傭兵たちの後日談(アフターストーリー)   作:踊り虫

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傭兵たちの始まり、その2

 翌日、彼らは行動を開始した。

 

 カインズとクルースはアインに連れられて実際に魔物が目撃された場所の下見を。トラヴィスとアズサは森の中を分け入ってのダンジョンの入り口探しをしていた。

 トラヴィスとアズサは優秀な斥候だ。彼らなら魔物の痕跡を辿って、ダンジョンの位置を特定できるだろう。

 

 であれば、残された二人に出来るのは魔物の目撃情報と村の今後の防備──柵や堀を作る場所の助言をするぐらい──

 

「──だと思ってたんだがよぉ……」

「防壁とまで行きませんけど、柵も丸太でしっかり作ってるんですよね……」

 

 彼らの滞在しているこの村──サンパ村は山間、つまり山と山の間に拓かれた村だ。

 村の中央の大きな建造物(アイン曰く集会所で、村の中での祝い事や催しの中心となる場所らしい)を中心にその周囲を畑や家畜のが囲い、その外側に家屋が円形に、囲うようになっている。

 一応、畑や家屋に沿って道は作ってある物の、街道と呼べるほど立派な物ではない。

 

 ──そしてカインズ達がいるのは更に外側。村と山林の境に作られた防護柵の傍だった。

 

 これまで村人で構成された自警団で耐えてきただけのことはあり、高さ1.5m程の柵は木製とはいえ丸太を格子状に組んで頑丈に作られており、二重に設置されている。

 その配置も完璧の一言。アインいわく村人で生活の邪魔にならない範囲を模索して一緒に考えて作ったのだとか。

 近くの森の木々を見上げて、カインズは口笛を鳴らした。

 

「獣避けの鳴子もあるのか、要点はしっかり抑えてんだよな……」

「装備も準備も下手な村と比べてもだいぶ進んでますよね。警鐘も設置してありますし」

 

 クルースの視線の先には雨よけの屋根のある比較的新しい小さな鐘の吊るされた台だった。

 アインによるとこれは村人たちの相談の中で出てきた案を鍛冶師に頼んだところ快く引き受けてくれた物らしい。村を囲むように八方に設置してあって、魔物が出たらその方角の鐘を鳴らして知らせるように取り決められていた。

 

「あとは見張り用の矢倉でもあれば完璧……と言いてェが、結構近いんだよな」

「森を切り開くのは魔物が増えてる今は危ないと思うけど?」

「そうなんだよなぁ……どうせならこれ作るときに一緒にやってくれてると楽だったんだが──」

 

 そう零しつつ、丸太の柵を掌で叩いた。重厚感のあるずっしりとした木の手触りが頼もしい。

 

「──まぁ、この規模の村でここまでやれてんなら十分だわな」

「他の村って、どうだったんすか?」

 

 アインからの問いにカインズは答えた。

 

「ここほど恵まれてんのは少ねェな……細木を組み合わせて柵を作ってたり、農具を武器にそのまま使ってたりってだけでも良い方だ」

 

 そもそも、住人だけでの自治に成功している街や村は少ない。傭兵団の拠点として占拠されて統治を受けた結果、傭兵団が村人達の反攻の芽を潰すために農作業の道具以外の武器となる物品を全て取り上げるのも珍しくは無い。

 では正式な領主がいる村はどうなのか、と言えば、ここまで防備を揃えられていることはやはり珍しいことだった。

 

 そのことをざっくりと説明すると、アインはぽつりと呟いた。

 

「傭兵団、かぁ……」

「なんだ? 興味あんのか?」

「はいッス──傭兵さんの言うような酷い奴らもいるって聞いたこともあるし、そんな奴らになりたくないっすけど……」

 

 アインは顔を曇らせた。

 傭兵なんてのは金さえ貰えば何でもやるようなロクデナシ集団だ。

 例外なんて亡国の皇族だのとかが生き残りを中心に結成した規律を重んじる奴らぐらいのものだろう。ブリタニア帝国の復興を掲げるウェルシュ傭兵団なんかが良い例だ。

 一応自警団を元に立ち上がった傭兵団もあるにはあるが。そういうのも傭兵団の名を借りただけで自警団としての特性が根強かったり、結局傭兵家業で食っていけずに盗賊のようになる例もあるのだ。憧れを抱くような物ではない。それなら憲兵団に志願するなりした方がまだ健全だろう。

