イビルアイ尻尾√   作:冠尾かざり

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な、長い…
2話分くらいあります


19 グッド・コミュニケーション

-前回のあらすじ

ナザリックへと向かう途中『ヘビーマッシャー』『天武』と交流


 

 

 

 

 

「じゃあ、彼女(恋人)とかいる?」

 

「唐突になに聞いてんの、この娘!?」

 

「こ、去年?」

 

「会話が成立しない…っ!」

 

「いや、今年だな」

 

「会話が成立してるぅ!?

 って言うか、なに真面目に答えてんのよ、ヘッケラン!」

 

「おっと、つい喋っちまったぜ」

 

「語るに落ちましたな!」

 

「しまった!!」

 

「もう抵抗しても無駄だぞ…!」

 

「くそ! これまでか!」

 

「なんなの、その三文芝居!?

 ノリがいいわね、アンタ達!」

 

「それで、イミーナさんのどこ等辺に惹かれたの?」

 

「…」(それは私も気になる。)

 

「イミーナが恋人とは言ってないんだが。…ぶっちゃけ、顔だな」

 

「ちょっと普通…3点!」

 

「…もうちょっと、こう…何かあるでしょ?」

 

「そんなこと急に言われても…恥ずかしいだろ」

(突然ラブコメ空間を形成するのは、やめちくり~。)

「なるほど、酒癖が治って胸がもう少し大きければ言う事無しと…」

 

「ちょ、魔法詠唱者ってのは心の中を覗けるのかっ!?」

 

「へぇ~~。そんなことを考えていたのね、ヘッケラン?」

 

「ご、誤解だ!

 そんなこと……少ししか思っていないぞ?」

 

「少しは思っているんじゃない!」

 

「語るに落ちましたな!」

 

「この! 馬鹿! アホ!」

 

「おいおい、ちょっとした冗談だ──染めてる部分を(むし)ろうとするのはヤメロォ!」

 

「話して良かったんですか、ヘッケラン?」

 

「ん? 別に隠すような事でも無いし、構わないだろ?

 お前達も勘付いていたんなら、ハッキリとさせておく良い機会じゃないか?」

 

「あっ、いや──」

 

「ヘッケランとイミーナは恋人関係だったの?」

 

「…ロバー。アルシェも知っていたんじゃないのか?」

 

「あー、これは私の落ち度ですね。

 少々言葉足らずでした」

 

「なァ~に~? やっちまったなぁ!」

 

「あんたは黙ってなさい!」

 

「…まあ、いいか。

 えーっと。あー、アルシェ。つまりそういう事だ」

 

「ロバーは知っていたの?」

 

「ええ。確信を得たのは最近の事ですけどね」

 

「知らなかったのは私だけ…」

 

「アルシェさんは宿屋暮らしではありませんからね。

 気が付かなくても仕方がありませんよ」

 

「男女混合のチームには良くある話ね」

 

「仲間として信頼できる異性、戦闘の後の昂ぶり。

 恋に落ちるのは必然というものです」

 

「同じ宿屋に泊るなら、そういう機会も増えるって訳だな」

 

「ってことは、結構頻繁にやることヤッてんのか。

 ヘッケランは野獣先輩だった…?」

 

「確かに夜はケダモノね。…って、ちがーう!!」

 

「語るに落ちましたな!」

 

「それ、腹立つわね!!」

 

「…ヘッケラン、不潔」

 

「ちょ、そんな毎回しないわよ!?

 あんたがスケベな顔をしているから誤解されたじゃない、ヘッケラン!」

 

「なあ、ロバー。これって俺が悪いの?」

 

「女性の理不尽を受け止めるのも男の甲斐性ってモノですよ」

 

「他人事だと笑いやがって…」

 

「二人で飲み直すって、そういう事だったんだね。今まで、ロバーと私がお酒を飲まないからだと思っていた。

 それと、頻繁に酒盛りするのは少しおかしいと思っていた。けど、納得」

 

「いや、イミーナの酒癖が悪いのはマジだから」

 

「ヘ ッ ケ ラ ン ?」

 

「ロバー氏はお酒を飲まないの?

