本作のルール
・世界観はアニメ2作目『遊☆戯☆王 デュエルモンスターズ』の戦いの儀後と『ソードアートオンライン』が同一世界線になったIFルート。ただし、アニメ無印、原作、真DMの要素はちょこっとだけあり。
当たり前のようにアーガスとKCが同じ世界観にあるし、時々ナウい言語も飛んでくる。
ゲームの性質上基本、カードゲームを始める前の頃のノリ。
・シンクロ、エクシーズ、ペンデュラム、リンクは無し。それと特別なモンスター以外の発売日タイミングは度外視。最近のOCGに詳しくなくても大丈夫。
・ゲームはSAOとデュエルモンスターズクエストっぽいナニカを混ぜ込んだ状態。そのためビーストテイマーの扱いが若干違う。ビーストテイマー……遊戯王原作を知ってる人なら色々察するかも。
「どぉりゃぁ! オラァ! あだぁ!」
開けた草原で男の何処か間の抜けた声が木霊する。
そしてどすっ、と音を立てて倒れた金髪ロングの……まるでライブハウスでギターを掻き鳴らしてそうな男は脛を抱えてもんどり打った。
「あたたた……」
「大丈夫? 城之う……じゃなかったジョーノくん」
「お、おう……」
金髪……否、男、城之内克也。
今ワケあってジョーノと名乗っていた。
そんな彼の後ろで茶髪で小柄な少年がジョーノを心配している傍ら、眼前のバケモノ……というか大きさは腰くらいの猪をジョーノがギロリと睨みつける。
青猪はブヒブヒと鼻息荒く、ジョーノを今度こそぶっ飛ばそうとその4つの脚に力を込めている。腰ぐらいの大きさとは言え大の大人を吹っ飛ばすことくらいは簡単だろう。
というか実際に何回か轢き飛ばされたジョーノは舌打ちする。
「ったく……こんな猪ヤローにいいようにやられるなんてよ……モクバの奴を助けた時のゲームみたいにカードさえありゃあ楽なんだろうけどなぁ……」
ジョーノは物寂しげに自分の左腕を見る。そこには何もない、素肌だけだ。
「そうはいかないよ。たしかに前やったデュエルモンスターズクエストでは事前に用意したデッキのモンスター出せば良かったんだけど、このゲームにそんな概念は無いし……」
「不便だなぁうぉっと!?」
危なげにジョーノは青猪の突進をギリギリ寸前の所でかわす。後ろにいた小柄な少年もひょいと青猪の突進から逃れた。
だが、ジョーノのHPバーは既に半分を切っており0になるのは時間の問題だ。
「危ないよ! 城之内く……ジョーノくん」
「もうほぼ言ってんじゃねェか慣れろよな遊戯……あっ!」
慌ててジョーノは口を抑える。言ってるそばからこれだ。
遊戯……もといユギは苦笑いしながら人差し指を立てて口を開いた。
「ある特定のモーションを起こしてソードスキルっていうものを発動すればいいんだって」
「モーション? 動きって事か?」
「うーん、構えかも」
ジョーノはぶんぶんと色んな動きを試してから、構えた片手剣《ランドスターの剣》が鈍い鉛色から青色に発光した。
そしてジョーノの覚束ない動きから一転して、滑らかな動きで左足が地を抉り蹴った。
「うぉりゃぁぁぁ!」
ジョーノの叫び声と共に距離は一瞬にして詰められ、そして水平に一閃、青猪を真っ二つに斬り裂く。
青猪から表示されたHPゲージは瞬く間に減り──
「ぷぎー」
青猪はあまりにも情けない断末魔と共にまるでガラスのように砕け散った。
ジョーノは恐る恐る後ろの砕け散った青猪のいたところを振り向くとその表情は歓喜の色に変わった。
「いよっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! ざまぁみろ!」
「やったねジョーノくん!」
拳を点に掲げ跳び上がるジョーノのそばで獲得経験値と獲得資金が表示される。
これが初の敵モンスターの撃破だ。
ユギと拳と拳をぶつけ合いジョーノは手に持った剣を背中に背負った鞘に収めた。
「強敵だったぜ……」
ジョーノは何故かキメ顔でガッツポーズをする。戦闘開始から15分近くの泥仕合を制するまでの苦労は推して知るべしだ。思い出したかのように疲れが一気にでてきたようでゆらりとふらついてから尻餅をつく。
そんな彼にユギは容赦ない一言を溢した。
