結局妖刀との対話はダイジェスト化&留守番組のお話省略……これはもう自爆しかありますまい!(陳宮並感)
……はい、すみません。ふざけすぎました。
今後もこんな感じで亀更新が続くかと思います。本当にすみません。
それと日数計算が合わなくなったんで一話に書いてた日数を加算する予定。
――すまんな
――これは
――左様、妾の主は二年前におぬしの村で世話になった流れ者の刀鍛冶じゃ。妾も共におったが、そこな
この二年、雨風をしのぐことも敵わぬがゆえ、刀身にはツタが絡まり錆が浮き、苔まで生えおったでな。
――なぜ、と聞くとは無粋な。妾も主も何も無しにこのようなことはせぬ。
――察しの悪い奴め……わからぬか?汝らは我が主にやすらぎのひと時を与えたのだ。
それこそ、厄介事を嫌う主が魔物退治に手を貸し、武具や鐘を拵えるのを快く引き受けるほどに、だ。
――だが、魔物退治だけではこの村は救えない、というのは妾も主もわかっておった……だから妾が残った。あの長閑で、人に安らぎを与える暖かな村を守るために、の。
――さて、ここからが本題じゃ。これまで頑張って来たが、妾の足止めもあと一月もすれば消え失せる。
我が呪で以って押さえ込んでいた魔物が溢れ出でて、汝の村を滅ぼすのは目に見えるであろう?
――
命を粗末にするのではなく、皆で生きて逃げ延びる道を探すが良い。
――中を見ることすら敵わぬ妾でも、わかることがある。もはやこのダンジョンは我が呪により蟲毒の洞穴と化した。中に溢れかえる魔物はもはやそこな傭兵や村の民でどうこう出来るなどとは思えん。
――ゆえに、死んでくれるな。このような物のためにおぬしらが死ぬのを妾と主は望まぬ。生き延びよ。泥をすする覚悟で以って生き延びよ。それが主と妾の願いなのだから
――……妾のことは捨て置け、ただの刀に情を向けるで無いわ。全く、だから妾も主も見捨てられなんだ。
――っ!行け!魔物が這い出てくるぞ!急ぎ村に戻りこのことを伝えよ!
◇◇◇
「――そんなことがあったんだ」
アインが話を締めるのを、カインズとトラヴィスは集まりから離れた場所から見ていた。
アインの言葉で集会所に集められた村人たちは困惑していて、アイン自身は不安げにして言葉を待っている。
――村の人達への説明を頼めねェか?
そう頼んだのは自分たちだ。
なぜ、と困惑するアインに、カインズは言った。
――オレたちは余所者だ。ただ泊めるだけならまだ良いだろうが、村の存亡に関わる話を余所者が言い出して信じるのは余程の阿呆だ。
数日前に旅人がやってきたとしよう。彼らは村人に友好的で、色々な手伝いをしてくれていた。
だが、そんな人物達が『喋る剣』と村に迫る危機を村人達に訴える。
はたして、その剣の主が二年前に出会った青年であることを。彼らが恩を返すためにダンジョンからあふれ出てくる魔物の群れを屍に変えていたことを。
否、否だ。
誰も信じないことだろう。実際にそれを目にしても事実として受け止められる者もどれだけいることか。
だが全員をその場所に連れて行くなど現実的ではない。
何せ先ほど逃げ帰った時も出てきた一部の魔物を追い払いながらの撤退戦となったのだ。犠牲者が出るのは想像に難くない。
――だからオレ達は証人となってくれる村人が必要だった訳だ。
「あの鍛冶師のお兄さんが」「でも喋る剣なんて本当にあるのか?」「この村を捨てて逃げろって、そんな……」「他の村や街に全員で移り住めると思うか?」「家畜は置いていくしか」「この村に骨を埋めるつもりでおったのに……」「でも魔物に食われちゃったら骨も残らないよ?」「まさかこの村を捨てて逃げなきゃいけないなんて」
……思ったよりも話を信じているような声が多いのは気のせいだろうか?
