「ワンピース」の世界に来たと思ったら『最悪の世代』にされたんですけど(半ギレ)   作:闇野サバス

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日間ランキング67位にランクインしてました!

マジでランキングに入るとは思って無かったので、本当に驚いてます!

これからもよろしくお願いします!


10話 焦土と化して

「お前、うちのケイトと随分仲が良いらしいが、本当か?」

 

「ああ、気付けば長い付き合いになってたよ」

 

「ほう。それは良かった」

 

「・・・?」

 

「どうした?」

 

「いや、『流狼』のジョンでも笑うんだなってな」

 

「・・・ふん。余計な事まで調べおって」

 

「こんな性格でね。気になった事は知りたくなるんだ」

 

「そうか。・・・その事、アイツに言ったか?」

 

「いや、一言も」

 

「なら良い。」

 

「・・・・・・」

 

「・・・お前に頼みがある」

 

「何だ」

 

「・・・どうか最後まで、アイツの側にいてやってくれんか」

 

 

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲

 

 

「はあ、はあ、はあ・・・」

 

「お前、無事か・・・」

 

「おいジョン!どうなってるんだ!ケイトを家に帰して家に帰ったらこのザマだ!どう言う事だよ!」

 

「海賊どもの襲撃じゃ・・・残念だが、お前の親は、もうダメだった・・・」

 

「ッ・・・・・・!う、嘘だろ・・・・・・?」

 

「お前しか助けられなかった・・・すまん・・・」

 

「い、いや、謝らなくて良い・・・お前は、悪くない・・・」

 

「・・・・・・・・・・」

 

「・・・大丈夫だ。黙らなくても、平気だよ」

 

「・・・儂とケイトが住む家に行け。そこなら安全なはずじゃ」

 

「・・・待て。お前はどうするんだ」

 

「奴らを、地獄に送る。儂の最期の仕事じゃ」

 

「最期って、お前まさか!」

 

「奴らの中に、ただならぬ力を持った者がある。そいつを止めにゃならん」

 

「お前が死んだら、アイツはどうなる!?俺と同じ気分を味わせる気か!?そうしたら、きっとアイツは・・・!」

 

「あの日、お前ははぐらかしたが、儂には分かっとる」

 

「っ!」

 

「ケイトの事を、よろしく頼んだぞ」

 

「おい待て!ジョン!ジョーーン!」

 

 


 

 

あの後、俺は言う通りに家に向かった。

 

だが、アイツはいなかった。

 

恐らく街に降りたんだろう。皆を助けるために。

 

本当に優しい女だ。

 

見ず知らずの相手だっているだろうに、力を振り絞るなんて。

 

だけど、不安は消えなかった。

海賊達がどれくらいの強さかは知らないが、今回ばかりはアイツでもどうにか出来るか分からない。

 

特にあのジョンでさえ出張らなければならない相手だ。

 

 

 

・・・・・・

 

 

 

危険だとは分かっていた。

 

だけどこの足は、アイツの元へ行くために動いていた。

 

「ハアッ!ハアッ!」

 

来た道を全力で駆け下りる。

ただでさえ急な道は、戻る時にはさらにきつくなっていた。

途中で転がり落ちて、道から外れたりした。

そのせいで大分時間を食ってしまった。

 

それでも何とか、傷だらけになりながら戻ってきた。

 

「ケイトォー!」

 

アイツの名前を叫びながら燃える街を走る。

道は酷い有様だった。

海賊達の手により略奪され、殺されている住民たち。

この中にアイツがいたら・・・

考えただけで、恐ろしくなった。

 

「ケイトォー!いたら返事してくれーっ!」

 

しばらく走っていると、ある事に気がついた。

 

海賊の気配が、まるでない。

 

もう奪える物は奪ったと言う事だろうか。だがその先の光景がそれを否定する。

 

 

 

無惨に殺された海賊の死体が、散乱していたのだ。

 

 

 

首を引きちぎられて殺された者。

四肢をグシャグシャに折り畳まれて殺された者。

頭をトマトみたいに潰されて殺された者。

腹を裂かれて内臓という内臓を引き摺り出されて殺された者。

 

どう考えても異常なやり方だ。

ジョンは性格から考えても、こんな事をする奴じゃない。

 

「まさか・・・」

 

俺は1つの答えに思い至った。

考えたくない。

アイツに限って、まさか、そんな・・・

 

そしてその予想は、的中してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あははははははははははははははははははははははは!!!」

 

 

 

そこにいたのは、全身を血に染め、狂笑するケイトだった。

 

アイツの両腕は漆黒に変わっていて(・・・・・・・・・)、周囲には禍々しいキノコが無数に生えている。

 

「・・・アレ?アッシュ?」

 

そして目には、初めてジョンに会った時と同じドス黒い影が宿っていた。

 

 


 

 

