「ワンピース」の世界に来たと思ったら『最悪の世代』にされたんですけど(半ギレ)   作:闇野サバス

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5話 キノコって胞子出すだけでしょ?弱くね?

 

うむぅ・・・・・・

 

はっ。

・・・気を失っていたのか。結局朝まで寝てしまった。

 

全く、変なもの食べたせいで酷い目にあったぞ。また頭痛いのは単に飲み過ぎか。

 

というか、身動きが取れない。何かに全身が固定されてる。

 

一体なんだ。

 

・・・キノコだ。

 

馬鹿でかいキノコに手足が食い込んでる。

 

・・・・・・・・

 

イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤ

 

どういう事だよ!?昨日の何処にキノコが出てくる要素があったんだ!?童話の世界じゃないんだぞ!?いやここ『ワンピース』の世界だけど!?

 

とにかくここから出ないと。

 

グッ

 

ああもう!鬱陶しいな外れろコイツ!

 

ガッ

 

ボロッ

 

お?

 

びくともしなかったのが急に崩れた?意外と脆かったな。

 

というかよく見たら店が全部キノコ地獄やんけ!床も壁も天井も何もかもデッカいキノコだらけだ!

 

マズいぞ。コレにアッシュとミリー姉さんが巻き込まれてたら・・・

 

早く掘り出さないと!何処だ!何処にいる!?

 

「アッシュー!ミリー姉さーん!聞こえてたら返事しろー!」

 

「うぅ・・・」

 

「!」 

 

今の声は、姉さんだ!壁にいるぞ!

 

俺の暫定彼女がキノコに埋もれてる!しかも顔しか外に出てない!俺より重症だ!

 

「姉さん!大丈夫か!?」

 

「わ、私は後で良いから・・・先にアッシュを・・・」

 

自分の身より他人の心配!?なんて良い人だ!

 

しかしだからこそ先に姉さんを助ける!

 

俺はサンジじゃないけどレディーファーストを重じているからな。それにあの人なら何か頑丈そうだし多少ほっといても大丈夫だろう。

 

さあ掘り出すぞ。かと言って六式は使うと危ないし、地道に掘るしかないか。

 

俺は彼女を助けようと右手を前に出し、

 

 

 

右手の異変に気付いた。

 

 

 

「えっ」

 

右手の色が紫色に変わっていて、爪も獣みたいに伸びていた。そしてソコから同じく紫の煙みたいなのが出ている。

 

「こ、これって・・・」

 

心臓の鼓動が速くなっていくのを感じる。

 

身に覚えがないわけじゃなかった。

 

俺の腕が変化している理由。店がキノコで埋め尽くされている理由。

 

もし昨日食ったアレがそうなら。(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「・・・」

 

俺はキノコの上に手を当て、強く念じてみた。

 

「ケ、ケイトちゃん・・・?」

 

するとあっという間に。

 

 

全てのキノコは跡形も無く崩れていった。

 

 

「きゃっ!?」

 

急に動ける様になったから、ミリー姉さんが前に倒れた。

 

本当なら受け止めてやるべきなんだろうけど、今はそれどころじゃない。

 

そういう事だ。さっき簡単にキノコから手足が外せたのも脆いからじゃない。

 

 

俺が外れろと思ったからだ。(・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「ねぇ。その腕って・・・」

 

「ああ、そういう事かよ。クソ」

 

 

俺、能力者になっちゃったよー。

 

 


 

 

急に視界が晴れた。

 

一体何があったんだ?

 

あの後アイツから変な粉が出てきたと思ったら、突然何かに覆われて・・・

 

目が覚めたら、何も見えないし動けないで大変な事になっていた。

 

ケイトは、ミリーはどうなった?大丈夫なのか?

 

身に纏わりついていた何かが崩れていき、体も動かせるようになる。

 

「あっ。アッシュが出てきたわ!」

 

ミリーの声だ。じゃあケイトは・・・

 

・・・というかさっきから何かが下腹部(・・・)に乗ってる気が、

 

「・・・・・・ん、アッシュか。そこにいたんだ」

 

「ブフッ!!!」

 

ケイトだ!コイツ、なんて場所に尻乗せてやがる!

 

「何またがってんだ!早く降りろ!」

 

「あっ!ごめん!」

 

そう言われるとケイトは直ぐに降りた。

 

「ごめんな。さっきまでキノコだったから気付かなかったんだ」

 

「気づかないってお前、・・・キノコ?」

 

キノコって今こいつは言ったのか?じゃあ俺は一晩中キノコの中に?