 禁酒とか凄く『神官!!』って感じがするね」

 

「いや、私は単に下戸なだけですよ」

 

「なんだ、節制しているから高位の神官に成れたわけじゃないのか…」

 

「まあ、関係ないとは言い切れませんが…。

 信仰とは最終的に心の持ちようだと思いますよ」

 

「はえ~、すっごい立派。何でワーカーやってるのか? コレガワカラナイ。

 そのレベルの神官だと、冒険者以外にも引く手数多だと思うんだけど?」

 

「ワーカーの神官は組織に縛られたくないという人が多いように思いますね。

 かくいう私も神殿の規律に縛られるのが嫌でワーカーに成りましたから。

 救うべき人を救えない。そんな状況に嫌気がさしたのです」

 

「よう言うた! それでこそ男や! 人間の鑑や、お前!」

 

「一体どこから目線よ!」

 

「あっ、そうだ。

 アルシェちゃんってフールーダ・パラダインの元弟子かな?」

 

「どうしてそれを知っている?」

 

「ま、ま、そう警戒しないでよ。

 パラダイン様と魔法談義をしている時に、ちょこっと君の話を聞いたのさ」

 

「帝国最強と面識があるのか!」

 

「アダマンタイト級冒険者のコネっていうのは凄いですね」

 

「師は…パラダイン様は私の事をなんて言っていたの?」

 

「手放したのは勿体無かったってさ。

 もし第3位階魔法まで習得していたなら、それなりの地位を用意するとか」

 

「条件は満たしているな…。

 まあ、それだけ優秀な魔法詠唱者なら惜しくなって当然か」

 

「それにしても、あの人の弟子だったならワーカーに成らなくても将来は安泰だったんじゃない?」

 

「借金が有る」

 

「借金?あっ、ふ~ん…」

 

「話して良かったのか、アルシェ?」

 

「もう出て行く家の話だから」

 

「確か、親御さんの借金でしたね」

 

「そう。未だに貴族のような生活をしている」

 

「もう出て行くっていうことは、妹さん達を連れだす事に決めたのね」

 

「ほう! 妹が居るのかい?」

 

「あ、やば。アルシェ、ごめん!」

 

「別に知られても問題無い。気にしないでほしい。

 アダマンタイト級冒険者なら情報を悪用しないと思う」

 

「おう、任しときや!」

 

「…やっぱりちょっと不安になってきた」

 

「なんでや!」

 

「しかし、イミーナさんが失敗するなんて珍しいですね?」

 

「なんだか、この娘と話していると、つい、口が軽くなっちゃうわね…」

 

「俺たちと気さくに話しているけど、こんな無害?そうに見えてもアダマンタイト級冒険者なんだよな…」

 

「いやぁ、それほどでも~」

 

「…うん、まぁ、本人が褒め言葉と思ったならそれでいいか」

 

「しかし、弟子を辞めた理由が親の都合だったとは…。

 大人はいつも身勝手なんだな」

 

「これは耳が痛いですね。

 チームとしては、その状況の恩恵に(あずか)っているわけですから」

 

「そのおかげで今の『フォーサイト』があるってことか…。

 俺たちも悪い大人達と同じ穴の狢ってわけだな。

 まあ、ワーカーなんだから綺麗な大人じゃ無いっていうのは当然なんだが」

 

「そんなこと言わないでほしい。私は不幸に思った事は無い。

 私が『フォーサイト』に加入して皆と出会えたのは幸福な事なのだから」

 

「…なんて良い子なの、アルシェ! もうウチの子になりなさい!」

 

「おー、ええやん。感動的やん」

 

「それと、最近は魔法詠唱者としての成長も限界を感じるから、あのままパラダイン様の弟子を続けていても待遇の良い地位に就くのは厳しかったと思う」

 

「それは今までの熟達が早すぎたから、そう感じるのではありませんか?

 恐らく成長の限界に感じるのは、普通の成長速度になったからでしょう。

 私があなた位の歳の時は、今の半分も力量が有りませんでしたよ」

 

「いや、もう才能の限界。自分の事だからよくわかる」

 

「俺は魔法の事はよく知らないんだが…。

 そういうもんなのか、アダマンタイト級の魔法詠唱者殿?」

 

「んー。確かに、魔法に限らずに才能の限界はあるよね。

 見たところ、アルシェちゃんは枯渇寸前って感じかなあ」

 

「やっぱり…」

 

「でも、もっと才能の無い奴が、そこから少しずつ成長している例を私は知っているよ」

 

「それは、ほんと?」

 

「ああ、本当だとも。

 血の滲むような努力と死ぬような経験を経て、だけどね」

 

「諦めるのはまだ早いみたいだな、アルシェ」

 

「修行を続けていれば、英雄の領域に至ることも可能かもしれないね」

 

「そうそう、若いんだから挑戦するべきよ。

 時間はまだまだ沢山あるじゃない」

 

「うん。もう少し頑張ることにする」

 