 

 だが、アインの目には憧憬の火が灯っている。

 

「でも、どうせなら──困ってる人達を助ける。そんな傭兵団を立ち上げてみたいッスねぇ」

 

 その言葉にカインズは顔を顰めそうになった。その夢を叶えるのは茨の道だ。

 かといってその理想を否定することはカインズには出来なかった。

 

「ま、世の中そうは甘くねぇが……そういう奴らが居たってバチはあたらねぇだろうさ」

「そ、そうっすよね! みんな困ってるんだからそんな人達の助けになれる傭兵団があったって、悪く無いッすよね!?」

 

 アインの熱の入った言葉にカインズは微笑んだ。

 

「応ともさ、つってもまずはこの周りのダンジョンをどうにかするのが先──」

 

 ──カン、カン、カン、カン、カン、カン! 

 

 どこからともなく警鐘が鳴り響いた。

 

「「「!」」」

 

 行動は迅速に、全員がその方向へ駆け出した。

 クルースが遅れそうだったのでカインズは脇に抱え上げた。

 少しすると、アインと距離が出来始め、アインがこちらを窺いながら走るようになった。

 武器の重さに加えクルースを抱えているというハンデがあるとはいえ、思ったよりアインの足が速い。流石は山育ち、足腰も鍛えられているといったところか。

 

(そういえば、()()()()()()()()()()()、なんて言ってやがったな)

 

 山間の長閑(のどか)な村が魔物が現れてから二年間、追い払うだけでなく、魔物を仕留めることが出来ていたのは伊達や酔狂ではないようだ。

 

 

 

 

 

 

 集会所の横を通り抜けて辿り着いた場所には既に10人ほどの男達が集まっていた。各々、例の木の盾と木で出来た剣や棍棒、そして弩弓や弓を身に付けており、うち三人は既に矢を番えて20mほど先の森を、柵の間から見据えている。

 森の奥からは、鳴子のカラカラという音が鳴っており、未だに何かがいることを伝えていた。

 

 そんな中、アインが一人の人物に声を掛けた。

 

「おっちゃん!」

「おお、アイン、来たか」

 

 アインが話しかけたのは、集まった中で明らかに東洋の血が流れていると思わしき40代程の男性で、アインの声に応じるも、その目は森の置くを鋭く見据えていた。

 

「魔物は? 狼?」

「まだわからん、鳴子が聞こえたんで鐘を鳴らしたとこだ──どうせならトラバサミに引っかかってくれてると楽なんだが……鳴子の音はまだ鳴っておるから期待薄だな」

「そんなもんまで仕掛けてんのか……」

 

 カインズたちの姿を見て、男は鼻を鳴らす。

 

「掛かっても壊されちまって勿体無いが、負傷させる位は出来ようさ──で、アンタらがアインとこで泊めてるっちゅう傭兵さんか。話には聞いておるよ。儂はキイチ、畑を耕す傍ら獣を狩るのを生業にしとる」

 

 キイチ、と名乗った男は少し訛りのある言葉で応じた。

 そこには余所者に対する警戒心が見て取れたが、アインのように友好的な方が珍しいもので慣れた物。

 

「カインズだ。傭兵のカインズ。こっちはクルース。オレと一緒に旅をしてる。一宿一飯の恩で助太刀するぜ──で、確認なんだが、こっちの方から魔物が来るのは初めてか?」

 

 カインズは、先ほど居た方向を横目で見つつ問いかけた。

 先ほどいた場所からここに来るまで村の中央にある集会所の横を横断してきたのだ。つまり最初に魔物が出た場所の反対側に来たのである。

 そしてこの現象は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 男──キイチは首を横に振った。

 

「半年前から来るようになったが人手が足りんから家の近かった儂が罠を仕掛けつつ監視している。今日も畑仕事をしている途中で鳴子が鳴りやがったんで鐘を鳴らして報せたとこだ」

 

 その答えに厄介だな、とカインズは胸中で呟きつつ更に問いを投げる。

 

「どういう魔物が来てるんだ?」

「でっかい灰色の狼だ……そこのアインが最初に遭遇したのを血みどろになりながら倒してきてな。それ以降間を空けては出てくるようになりやがった」

 

