提督「艦娘が甘えてくるボタン?」 作:マロニー
提督「ふう…」
提督(なんだか疲れたな…まあ、そんな疲労の理由も遊び過ぎだなんてクソ情けない理由だが…)
大井「どうしたんですか、ため息なんてついて。幸せが逃げていきますよ」
提督「ん、そうだな、正しくその通り」
大井「どうせ、遊び呆けているせいで疲れてるとかのしょうもない事でしょう。ぬるめのお茶煎れましたから、これ飲んでささっと終わらせてください」
提督「ああ、ありがとう…
…遊び呆けてるからってのは的中だよ。
凄いな、エスパーか?」
大井「聞きたくもない噂がどんどん流れてきているだけです」
提督「は、手厳しいな。
もしかしなくても、これについてだよな」スッ
大井「!持ち歩いてるんですか…」
提督「一応、他の人に悪用とかされんようにな。まあ流石に真面目な仕事の時にゃ使わんさ。その一線だけは守らんと」
提督「それに、今日はお優しい秘書艦さまもいるからな?」
大井「…そうですね」
提督「おっと、一応言っとくが皮肉じゃあないぞ。お前は本当に優しいからな」
大井「ご機嫌取りですか?
全く…悪い気はしないですけど…」
提督「……もし、俺がこの仕事を終えた後、お前にこのボタン押すって言ったらどうする?」
大井「!!」
大井「…別に、どうもしません」
提督「そうか」
大井「…それを両手を広げて歓迎したりも、生娘のように逃げ出したりも、何も。
…好きに、したらいいんじゃないですか」
提督「…そうか」
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大井「……」
大井「横、座ります」
提督「あいよどうぞ」
大井「…ありがとうございます」
提督「どういたしまして」
大井「提督」
提督「ん?」
大井「ありがとうございます」
提督「…そんなに横に座りたかったか」
大井「そうじゃありません。
…そうでも、あるのかもしれませんが」
提督「…あのなぁ。俺はお前らが思ってるより馬鹿なんだ。もう少しちゃんと言ってくれんとわからねぇよ…」
大井「私を見つけてくれてありがとうございます。私が私である全てを、ありがとう」
提督「…」
大井「この今の想いも、大切なものも、日々も、未来も。私がここにいて、私が大事だと思えるものは、きっと貴方が与えてくれたものだから。それを今言っておきます」
提督「大袈裟だな。お前がお前であるのは、お前自身の弛まぬ努力と信念のお陰だ。それを俺のせいにされちまっても困る」
大井「そうですね。…それでも言わずにはいられない。それが感謝ですから」
提督「…まあ、確かにな」
大井「理屈なんて超えて、何度も何度も思ってるんですよ。喜びも、夢も。これからも。意味を持たせてくれた色々な『ありがとう』を、ありがとうって。愛していますって」
提督「随分とまあ、素直じゃないか。いつもそんな風だったら俺はもっと嬉しいんだがな」
大井「…それが出来る女だと思うの?」
提督「…ノーコメント」
大井「…ふん」
大井「…張り詰めて居なきゃいけませんから。少しでも、例え必要じゃなくても。今という、最高の状態を続ける為には」
大井「…そう思っていたのに、その忌々しいボタンのせいよ。ほんの今だけでも、提督なんかに、全部甘えようなんて思っちゃうなんて」
提督「『甘える』にしても、そんな難しいことを言わんでもいいだろう。もっともっと肩肘張らず、グダッとさ」
大井「いつかは絶対に言わなければ行けないことで、多分、ここで言わなきゃもう言えないから仕方がないのよ」
提督「ま、お前がそう思ったのならそれを尊重すべきだな。にしても、『言わなきゃいけない』なんて事あるか?」
大井「言わなきゃいけないのよ。
いつか、死んじゃうんですから」
提督「……お前」
大井「…事実ですよ?勿論、提督も私たちも全力を尽くしてますし、このまま犠牲なんて無いまま終わるかもしれないし、そうじゃないかもしれない」
大井「…それでも、いつかは死ぬんです。
だから絶対、言わなきゃいけないの」
提督「…大井、お前…」
大井「…」
提督「…そんな事ばっか考えてて疲れねえか!?甘えてる状態でそれだろ!?俺よりぜんっぜん色々考えてんじゃねえか!」
大井「…はぁ、貴方が考えなすぎなのよ」
提督「うっ耳が痛い。まあなんだ、そこは適材適所って事でな?」
提督「…冗談はさておきさ。別にそう言ったことを考えるなとか、俺が言ったこと以外は考えるなんて言うつもりもねえ。ていうかそもそも聞かねえだろそんな命令」
提督「だから、ほんのちょっとアドバイス。手軽な幸せってのは、案外目の前にあったりするものだぞ?」
大井「?」
提督「ほら」
大井「…」クスッ
大井「ええ、そうね。まあ、たまには何にも考えなくてもいいわよね」
大井「…お言葉に甘えさせて貰うわよ?」