続けるかは未定です。かぐや様のナレーションが擬人化したらこんな感じだろうなっていうお話。

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続けるかは未定の作品。かぐや様のナレーションの擬人化を考えたアホな作品です。


語部くんは黙れない

「私立秀知院学園!!かつて貴族や士族を教育する機関として創立された由緒正しい名門校である!!」

「か、語部(かたりべ)君…?急にどうしたの?」

「貴族制が廃止された今でなお富豪名家に生まれ、将来国を背負うであろう人材が多く就学している…」

「う、うん。そうだね。パンフレットにも書いてあるし」

「そんな彼等を纏め上げる者が凡人であるなど許される筈も無い!」

「あ、白銀会長と四宮副会長だわ!」

 

 前から颯爽と歩いてくるのは2人の男女。1人は目付きの悪い茶髪の少年。もう1人は年柄にもなく赤いリボンを着けた少女だ。俺は少女の方に目を向け、語る。

 

「この学園の副会長である四宮かぐや…苗字の四宮と聞けば、あらゆる産業に於いて名前を聞かないことは無い、かの四宮グループを思い出すだろう。なんと総資産は200兆円…!その宗家である四宮雁庵の長女が彼女だ。血筋の優秀さを証明するかのように、彼女もまたあらゆる分野で輝かしい成績を持つ…まさに文武両道と言うやつだ」

「うん、そんな長いセリフ疲れない?」

 

 だが、彼女はこの学園においてはNO.2に甘んじている。それは彼が居るからだ。彼こそはこの学園、いや、全国有数の秀才…!

 

「生徒会長の白銀御行。彼は偏差値70を超えるこの学園に於いて不動の1位!全国模試では四条帝に破れはしたものの2位の座を手にした男。四宮かぐやが多才であるならば、彼は勉学だけで頂点に登り詰めた。生徒会長に相応しい振る舞いで生徒だけでは無く、教師からも人気が高い…そして彼の襟に着いた会長だけに受け継がれる純金の飾りは200年の歴史を誇る。その重みに耐えられる者こそが生徒会長になりうるのだ」

「長いよ、語部くん…もう白銀会長も四宮副会長も行っちゃったし」

「…そうか」

 

 俺は息を整える。人を語るのだって立派な仕事だ。語り手が居て、はじめて物語は読者に届けられるのだ。

 

「ところで語部くんは自己紹介しないの?」

「メタなことを言うな、無粋な奴め。あと語り手に詳細な情報を求めるなよ。何処にでも居る一般的な高校生だ。語部(かたりべ)と生徒会庶務であることだけ覚えておけ」

 

 それだけ言うと、俺は会長と副会長を追って静かに生徒会に入る。主人公ではなく語り手である以上目立たないように最大限に影を薄め、端っこで事務作業に取り掛かる。その間も語り手として動かなければならない。彼らの心象を読み解き、語る。

 お茶を注いだ四宮副会長が口を開く。勿論、俺の分は無い。

 

「なんだか、噂されているみたいですね。私たちが交際している…とか」

 

 何気なく噂として語る彼女だが、その交際しているかもという雰囲気や情報流したのは、彼女の従者である早坂愛だ。まぁ、流さなくともお似合いではあると思うが。それに対して何も思わないかのように白銀会長は目を瞑りながら語る。

 

「思春期特有のものだな。聞き流せばいい」

「ふふ…そういうものでしょうか。私はそう言う事柄に疎いので、つい」

 

 …こいつらまた面倒臭いことしてるな。語り手としては語るだけなので干渉はしないが早く付き合えよ。大方、白銀会長も四宮副会長もあちらから告白してくるなどと考えて、付き合うまで秒読みなどと脳内お花畑なご想像をしているのだ。馬鹿め、そんな訳無いだろうに。

 

 

「━━という訳で時間の問題だろうと高を括っている内に、半年が過ぎた!しかも、その間に進展なし!!馬鹿め!!」

「!?語部くん…!?」

「失礼、藤原書記。俺としたことが」

 

 隣で遊んでいた藤原書記を驚かせてしまう。主要人物に過度な干渉をするなぞ、語り手失格だな。

 等と少し脳のリソースを別のことに割いていると2人が意味の分からない話をし始める。

 

「庭の噴水にある甘いりんごとさくらんぼのレリーフ━━」

「俺の妹が昔暑いからといって噴水に入って━━」

「この何も無かった期間に2人の思考は『ま、時間の問題だよね。付き合ってもいいよ?告白するなら』から『告白しろ、なんとしてでもさせてやる』と馬鹿げた思考へとシフトしていた…!!」

「また語部くんがおかしくなっちゃいました…」

「この生徒会室の中で高度(笑)な駆け引きが行われていることに書記の藤原千花は全然気付いていなかった!!…これで気付く方がおかしいが」

「え?なにに気付いてないんです?」

 

 相変わらず語り手にも干渉してくるイレギュラーだな、藤原書記は。俺は事務作業をしながらも彼女の気を逸らす。

 