あれから何十日経っただろうか。

街の全ては、燃え尽きてしまった。

 

生き残りは、アッシュと()含めて殆どいない。

 

私達は今、2人で山奥のおじいちゃんの家にいる。

山奥にあったから唯一攻められなかった所だ。

 

ちなみに肩の怪我は、アッシュに治してもらった。

凄いよね、アッシュは。

 

無能な私と違って、何でも出来るから。

 

「ただいま。帰ったよ。アッシュ」

 

「ああ、お帰り。・・・メシ、作って置いたぞ」

 

「ありがと」

 

今日も私は、例の鍛錬(・・・・)を終わらせて帰ってきた。

 

私は正気を失ったとき、■■■についてきた海賊たちを惨たらしく皆殺しにした。

これはその時に発現した新しい力だ。

 

それは武装色の覇気。

 

纏った部位を硬質化し、自然系(ロギア)の能力者にも攻撃を当てられるようになる。

 

この力を十分に使えるように私はトレーニングしている。

いつか完全にモノにするまで。

 

これで。

 

これで■■■の奴らを・・・

 

「おい、ケイト。おい」

 

「あっ、ごめん。ボーっとしてた」

 

少し考え事し過ぎたみたいだ。

 

私はアッシュと向き合う形で席についた。

 

「「いただきます」」

 

今日は熊鍋だ。

この世界に来てからの私の好物で、よくおじいちゃんが作ってくれた。

 

「あむっ」

 

・・・美味しい。

おじいちゃんのよりちょっとしょっぱいけど。

 

「うまいか?ケイト」

 

「うん。美味しいよ」

 

「ああ、良かった。ちゃんと出来たか不安だったんだ」

 

「あはは。そんな事ないよ。」

 

そう言いながら何とか笑顔を作る。

あの日以来、上手く笑えなくなってしまった。

 

「なあ、お前本当に大丈夫なのか?目の隈が凄いぞ」

 

「大丈夫だよ。身体だけは丈夫なんだ、私」

 

「前にも同じ事言ってただろ。何というか、喋り方まで変わっちまったし・・・」

 

「ははは。初めて聞いた時はそりゃびっくりしたよね。でもごめん。この話し方じゃないと()()()()()()()()()

 

あの日何も守れなかった弱い()は壊れて消えた。

 

だから、()じゃないと上手く自分を抑えられる気がしない。

 

完全に、私は立ち直れなくなってしまう。

 

「・・・それなら良いけど、そんなに鍛えて何する気なんだ」

 

熊鍋を食べながらアッシュが質問してくる。

 

「・・・」

 

思わず沈黙する。

 

「おい、ケイト・・・」

 

言うべきなんだろうか。私の決断を。

でもついてきてくれる保障なんてない。

 

・・・いや、だからこそ言うべきだろう。

 

私は息を整えて、ハッキリと聞こえるように言った。

 

 

 

 

 

 

「・・・私、海賊になろうと思う」

 

 

 

 

 

 

「・・・・・・・・・・は?」

 

「私はアイツらが心の底から憎い。いつか絶対に復讐しようと思ってる。だから行くんだ。海に出て、アイツらを追いかけて、全員殺す」

 

これだけは絶対に果たさないといけない。

どんな手を使ってでも、必ず復讐を成す。

 

そうしなきゃ、きっと許されないから。

皆、許してくれない。

 

「・・・っ!ダメだ!!」

 

突然アッシュが立ち上がった。

 

「お前、自分が何言ってるか分かってるのか!海賊だぞ!この街をめちゃくちゃにしたアイツらと同じ所に落ちてまでやらなきゃいけない事なのか!それが本当に皆のためなのか!それに、そんなことしたら、お前の命が・・・」

 

「分かってるよ、それくらい。でも行かないと。私達から全てを奪った、あの海賊だけは許せない」

 

アッシュが認めてくれないのは、分かってた。

だから私も言うべきか悩んだんだ。

 

でも決めたんだ。例え誰からも理解されなかったとしても、やらなきゃならないって。

 

例え1人でも。

 

例え何かを失ってでも、

 

「俺はぁ!!!!!」

 

すると、アッシュが物凄く大きな声を上げた。

 

 

 

「俺はもう、これ以上お前が傷つくのを見たくない・・・・・」

 

 

 

その言葉を聞いてしばらく動けなかった。

 

「・・・・・・」

 

気がついたら、私は泣いていた。

 

「はあ・・・はあ・・・」

 

アッシュも私と同じように、泣いていた。

 

何で泣いたか上手く言えないけど。

 

まるで庭の朝露みたいな(しずく)が。

 

2人の心の穴を埋めるように流れ落ちていった。

 

「「・・・・・・」」

 

どうすれば良いか分からず、とりあえず言った。

 

「ご飯、食べよ・・・」

 

「ああ・・・」

 

アッシュは座り直る。

 

鍋はもう、冷めていた。


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