フランドールの旅   作:めそみや

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ロスワのにとり可愛かったんで早くにとりと絡ませたいです


神坐す山

 フランドールと文の元へと駆け寄ってきた緑髪の少女は2人を見るなり、参拝客じゃなさそうねと言って肩を落とした。

 彼女の服装は白と青を基調とした巫女服のようであり、どういう訳か腋の部分が空いているデザインはどごぞの紅白巫女を彷彿とさせる物であった。

 

「全く、失礼な方ですね」

「そうねぇ、流石に会って早々落ち込まれるとは思いもしなかったわ」

 

 喜んで出てきておいて勝手に落ち込むといった少女の失礼極まりない行動にも、2人はこれといって怒る様子も無く、呆れるばかりであった。

 

「あぁ、失礼しました。そこのロープウェイがつかえなくなってから、参拝客の数がめっきり減ってしまったものですから、つい」

 

 緑髪の少女は、先程ロープウェイと呼んだ架空索道の不調による神社の不況を嘆いている様で、久しぶりの来客である2人を参拝客だと勘違いしてしまったのだという事であった。

 文が言うには、少女は東風谷早苗という名であり、この神社の風祝と呼ばれる巫女の様な物であるそうだ。

 早苗と呼ばれる少女は、近年、この神社の二柱である神と共に、幻想郷に信仰を集めに来たそうだ。

 

「そういえば、其方の方はどなたですか?」

 

 早苗は文に顔を向けて、フランドールについて尋ねてきた。

 

「レミリアさんの妹さんなんですよ。フランドールさんです」

「フランドールよ。東風谷早苗さん」

 

 早苗は、フランドールがレミリアの妹であると聞いて驚いた様でフランドールの事をまじまじと見つめ始めた。

 

「へー、レミリアさんって妹さんが居たんですねぇ。確かに、形は全然似てないけど大きい羽があるしなぁ」

 

 暫くの間フランドールを見つめ続けていた早苗であったが、満足したのか文へと視線を戻した。

 そして、唐突に2人に向かって話を切り出してきた。

 

「さて、参拝以外でうちに来るという事はどんな要件があるんですか?」

 

 早苗が言うには、参拝以外の目的でくるのは営業関連の話が殆どである為に、今回も吸血鬼がいる事は無しにして、天狗である文が来たことからその話であると踏んだ様であった。

 ここまで早苗と文の話を聞いていたフランドールが早苗に向かって口を開いた。

 

「此処に来たのに理由なんてないわ。強いて言うならついでだもの」

「まぁそうですね。私はフランドールさんの密着取材をしてる訳ですから自然と付いて来ただけですので」

 

 2人の言葉を聞いた早苗は、ついでという意味がよく分からなかった様で2人に向かって今までの経緯を話す事を要求してきた。

 

「んー、何処から話せばいいんですかね」

「全部気になりますよ!何年か幻想郷で生活してきましたけど、レミリアさんに妹さんがいる事さえ知らなかったのに、それがいきなりうちに来る事自体おかしいじゃないですか!」

「ちょっと面倒だけど全部話せばいいんじゃない?」

 

 文はフランドールの意見に納得し、早苗に話す事を決めた。

 2人の話に興味を持った早苗は、立ち話もなんだと言う事で2人を家へと招き入れた。

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、ほんとにうちに来たのはついでだったんだ」

 

 早苗は境内でのフランドールの言葉に納得した様な表情を見せた。

 フランドールも早苗の態度に満足気な表情をしている。

 ここまでの経緯はフランドールに代わって殆ど文が説明をした。

 文はいちいち言う事がややこしいフランドールに説明をさせまいとしており、フランドールの方も文の思考は読めている様で、文の方を見て微笑んでいた。

 フランドールによる多少の補足は有ったものの、文は、フランドールが紅魔館を出て、博麗神社、永遠亭、妖怪の山を経てこの神社に至るまでの経緯を説明し終えた。

 

「それにしても、貴方がロープウェイって呼んだあれが壊れちゃってたのはちょっと残念だったわね」

「ほんとですよ……こっちもあれが動かないとなると人里からの参拝客が激減しちゃうもんでして……。今神奈子様が河童達と様子を見に行ってる様なんですけどねぇ」

「その神奈子様ってのは此処の神様?」

「そうです。ニ神の内のお一人である神奈子様ですね。もう一人の方は諏訪子様と言うんですよ」

「へぇ、じゃあ其処に居るのがその諏訪子様っての?」

 

 早苗の言葉を聞いたフランドールは、部屋の奥の方にある一点を見続けていた。

 早苗はそんなフランドールの言動に首を傾げながらも、彼女が目を向けている方へと顔をやる。

 すると、突然その場に頭に不思議な帽子を被った少女の姿が現れた。

 

「あれま、よく気づいたね」

「んー、何となくね」

「あれ、諏訪子様じゃないですか。いつから居たんです?」

 

 現れたその少女は諏訪子様と呼ばれている事からも、フランドールの予想は的中していた様だった。

 