「何でもない。ところで藤原書記は何か言おうとしていたのでは?」

「あっ!そうでした。ありがとうございます、語部くん!」

 

 花開くようなアホな笑顔を浮かべて、彼女は白銀会長と四宮副会長の元へ駆け寄っていく。あの頭に着いているリボンが少し大きくなってるのに気づいた俺はそっと目を逸らした。あれは知能を吸うのか…

 

「会長、かぐやさん!私ですね、懸賞で映画のチケットが当たったんですけど、家の方針でこういったものを見るのは禁止されてまして…どなたか興味がある方がいらっしゃればお譲りしようかなと。映画の公開が今週末までなのです」

「ほう…」

 

 白銀会長が食いつく。なるほど、考えたな。四宮副会長。白銀会長はドがつくケチであり、もったいない精神の塊。そんな彼が映画のチケットとは言え、廃棄される可能性やタダで映画を見れる可能性があるなら興味を持たないわけが無い!彼は既に手帳でスケジュールを確認している。

 

「四宮、俺たちで…」

 

 四宮副会長を誘おうとする白銀会長。だが藤原書記の衝撃の一言によって彼の誘いは別の意味へと変貌する…!

 

「なんでも、この映画を男女で観に行くと2人は結ばれる、なんてジンクスがあるらしいですよ!素敵ですね」

「あら…会長、今、私の事を誘いましたか?」

 

 四宮副会長の口撃が始まる。

 

「男女で観に行くと結ばれる映画に白銀会長が誘った…ということは告白に等しい…!そしてそれを誤魔化さなければ白銀会長は告白したという事実を広められかねない!!恋愛関係に於いて『好きになった方が負け』は絶対のルール!!即ち、『告白した方が負け』!!プライドの高い両者が自ら告白するなどあってはならない!!」

 

 白銀会長は思考する。慌てて誤魔化せば『お可愛いこと』状態になるだろう。…普通に行けばいいと思うけど。ただプライドの高い彼は逃げる選択肢を取らない!

 

「俺はそのようなジンクスなど気にせんが…お前はそうでは無いようだな。どうする、四宮?お前は俺と行きたいのか」

「…なるほど。白銀会長はジンクスなど気にしないというスタンスを取ることによって四宮副会長がそういうジンクスを気にする。つまり自分に気があるということにしたい…!なんて無駄な行為なんだ」

 

 四宮副会長は数秒押し黙る。ただそれは常人に於いての熟考に値する!彼女のことだ。恐らく断ることより会長から誘われるのを選ぶだろう。

 

「そう、ですね。やはりどうしてもこういったお話は信じてしまうもので…行くならせめて、もっと情熱的にお誘い頂きたいです」

純粋無垢(カマトト)…!?恋愛方面に興味があると白銀会長に提示しつつ、馴れていないからこそ、男の方から誘って欲しいという雰囲気を作る。上手い切り返しだ!」

 

 これには冷静沈着(笑)な白銀会長もたじたじだ。自分から誘ってもいいかな、なんて思い始める!今まであった矜恃を四宮副会長の可愛さによって崩壊させられる。その隙を見逃すような四宮副会長では無い。

 

「私だって恋のひとつもしてみたい年頃なのです」

「手を握ることで自身の可愛さをアピールする。いつの間にか、この思考戦は詰将棋の様相を呈し始めている!攻められている白銀会長が逆転するには先に数手先まで読み切った方の勝利…」

 

 だが彼らの思考はひとつの混沌(カオス)によって乱される!!

 

「ジンクスのある恋愛映画が嫌なら、『とっとり鳥の助』のチケットも有りますよ」

「とっとり鳥の助とか絶対面白くないだろ…」

「え、面白いですよー?」

 

 つい本音が出てしまった。語り手が私情を持つことは禁止されている。別にそんなことはないと思うが。取り敢えず語ろう。

 

「理論が完成する前に投下された爆弾によって、理論は再構築を強いられる!しかも増えてしまった選択肢を処理しなくてはならない!!故に糖分摂取をしなければならないが、糖分つまり餡子の詰まった俺が持ってきた饅頭の残り一つだけ!即ち、この饅頭を手にした者が━━」

 

 両者とも手を伸ばす。スローのように、時間が鈍重になる。それを見届けることも無く俺は腕時計を見ると、荷物をまとめる。事務作業は放課後にでもやるか。

 何故見届けないか?それはこの勝負に終わりを告げる鐘が鳴るからだ。

 

「あ、午後の授業始まりますね!語部くん、行きましょうか!」

「さすがイレギュラーだな」

「ふぇ?」

 

 饅頭を手にしたのは藤原書記だ。この少女のことは誰も予測出来ない。…語り手としては彼女を追うのをやめたいくらいに。

 

「本日の勝負結果は…両者敗北っと」

 

 手帳に書き込み、藤原書記と共に教室へと歩いていく。処理落ちした白銀会長と四宮副会長を置いて。


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