「アイン、少しよろしいかな?」
ざわめく村人達の中で、唯一アインに向けて声を上げたのは、白髪の老人だった。
この村の長閑さがそのまま人になったようなにこやかな好々爺、という風に見える。
――サンパ村の村長、ローナン・サンパ氏だ。
彼とはこの村に辿り着いた際に滞在することの断りを入れるために一度顔を合わせていた。
アイン同様に何かを要求されることもなく、にこやかに迎えられてしまったこともあってみんなで拍子抜けしたのは記憶に新しい。
「村長さん、嘘は何一つ――」
「慌てなくても良い。アインが嘘を吐いていないことは皆わかっておるとも」
ローナンの言葉に、村人達も口々に応えた。
「兄貴は、嘘が下手だからねぇ」
「ああ、すぐにわかっちまうんだよな」
「そこが可愛らしいのよねぇ……ああ、私がもっと若かったら嫁に行っていたのに」
「お、おいおい冗談はよしてくれよ。お前にゃ俺がいるだろ?ほら、トルリースも見てるじゃねぇか」
「……」
「母ちゃんその沈黙は怖いんだけど!?」
トルリースの一家が家族会議まっしぐらの修羅場を演じ始めてカインズは笑いそうになるのを堪え。
「某はアインのことを信用しておる。可愛い弟分の言葉を疑うなどありえぬわ、はっはっはっは!」
「ドゥルヴァ、アンタまたその変な話し方をして!いい加減辞めなさい!」
「……昔やってきた旅人さんのマネが抜けなかったからなぁ……」
ドゥルヴァの一家が何やら揉め出したのを「まぁあの口調は珍しいしなぁ」なんて遠い目をしつつ。
「まぁ、アインがそんな嘘を吐くとしたら相応の理由があるはずだしな」
「ええ、昔から素直な子だものね」
「ホント、ホント、むしろ良く騙される側だったな」
「……今回も騙されてないか心配になるわ」
「「「……」」」
一斉に静まり返り、村人達の目がアインに集まる。
「な、なんすか?」
「「「「否定、できない……ッ!」」」」
「なんで合わせたっすか!」
「ブハッ!」
アジス一家の言葉に村人達が賛同し、アインが口を尖らせたのを見て堪えきれず吹き出した。
少々緊張感に欠けているが、しかしとても暖かだ。
村の者は皆、家族同然。だから家族の言葉を疑わずに信じようとしている。
「――皆の者、静粛に」
厳かな声が、場を静めた。
キイチだ。
キイチには昨夜の時点でトラヴィスから話を聞いている。故に事の重要性を理解しており、その面持ちは固い。
「ローナン殿の話がまだ終わっておらん、最後まで聞けぃ」
キイチの言葉で静まり返った村人達に、ローナンもまた固い面持ちで話す。
「ありがとうキイチさん。確かに皆の疑念はもっともだ。私たちはアインが嘘を吐いていない事はわかるが、傭兵の皆さんがアインを騙している可能性も大いにありえる」
「そんな……!村長、そんなこと――」
アインが反論しようとしたが、彼は手でその先を制した。
「さて、話は変わるが、キイチさん。我々村人達の中でも魔物を倒してきた経験の長いあなたから見て、この村の守りは万全かな?」
キイチは深刻な表情で答えた。
「やれることはやっているが限界が近い、というのが現状じゃな」
静まり返った。
村人達は絶句し、自警団の面々も驚きを顕わにした。
村人達の中で唯一言葉をそのままに受け入れていたのはローナン氏と、ダンジョンを見てきたアインだけ。そんな中で、キイチは淡々と話を続ける。
「まず、この村に攻め込んできておる魔物じゃが、二年前の備えもあってこちらの少ない人数であっても村の中に入れる事無く押し留めることが出来ておった。ただの村人で結成した自警団としてはこれ以上無い大戦果であろうよ」
