エイリーンは涙を浮かべながらその場に倒れる。
リザという少女。その顔は10年前、ルーヴェティア帝国襲撃によって死んだと思われていた自分の娘と瓜二つだ。
ガクトという青年。リザという少女。その巡り合わせが奇跡的に親子を繋ぎとめた。
「あなたは…。あなたは間違いない私の娘、アイシャール・フィアン。」
そう言うと、リザの脳裏に焼き付いていた父親に目隠しをされた瞬間が駆け巡る。
「愛してるぞ。アイシャール。」
それは紛れもない忘れていた父の声だった。母の顔、父の声、すべてを感じ取ったリザは泣いていた。
「やっと会えたね、お母さん…!」
エイリーンとリザは抱き合いながら再会を喜んだ。
ガクトとカルナはすべてを察したように王室を後にし、二人でルミナスの元へと向かった。
「リザ、よかったな。唯一の家族に会えてさ。」
ガクトはそう呟く。彼に残された唯一の家族は父親だけ。その父も行方不明だ。
するとカルナは仕事があるからと言って城へ戻った。
静かになった店内、今日はリザがいないから余計に寂しく感じる。
「ガクト、ちょっといいか。」
ルミナスが横に座って話しかけてくる。ガクトは無言でうなずき、話の内容を聞くことにした。
「俺の過去のことを話そうと思ってな。今から20年ほど前、俺には一人の息子と妻がいた。しかし騎士団長として任命された俺は、城で住み込みで働かなくちゃいけなくなったんだ。妻を説得したが聞き入れてもらえず、俺は泣く泣く息子と妻を置いて村を出ることになったんだ。そしてそれから10年後、俺は妻を救えなかった。そう、ルーヴェティア帝国の襲撃だ。ちょうど俺が住んでいたシュカ村は最後に狙われた場所だった、俺は帝国に囚われていたエイリーン様を助けるために最優先で動き、すぐにそこへ向かった。しかしもう手遅れだったんだ、俺がたどり着いた時にはもう…」
とそこまで言ったとき、ガクトは立ち上がった。
「ふざけるなよ…、どうしてもっと早く言ってくれなかった!!」
ルミナスは眼鏡を外し、深く頭を下げる。
少し涙を浮かべながら、彼は言った。
「俺は逃げてた。お前とここで築き上げた信頼、騎士団長としての憧れとまで言ってもらった俺が、お前を捨てて出て行った父親だと思われたくなかったんだ。でもリザがエイリーン様の娘だったと知ったとき、俺も告げるしかないと思ってしまった…。本当にすまない。」
また頭を下げる。ガクトはすぐに頭を上げさせた。
「俺だって憎んでるつもりだった…。でもさ、いざ目の前にすると嬉しさが勝っちゃうんだよ…。会いたかった、父さん。」
男同士で抱き合うのなんて変だけど、少し気持ちが晴れた気がした。
「私、まだガクトのところにいてもいいかな。」
母親のエイリーンと食事をしながら明るく問いかけた。
エイリーンは少し考えた後、優しい笑顔で答えた。
「えぇ!だってあなたはアイシャールではなくリザ、なんだからね。」
それから数日、リザはエイリーンの元で魔法を勉強し、親子水入らずの時間を共にしていた。
ガクトはなんだかんだいつもと変わらず、リザと一緒にルミナスのバーでだらだらと過ごしていた。
一方その頃帝国では…
「あ~あ、弱いねぇ。これが帝国の槍使い?」
そこには血まみれで死ぬダストの姿があったのだった。