 キイチはそう忌々しげに吐き捨てた。

 でっかい狼の魔物、というならおそらく一つ首(ハウンド)だろうが、聞き捨てなら無いことがある。

 

「お前、()()()()を一人で倒したのか?」

「はうんど? ……あ、いや、一頭だけだったんでどうにかトラバサミにひっかけてすぐに袋叩きに……もう二度としたくないッス……」

 

 顔を青くして、アインは言った。

 ただの村人が魔物相手に罠に引き込んで倒し、生き残るなどそうやれることではない。相手しただろう魔物──()()()()のことを思えば驚嘆に値する話だ。

 

「……それにしては遅いな」

 

 その機動力を考えれば駆けつけるまでの間に既に一戦交えていそうな物だが、まだ姿すら見えていない。

 

「ああ、鳴子の音も近づくのがゆっくりでな。不気味だ」

 

 キイチの言葉にカインズも頷いた。戦う相手の正体がわからないという恐怖や不安は時に冷静さを欠かせる。

 事実、数人の自警団の村人はどこか浮き足立っているような様子が見受けられた。

 

「……少し見てくるか。クルースは留守番頼んだ」

「うん、分かってると思うけど」

「『相手の土俵』で無理に戦わない──オレが教えたことを実践できなきゃ意味が無ェわな」

 

 そう言ってカインズは柵を飛び越えた。

 鎧と大きな剣を背負って軽々と飛び越える姿に驚く村人の面々だったが、カインズは彼らを尻目に森の中へと入っていく。

 

「傭兵さん、大丈夫なんすか!?」

「アンタらが見に行って死なれるよりゃマシってもんだ! 相手がわかったらとっとと逃げ帰るから気ィ抜かずに待ち構えてろよ!」

「は、はいッス!」

 

 アインの返事にカインズは手を振って返し、そして木々に紛れて姿が見えなくなった。

 

「……大丈夫、なんすよね?」

「そこは安心して良いですよ」

 

 アインの呟きにクルースが返した。

 

「あの人、弱くは無いから」

 

◇◇◇

 

 森を駆ける。

 後ろからは二つ首(オルトロス)が率いる一つ首(ハウンド)の群れ。計8頭が付かず離れずの位置を併走してくる──これでも2頭は減らしたのだが、中々にしつこい。

 

「■■ァァッ!」

 

 襲い掛かって来た個体に、飛び上がり様に両手に持つ剣を振り下ろす。

 狙い通りに剣は頭を串刺しにし、慣性のまま飛ぶ肉体に乗って着地の緩衝材にする。

 

「──3体目」

 

 仕留めた数は一度口に出して覚えておけ、と言う教えに従ってポツリと呟きながら剣を引き抜き、そのまま駆け出した。

 ──ここまでうまく運んだとはいえ、何回か失敗して食われかけている。ここまで来てかすり傷で済んでいるのは本当に運が良いとしか言い様が無い。

 

(もしかしたら次は無い?)

 

 そんな不安もあったが、しかし魔法を使うだけの余裕は無い。このままではジリ貧だ。

 

「嬢ちゃん! こっちだ! こっちに来い!」

 

 ──そんな時、男が大声で呼びかけてきた。

 刈り上げた黒髪に黒い目の精悍な顔つきの只人(ヒューマン)だ。騎士鎧を身に纏い、背には大剣を背負っている。

 

 その声に釣られて、一頭が牙を剥いて男に襲いかかった。

 

 ──危ない! と声を掛けるまでもなかった。

 

 男は避け様に背にした大剣を振りぬいて、魔物の胴を両断する。

 鎧袖一触。最低限の動きでそれを成し遂げた男──なんか驚いたような顔してる──はまたこちらに声を掛ける。

 

「急げ! 死にてェのか!」

 

 足は即座にそちらへ向き、そのまま追い抜いた。そのまま男も一緒に駆け出す。

 

「足元のトラバサミに気ィつけろよ! このまままっすぐだ!」

 

 男の指示に従って森の中を駆け抜ける。

 男は襲いかかってくる一つ首(ハウンド)を大剣を振るうことで牽制しながら逃げているが、流石に鎧姿で一つ首(ハウンド)から逃げ切れる訳もない──無いのだが。

 

「ぜりゃぁぁ!」

「■■ゥン!」

 

 隙を見ては襲い掛かってくるのをきっちり一太刀で返り討ちにしていて、一つ首(ハウンド)も警戒し、間合いに迂闊に飛び込まないように追いかけてきている。

 

 私も同じことをしていた訳だが、あちらはかなり手馴れているようだ。

 この辺りを縄張りとする傭兵団の人だろうか? 

