提督「艦娘が甘えてくるボタン?」 作:マロニー
提督「…おや、もう夜か。
なんだかまたあっという間に過ぎたな」
提督(そうだな…今日は大人しく…)
瑞鶴「あれ、提督さん」
提督「ん、おお瑞鶴。どうした急に」
瑞鶴「別に何かって訳じゃないんだけど…なんか神妙な顔してたから、大丈夫かなって」
提督「あぁ、もしかして真面目な顔付きになってたか?随分珍しい物見たなぁ」
瑞鶴「ほんと。
…何か心配事って訳じゃない?」
提督「ん、マジで大した事じゃないよ。
…何か隠そうとしてる奴の言い分みたいだが、本当だぞー」
提督「…いや、そうだ。なあ瑞鶴」
瑞鶴「ん?」
提督「ちょっと付き合わないか?」
瑞鶴「!?
…いや、付き合うってそう言う事じゃないわよね」
提督「ハハハ、そりゃそんな大事な事なら流石にもっとかしこまるさ。今の意味は、ちょっと一緒に来ないかって事だ」
瑞鶴「うーん…何処に行くか、によるかな」
提督「飯さ。一緒に食いに行こうぜ」
瑞鶴「あっ。じゃあ、せっかくだし、奢ってもらっちゃおうかな?」
提督「…ヨシ、いいだろう。但し食い過ぎは厳禁だぞ」
瑞鶴「あはは、ケチっぽい」
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提督「さて、どうだった?
…気に食わなかったか?」
瑞鶴「ん?いやいや、そんな事ないって。美味しかったし、満足満足!」
提督「そうか?なら…いや、まあいいか」
瑞鶴「…わっ。見てよ提督さん!凄い星!」
提督「ん…おおほんと。瞬いてんな!
長い事来てるが、知らなかったよ」
瑞鶴「へへ、お手柄かな?」
提督「応ともさ。
しっかし、綺麗だな。月も…」
瑞鶴「…」ピクッ
提督「……」
瑞鶴「…言わないの?」
提督「…いんや、それを言うんだったら、もっとちゃんとした言葉で伝えるさ。勿論、これがちゃんとしてないって訳じゃないが」
瑞鶴「そう?あぁ、良かった。
もし『月が綺麗ですね』なんて言われたら、私多分吹き出しちゃってたから!」
提督「おいおい、酷いな。夏目漱石もとばっちりじゃないか」
瑞鶴「いや、言葉が変なんじゃなくって、提督さんが言ったら笑っちゃうってだけ」
提督「尚、酷くねぇ!?」
瑞鶴「あはは!…よいしょっと」
提督(…っと、こんなとこにベンチもあったんだな。よっぽど俺が散漫なのか…)
提督「…冷えるぞ?」
瑞鶴「なら誰かが温めてくれればいいじゃない?」
提督「クク、中々強かだな。
確かにその通り。横、失礼するぞ」
瑞鶴「うん」
提督「よいしょっと…」
瑞鶴「あはは、おっさんくさい」
提督「しゃーねえだろ実際そうなんだから」
瑞鶴「ふふ」
提督「……」
【瑞鶴は提督の肩に頭を預けた】
瑞鶴「…重くない?」
提督「むしろ軽すぎる」
瑞鶴「ねぇ。
あのボタン、持ってたりしない?」
提督「…一応、持ち歩いてはいる。
悪用されても困るしな」
瑞鶴「…」
提督「だが、必要ないだろう」
瑞鶴「ううん。使って」
瑞鶴「弱い私の、言い訳にさせて」
提督「…お前は強い、とか。
そういう発言は求めてねぇよな」
瑞鶴「あはは。…うん」
提督「なら、やろう」
ボチッ
提督(…あ。そういや目盛りどうしてたっけな。やっべ、全然気にしてなかった)
瑞鶴「…だ…」
提督「だ?」
瑞鶴「ダメっ!やっぱり恥ずかしい!」グイーッ
提督「グワーッ!おま…さっきまで耐えてたのに!」
瑞鶴「ご、ごめん提督さん!でも、どうしてかな…急に恥ずかしくなっちゃって…」
提督(…!そうか。目盛りが最弱に近かったせいで、甘えていた瑞鶴の状態が逆に弱い感情に上書きされたのか…)
瑞鶴「ほんとになんでかな。
…折角、チャンスなのに」
瑞鶴「…」
提督「ああ、落ち込むな落ち込むな。
ほら、涙なんて似合わないぞ」
瑞鶴「泣いてないって!」
提督「あら元気」
提督「…まあ、なんだ。どうしても今日じゃなきゃいけないって、訳じゃあないだろ?明日になっても俺はお前らの前に居るぞ」
瑞鶴「そういう事じゃないって!…提督さんてば、肝心な所でデリカシーないよね」
提督「ぐえっ耳が痛い」
瑞鶴「……ごめんね、提督さんに当たっても意味ないのに。なんでだろう。やっぱり、どうしても勇気が出ないし、恥ずかしい」
提督(…)
ギュッ
瑞鶴「…精一杯がこれだって言ったら、笑われちゃうかな」
提督「笑うもんか」
【二人は静かに、手を握り合う】
提督「…そろそろ、戻るか。
いよいよ寒くなって来た」
瑞鶴「うん。
…帰るまでこのままでいいかな」
提督「ああ、好きにするといい」
【体温を、静かに確かめ合った…】