「でもあの青猪……名前はフレンジーボアって言うらしいけど、デュエルモンスターズで言う1体だけのワイトみたいなものらしいよ」
「ゲェーッ!? 嘘だろ……」
ユギがトドメを刺したお陰でジョーノは地面に転がった。視界に広がる茜が差し始めた空は吸い込まれそうなくらいに綺麗だった。
遊戯と友達になるより前本田と一緒にヤバい連中を喧嘩でぶっ飛ばしたあの頃をふと思い出すほどに。
「にしても、あの時を思い出すな……こいつもよく出来てやがる」
あの時。
どの時なのかはさておいて、遊戯や城之内がこれまで触れてきたバーチャル・リアリティーに並んで精度は高いと体感で思えた。
技術の進歩をありありと感じさせるものだ。
今この場にいるのは武藤遊戯と城之内克也が操るアバターであり、遊戯はユギと。城之内はジョーノと名乗っている。
「しかもこのゲーム……ソードアンドモンスターズオンラインだっけ? そいつ動かす機械もカプセルじゃなくなってるし、なんかヘルメットみたいなモン被るだけってんだからな」
そうだ。このゲームの筐体はカプセル状ではないのだ。あれから何があったのか分からないが手で持ち歩きできるヘルメット型のマシーンとなって生まれ変わった。
そもそも主導となった開発会社が厳密に言えば違うらしいが。
「なんか海馬助けた時も乃亜ん時もそうだが、変な感じだぜ。ヘルメット被ったー! って感じすらしねぇ」
ジョーノはふと、自分の頭にぽふ、と触れる。
髪の毛の感触。リアルと違うロングヘアーだ。自分の脳を騙してこんな仮想空間に身を投げ入れていると思えば中々エグい気がしなくもない。
不思議な気分だ。これまではあんな切迫した状況だったのに、今は友達と遊ぶためにバーチャル・リアリティーの領域に足を踏み入れているのだから。
「それにしてもジョーノくんも、まさかこのゲームを始めてたなんて思わなかったよ。ボクが知ってる限りじゃ、このゲームゲット出来てたの花咲くんくらいだし」
「あぁ……オレだって思わなかったぜ」
遊戯はガチガチのVRMMORPGなんてものを城之内が興味を持つなんて思いもしなかった。
そして城之内本人もきっと想定しちゃいなかった。
「まさかあんなことになるなんてよ……」
◆◆◆
そう言えば食材何もねぇよなぁ。
下校中、城之内は遊戯や本田と別れてからふとそんなことを思い出した。
元々城之内自身に自炊スキルは多少ある。なんせデュエル大会での賞金の貯蓄があれど、多少金の工面というものが必要で、無駄にやたら高いメシにありつくのは自殺行為だ。
バトルシティの出来事やらドーマがらみでのアメリカ遠征やらKCグランプリやら闘いの儀やら何やらで、まともに家に帰らず自炊しちゃいなかったので完全にナマっており、ずっと本田たちとバーガーワールド行ったり、一人牛丼をかき込むか、家でカップ麺ばっかりだ。
これまでの稼ぎでの貯蓄があれどこのままではよくない。
──これじゃあ静香に怒られちまいそうだ。
故あって別居している妹の顔を脳裏に浮かべながら、城之内は童実野マートに向かって足を運んだ。
それから20分。
特売の食材を買い集めた城之内は重いレジ袋片手に自動ドアを潜り出る。
こうしてまともに食材を買って出るのはいつぶりだろうか、なんてことを考えていると大きく張った声がした。
「童実野マート抽選会開催中でーす! 1等は今話題の! ナーヴギアとソードアンドモンスターズオンラインのソフトのスターターセット! 参加条件は1000円以上のお買い物のレシートを見せるだけ! お一人一回ずつ出来ますから是非是非ご参加くださーい!」
「……ほーん」
福引きだ。城之内まじまじと会場を観察する。
先に並んでいた客がレシートを見せ、よく見る抽選機を回している。そして出た色は……白だ。残念。
それはさておいて、城之内の注目を引いていたのはそんな参加者の結果じゃない。景品だ。
ソードアンドモンスターズオンラインとナーヴギア。
確か遊戯が予約したからいつか、皆でやってみようよとか言ってたっけな。
注目度MAXの新作ゲームで、初回生産分は1万台。家電量販店やゲームショップ、玩具店などの店頭に出されたものは瞬殺で売り切れてしまったとかで今日の朝刊でそんな話題で持ちきりだ。