「しかしながら、老いが来るまでは成長を続けられる、ですか。

 寿命の無い異形種が強大な力を持つのは、そういう理由かもしれませんね」

 

「ドラゴンなんかは、その最たる例だな」

 

「そういえば、イミーナさんはハーフエルフってことだけど…。

 エルフの血が混じってるって事は、只人よりも寿命が長かったりするのかな?」

 

「まあそうなるわね。エルフには及ばないけど」

 

「イミーナも少しずつ成長していけばアダマンタイト級の実力を得られる?」

 

「あら、私ももうちょっと修行を頑張ってみようかしら?」

 

「ところで、イミーナさんってさ…」

 

「なによ、急に改まって」

 

「──何歳?」

 

「…」

 

「…」

 

「私の禁忌に触れたわね…!」

 

「やべぇぞ!イミーナを抑えろ、ロバー!」

 

「もしかして。また、やっちゃいました、私ぃ?」

 

「うがーー!!」

 

 

 

 

 

 

──────

 

 

 

 

 

 

 ビュウっと一層に強い風が吹き抜け、後ろで束ねられた髪が大きくなびく。

 目を細めて風上の空へと顔を向ける。

 こちらにやって来そうな大きな雨雲は見当たらず、天気が崩れる心配は無さそうだ。

 まあ、仮に雨雲が押し寄せても俺が蹴散らすんだがな。

 

 この頃は残暑もすっかり鳴りを潜め、随分と過ごしやすい気候になった。

 時折、山脈から流れてくる涼風には微かに次の季節を感じられる。

 

 そんな穏やかな心地良い秋晴れの昼過ぎ。

 ワーカー達を乗せた馬車は、小休憩のために小道の脇の方に停車した。

 

 

 道中では特にやるべきことが無く、馬車に詰め込まれて運ばれるだけだったワーカー達が、暇を持て余して硬くなった身体を伸ばしながら次々と馬車から姿を現す。

 

 俺たち冒険者組のメンツも、一か所に集まって問題が無かったかの確認を行う。もちろん何も問題は無い。

 ワーカー達が休憩している間も俺たちの護衛の仕事は続くが、ここら辺はまだ治安がいいので警備体制は軽く整えるだけだ。

 仮に強力なモンスターが現れたとしても、この顔触れで後れを取る事はまず無いだろう。

 

 現状では危険が無いのが分かっているワーカー達は、休日のおっさんの様な情けない姿で「あ゛ー」とか「う゛ー」とか唸っている。これが、かの有名な都市伝説『休日のおっさんゾンビ』か…ッ!

 やることが無いからって、みんな気を抜き過ぎである。御者さえ大あくびをしている。

 もう、道中はピクニック気分でおじゃるな!

 

 

 少し離れたところでは『ヘビーマッシャー』とモモンが模擬戦を始めるみたいだ。見届け人と観戦者を兼ねて『フォーサイト』がそれに着いて行った。

 俺も休憩時間を利用して『竜狩り』のパルパトラに模擬戦を挑む事にする。こんな事をしていられるのは治安の良い帝国領にいるうちだけだからな。ベテラン槍使いのパルパトラに槍の指南を受けようと思った次第であります。

 ちなみに、『天武』(エルヤー君)は独りで黙々と武器の点検をしている。エルヤー君…気持ちは分かるぞ。俺もボッチの時はそんな感じで時間を潰していたよ…(前世の寂しい青春の記憶)。

 

 そんなこんなで『竜狩り』のもとへと向かう。

 何やら騒がしくしているので何事かと覗いてみると『竜狩り』が酒とつまみを取り出していた。

 

 おい、おっさん達! 酒盛りを始めるんじゃあないッ!!

 俺たちが仕事している前でこれ見よがしにウマそうに酒を飲む姿を見せつけやがる…ッ!

 …な~にが「お嬢ちゃんにはまだ早い」だよ! ニヤニヤしながら言いやがってぇッ!

 昼間っから飲む酒はウメェかよっ!? ……ウマそうだな(羨望の眼差し)

 

 新たな力に覚醒しそうな嫉妬と憤怒を噛み殺して話し掛ける。

 

 

「ねえ、″緑葉(グリンリーフ)″のおじいちゃん。

 槍使い同士、私達も模擬戦を、や ら な い か」

 

 2度目の乾杯をしようとしている彼ら『竜狩り』を阻止して、パルパトラに模擬戦を提案。(酒盛りは)させん! させん! させんぞ!(カジット並ディフェンス)

 

「模擬戦なんて出来るのは平和な帝国側に居る間だけだろうからさ。

 折角だし、暇をしているなら如何かな?」

 

 今だけ!ってのを強調して言ってみたが、パルパトラの反応はイマイチだ。

 ワインが注がれたグラスに目を落とし迷う姿を見て、他のメンバー達が声を掛ける。

 

「受けたら良いじゃないですか、老公」

「我々が老公の分まで飲んでおきますから、安心してください」

「女性から誘われるなんて、きっとこれが最後ですよ(笑い)」

 

 何だ、こいつ等(素)

 もうデキ上がっているみたいだな?