それに関してはカインズも同意見だ。領主が居らず正式な番兵隊も居ない小さな村で、たったあれだけの人数の自警団が魔物を退けているなどと、外で話そう物なら法螺吹きと呼ばれてしまうだろう。
それほどまでの大戦果だ。この村の自警団員が兵士として訓練すればそれはそれは頼もしい守りとなったことだろう。
だが、今の彼らはただの村人でしかないのだ。
「昨日、魔物の群れを迎え撃ったことは周知したが、その中に群れを統率する二つ首の巨大な狼が出て来ておった。昨日はそこの傭兵たちの助けを借りて孤立させ、そこを村の衆で袋叩きにして事なきを得たが、あれが数頭出ようモンなら数人食われるのを覚悟せねばならん。そしてそうならんようにするには、奴らの城を攻め落とす以外の手立ては無いが……それも厳しい」
キイチはダンジョンの攻略をして、「城攻め」と称し、話を進めた。
「古代の高名な軍師は城攻めを『下策で最も避けるべき』としている。何せ消耗があまりにも激しいからな」
「相手の城を攻めるのが下策って、なんでそんな風に言われてるんだ?城を落とせば勝ちも同然だろ?」
そう問うトルリースに何人かの村人が賛同したが、キイチは溜め息を零した。
――この村ではそうした教育はされていなかったのだろうと容易に察せられる問いでもあった。
「トルリース、この村を城と考えよ。そして魔物たちは城に攻め込んでくる兵だ。儂らはそのための備えをしているな?」
「あの防柵とか鳴子だろ?でもそれが――」
「――ダンジョンの中にそんな儂らを守ってくれる道具は無い。この意味が分かるな?」
「えっと……?」
尚もピンと来ていない様子のトルリースを見かねてアインが口を挟んだ。
「魔物が来たのを教えてくれる鳴子も無ければ、魔物が自分たちに襲い掛かってくるのを防ぐ柵も無い……ってことっすよ。しかもダンジョンの中は魔物どもの庭ッス。そんな中に放り込まれて群れで襲い掛かられたとしたら?」
「う、お、俺一人じゃ無理でも自警団の皆と一緒なら」
「そうッスね。俺もそう思いたいッスよ。でも、ダンジョンは奴らの巣窟。昨日の狼の群れに間を置かずに何度も襲われたら、どうッスか?」
「それは……無理だ」
トルリースはようやく理解したのだろう、青い顔になりながらおとなしく引き下がった。
「自警団では人も、武器も足りないが、一番足りないのは魔物とダンジョンへの知識だ。特にダンジョンは現れ始めた三年前から経験を積んでこなければどうしようもあるまい」
「……あの傭兵の方々にはそれがあると?」
ローナンの言葉に、キイチは鼻を鳴らして答えた。
「業腹じゃが、少なくとも儂よりは頼りになる。なんせ例の二つ首の狼に関しても知っておった上に腕も立ち、魔法を扱う者もいる。それにここに来る前はヤマトにてダンジョンの攻略に手を貸しておったとか。魔物がいる以上、ダンジョンがあるのは間違いない。彼奴等の言葉が嘘か真かは実際に働きを見せてもらわんことにはわからんが、真であればこれ以上無い助けになろう――儂から言えるのはそこまでじゃ」
「……なるほど」
キイチの言葉にローナンは頷き、そして
「さて、確認しよう。
そのように村人達に問いを投げた。
――村人達は皆、言葉は違えど賛同した。
◇◇◇
「では傭兵の皆様方、事の次第はアインから聞きましたが……あなた方から説明していただけますかな?」
「ああ、わかっている」
そう言って前に出たのはトラヴィスだった。
「傭兵のトラヴィスだ。一宿一飯の恩、ということでこの辺りのダンジョンを調査していた。結果、二つのダンジョンを発見、しかし傭兵のみでこれらの攻略は不可能と判断。そこで自警団に協力していただきたい」