聞いた話だとデュエルモンスターズも登場する上、そいつを仲間にすることも出来るとか。
意外なことに海馬コーポレーションがほとんど絡んでいないとか。遊戯曰く、アーガスというゲーム会社が主体でキャラクターデザインにインダストリアル・イリュージョンを迎え開発したという話らしい。
城之内はふと、財布の中に突っ込んだレシートを引っ張り出す。
金額は1032円。……ギリギリ参加条件に則っていた。
「よっしゃぁ! オレもやるぜ!」
意気揚々に城之内は列に並び、自分の番を待つ。
そしていざ自分の番が回った時、心臓が絞られるような緊張感に包まれた。
たかだかこんな抽選で命がなくなるわけでもないが、この緊張感は嫌いじゃない。
流石に決闘でギャンブルカードを使った時には劣るが。
「行くぜ!」
カッと目を見開き、ガラガラと音を立てて勢いよく回す。勢い余ったが慌てた店員にブレーキを掛けられ――そして。
カラン、と音を立てて金色の玉が出てきた。
「……え」
店員の目が点になっている。点になりたいのはこっちの方だ。
城之内はまるで錆び付いたブリキ人形のようにアタリ表と実際に出た玉の色を見比べる。
5等は白
4等は赤
3等は青
2等は銀
1等は……金
黄色なんて紛らわしい結果はない。
となればそれは紛れもなく1等。
「マジかよ……」
ナーヴギアはソフト共々クソほど高いと聞いている。
確か遊戯から聞いた話によると、ソフト含めて初期費用12万8000円。
デュエル大会で稼いでいても貧乏人からすればゾッとするような価格だ。
それが今この瞬間、手に入るという事実を目の当たりにして思考が停止していた。
◆◆◆◆◆
「ジョーノくんらしいというか、何というか」
一連の経緯を聞いたユギが笑う。ユギもとい遊戯は予約してデュエル町内大会の賞金でナーヴギアごとソードアンドモンスターズオンラインを買ったという。
俺らしいってなんだよとジョーノはふて腐れながら続けた。
「最初こそ高値で売っちまおうって思ったよ。なんせ、売り切れ続出なモンだから欲しがるやつは腐るほどいただろうし。けど、流石に学校じゃどいつもこいつも話題にしてたからどんなモンかって試してみたくなってな」
「そっか……いつか本田くんも杏子も誘って皆でできるといいな」
「そうだな」
売っぱらうよりそれも悪くないのかもしれない。
売ることに対して一瞬の抵抗が生まれる。金は新聞配達のバイトやデュエル大会で稼げばいい話だ。
「取り敢えず明日もこれやろうぜ! そろそろ夕飯の準備しねえと」
「うん」
頷いたユギはジョーノ共にログアウトボタンを押そうとウィンドウを開く。
──あれっ
ジョーノは慌てて引き出しの中を漁るかのようにありとあらゆるウィンドウを開いては閉じ、開いては閉じを繰り返した。
だが何処にも目当ての選択肢が見つからない。
「あれ……なぁユギ、ログアウトってどこのボタンだっけ?」
震え声で自分のウィンドウをちょんちょんと指す。初心者あるあるであろう質問にユギもウィンドウを開いてやり方を説明しながらすすんでいく。……が。
「一旦ウィンドウを開き直して下のところに……ない。ログアウトボタンが消えてる」
あるべき位置からログアウトという選択肢が消え失せている。
となればどうなるのか。かつてのバーチャル・リアリティーの事件を彷彿とさせる状況にジョーノは顔を青白くさせた。
「ま、まずくねえかこれ」
「流石にこれは運営がすぐ対応してくれるはずだよ。こんなことになったら自力で出るなんてことは……」
出来ない。そう、出来ないのだ。であれば解決するまで待つしかない。
外部からの力で無理やりナーヴギアを剥ぎ取られれば出られるだろうが……周りの人間が気付くかどうか。
「外からナーヴギア取ってもらえたらいいんだけど……じーちゃん気付くかなぁ」
「オレどうすりゃいいんだ……」
城之内に限っては自宅で取ってくれそうな人が一人もいやしなかった。妹の静香と母は別居、一人暮らしだ。
ユギもジョーノも途方に暮れていると、何処からか鐘の音が鳴り響いてきた。
何事か分からずユギもジョーノも背中合わせで周囲を見回す。
突然のログアウト不能な状況に、鳴り響く謎の鐘の音。