 仲間の心無い言葉にパルパトラがますます渋り出した。つっかえ!

 仕方ない。対価を提示するか。

 

「なんなら埋め合わせに、帝都に帰った時に良いお酒を奢るよ」

 

 もしも、生きて帰って来れたらな…。

 

 

「おお! アダマンタイト級の奢り!

 コレはもう受けるっきゃないですよ、老公!」

 

 さっきから(やかま)しいぞ! この酔っ払いども!!

 

「竜狩りをなした歴戦の槍術を私に見せてくれないか?」

 

 これ以上、酔いどれ達が余計な事を言う前にダメ押しのお願いをする。

 

「そこまて言われたら受けないわけにはいかんのう」

 

 パルパトラはグラスをぐいっとあおり、ワインを一気に飲み干して立ち上がる。

 良かった。俺との模擬戦を受けてくれるようだ。

 

「…それと、御馳走になるのは儂たけしゃ。

 お主らには一滴たりとも分けてやらんからな」

 

 その言葉にチームメンバー達は不満の声を上げるが、パルパトラは彼らを軽く睨み付けあしらう。残当感。

 

 それからパルパトラは今までの消極的な態度から一変、テキパキと戦闘準備を始める。

 もしかしたら今までの渋っていた態度は俺から対価を引き出すための演技だったのかもしれんな。食えない爺だぜ。

 

 まあ良い。

 やると決まったならば、早速模擬戦だ。

 背に聞こえる飲んだくれ達のブーイングを無視して場所を移す。

 

 

 周りに障害物の無い、手合わせに丁度良い場所で少し距離を置いて向き合い、互いに槍を構える。奇しくも同じ構えッ!

 

「その、堂に入った構え…。槍は飾りては無いようしゃな。

 『蒼の薔薇』のターリアと言えは第5位階魔法まて使いこなす魔法詠唱者の筈しゃか。

 …情報はフェイクしゃったかの?」

 

「いや、その情報は間違ってはいないよ。

 訂正するとしたら、今は第6位階魔法の使い手という事かな」

 

 パルパトラが目を見開いて驚く。その驚愕の視線…。フゥ~、気持ち良い!

 事前情報よりも一段強いとか、オサレポイント高いでしょう?

 

 ついでに強者感を出して挑発をする。

 

「位階は低いけど回復魔法も使えるから遠慮はいらないよ。

 さあ、いつでも掛かって来るといい」

 

 

 しかし、美少女魔法戦士ターリアとして名を上げてきたつもりだが、帝国内に伝わっているのは″魔法″の部分だけか。

 どちらかと言うと、俺は槍で戦う事の方が多いんだけどな。召喚魔法もよく使うが、基本的には補助系を使うことが多い。

 バフを積んで殴る! これが正義! そっちの方が消耗が少ないからな!

 

 今でこそ近接戦闘バリバリの一流の戦士だが、俺も最初はクソザコナメクジだった。前世は平和ボケした日本の貧弱一般人だったからな。当然の如く、武術の心得なんて無い。

 魔法メインで行くつもりではあったが、近付かれたら成す術の無い″動けない魔法使い″には成るつもりは無かった。魔力(MP)にも限りがあるしな。

 ということで、誰かに武術の教えを乞う必要があったのだが、そんな人にあては無く、金も無かった。当時は若く、お金が必要でした…。

 そんな問題を解決したのが召喚魔法だ。

 召喚したモンスター達に教わればタダみたいなもんやからな!

 それに、召喚したモンスターとは精神的な繋がりがあるから意思疎通がしやすく、武術稽古がとても捗るのだ。しかも、下手な冒険者よりも強い。

 まともに戦えるようになるまでは、魔力を節約しながらの棍棒フルスイングだったからな。ゴブリンの頭かち割りマンだった、あの頃の思い出~。

 

 それはともかく、召喚したモンスターに戦い方を教わったのはいいのだが、彼らはユグドラシルの位階魔法で召喚された存在だからな。当然、武技なんて使えない。

 つまるところ、俺はこの世界特有の武技については勉強不足なのだ。

 だから今回、新しい武技を開発するほどの達人であるパルパトラに教えを乞う機会を得たのは運が良かった。

 身近に良い感じの槍使いが居ないからな。

 

 

 軽く過去を振り返っていたら状況が動いた。

 考え事をする俺の姿を隙と見たのか、おじいちゃんが攻撃を仕掛けてくる。

 一見するとボーっとしている様に見えたかもしれないが、俺に隙は無いっ!