村人達はざわめいた。
「ダンジョンが二つもあるのか」「……待て、ゼオさんたちは大丈夫なのか!?」「そういえば何の音沙汰も無い」「まさか――」
助けを呼ぶために村を出た人々の末路を想像して顔を青くする中トラヴィスは冷たく言い放つ。
「――まだ話の途中だ。お静かに願いたい」
「傭兵さんそれどころじゃ」
「捜索隊を組んでる時間はない、と言っている――あの刀の言葉が真実なら少なくともこれから一週間で何をするにしても邪魔になる狼共の巣を攻略する必要がある」
「その理由をお尋ねしても?」
ローナンの問いにトラヴィスは頷く。
「まず村を守るために件のダンジョンを攻略するにしてもその間の村の防備が足りなくなる。オルトロス――二つ首の狼という群れの統率者が出てきた以上、今後は一つの群れの頭数は増え、襲撃の回数も増える上に行動範囲も広がる可能性が高い。複数の箇所を同時に襲撃されることもあるだろう。だが自警団の人数では対処が遅れ、犠牲者が出るかもしれない。そうなる前にここを叩く」
「勝ち目はあるのですか?」
「幸いなことに狼の巣はオルトロスが出てきたばかりだ。大仕事になるが、自警団の協力さえあれば一週間での攻略は可能と見ている」
「危険は無いのか?もしかしてダンジョンの中に入ったりは……」
「もちろん自警団にも魔物退治をしてもらうが素人を慣れさせるだけの時間は無い以上、直接ダンジョンの中に入るのは我々傭兵だけだ」
トラヴィスの言葉に対する村人の反応は多くは安堵し、不満げにする者が少数とで別れた。
「あわよくばダンジョン制覇の名誉が得られるかも」と考えたのだろうか?
昨日発破を掛けてしまったドゥルヴァを中心に自警団員に多く見受けられる。
確かにカインズは彼らを見て「兵士顔負け」と言ったが、それはあくまで連携での話であって、個々人の実力は素人よりマシ程度。生まれたばかりのダンジョンならともかく、成長しているダンジョンの踏破は無理だ。
(口は災いの元、だったか?)
ヤマトに伝わる戒めの言葉を思い出しつつ、カインズはやれやれと頭を掻く。
なにせこの説明もまだ前半分が終わったばかり。重要なのはここからだ。
「問題はもう一つのダンジョン……おそらく2年半以上放置されていたであろう人食い熊の巣だ」
「……問題?何が問題なんだ?」
ざわめく村人達に対し、トラヴィスは端的に答えた。
「
ざわめきがより大きくなった。
ダンジョンが攻略できない、ということは放置するということ、そして放置したダンジョンから魔物が出てくるのは自明の理。
つまりこの村は助からないという通告だ。
実際問題、二年近く放置されたダンジョンの攻略はもっと大人数でダンジョン内の魔物を間引きつつ長い時間を掛けて行う長期戦である。
しかもダンジョンの最奥に待ち構える魔物の変異種、通称『番人』は年月に応じて力を付ける存在。二年も放置されている番人相手なら装備を整えた精鋭が少なくとも10人は欲しい
それに対してこちらの戦力は傭兵五人と自警団十数人。しかも自警団側の武器は木製の物が多い。
キイチが言っていた通りに人も、武器も、練度も足りないが、カインズはそこに時間を付け加える。
――全く以って無駄な思考だ。二年前、自分たちが助けた命を見捨てられる訳が無い。
「悪いがオレたちは英雄じゃなくて傭兵でな。犠牲を許容してまでダンジョンを攻略しようなんざ思っちゃいねェ。やれることしかできねぇのさ」
「提案できるのは障害となる狼の巣を踏破してから貴様らを他の街へと避難させることぐらいだ。もちろん、その護衛も我々が引き受けよう。カインズ、地図はあるか?」
「おう」
