ルミナスにより稽古をつけてもらい、何度も特訓を繰り返していた。
そして騎士団長認定試験はあと一か月に迫っていたのだった。
「今日はもう十分だろ、そろそろ休もう。」
もうすぐ現役を降りる騎士団長、ルミナスが言った。
ガクトは近接戦練習をやめる気配も無く、ただ黙々と練習用の大盾を振る。
「しかしもう練習を始めて何年にもなるが、どうして剣じゃなく盾で戦うんだ?剣のほうが間合いを取りやすいだろ。」
確かに騎士団長なのに大盾を使うのはおかしい。ガクト自身もそれはわかっていた。
しかし彼には、盾でなくてはならない理由があった。
それは攻めるのではなく、守りたいから。
もう誰にも攻撃を通させない、そんな思いで盾を選んだ彼は、その理由を誰にも話さずただ、
「俺にはこれが向いてんだよ。」
とだけ言ってごまかす。
ルミナスは呆れて自分が経営するバーへと戻る。
また夜が明けた。
そして一か月後、ついに騎士団長認定試験の当日が来た。
会場はハインスラシア城にある大きな円形の庭だ。全部で30人を超える候補者が試験を受ける。この中で一人が騎士団長、あと一人が副団長に選ばれる。
「ガクト、やっぱお前も受けに来たか!」
と、笑いながら声をかけてきた青年はカルナ・ドラゴアイ。同期で一二を争う強さだ。
カルナは剣術に長けていて、素早い動きが得意だが、それでいて統率力もある。
今回の試験で一番のライバルはこいつしかいないと初めから思っていた。
「あぁ。そういうお前こそ。お互い頑張ろうな。」
ガクトはそう言って試験が始まるのを待った。
10分ほど経ち、試験が始まった。今回の試験内容は襲撃審査。敵国が攻めてきたときにどう対処するのかを審査する。
敵と戦う者、国民の安全を最優先する者、いろんな人物がいた。
そしてカルナの番。カルナは国民を避難させ、帝国の襲撃を迎え撃った。
騎士団の幹部たちからの評価は高かった。その場にいた全員がカルナが合格だろうと思っていた。
そしてガクトの番。
迎え撃つところまではカルナと同じだった。しかしその後にガクトが取った行動、それは敵国と戦った後、握手を交わしもう戦わないで済むように停戦協定を結ぼう、と言った。周りの候補者たちは笑ったが、ただ一人、カルナだけは拍手をした。
審査が終わりその日の夜、騎士団の寮の自室にカルナが来た。
「お前やっぱりすごいよ。俺はお前と仲間になることができてよかった。騎士団長にふさわしいのはお前しかいない。停戦協定、実現させような。」
そう言ってガクトに拳を突き出す。ガクトはそれに応じるように拳を突き出した。
翌日、結果発表の日。ルミナスが最後の仕事だと言って、読み上げる。
「新騎士団長をガクト、副騎士団長をカルナに任命する!ほかのものは変わらず任務に励め!以上だ。」
ルミナスがよくやったと言わんばかりに目配せしてくるが、ガクトは無視していた。
引継ぎが終わった後、ガクトとカルナでルミナスが経営するバーへ行くと、
「ここまでよく頑張った。これからはお前が民衆の盾となるんだぞ。」
と、ルミナスが呟く。
「そんなの、当たり前だ。」
ガクトがそう言うと、カルナとルミナスは大声で笑いあい、ガクトも少し微笑んだ。
数か月後、騎士団長になったガクトはすっかりカルナに仕事を押し付け、城下町を歩き回ってばかりいた。
「お前に期待した俺が間違いだった…。」
カルナは頭を抱えながらガクトを見つめるばかりだった。