 リラックス状態でいる事が 最高のパフォーマンス発揮には重要なのだ。

 だから、この余計な思考は油断では無い。

 

 対峙する敵の事を考え過ぎずに、視点を広く持つのが俺の戦闘スタイルよッ!

 目の前の戦闘をテレビゲームのように捉え、映し、自分を俯瞰して操作するのだ!

 デメリットが無いことも無いが、余計な思考をすることによって戦闘の現実味を薄くし、苦痛や恐怖、他者を傷つける罪悪感などを減らす効果もある。

 つまり、根が善良な俺には必要な手法だな!

 

 

 さて、気付けばもう武器の間合いに入った。

 パルパトラ″緑葉(グリンリーフ)″オグリオン。さあ、どう来るッ!

 

 

「〈竜牙突き〉!」

 

 意外ッッ!! それは、初手から武技ッ!

 この爺、様子見も無く最初からフルスロットルで攻めに来やがった。随分と思い切りの良い事だ!

 

 ドラゴンの牙を加工して作られたというパルパトラの槍が(しな)りを上げ、風を切り裂きながら俺に迫って来る。幾多のモンスターを屠って来たであろう武技が、文字通り俺に牙を剥くッ!

 この〈竜牙突き〉という武技は40年以上も前にパルパトラが新たに開発したとされていて、高速の二連突きに属性ダメージを付加する、物理的な防御が厚い敵なんかにはとても有効的な技である。

 パルパトラの持つ槍の刀身には蒼白い雷光がバチバチと迸っている。これは〈青竜牙突き〉だ!

 これを安易に防御してしまえば属性ダメージを食らってしまう。

 装備で耐性が上がっているから大してダメージは受けないだろうが、初っ端から有効打を取られるのは(しゃく)なので回避一択だ。

 

 間合いに入った瞬間に放たれた手を狙った初撃は腕を引き上げることで回避。

 だが、〈竜牙突き〉は2連突きの武技。間髪を入れずに2撃目が迫る!

 突撃の勢いのまま、さらに一歩踏み込んでの追撃は肩口狙い。体の軸の方を狙った躱し辛い攻撃だ。

 全身の筋肉を総動員させて身体を捻り、これも回避。流石は俺!!

 

 そして、強力な武技を放った後には隙が出来る。

 ここからは俺のターン。反撃の時間だ!

 

 身体を捻った動きを利用した蹴りを放ちたいところだが少し遠いな。

 少し体勢は悪いが槍を振るうか?

 判断は一瞬。槍を握りしめる。

 だが、俺が槍を持つ腕に力を込めて反撃の狙いをつけるよりも速く、パルパトラが連続で武技を発動する。

 

「──〈疾風加速〉」

 

 2連突きを放って伸び切ったパルパトラの腕が素早く引き戻される。これで攻撃後の隙が無くなった。

 やはり、武技使いの戦い方は一味違うぜ! 良い経験になりそうだ!

 万全の体勢に戻ったパルパトラがさらに攻め立てて来る。

 

「〈竜牙突き〉!」

 

 意外ッッ!! それは、再び武技ッ!

 このおじいちゃん、全く遠慮が無いなっ!

 

 そしてこの流れは出発前にアインズ様と模擬戦をした時の焼き直しだ。これは意図的に同じ動きをしているな…。

 ならば、アインズ様とは違う対処を見せてやろうではないか。

 というか、今回の2連撃は躱し切れないだろう。

 

 武技で強化された鋭い突きが再び俺に迫る。

 今回、穂先に宿っているのは白い冷気。〈白竜牙突き〉だ!

 そして槍の向かう先は下半身! 戦闘で最も重要と言われる機動力を担う足ッ! その中でも太い血管が通っている(もも)ッッ!! まともにダメージを負えば失血死もあり得る場所だッ! 先の2連撃を回避した影響で体勢が少し崩れており、今回の攻撃を躱すのは非常に困難と言わざるを得ないッッ!! パルパトラ″緑葉(グリンリーフ)″オグリオン。コイツは本気で()りに来ているッッッ!!!