カインズは懐から取り出した布地をトラヴィスに放る。
それは三年前――ある地獄を乗り越えた後に旅の選別として
トラヴィスはそれを広げて説明を始める。
「――この村の大体の位置から考えても南下してこの街に向かうのが最善だ」
「最寄の村や街では無いようですが?」
「この街に伝がある。話によると一年ほど前、かの英雄オプティマス卿が領主に任命され開拓をしているとか、彼のお方の領なら貴様らの受け入れを拒否することも無いだろう」
「オプティマス卿が!?」
――ロランド・オプティマス卿。
ルミナス王国が有するルミナス聖騎士団、第三師団を率いる団長にして三年前の魔王討伐戦役において活躍した傭兵と騎士団の混成遊撃部隊『ヴォロンタ』を指揮した名将。
その名声は国内のみならず国外にまで響く英雄の一人である。
とはいえ幼少の頃より病弱であったため、今は戦線を退き、戦後による混乱の中にある国領の一部を与えられ、領主としてその辣腕を振るっているとか。
その名声にあやかる形で説得するつもりだったので知っていてもらえて大助かりである。
なんせ
(まぁ、
「ああ、あの方は難民の受け入れにも積極的と聞いている。きっとあなた方のことも受け入れてくださるはずだ」
トラヴィスの言葉に村人達は口々に話し始めた。
「オプティマス卿は先代の頃から素晴らしい為政者だって話だぜ?」「おお!それなら安心できる」「でもこの村を捨てるのか?」「でも命には代えられないだろ?」「じゃが住み心地はどうかのう?」「それは……まぁ領主に仕える、なんてことここ数十年無かったからな」「それに為政者が素晴らしいからと言って、元居た人達が余所者の儂らをすんなり受け入れてくれるともかぎらんよな?」「そうだけど仕方ないことなんじゃ」
喧々諤々。村人達は先の不安を語り合う。
確かに気持ちは分かるが、そんなことを言い始めたら動けなくなる。
「最終決定はあなた方に委ねるが、いずれにしろあの狼の巣を潰す必要があることに変わりは無い。自警団にご協力願えるだろうか?」
トラヴィスの問いかけにそのように声を上げたのはドゥルヴァだった
「村を守るのは自警団の義務ゆえ、むしろ手を借り受けられるのは有り難きお言葉……しかし、この村を捨てる以外の道は無いのか?援軍を連れて帰ってくる者達を見捨てろと?」
「……僅か一ヶ月の残り時間に圧倒的に不足している戦力、そんな中で不確かな増援を期待して皆殺しにされるのを待つつもりか?」
「時間は一ヶ月とはいえ残されているのだろう?その間に援軍が来たなら協力すれば……」
トラヴィスは呆れたとばかりに大きく、深く、溜め息を零した。
「一ヶ月という時間にはダンジョンから離れる時間も含まれている。馬の数が少なく老人の多い現状、その全員を救うとなると馬に荷馬車を引かせ家財道具や老人を乗せての大移動だ。その歩みは遅々となることは想像に容易い。そのような状態で一ヶ月後に出発などしてみろ、雪崩れ込んで来る魔物に追いすがられ皆殺しになるのは確実だ。そうなる前にダンジョンを攻略できるのが最善だが、それが出来ないならば別の守りが万全な場所に逃げ込む他に無い。それとも村諸共――」
「――トラヴィス」
カインズの呼びかけに、トラヴィスは言葉を止めて更に息を吐く。
「こちらからの話は終わりだ――行くぞカインズ」
「あいよ。そんじゃ、後はアンタ達で話し合ってくれ。つっても時間が無いから今日中には動きたいんで早めにしてくれると助かる――あ、余り遠くには行かねぇから安心してくれ」
それだけ告げて、二人は集会所を出ることにした。