「そうだねぇ、まぁ大体こいつらが境内に入ってきた時かな」

「それ全部じゃないですか」

 

 早苗の言葉に諏訪子は笑って返す。

 

「妖怪が境内に入ってきたからちょっと警戒して見てたんだけど、妖怪にしては随分変わった事してるみたいだし、面白そうな奴だから大丈夫かなって思って出てきちゃった」

 

 諏訪子の言葉に早苗も頷いて答えていた。

 吸血鬼が昼間に出歩くのもそうであるが、幻想郷をわざわざ歩いて見て回りたいなどといった行為はやはり誰が見ても妖怪らしくないと見えた。それこそ人間が考える様なものである。

 文もフランドールの行為が風変わりである事に同意している様で、早苗と同じ様に相槌を重ねていた。

 

「……やっぱり眠いわ。ちょっと寝ていいかしら?」

 

 境内の会話から眠そうに何度も欠伸をしていたフランドールであったが、とうとう限界が来た様で、やはり欠伸をしながら目蓋の重みに敗北しようとしている。

 

「あれ、大丈夫ですか?」

「……んーだめ……夕方位に起こして」

 

 文の呼び掛けも虚しく、フランドールはその場に寝転んで直ぐに寝息を立て始めた。

 肩を軽く叩きながら再度声を掛けるが、一向に起きる気配はなく、容姿に見合ったあどけない寝顔を見せている。

 

「はぁ……こうして寝てると可愛いんですけどね」

「どうしよう、お布団出してあげた方がいいのかしら」

「神の前で寝るなんて図々しい奴だねぇ。もっと話聞きたかったのに」

 

 三人は其々の表情をしながら、すやすやと眠るフランドールを眺め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 フランドールがふと目を覚ますと、辺りを激しく叩く雨音と自分を包む柔らかな感覚に気付いた。

 何となくその場から動きたくないといった欲求に抗って立ち上がり、襖を開けて部屋を出る。

 周りの明るさや激しい雨音によって勘付いてはいたが、外を見るとやはり豪雨であった。

 

「夕立だねぇ。夏の風物詩だ」

 

 声を掛けられて後ろを振り返ると、フランドールに向けて笑みを浮かべている諏訪子が立っていた。

 

「夏の風物詩ねぇ……お陰で私は外に出られないんだけど」

「あら、吸血鬼って水駄目なんだっけ?」

「そうね、降るものだったら雨が1番怖いもの」

 

 ふーんと適当な返事を返した諏訪子はくるりと後ろへ向くとどこかへと歩き始める。

 

「付いてきなよ、夕飯出来るみたいだしさ」

 

 そう言って諏訪子は前へ向き直し、再度歩み出した。

 フランドールも諏訪子に付いて行く様にして歩き始めた。

 初めてきた場所で所々軋む廊下を歩きながら雨音を聞いていると、どうにも不思議な気分になっていく。何となく落ち着く様な、それでいて本でも読んでいたいといった、そんな気分であった。

 フランドールにとって雨は不愉快極まりない物であり、同時にその音も鬱陶しいものであったが、今日はどうした事かそれらを感じる事は殆どと言ってなかった。

 諏訪子が部屋に入っていくのを見て、続いてフランドールもその部屋へと入っていく。

 

「あ、フランドールさん。おはようございます」

「あら、まだ居たの」

「そりゃそうですよ。なんて言っても密着取材なんですから」

 

 文との会話との会話もそこそこに、誰かがフランドールへと声を掛けてきた。

 

「貴方が早苗の言ってた吸血鬼の妹ね」

 

 フランドールが声のした方へと顔を向けると、紺色の髪をした女性の姿を見つけた。

 

「あぁ、貴方が早苗の言ってた神奈子様って神ね」

「そう、私は八坂神奈子。この神社に住う神様よ」

 

 諏訪子もそうであったが、神奈子からは神と呼ばれる様な厳かな雰囲気は乏しく、どこか親しみすらも覚える様なものであった。それでいて、この二神の実力は高いものであると容易に感じる事ができる。

 フランドールにとってそれは、少しだが姉を連想させることとなった。

 

「ご飯できましたよー」

 

 早苗の声にその場に居る一同は、一斉に早苗の持ってくる料理に目を向ける。

 5人分、しっかり人数分用意された料理は早苗によって次々と食卓に並べられていった。

 普段3人で使っている所に2人分追加した訳なので、少々狭くはなっていたが守矢の3人は特に気にした様子もなく、笑顔で食事を迎えようとしている。

 

「あやや、私まで頂いちゃって良いんですか?」

「外は大雨で暫くは出れそうにないですから。それにお客さんと一緒にご飯を食べるのは随分と久しぶりだもの」

 

 早苗の表情は綻んでおり、誰が見ても楽しそうな様子であった。

 神奈子と諏訪子もそんな早苗の様子を見て、何処か嬉しげに思っている様であった。

 