 跳べば回避できるだろうが、後に続く2撃目を無防備に空中で受ける事になるな。

 まったく、狙ってくる場所がいちいちイヤラシイぜ。流石は歴戦の爺!!

 このままだと回避は難しい。仕方がない、俺も武技を使わせてもらうぜッ!

 

 引いた槍を強く握りしめ、腹に力を込める。

 身体に流れているオーラを武器の方へと伸ばし、武技を発動させる。

 

「〈火属性付与(エンチャント・ファイヤ)〉」

 

 槍の刀身が赤いオーラに包まれ、熱気を放つ。

 武技〈戦気梱封〉の派生系〈火属性付与(エンチャント・ファイヤ)〉。その名前の通り、武器に炎の力を宿す技だ。

 パルパトラの放った〈白竜牙突き〉に込められた冷気属性は、この武技で付与された炎熱属性で相殺する。

 これで属性ダメージを気にせずに武器で打ち合う事ができるようになった。

 

 しかし、ただ防御するだけじゃ芸が無いな。

 ちょっと調子こかせて貰うか?

 

 集中力を高め、気合を込めた鋭い突きを放つ。

 

「せいっ!」

 

 

 自慢の動体視力に加えてレベルの暴力を併せれば───

 

 

 互いの槍の穂先。

 その切っ先の点と点が一直線にぶつかり合い火花を散らす。

 …これが、秘技『穂先合わせ』だッ!(今命名)

 

 

 ───と、こんな事も可能である。

 

 

 あっ、今の俺ちょっと格好良いな…。

 

 傍から見たら、槍がぶつかり合う瞬間に攻撃が急停止した様に見えた事だろう。

 パルパトラの冷気と俺の熱気が弾けて小爆発したような衝撃が辺りに散る。

 それでも攻撃は止まらない。

 

「やあっ!」

 

 続いて放たれる胴体を狙った二撃目。

 これも寸分違わず穂先を合わせ、弾く。ワザマエ!

 

 槍を弾いた反動に合わせておじいちゃんが飛び退く。

 追撃の薙ぎ払いは空を切った。

 

 格好をつけて穂先をぶつけ合ったは良いモノの、鋭い突き攻撃の運動エネルギーを受け流すこと無く点と点で一直線に合わせたから、その衝撃が余すことなく腕に反ってきて槍を握る手がジンジンと痛い。

 それは向こうも同じらしく、手をヒラヒラさせて腕の痺れを取り除こうとしている。

 俺も手をほぐしたいが、それは格好悪い。やせ我慢だ。武士は爪楊枝を喰うって奴だ。

 そして、この技は〈要塞〉等の衝撃吸収系の武技を併用しなければ使い物にならんな…。

 

 仕切り直しの形になった所でパルパトラが構えを解く。

 どうやら模擬戦はこれでお終いらしい。

 

 意外ッ! それは、勝敗を付けないまま決着ッ!!

 

 しかしながら、″意外ッ!″って言葉が頭に浮かび過ぎてゲシュタルト崩壊が起きそうだ。

 なんかもう、このおじいちゃんの行動が全て″意外ッ!″に見えて来て困る。

 それもこれも、飄々(ひょうひょう)とした態度とか『歴戦の爺』って強者感ワードが悪い。

 

 

「儂の突きに合わせる槍捌き、見事な物しゃ。

 超一流の魔法詠唱者でありなから、戦士としても儂より遥か上。

 まさに、天才しゃな」

 

「槍に関しては技術より身体能力に頼っている部分も大きいけどね」

 

 調子に乗って少し失敗してしまったので謙遜する。

 とは言え褒められて悪い気はしない。

 

 

「しかし、短い間に2度もアタマンタイト級冒険者に挑む事に成ろうとはのう。

 こりゃあ、流石に老いほれの身体には堪えるわい」

 

 パルパトラが腰をポンポンしながら「疲れた、疲れた」とぼやく。

 だけど、俺には凄くわざとらしい演技に見える。

 

「まだ余力を残している癖に。おじいちゃんも性格が悪い。

 流石その年まで現役でワーカーやってるだけはあるよね」

 

 皺くちゃの顔でニヤリとするおじいちゃん。否定しなかったということは、そういう事なのだろう。

 あのまま続けたら一撃くらいは痛いのを貰っていたかもな。

 

「モモン程ては無いか、嬢ちゃんも本物のアタマンタイト級の器しゃな」

 

 

 それからは槍の先達であるお爺ちゃんに軽く槍術の指導をしてもらう。

 

 しかしながら、俺が使う武技って、な~んか武技っぽくならないんだよな~。

 やっぱ魔法詠唱者が本業だから駄目なのかな?

