青年の異世界珍道中〜僕のヒーローアカデミア〜   作:クロイツヴァルト

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第十話

 

 

 「お前は全く…」

 

 イレイザー、相澤の正面には戒翔が立っており、昼に起きた騒動の裏側で起きていた事について報告をしていた。

 

 一生徒である戒翔が免許も仮免も無く無許可で個性を使う事は法律で禁じられており教師としての観点から見れば厳罰物である事は明白であるが

 

 (連絡しろって言ってもあの(・・)状況じゃ無理なのは一目瞭然だよな)

 

 戒翔が敵と遭遇するのと同時期に雄英は崩れた防護壁を越えてきたマスコミの対応に追われていた為に、其方に人員を割く余裕が無かったのも事実。そしてもしもその場に戒翔が居合わせていなければ

 

 (最悪の場合は食堂の通路に溢れた生徒やマスコミにも被害が出ていた可能性もあった)

 

 「な、なぁイレイザー」

 

 「ったく、分かっている。」

 

 同僚そして同期であり同席しているマイクの言葉にイレイザーは目の前で自身の処分を待つ戒翔の目を見る。確かに生徒としては間違ってはいたが相澤は怒るに怒れないといった複雑な心境だ。だがそれを心の中で押し込みながら戒翔の肩に手を置くと

 

 「本当は色々と注意と反省文といった所なんだが…な。」

 

 戒翔の肩に置いた手に僅かに力を入れて相澤は口を開き

 

 「…良くやった。敵を撃退し良く無事だったな、上出来だよ…御坂」

 

 

 

 

 《マスコミ侵入騒動》……世間には表向きにはそう公表され、雄英は敵が侵入して来た事実を実質的に隠蔽する事が決定した。

 

 「それで、相澤君の所の生徒が遭遇した敵の情報は」

 

 「一人は痩せすぎの男で上半身の至る所に模造品と思われる人の手を付けており、個性は触れたものを崩壊させる物と想定し、もう一人は姿は確認出来ませんでしたがどうも厄介な事に転移系統の個性の様でした。」

 

 雄英の会議室で校長である根津と当事者の担任である相澤とオールマイト他数名のヒーローが集まり、戒翔の報告

 

 「恐らく、雄英の壁を壊したのはその男で間違いない…か」

 

 「転移系は珍しいから確保が難しいのよね。」

 

 「後は、崩壊の方は名前は分かりませんでしたが、転移系の個性持ちは男が呼んでた限りでは黒霧と呼ばれていました。」

 

 オールマイトの言葉を引き継ぐ様な形でミッドナイトは難しそうな表情でため息を吐く。

 

 「……シカシ、良クソノ短イ時間デソレダケノ情報ヲ引キ出スモノダナ。」

 

 手元の二名の敵の能力が記された資料を見たエクトプラズムが呟く。

 

 「この男の能力は五指で触れて発動というのは…確か同じ様な条件の個性持ちが今年の一年にもいたよな?」

 

 「あぁ、俺のクラスだ。麗日と違って応用生は皆無だが、事攻撃力という意味ではコイツの方が上だな。触れさえすれば場所によっては即死にもなる。御坂の取った遠距離からの一方的な攻撃が最適解だろうな」

 

 「クロギリ…ってのはコードネームか何かよね?警報がマスコミに対してしか反応しなかったって事は転移の個性で直接敷地内に入ってきたって事よね? 相手は奇襲し放題って……頭が痛いわね。」

 

 全員に渡された資料を見て唸るヒーロー達。その時、校長の根津が立ち上がり全員の視線が校長に集まる。

 

 「さて、皆も理解したと思うが、現状はかなり厄介だ……でも、ありがとう御坂くん。君の持ち帰った情報でボクたちは少なくとも二人の敵の情報を知る事が出来た。そして、此処からはボク達大人の仕事なのさ!」

 

 そう言って根津は自身の個性ハイスペックを用いて現状の最適解を導き出す。

 

 「……よし、先ずは各先生方は昼休み後に生徒達への説明はマスコミが侵入した事だけを伝えて欲しい。敵が侵入したことは絶対に知られてはいけないよ。今まで通り、平常心を心掛けてほしいのさ。 勿論だけど御坂くんもね。他言無用でお願いするよ。」

 

 「了解。知られたりすれば無用な混乱を招くのも理解している。」

 

 「それと同時に今回の被害を正確に確認して欲しい。……ただ敷地内に侵入するって事が敵の目的とは思えない。それもマスコミと言う囮まで使ったんだ。何かしらの工作或いは生徒達の情報が盗まれていないか徹底的に隈なく調査してくれ。良いかい、徹底的にだ」

 

 そして、奇しくも根津と戒翔は同時に思考する。奴らはこの一週間の内に仕掛けてくると半ば確信していた。

 

 戒翔は聞いていたのだ。男の言葉を。俺達の目的は別にあると。恐らく、今回は下見。実際に侵入できるのかのテストであり本腰を入れていないのである。ならば事前情報があり、相手に妨害が出来ない“転移”がいるのなら防ぐ事は不可能。ならば向こうが仕掛けてくると言うのならば此方はいつ来ても良いようにしてカウンターを仕掛けるしか無いのである。

 

 「セキュリティ関連はボクが主導で行う。…パワーローダー先生とセメントス先生はボクの補佐に入ってもらえるかい?」

 

 恐竜と重機が合わさったようなヒーロースーツを来た男性と比喩なしで全身が角ばった男性が力強く頷く。

 

 そして戒翔が持ち帰った敵の情報を一部の警察に渡し、水面下での捜査を依頼する。

 

 「そしてこれで最後になるけど、セキュリティ強化が終わるまでは各先生方には悪いけど警邏をお願いするよ。勿論、授業時間外でだけど朝昼夜の二十四時間の厳戒態勢さ。……かなり無茶でハードなスケジュールだけど頑張ってほしい。ボクの方も出来る限り急いで強化をするからそれまでは耐えてほしい。 此処が正念場なんだ。ヒーロー社会の象徴の一つである雄英が敵に良い様にされる訳にはいかないんだ。頑張ってくれ英雄諸君」

 

 淡々と告げる様に根津の言動を聞いていた戒翔は思わず冷や汗を浮かべ、そして感心する。過酷な注文にも関わらずこの場にいる教師が誰一人として当然とばかりの表情を浮かべ、獰猛な笑みをたたえていたのだから。

 

 (これがプロヒーロー…プロの意識…か)

 

 「あ、そうだ。御坂くん、君主体の訓練申請なんだけど問題が解決するまで無期延期となるから参加者達には君から説明しておいてほしいのさ!」

 

 「根津校長、引き締まっていた空気を普通にぶった斬るのはどうかと…状況が状況だから理解もしますがもう少し伝え方があると思うのだが……色々と台無しな気がするんだが」

 

 先程のピリついた空気が霧散する様に教師達は根津と戒翔のやり取りに苦笑するのであった。

 

 

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