「長くなると思うけど…あなたが国を守るの。お願いね。アイシャール。」
王族に伝わる魔法の受け継ぎが始まった。
国を守るための障壁。回復や攻撃の魔術。王国の歴史などすべてを数日間で覚えなくてはいけない。
「大丈夫。私、できるよ!!」
心配させまいとリザは明るく答える。
安心したエイリーンは魔術の仕組みや魔力の増強の仕方、魔力の供給など教え始める。
リコンとフェイカーの病室には毎日ヴォイスが通い、世話をしていた。
「ごめん…。何回も助けられちゃってさ…。」
俯きながら謝るリコンの肩に手をのせ、ヴォイスは励ます。
「大丈夫だ。必ずあいつらをぶっ倒してやるからな。守ってやれなくてすまん、リコン。」
帝国の仲間を二度失い、ヴォイスの怒りは限界に達していた。
第三勢力を許さない。そんな思いで毎日トレーニングを続けている。
すぐにでも倒したいとさえ思っているが、アジトがわからず攻撃をしかけられないでいた。
そんな三人のところにガクトとカルナがやってくる。
「大丈夫か…二人とも。ごめんな、守れなくて。」
頭を下げるガクトを見てフェイカーとリコンは笑う。
「似てるんだな、二人とも。」
少しだけ仲良くなった気がした。
しばらく話していると、外が騒がしくなり、窓の外を見る。
するとそこには赤紫の長髪で鎧を纏った騎士が馬に乗り門から入ってきた。
「魔法騎士ルリナ。王国の危機と聞いて戻って参りました。」
その女性はハインスラシア王国から数年前に旅立ち、他国で修業していたカルナの姉、ルリナだった。
ガクトとカルナは急いでルリナの元へ行き、顔を合わせる。
「姉さん!!」
カルナが嬉しそうに言うと、ルリナは馬から降りて、カルナを抱きしめる。
「大きくなったね。カルナ…。」
民衆の前で抱きしめられた副団長は恥ずかしがりながら離れる。
「現ハインスラシア王国騎士団長、ガクトです。お会いできて幸栄です、ルリナさん。」
お辞儀をして、丁寧に挨拶する。
「遅くなってしまってすまない、騎士団長。それと、団長なんだから敬語なんてやめてくれ、むしろ私が使うべきなのだがな…。」
そう言って握手をしてくれた。
ガクトとカルナはルリナを連れて、会議室にて現在の状況を説明した。
「なるほど…。それは悲惨だったな。本当に遅くなって申し訳ない。」
謝るルリナを元気づけながら今後の作戦について話し合った。
そして数日後の夜。エイリーンとリザは最後の継承に入っていた。
「よくここまで頑張ったわね…。ではこれで最後…。」
リザは見違えるように魔術が上達し、王国の王妃として相応しいレベルに達していた。
「最後は…何を覚えたらいいの?お母様。」
リザは問いかけるがしばらく沈黙が続く。エイリーンは涙を浮かべている。
最後に教える魔術が何かわかっていないが、そんなに大変なのかと覚悟していたリザだったが、悩んでいるとエイリーンが口を開く。
「私を…私の魂を…取り込んでほしいの…。」
リザは理解できなかった、なぜ国のために自分の母親の命を奪わなきゃいけないのか。それに魂を取り込むとはいったい何なのか。
「何…言ってるの?どういうこと?嫌だよ…お母さんがいなくなるなんて…絶対に嫌!」
もちろんすんなり受け入れるなんて無理だった。
「私だって嫌です…!愛するアイシャールと一緒に居られなくなるどころか…この世界も…もう見られなくなるなんて…。でも、もう…私には時間がないんです。どうか…私の力の全てを…受け取ってください。」
最後に二人は強く抱きしめあった。
「ずっと、ずっと一緒ですよ…。お父様も母さんも、あなたのそばに居ます…。アイシャール。」
涙で声が震えながら耳元でそう呟き、エイリーンの体から全ての魔力、生命の力がリザの体に流れていく。
しばらくして、エイリーンの体は冷たくなった。
リザはこれまでしていた目隠しの布を外し、王妃となった。