 

「嬢ちゃん! この先森を抜けたら柵がある! 飛び越えられるか!」

「……高さ次第」

「嬢ちゃんの背の高さと同じぐらいだ!」

「……なら、一っ跳び」

 

 もう少しで脚力強化の魔法が解けるがそれまでは持つはず。

 そう返すと、男は「そりゃ良かった」と笑った。

 少しして森を抜けると、丸太を格子状に組み合わせて作ったであろう立派な柵が並んでいて、その向こう側に多くの人影が見えた。

 

「なんだありゃ!? 首が二つだァ!?」

 

 柵の内側がざわついたが一人の青年の声が響いた。

 

「慌てなくていいッスよ! たかが頭が一つ増えた程度、しっかり引き付けて当てるッス!」

「「「お、応!」」」

 

 声に応じて、柵の隙間から矢の鏃が見える。あれで迎撃するようだ。

 だが、今撃たれたらこっちはひとたまりも無く、しかし一つ首(ハウンド)の群れとは距離が近すぎて飛び越えてからじゃ遅すぎる。

 迎撃のために反転しようとして、男に腕を掴まれた──振りほどけない。

 反論する前に男が大声で叫んだ。

 

「クルゥゥスゥゥッ!」

『──刑罰執行、神は汝に枷と鎖を与え給うた! 這い蹲らせろ! 【鎖縛りの拷問者(トーチャー)】!』

 

 少年の声で朗々と口訣が紡がれると、先頭を駆けていた一つ首(ハウンド)四頭の足に黒い鎖が巻き付き、その動きを止めてみせた。

 

 ──【鎖縛りの拷問者(トーチャー)

 地面より飛び出た鎖によって対象を絡めとり、縛り付ける闇属性の中級魔法(ミドルスペル)

 今は昼であり、相手は魔物であるため、ただの足止めにしかならないが、その猶予は私たち二人が柵を飛び越えるのに十分な時間があった。

 

「今だ!」

 

 内側にいた男の号令を受けて柵の内側から矢が射掛けられた。

 一斉射で一つ首(ハウンド)が一頭、倒れた。

 

「弓組は援護射撃継続、牽制を続けて! 弩弓組は装填焦んなくて良いッすよ! 前衛組、オレと出るッす!」

 

 続けて掛けられる青年の号令に「応!」と男達は返して指示通りに動く。

 すごい人達、まるで統率の取れた兵隊だ。

 

「ハハハ、すげぇすげぇ! どうなってんだこの村。やってること下手な兵士顔負けじゃねぇの!」

「あなた、違うの?」

 

 そう問うと、彼は「昨日来たばっか」と返して即座に柵を飛び越える。

 

「アイン! オレも出る! アンタらは一体ずつ囲んで確実に仕留めろ!」

「助かるッス! まず群れの頭から潰すんで牽制頼みます!」

「りょーかい! クルースッ!」

『──処断するは悪逆の徒。影よ、伸びろ。御神は汝の罪を咎める』

 

 後ろに控えていたエルフの少年が朗々と口訣を紡いだ。

 さきほどの魔法はこの少年の物か。

 

『刑罰執行。【ミナスの縫い針】』

 

 紡がれたのはロースペル(下級魔法)【ミナスの縫い針】。

 罪人の影を地面に縫いつけたというミナス神の縫い針が群れのリーダーである二つ首(オルトロス)の影を地面に縫い付けた。

 

「アイツからッす! 頭二つあるっすから気をつけるっすよ!」

 

 透かさず、アインと呼ばれた青年を筆頭に村人たちがオルトロスに群がり、弓を使う村人たちと騎士鎧の男が牽制に回る。

 矢はオルトロスを助けようとするハウンドを近づけさせず、隙を見せれば騎士鎧の男が振るう身の丈ほどの大剣の餌食だ。

 

 分断が手際よく行われている中、村人達がオルトロスに挑んでいた。

 