 まあ、格好つけて横文字を使ってるのが一番の原因だと思うけど。

 

 一段落して戻ると、酔っ払い共が俺たちの模擬戦を肴にして酒盛りをしてやがったッ! 糞ァ!!

 

 

 

──────

 

 

 

 ナザリック地下大墳墓までの道のりは未だ半ばだ。

 ここまでの旅路も平和そのもので、一行の表情にも緊張は見られない。

 つまり、まだまだ遊んでいられるドン!

 

 仲間たちとアインズ様たちにお願いして、護衛の配置を『フォーサイト』を乗せている幌馬車の荷台近くにしてもらった。

 例によって、馬車に乗り込む。おっ、開いてんじゃ~ん!

 突然に現れた俺に「何事か!」と構える一同。不法侵入ですよ! 不法侵入!

 こちらのワーカーチームも中々に良い反応。うん、君たちも合格♥

 向こうの馬車の時と同じようなやり取りをして、軽く雑談する。

 

 

「やっぱり王道を往く…双剣、ですかね?」

 

「…王道では無いと思うけどな」

 

 俺の奇怪な表現に困惑するヘッケラン。さもありなん。

 やはり同業者を相手にする時は武器の話題が鉄板ネタなんやな。会話が広がってないか?(コミュ力発揮)

 

「でも高いでしょ、双剣? 武器を二つも買うから」

 

「どうだろうな、盾とか買うのとそう変わらないんじゃないか?」

 

 つまりは「ピンキリですよね」って事か…。

 ちなみに、俺も双剣を試した事ありますよぉ! 初期のモモン・ザ・ダークウォリアーより酷い事になったから諦めたけど。あと、盾はゴブリン相手には役に立った。

 

「なんで二刀流にしようと思ったのさ?」

 

「単純に、武器が多い方が強いだろって考えて始めたんだよな」

 

「な~んだ、カッコいいと思ったからじゃないのか」

 

「ああ…そう、だな」

 

 なんだ、その歯切れ悪い答え? さてはお前、図星だな!(名探偵)

 

 しかしながら、ヘッケランのお調子者感のある喋り方は面白い。

 このノリの軽さには俺と同族の気配を感じるぜ。

 

 

 そして、隣に座っているヘッケランの恋人のイミーナさん。

 何だか雰囲気が刺々しい。プンプンしていらっしゃる。

 きっと、彼氏が美少女と楽しげに会話しているから嫉妬しているに違いない。ちょっと揶揄(からか)ったろw

 

「イミーナさん、視線が随分と鋭いね。まるで、睨まれているみたいだ。

 もしかして、恋人が美少女と話しているからヤキモチを妬いているのかな?」

 

「別に妬いてないわよ?

 それと、睨んでいる様に見えるかもしれないけど、これが素よ!

 悪かったわね、目つきが悪くて…!」

 

 えぇ…(困惑)目つきが悪いのは元からでしたか。

 美少女ターリアに嫉妬しているとか、とんだ見当違いの推察だったわ。これじゃまるで、俺が自意識過剰みたいじゃあないか…。ちょっと恥ずかしいですよ!

 

 しかし、イミーナさん以外の人達もそうだけど、なんで弓使いは目つき悪くなるんでしょうかねー、不思議ですねぇ…。

 聖王国の凶眼の教祖(予定)とかは、その極致よな。生で見たらチビっちまうかもな!

 

 

「じゃあ、プンプンしてるわけじゃなかったんだね」

 

「プンプンしてるわよ! って、プンプンって何よ!?」

 

「あっ、してるんだ」

 

 え? ティアがセクハラを仕掛けてきたから気が立っていた? おのれ、レズ忍者、許すまじッ!! お仕置きとして、汚いおっさんの幻影でも見せてやろう。

 

 

 次のお相手はロバーさん。神的に良い人。

 孤児院に寄付したり、貧しい人にこっそり回復魔法を使ったり、善行を積んでいる徳の高い30代のイケおじ。神官としての力量はミスリル級冒険者くらい。

 彼もワーカーということは神殿から締め出されている訳だが…。

 つまりそれは、神殿の教示を得なくても信仰系魔法詠唱者の実力は伸ばせると言う事だ。

 これは、俺が信仰系魔法の力量を伸ばすのに参考になるんじゃないか?