集会所を出る間際に、アインから村人達に声を掛けていたのを見て、後は任せた、と胸中で手を合わせて、そのまま視線を切ったのだった。
◇◇◇
「さて、あとはアインとキイチ次第だろうが、どう転ぶか……貴様はどう見ている?」
「成功3割、失敗7割かねぇ?ま、
実を言えば、狼の巣を邪魔だと思っていたのはカインズたち傭兵も同じだった。
そもそもカインズが提案したダンジョン調査をトラヴィスが拒否しなかったのは
この村に到着するまで出くわした魔物を屠ってきたし、助け合えば生き残るだけの技量を彼らは持っているが、機動力と数で攻めてくる
しかもそれとは別に
しかし『狼の巣』の攻略には人手が足りず、時間が掛かってしまうのは明白。だからこそ、トラヴィスは村の自警団の協力を欲していたのだ。
だが、隣で軽く笑うカインズは、更に仕事を増やしたのだ。
――よし、ついでに村の人達も逃がすとすっか。
本当にお人好しである。
「僕らの障害は『狼の巣』だけだというのに
「協力してもらって見捨てるとか夢見が悪くなるじゃねェか。そう言うお前だってキイチのオッサンの前で言わなくても良いこと喋ってただろ。あれって要するに
カインズはそのように言ったが残念ながらそんな考えで言った訳では無い。ダンジョンを見つけた帰りに、嬉しそうにアズサが言ったのだ。
――ダンジョンの話をしたら、あの人のことや、村の人
そうだろうな、とトラヴィスも理解していたし、自分も巻き込まれるのだろうことも想像に容易かった。何せヤマトで幾度と無く繰り返したことだ。これが初めてではない。
しかし損得も無い善意を疑うのは人の
そしてカインズという男はそんな当たり前を知らない男ではない。
「僕が言わなければお前が言っていただろうよ」
「まぁな。頼れる奴がやってくれるなら任せもするってもんだろ?」
カインズは悪びれずに答えた。
「違いない」
トラヴィスは薄く口角を上げた。
「貴様の交渉下手さはクルースも呆れていたからな」
「……そ、それはそうとキイチのおっさんに感謝しねぇとな」
話を逸らすカインズを鼻で笑いつつ、トラヴィスもその話に合わせる。
「あの様子だとローナン氏も示し合わせてくれていたようだな」
「だなぁ……前からダンジョンのことで相談でもしてたのかね?」
「そこまで僕が知る訳無いだろう?」
「だよなぁ~」とのんきにカインズは言いつつ、空を仰いだ。
トラヴィスも釣られて空を見る。
日が中天に差し掛かろうとしている。もうじき昼時だろうか。今頃警戒してあちこち歩き回っているクルースとアズサ、ルビーが腹を空かす頃合かもしれないが、村の人々はそれどころではないだろう。さて、どうしたものか。
そんなことを考えていたら、カインズが笑顔でこんなことを言ったのだった。
「ま、結局の所、
何が言いたいのかは良く分かる。良く分かるが、色々台無しの間違いをしている。
あっはっはっは、と笑うカインズに、トラヴィスは呆れ顔で言った。
「それを言うなら
――自警団もダンジョン攻略に協力します。
その答えを聞いたのは、夕闇迫る黄昏時であった。
【没シーン】
『よくぞ参られたお客人。この身では出迎えの用意すら儘ならんが、何、安全だけならば保証しよう』
女の声が脳裏に響く。
――カインズは背にアインとルビーを庇いながらもいつでも叩き斬れるようにと油断無く洞の前を陣取るように突き立つ刀を見ていた。
刀身には錆が浮き、柄や鍔には青い苔が生えている。だが、錆こそ浮いてはいたが刀身は欠けている様子も無く、柄の布地もしっかりとしているように見えた。
(ありゃぁ……思ったよりは新しいな)
傍目から見れば古ぼけた刀に見えるだろうが、実際は抜き身のまま放置され雨風にさらされた結果と見るべきか。