 二つ首(オルトロス)は一つの頭を潰しただけでは死なない。両方の頭を潰して初めて倒れる魔物だ。

 素人だと片方を潰している間にもう片方に食い殺される──のだが、多勢に無勢、たった二つの頭では10の攻撃は捌けない。

 しかも先ほどまで指示を出していた青年が機転を利かせて真っ先に後ろ足に木剣を叩き込んで動けなくした。

 代わりに蹴り飛ばされて「ぐぇっ」なんて声を上げていたが、村人たちは青年を庇いつつオルトロスを追い詰めて行く。

 

 だが、オルトロスも最後の足掻きとばかりに牙を剥き、噛み砕こうとしていて、危なっかしい。

 

 ──私も加勢しようと柵に近寄ったら魔法を使っていた少年に止められてしまった。

 

「待って、君は魔力を使いすぎてるみたいだし、ここまでずっと走っていたんですよね? ライカンの体は頑丈だけど疲れ知らずって訳じゃない。あなたは休んでいて」

 

 でも、と言葉を出す前に、少年は続けた。

 

「それに、今回はこれ以上の手助けはいらないみたいだ」

 

 そう言って彼が柵の外を見たのでその視線を追うと、袋叩きにされていた二つ首(オルトロス)がドスン、と地に伏す。

 最後に村人の一人が持っていた棍棒に噛り付き、そのまま絶命したらしい。

 

 群れのリーダーが倒れたのを見て、残りの一つ首(ハウンド)が森の中に逃げ帰っていった。

 

 騎士鎧の男が高らかに叫んだ。

 

「オレ達の勝ちだぁぁぁぁ!」

 

 オオオオオ! と勝ち鬨を挙げるのを見て私は一息吐いて、魔法を解く。

 ──剣は、杖に戻った。

 

「すごく高度な魔法ですね。赤い結晶体を生み出して杖に纏わせて刀身に成形するなんて……ボクには出来そうに無いな」

 

 その様子を見ていたエルフの少年はそう言うと手を差し出した。

 

「ボクはクルース。あっちで村人達と騒いでいる騎士鎧の男はカインズ。一緒に旅をしている傭兵仲間、といったところかな」

 

 傭兵仲間、そういうのもあるのか。一人で旅をしていた私には無い物である。

 少年──クルースが「あなたは?」と訊ねてきた。

 

「私は──」

 

 ここで迷った。フルネームで名乗るべきだろうか? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。気を使わせてしまうかもしれない。

 だが、彼らは結果的に私を助けてくれた恩人たちである。ここでフルネームで名乗らないのも不誠実という物ではないだろうか? 

 とはいえ名乗ったら名乗ったで面倒なことになる可能性は高い。そもそもあの傭兵団の縄張りの外にいるのだ。下手に私の家名を明かせば問題が起きるかも、それは非常にメンドくさい。

 

「……私はルビー」

「はい、よろしくお願いしますルビーさん」

 

 私は、クルースの差し出してきた手を握ったのだった。

 

 ──これが私、胸の躍る様な冒険を夢見て旅をする竜人の傭兵。ルビー・ウェルシュ・ドラゴンと彼らとの出会いであった。

 




・キイチ
 こちらで準備した村人の一人。農民であると同時に狩人。前回話に出てきたヤマト生まれの人です、漢字だと『喜一』と書く。
 設定上ではアインが自警団の中心となって色々と罠を考案したりして守っていたけれどそれを教える人物が欲しくて作りました。

・鍛冶師の青年
 二年前に村を訪れ、一宿一飯の恩で村人たちの防備を手伝ってくれている。流石に村人だけだと装備に限界があるよな?ということで登場していただきました。
 正体?さてさて、誰なんでしょうね(すっとぼけ)

・ハウンド&オルトロス
 詳細は次回に持ち越し。宛てられた言葉だけでバレバレでしょうけども。

・クルースの詠唱
 彼のは独自の形として流用するか、それとも共通として使用するか悩み中。

 ただ、ルミナス教の神官ではないので、独学で覚えたという形になっています。
 これが役割=職業『ではない』という意味。神官でなくても『秘伝書を正しく読み解けさえすれば魔法を扱えるようになります』
 ただし、相応の学が必要になるので文字の読み書きは必須。そこに更に色々な古文翻訳の技能なんかが必要になりますけども。
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