外周にある島国には変化が起きていなかったことを悟ったガクト一行は、大陸を取り戻すための協力を得るためにすべての島国へと向かう準備として、船を探していた…。
もう半日は歩いただろうか、今までとはまるで違う砂漠のような景色に驚く暇もなかった。
グラムに支配されてからは自然はごく一部に減り、魔力も吸い上げられていた。
このままではこの島から緑が消えるのも時間の問題だ、そんなことを考えていると久しぶりに人を見かけた。
男は一行に死に物狂いで近寄り話しかける。
「お前ら…!高そうな服着てんな!金寄越せ!!金!」
グラムが統治してから今まで以上に貧困層が増えていた。国を制圧し世界を作り変えたものの、メシアはすでに寿命の半分以上を失い、行動すらも難しくなっていた。
ヴォイスは無視して通り過ぎようとしたが、こうなった原因は民を、国を守れなかった自分にある。ガクトは自分を責めていた。手持ちの少ない金銭を彼に渡して何も言わずにその場を立ち去った。
「俺がもっと強ければ、みんなを守れていたらこんなことには…。」
意気消沈しているガクトに続き、その場の4人の空気はとても重かった。
そうして誰も口を開かず数分が経過した。リザは言いづらそうに重い口を開く。
「過ぎてしまったことは仕方ないよ…。でももう一度取り戻すために旅に出ようって決めたんじゃない。ここで躓いたら、もっとダメになっちゃうよ。」
ルリナとヴォイスはすぐに立ち直り足を進め始めた。しかしガクトはそれでも自分を責め続けていた。リザはガクトの元へと歩き、大きく息を吸った直後、勢いよくガクトの頬に平手打ちをした。
「これは現実だよ!?受け入れなきゃいけないの!私を救ってくれたのはあなただった…!だから今度は私以外のみんなも救ってあげて…お願いだから…。」
そうだ、自分はみんなのために盾を取ったんだ。血が滲んでも、灰になっても守り抜くって決めたじゃないか。こんなところで挫けるわけにはいかない。
「ありがとう、リザ。おかげで目が覚めた。俺はもう一度この世界を取り戻す。死んでいったみんなのためにも!」
3人は笑みを浮かべ、安堵した様子でガクトに歩み寄る。
「それはそうと船は!?早く探さないと!!」
忘れてた。結局その日は船を見つけられず野宿することになった。
今日の夕食は野生動物の肉や数少ないお金で買った材料で作るシチュー。素朴な味だったけど思い出の味になった。
ルリナ、ヴォイス、ガクトが交代で見張りをし休養を取ることにした。
そして夜は更けはじめ、ヴォイスとガクトは見張りを交代した。
「今日中に船を見つけないとな…。きっとあと少しで港だった場所に着くはずだしな。」
一人で計画を立てていると森の中に人影が見えた。すぐに察知したガクトは小さな盾を持ち身構える。
すると一瞬で目の前から影は姿を消した。辺りを見回していると後ろから声がした。
「その程度か、甘いな…。」
声がした途端、ガクトの横を巨大な剣が通り過ぎる。間一髪避けたがとても今の盾じゃ防げない。相手は黒い鎧に覆われていて、武装でも負けていることは目に見えてわかっていた。それでも3人を守るために立ち向かう。
なんとか壊れはしなかったが今の盾ではやはり何も攻撃が通っていなかった。
時間を稼ぐのも限界と思っていた時に、盾と大剣がぶつかり合う金属音で目を覚ましたルリナはすぐに戦闘態勢で加勢した。
「ガクト!大丈夫か!!」
ルリナは炎魔法を剣に変え、黒い鎧に切りかかる。黒い鎧の男はその場から動かずよけようとしなかった。切り裂くことはできなかったが、傷をつけることはできた。このまま時間を稼がれるのはまずいと思ったのか、黒い鎧の男は闇の魔法を地面に向けて放ち、その場から消えた。
一体今の男は誰だったのか。そんなことを考える暇もなくヴォイスに続きリザが起きてくる。4人はすぐに出発し、港を目指した。
しばらく歩いていると港についた。しかしここ1年で使われた形跡は全くなく、ボロボロになった港には船が一艘しか泊まっていなかった。それでも大きな船が残っていたのはまだ救いだった。
「誰もいませんけど…この船使わせていただいてもいいんでしょうか…。」
不安げにリザが呟くと、3人は返事もせず船に乗り込み、ゴーサインを出していた。苦笑いしつつも遅れて乗り込み、4人は最初の島へと出発するのだった。