こんなふざけた状況で平然としていられるはずがない。
しかも瞬きをした途端に自然豊かな草原から、煉瓦造りの街の広場に世界が切り替わっていた。
そこにそびえ立つ中心の時計塔から、あの鐘の音が発せられているようだ。
「な……に」
強制転移。ジョーノもユギも転移用アイテムを握ってもいなかったので当然運営サイドによるものなのだろう。……ここは《はじまりの街》。ゲーム開始のタイミングで必ず訪れる街だった。
同じ境遇に陥ったのであろう、他のユーザーたちも青白い光と共に無から現れ口々にログアウトできない現状をボヤき、GMに対する文句を垂れていた。
「おい、説明しろよ」とか「どういう……ことだ」とか「まるでわけがわからんぞ!」とか今にも騒ぎが起きそうな勢いだ。
「どうやらオレたちだけじゃないみたいだな」
となれば運営が一箇所に集めて現状をアナウンスするのが自然な流れだろう。
だがしかし──現実は違った。
「おい、上……空がッ!」
ほぼ反射でユギとジョーノが視線を上に向ける。
そこは広大な茜色が広がっていたが、ただ一点だけ異物が混ざっていた。
赤い、横長の六角形が点滅している。ユギは目を凝らしてそれを見るとこう書いていた。
「WARNIG?」
意味合いは警告。そんな六角形が次々と空を侵食するかのように広がっていく。
中には『WARNIG』以外のものもある。
『System Announcement』
この二つが交互に配置されるように完全に空を埋め尽くすまで一瞬だった。
要するに「みんなちゅうもーく! 運営からの発表だよー!」ということだろう。
この場にいる面々が顔を上げ、結果を待つ。これでもう大丈夫だ、と安堵しながら。
しかし、敷き詰められた赤い六角形の隙間から、まるで血のように赤黒い液体らしきものがどろりと零れ落ちた。
あまりにも不気味な演出にジョーノは顔を顰める。
男、城之内とはいえどこの手のホラーやグロテスク系は好きじゃないのだ。
そして赤黒い液体は空中で集まり、巨大なローブを着た男の形へと変えた。
素顔はフードの影で見えないが、こいつがゲームマスターであるという確信はなんとなくあった。
『プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ』
よく通る、男の声がそのローブから発せられた。
『私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロール出来る、唯一の人間だ』
絶望が、言の葉となって無辜のプレイヤーに降り注ぐ。
『プレイヤー諸君は、すでにメインメニューからログアウトボタンが消滅していることに気付いていると思う。しかし、ゲームの不具合ではない。――繰り返す、ゲームの不具合ではなく《ソードアンドモンスターズオンライン》本来の仕様である』
闘いの儀でアテムと別れてから数ヶ月。
その日、ボクたちはゲームという名の監獄に閉じ込められてしまった。
ここから脱出する方法はただ一つ。
このゲームを、ソードアンドモンスターズオンラインをクリアすること。それだけだった──
Q:城之内君と遊戯のアカウント名は何故そうなった?
A:ゲーム、真デュエルモンスターズシリーズから取ってます。
遊戯=ユギ 城之内=ジョーノ
Q:バーチャル・リアリティーの事件って?
A:DMクエスト編と乃亜編のこと。いずれも海馬にとっては分岐点となる出来事尽くしなので是非是非。モクバが可愛いぞ!!!!!
Q:あれ? 城之内のパッパは?
A:アニメだと不明。本作では一人暮らし設定。原作次元だったら死んでた。
Q:なんかSAOのモンスターもいるけど、デュエルモンスターズはいつ出るの?
A:次回にて遊戯の窮地を救ってきた「あのモンスター」が出ます。
Q:魔法罠は?
A:装備魔法とかは普通に装備品として、罠はアイテムとして出てきます。落とし穴とか。
Q:海馬はなにしてんの?
A:お仕事中。デュエルモンスターズが出るとかで何故かKCに流れ弾が飛んできている。一応このゲーム自体はアーガス製作。I2がキャラクターデザインを貸しているそうです。
Q:おい、デュエルしろよ
A:調整中