 

「そうよ。さっきまで私たち、キノコに埋もれてたのよ。だけどケイトちゃんが手を当てたら突然崩れて・・・」

 

待ってくれ。話が掴めないぞ。

 

「どういう事だ。俺が気絶してる間に何が起きたんだ」

 

「多分、俺のせいだ」

 

ケイトは言った。

 

「お前のせいだって?」

 

「俺、多分悪魔の実を食っちまったんだ。」

 

悪魔の実、だって?

 

「それで能力が暴走して、こんな事になったんだ。ほら、見てくれ」

 

「ッ!」

 

そう言ってケイトは、右手を見せてきた。それは紫色になっていて爪も黒く伸びている。そして、あの時の粉が出ていた。

 

「悪魔の実って、アレの事?一部の海賊とかが食べてるって言う」

 

「うん、それだ」

 

ミリーの質問に返答するケイト。

 

コイツの口ぶりから察するに、昨日の夜のどこかで食べたという事なんだろう。

 

いつだ?どのタイミングだ?注文の品にはそれらしいもんは見当たらなかったが。

 

「俺もびっくりだよ。こんな事になるなら酔った勢いで隣の席に置いてあるもんなんて食うんじゃなかったー!」

 

「「は?」」

 

思わず声が揃う。

 

「いや、ね。酔っ払うとね、正常な判断ができなくなるんだ。1本の指が2本に見えたりするんだよ。それで勝手に人様の物も食べちゃったって言うか、その・・・・・・とにかくすいませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「・・・」

 

言葉も出なかった。そんな貴重な物を忘れていくやつも大概だが、コイツはそれ以上だ。

 

「ミリーさんごめんなさい!幸い他の店員はもう帰ってたけど、オーナーである姉さんを巻き込んでしまって!一生かけても弁償しますから許してぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

「きゃっ、ちょっと落ち着いて。分かったから。わざとじゃないってよく分かったし弁償も結構よ」

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!ありがとうぅぅぅ!!!」

 

ミリーに抱きついて泣くケイト。そんなに言うなら俺の心配も少しはしろ。

 

「で、どうする?お前、家に帰れるのか?」

 

「まあ、そうだけど。・・・それとあと1つ、お願いがあるんだ」

 

「今度はなんだ?」

 

「俺が能力者って事、秘密にしてくれないかな?その、何か色々面倒臭い事になりそうだし」

 

そういう事か。悪魔の実を持っていた奴の事も気にかかるが、コイツの身を考えるとそうしてやった方が良いかも知れないな。

 

「分かった。こうなったのもきっと縁が何かだ。ただし、これは借りだからな」

 

「私もそうするわ。店に壊れてる所も無さそうだしね」

 

「ッ・・・・・・2人とも、ありがとう!」

 

そう言って頭を下げてきた。

 

・・・どうにもコレだけで終わらなさそうだな。

 

そう思うのは俺だけかもしれないが。

 

 


 

 

俺は山を走り帰路についていた。

 

いやーどうしようか。悪魔の実なんて食べる予定なかったんだけど。

 

にしてもアレだな。俺もう死ぬまで泳げないってことか。

 

うわ最悪だ。俺水泳はかなり得意な科目だったのに。もうあの湖で平泳ぎする楽しみも味わえない訳か。

 

だがそれより肝心の能力だよ。

 

キノコてお前・・・

 

だってコレ、胞子出してキノコ生やすだけじゃん。弱くない?

 

確かに拘束ならできなくも無さそうだけど、俺ぐらい鍛えた奴なら多分割と簡単に壊せる。

 

そしてキノコなので乾燥や火にもすこぶる弱い。

 

うん!最弱!

 

ふざけるなよ神様ァ!こんなガラクタ能力よこすくらいならメラメラの方が絶対良かったんだけど!

 

あー、戻りたい。戻って昨日の自分を『嵐脚』で蹴り飛ばしたい。

 

「お前が酔っ払ったせいでこっちは産廃能力者じゃボケぇ!」ってな。

 

やっぱ酒ってクソだわ。じいちゃんの搾ったミルクの方が1番!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時の俺は、気付いてなかった。

俺のとった選択が、この平和な島に大きすぎる変化をもたらす事になるのを。




主人公が食べたのは『ノコノコの実』です。

劇場版ワンピースに出てくるとある敵が食べていた物です。

何か個人的に気に入ってた能力なので、今回出してみる事にしました。

実はこの能力、使い方次第で恐るべき破壊力を出すことが出来ます。



本人は気づいていない上に産廃扱いしていましたが・・・

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