二年間も放置されればこうなるのは想像に容易かった。
「安全を保障する、ねぇ。オレの後ろに居る二人はお前さんに魅入られそうになってたんだが?」
『……ム?何を大げさな……ってなんじゃこれ!?』
大きな女の声が響くとそのまま静かになる。
「……おい、どうした?」
『し、暫し待たれよ………何がどうしてこうなった!?あ、そこな小童どもは妾を絶対に見るでないぞ!?絶対じゃぞ!?』
早口で捲し立てる刀の声はあまりにも人間味があって最初に感じていた超常的存在を思わせる貫禄など、霧散してしまっている。
呆気に取られたカインズは、思わずトラヴィスに呼びかけた。
「……トラヴィス?」
「口には出さない方が良いだろうな。八つ当たりされたら堪った物ではない。気長に待つとしよう」
そういうことじゃないんだけどなぁ……とジト目を向けたカインズだったが、トラヴィスは我関せずとばかりに傍らにある木に背を預けた。
仕方ないか、と溜め息を漏らし先ほどからブツブツと脳裏に響いてくる女の声に苦笑いを零して刀を見守ることにしたのであった。
――10分経過
『ぬぅ……対魔物の呪殺結界が、いつのまに死の苦しみを知らぬ者に死を齎す結界になっておるんじゃ……ということはあの狸娘も……修羅の世だのう』
「暇潰し」
暇だな、と空をぼんやりと見上げていたカインズに、ルビーが腰に付けたポーチから木で出来たカードの束を取り出したので、そのルールをアインに説明しつつ、遊びに興じることにする。
トラヴィスはその様子を見ていた。
――20分経過
『……地脈に変化があったのか、この妾としたことが見逃しておったわ』
「やった!勝ったッス!」
「カーッ!今回はブタかーッ!」
「むぅ」
――30分後
『ふ、ふふ、なんという難解な呪じゃ……これを作った奴は天才か?ならばこれを解けるのは天才たる妾だけじゃな!……作ったの妾じゃったわ、てへぺ――』
「勝ち」
「くぅぅ……全然表情が読め無いッス」
「こいつは一本取られたぜ」
「言うほどわかりにくいとは思わんがな。どれ、僕も混ざるとしようか」
『……』
――40分後
「そら、僕の勝ちだ」
「あ、あれからほぼほぼ勝ってる……」
「むぅぅぅっ!」
「トラヴィスさん大人気ないッス!」
「――傭兵さん、なんで俺の声真似するんスか」
「悪い悪い騙されると思ってよ」
「……全然似てないッス」
『いいもん、いいもん。これが終わったら混ぜてもらうんじゃもんね……グスン』
――50分後
『うぇぇぇん!ずるいぃぃぃ!妾も混ざりたいぃぃぃ』
「仲間はずれにして悪かった!ほら一緒に遊ぼう、な?」
『駄目なんじゃぁぁぁぁ!まだ解呪出来てないから童らが死んじゃうんじゃよぉぉぉ』
「死ぬんすか!?」
「それは、ダメ。カード、お預け」
『わぁぁぁぁぁん!』
――――
没理由:長くなりすぎ&妖刀ちゃんに残念属性を付与しようと思ったけどこのあとの展開を考えているうちに「それはどうなの?」となった結果没になりました。
でもこういう「キャラクターの残念さ」が逆に魅力になると感じるようになったから「こ○すば」ってすげぇな、って思う(マテ)
なお見た目は刀だからすっごいシュール。
でもその結果が場面スキップとかいう最低な手段になってしまった!ガッテム!
それとは別に、一話を読んでたならばお察しだと思いますがこの後一日どころか現実だともっと掛かりそうな作業をこのあと魔法抜きでやらせるんで、日数を変更しようかと思っています。
……あ、この辺りはあっさりダイジェストにしていわゆる冒頭に戻る的な感じにする予定にしています。