつはスルーして遠坂桜の話を聞く。
「だから逆に言えばマスターさえいなければ、サーヴァントは自然に消えるわけ。サーヴァントは生身の人間が戦える存在ではない。例外はいるかもだけど、魔術師でさえ、戦えば一瞬で肉塊よ」
遠坂の表現に血が引いてしまう。
「な、なるほど。そんな化け物と戦うくらいならだからマスターを狙う方が効率がいいってことか」
「理解した? だからあなたの望みがあるにしろないにしろ、あなたがマスターである限り、狙われ続ける。しかも記憶が無くて、魔術や聖杯戦争の仕組みを知らないあなたはまさにいい獲物よ」
「お、おい。わかっていることだがそうあからさまに物騒に言うなよ」
「いえ、マスター。そのことについては私もその女に納得です。サーヴァントはサーヴァントをある程度の能力があれば感知できるものです。魔術師も魔力をたどれますし、ここはこの女の魔術工房です。マスター、サーヴァント共にすぐに見つかるでしょう。いつ攻めてこられてもおかしくない状況です」
そう二人から言われて、神無木せつなは嫌な汗を垂らしてしまう。
「まぁ、やすやすと敵を侵入させるほど私の工房は甘く作ってはいないけどね。ここは京都の町を囲む山の上に作った工房よ。こちらからの感知は楽だし、相手は攻めにくいし、なかなかいいところよ」
「き、きょうと……? ここはきょうと、という町なのか?」
「言ってなかったかしら? ここは日本の都市のひとつ、『京都』よ」
「に、日本の、京都……だと。初めて聞く名だ。くそ、全然場所の感覚もわからない」
あまりにさらっと今更にここの場所を言われて余計に混乱してしまう。以前の記憶が断片的にないということは非常につらいことだ。
「その話もおいおいしましょう。この工房ならある程度は耐えしのげる自信はあるけど、それでも限界もあるわ。だからすぐにでも魔術や聖杯戦争の知識を入れたに越しことはないと思う」
「知識か……。一体何から」
「そうねぇ。とりあえず、サーヴァントの真名についてかしら。本当は隠した方がいいんだけど、なによりこの娘がすでに名乗っちゃってばれてるし。でもやっぱりマスターとサーヴァントととしてやっていくなら、もう一度しっかりとあなたの真名を言ってあげたら?」
遠坂はそう言って狐娘の方に目をやった。
「あなたに言われるのは癪ですが、これもマスターのためです。立派な良妻であるなら旦那様にはうやむやではなく、しっかりと私の名前を今一度伝えないのは失礼ですからね」
「誰もお前の旦那になってない」
狐娘は神無木せつのツッコミをスルーしてコホンと息ついた。そして立ち上がり、神無木せつの正面に移動して大声で名乗りを挙げた。
「この度の聖杯戦争にキャスターとして召喚されました。いつでもどこででもご主人様を愛する良妻!!! みこんと反り立つ立派なお耳と尻尾がアイデンティティ~~~~~!!! 狐のキャスターなのでファンの愛称はキャス狐!! しか~~し、真名は極めて神秘的かつクールエレガント!!! 京都ですし、宇迦之御魂(うかのみたま)にも我々の愛をみせつけてやりましょう!! ではでは私の真名をご拝聴あれ。名は『玉藻の前(たまものまえ)』。言わずと知れた九尾の狐名の一つであるというはまさにその通り。ですがぁぁ~~、今の私は最弱最弱!! ばれたら弱点晒して偉えらいことに、なので敵前ではご遠慮を!! っていうか玉藻の前はちょ~~と長いでの短くスマートに可愛らしく、マスターには玉藻ちゃんと呼んでほしいです。よろしくお願いいたします、ご主人様!!!!」
「う、うん」
やはりこのノリにはついていけない。神無木せつはなこの先は別の意味で茨の道だと実感した。
ストーリーや世界観の評価
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