 ということで、ロバーさんに信仰の心得について聞いてみる。

 

 

「やはり大切なのは、善意や善行。正しき心をもって日々を生きる事です」

 

「オイオイ、それじゃあ…ミーは100点満点じゃないか!」

 

「あとは、神の御心を感じ取って、その奇跡に身を委ねる事ですかね」

 

「オイオイ、それじゃあ…ミーは0点確定じゃないか!」

 

「…どうやら、改善すべき点は見つかったようですね?」

 

 間を取って50点!…普通だな!

 俺は神様とか信じてないからな。転生する時にも会った覚えは無いし。

 

 

 ラストは『フォーサイト』の皆さんが少し過保護に守っているアルシェちゃん。おかげさまで、ティアの毒牙にも掛からずに済んでいるみたいだ。ちょっとガード硬過ぎんよー。

 俺もアルシェちゃんを守護りながら愛でたいぜよ。

 

「魔法学院ではどういう事を教わるの?」

 

「座学の授業では、属性の相性についてや魔法の効果や系統を教わる。

 実技の授業では、魔法発動の前兆を見て感じたり、簡単な模擬戦をしていた」

 

「へー、かなりマニュアル化が進んでるんだね。流石は帝国だね。さすてい!

 アルシェちゃんは好きだった授業とか、嫌いだった授業とかはある?」

 

「特に無かった」

 

「あっ、無いんだ…」

 

 年が近いと言うことで会話が弾むかと思ったら、アルシェちゃんは寡黙系の少女だったから、話が盛り上がらないのなんの。心が折れそうだぜ…。

 そして、絡み方が酒場のおじさんっぽいって言われて傷ついた。なんでそんな酷い事を言うの!?

 俺は尻尾を生やしてあげたいだけなのに…。

 

 

 

 さて、仲良くなった所でそろそろ本命本題に移ろう。

 彼らに遺跡探査(ナザリック観光)のアドバイスをする。

 

 まず、盗掘まがいの行為を止める事、財宝には目をくれずに遺跡の探査をすることをおススメする。持ち物に反応したり設置物を動かすと発動するトラップは結構あるからな。実際、アブナイ!

 お宝回収は帰りの時にしたらええんちゃう?

 

 そして、遺跡を貶さずに敬意を持つこと。これは、遺跡の歴史的な価値を損なわないように、とか適当な事を言って納得してもらった。

 ナザリックの悪口を言ったりしたら、即慈悲無しルート行きだからな!

 

 あとは…土下座するとか?

 

 それから、アインズ様にアルシェの親の借金のことを伝えて同情を誘ってみたけど、反応はあまり良く無さ気だった。

 まあ仕方がない。結局、この依頼を選んだのは彼らの意志だからな。

 

 

 

 

 

 さて、これで全チームと接触してみたわけだが…。

 ワーカーたちと交流する時は死人を相手にする様なつもりでいたけど、実際に話してみると少し愛着が沸いてしまうんだよなぁ(アインズ様並感)

 これ以上関わると助言してあげたくなっちゃう、ヤバイヤバイ。

 こいつらワーカーなんかやっているけど、マジで気のイイ奴らなんスよ! ワーカーなんかやっているけど! エルヤー君? 知らんなぁ!

 

 

 ワーカー達が助かるにはナザリックに侵入しない事が一番なんだが、依頼を受けてしまった以上は調査をしないというのは有り得ない。

 まあ、調査というか実際は遺跡荒らしなんだが。

 一応の建前としては、犯罪組織や知恵を持ったモンスターなどの人類の敵が隠れ潜んで無いかの確認もある。「疑わしきは殺せ」がこの世界の共通認識だ。

 

 ナザリック側からしてみれば、侵入者対処の訓練と低コスト運用での問題が無いかの確認だ。

 だから、ワーカー達を逃がす事は絶対にない。

 一度中に入ってしまったら、まず助からないだろう。

 

 そうはさせないために色々と吹き込んだわけだ。

 知り合ったワーカー達がみんな助かった方が嬉しいから『フォーサイト』以外にも軽い助言はしたけど、流石にこれ以上はリスクを冒せないな。

 

 

 原作キャラの生死の結末が覆るかどうか。図らずも、実験のようになってしまったが、今回の結果次第では今後の方針にも大きく関わってくることになる。

 はたして俺の行動は何処まで彼らの運命を変える事ができるのか?

 

 

 

 

 

 


-パルパトラ

前歯すかすか♥

濁音発音できない、ざこ発声♥

セリフを書くのが面倒♥

 

歴戦の戦士感が漂う好々爺。だけど、ズルい爺。(シャ乱Q並感)

 

誤字報告に感謝

 

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