「妖怪を招いて食事をするなんて聞いた時は、とうとう麓の神社の様になるのかとか思ったけれども、早苗の様子を見てると流石に断れなかったわ」

「神奈子は早苗に甘いねぇ。まぁ私も似た様なもんだけどさ」

 

 早苗が座り5人揃った事から、皆それぞれ食事を始める。

 フランドールにとってここの料理は、霊夢の作った物と比べて味付けが濃い目に感じられた。それでも、決して不味いと思うことは無く、これはこれで美味しいと思っていた。

 

「霊夢んとことは味付けが違ってるのね。こういうのも美味しいわ」

 

 早苗は、霊夢さんのとこでもご飯食べたんですねとフランドールに返し、さらに続ける。

 

「私は外の世界での味付けが染み付てますから味が濃くなりがちなんですよね。でも、お口にあったみたいで良かったわ」

 

 フランドールが文の方を見ると、文も早苗の作った料理に満足している様で、手を止めることなく食べ続けていた。

 

「そういえば神奈子様、索道の件はどうだったんですか?」

 

 早苗の質問に、神奈子は食事をする手を止めて答え始めた。

 神奈子が架空索道の様子を河童に聞いたところ、どうやら動力部分である装置の破損が見られる様であった。

 動力部分ではなく、索道自体に目を向けていた為に発見が少々遅れたとの事であったが、幸いにも破損部分は直ぐに修理出来るとのことだったので、修理後の動作確認も兼ねて1週間程で復旧出来るとの事だった。

 

「良かった〜。やっと完成したのにもう使えなくなったらどうしようかと思いましたよ」

「私も結構焦ったよ。折角苦労して天狗と交渉したのに、それが無駄になるかと思ったもの」

 

 フランドールが2人の安堵している様子を見ていると、文の方も同じ様に思ってたらしく、口を開き出した。

 

「そうですねぇ。天狗の立場としても索道の件はかなり渋った様ですし、この様な形であの索道が意味を成さなくなると、此方もあの交渉は時間の無駄だったと言わざるを得ませんでしたから。何にせよ通常通りに戻るなら幸いです。新聞のネタにもなりますしね」

 

 文が天狗としての意見を率直に述べた事で、早苗と神奈子の方も満足している様だった。

 両者の関係が円満に進む事になったのもあり、その後の食事は更に盛り上がったものとなった。

 フランドールが、間欠泉センターや核融合についての話に興味を持ったことから、早苗が誇った顔で語り出し、文の理解が追い付かなくなっていたり、今まで起きた異変について様々な事を語ったり等々。

 そうして食事を終える頃には、あれほど煩かった雨音も段々と弱まってきていた。

 

 

 

 

 

 フランドール達が食事を終えて暫くすると、雨はすっかり止んでいた。

 空には相も変わらず輝き続ける星々が漂っている。

 

「まさか貴方があそこまで話についてきてくれるとは思いませんでしたよ。

 

 縁側で夜空を眺めていたフランドールの背後から早苗の声が掛かる。

 フランドールはゆっくりと振り返ると早苗に向けて微笑んだ。

 

「結構面白い話だったわ。図書館でその話についての本を探そうと思えるくらいにはね」

 

 フランドールは、吸血鬼の弱点である核を知ることを厭わず、それどころか寧ろ理解を深めようとしていた。

 早苗が理由を聞くと、フランドールはただ何となくだと答えた。

 フランドールは、魔法を嗜む者にとって知りたくない知識なんて無いのよと微笑み、早苗の話を聞く事を止めはしなかった。

 

「そういえば、次は何処に行くか決めてるんですか?」

「いいえ、全く考えてなかった」

 

 フランドールは、今までに同じ様なやりとりを何度かした事がある事を思い出し、こういう所は変わらないなと何処か自嘲気味な気分となった。

 

「じゃあ、妖怪の山を見て回るってのは?」

 

 早苗の提案にフランドールはいくつか疑問を覚えた。

 妖怪の山への侵入は天狗達によって禁止されているものであるし、他にも侵入不可の領域があると聞いた。そんな中で山を回るなどという行為は到底不可能に思われる。

 フランドールはそれらを早苗に伝えると、早苗は大丈夫ですよと何処か自信あり気に答える。

 

「そこは私や神奈子様がなんとかします!」

「あぁ、なんも考えてなかったのね」

 

 根拠の無い自信を晒した早苗だったが、その事をフランドールに指摘されてもその自信が失われることはなかった。

 するとその話を聞いていた神奈子が話に入り込んでくる。

 

「まぁまぁ、流石にこの山中は無理だけど私らの手が掛かってる場所は大丈夫よ」

「となると?」

「明日もう一度、河童達と動力部分に行く。付いてくる分には何も問題は無いわ」

 

 神奈子の言葉を聞いた早苗はフランドールに向かって、ほらねと笑い掛ける。

 早苗の笑みに釣られてたかの様に、フランドールはくすりと笑って再び夜空へと目を向けた。

 

 




早苗さんも家に友達呼びたい時だってあると思いました

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