謎の科学者のような男はそう言って腕からナイフを出し、ダストを殺した。
ルーヴェティア帝国に突如現れたこの男は一体何者なのか…。
足早にヴォイス、フェイカー、リコン、レギウスが駆け付ける。
しかし時はすでに遅かった。そこには血に染まった仲間の亡骸が転がっており、その隣には見慣れない白衣の男が立っている。
「ダスト!!」
ヴォイスは一目散にダストに向かって走るが、それを遮るように一人の男が帝国の門を開けて入ってきた。
奇抜な髪、見慣れない服を身に纏ったその男はただ白衣の男に向け、ご苦労。と言ったのだった。
仲間の死に直面し、激昂したヴォイスは二人の男に向けて殴りかかろうとする。
しかし白衣の男はあり得ないスピードでそれを阻止した。
「遅いなぁ…。そんなんじゃ僕には追い付けないよぉ…。ヒヒヒ。」
気味の悪い笑い方をしたのち、白衣の袖からナイフを出し、ヴォイスの首を切ろうとする、しかし咄嗟にそれを避けたヴォイスは思ったのだった、今の自分たちに勝ち目はない、と。
「さ、ロウフォン、全員殺せ。私たちの未来のために。」
奇抜な髪の男がそう言うと、ロウフォンと呼ばれた白衣の男は人知を超えたスピードでヴォイスたちの背後に回る。
そのままリコンの首の裏を切りつけ、気絶させる。
「ヴォイス様!!ここは私に任せてお逃げください!!!」
フェイカーはいつにも増して叫び、一気に分身する。
リコンを抱え、ヴォイスとレギウスは帝国の城の中へと入っていった。
ロウフォンという白衣の男と対峙するフェイカー。それをじっと見て背を向ける奇抜な髪の男。魔力を全集中させ、20人ほど分身を出す。
「おやおや、一気に形勢逆転ですかね?この状況なら本気を出せる。これ以上帝国から犠牲者は出させねぇぞ。」
これまでの冷静なフェイカーとは打って変わって、本気の幻術士として戦う決意を決めていた。
一瞬にして周囲を大量の爆弾が覆う。しかしロウフォンはなぜか攻撃してこない。まるで様子をうかがっているかのようだ。
すぐになにか裏があると察したフェイカーは一気に畳みかける。
「攻撃してこないならこっちから行くぞ。爆撃よ!龍となれ!!」
周りの爆弾が一気に爆発し、その爆風から龍が現れる。その炎に包まれた爆撃の龍はロウフォンを襲うようにして爆発した。
しかしロウフォンは避けようともしなかった。
まるで何かの作戦のように。その予想は的中してしまった。
奇抜な髪の男が指を鳴らすと、フェイカーは分身を出しており、目の前にはピンピンしているロウフォン。
「おやおや、一気に形勢逆転ですかね?この状況なら本気を出せる。これ以上帝国から犠牲者は出させねぇぞ。」
そう言った瞬間、記憶に一瞬だけ変な感覚を覚えた。
「私はこの光景を体験している…?まさか…そんなことがあるのか…!」
嫌な予感がしたフェイカーは、ある魔法を唱える。
「偽人転換(ダミースイッチ)…。」
そう唱えると、一瞬にして自分が作り出した分身と位置を入れ替えた。
危険を感じていたフェイカーは分身の一人をある方向へ走らせていた。
その行先は、ハインスラシア王国だった。
周りにいるフェイカーの分身を片っ端から消したロウフォン。
「お-い、状況はもうわかったのかぁい…?」
奇抜な髪の男はうなずき、ロウフォンへ向けて一言、
「あぁ。私の求める救世主はここにはいない。こんな弱い者たちはあとからいくらでも潰すことができる。アジトに戻って作戦を練ろう。」
その男とロウフォンは帝国を後にし、森を抜けてアジトへと戻っていった。