城下町はいつものように活気にあふれていた。
そんな中、パトロールがてら散歩していたガクトはある少女を見つける。
輝くような金色の髪をして、大きな布で目隠しをしている少女。
巨体の不潔な男にひもで繋がれながら歩いていた。
「おいリザ、今日は何をして遊ぼうかぁ…。」
男は口を大きく広げにやつきながら少女の元へと顔を近づける。
「なんでも大丈夫です。お父様の好きなようにしてください。」
表情を一切変えずにそう答えたのが少し遠くてもわかる。
明らかにおかしい。遊ぶことに対してまるで父に従うようについていくなんて。
ガクトはそう感じ、後を追うことにした。
少女を見つけてから歩いて30分ほどにある荒れ地の岩の裏に隠れたガクトは助ける機会を伺っていた。
「てめぇは静かで面白くねえよなぁ!!ガキはもっと笑ってりゃいいんだよ!!」
そう言って巨体の男は金髪の少女に殴りかかる。
見過ごすわけにはいかない。ガクトは岩から飛び出し攻撃を防いだ。
「こんな女の子殴るなんて、父親失格じゃないのか?」
ガクトはそう言って男から少女を避け、左手を前に突き出す。
ガクトの左手の人差し指には赤い宝石のようなものが埋め込まれたリング。ハインスラシア王国の女王エイリーンから騎士団長就任記念でもらった召喚リングだ。
エイリーンから魔力を供給され、武器、乗り物などを召喚することができる。
「来い。正義の大盾…その力で少女を守るために!!」
ガクトの目の前に赤い魔法陣が現れる。そこから眩い光を放ちながら、大きな盾が現れた。
男は驚いた様子だったが、咄嗟に棍棒を構える。少女は気づかないうちにガクトの服の裾を握っていた。まるで怖くなさそうだったが、本当は辛かったんだろうと、ガクトは思った。
男が棍棒を振ろうとしたその時、ガクトが口を開く。
「おっと待った!先に言っておくが俺からは攻撃を一切しない。いくらあんたのように腐った奴でも女王様が愛する一国民だからな。俺はこの子を守りに来た、ただそれだけだ。」
そう言い放つと、ガクトは強張った表情から一変、笑顔で少女に笑いかける。
「うるせぇ!!お前なんか殺してやる!」
男は躊躇わず棍棒を振りかざす。大きな盾でそれを防ぎ、ガクトは少女に目線が行かないように徹している。
「俺がたった一人の父親だぞ!!お前なんかに何がわかる!」
男の猛攻は止まらない。しかしその全てを正確に守る。もう傷つけない。そう誓ったあの日のことを思って。
男が疲れ果て、ガクトに問いかけた。
「そんなガキ守ってどうすんだ…。俺からは逃げられないんだぞ…。どうやっても!!」
間髪入れずにガクトが答える。
「俺は全員守りたいんだよ。この子も、あんたも。だからこそこの子をあんたとは一緒に居させたくない。この子にもあんたにも、お互い得がないんだろ?」
男は沈黙し、少女を見つめる。
少女は目隠しを外さず、下を向いている。
そしてしばらくして、男はガクトに近づきただ一言。
「すいませんでした!!」
頭を下げる。ガクトはただ男に向けて、1枚の紙を差し出した。
「あんたのように力のある人は歓迎だぜ。ただしこの子とはもう縁を切ってくれ。お互いのためにな。」
ガクトが差し出した紙は王国騎士団の募集ポスターだった。男は泣いてガクトに抱きつき、去っていった。
ガクトは少女の頭を撫でる。
「よく頑張ったな。遅くなってごめん。」
そう声をかけると、少女はただ首を振って、
「ありがとう。」
そう呟いた。
事が終わり城下町へ戻った二人。ガクトは少女にいろいろ聞いていた。
「んで今更だけど名前は?それと行く宛とか、ないのか?」
少女はガクトと手をつなぎながら答える。
「名前はリザ。行く宛なんてない。初めから私は一人だから。」
まるで死んでしまった人のように冷たい生気がない返事。
それに気づいたガクトはこう答える。
「それならひとまず俺の家で暮らせばいいさ。またそれから詳しく話を聞かせてくれないか?」
リザはそれまでより少し嬉しそうにしながら、
「…うん!」
元気そうな顔を見たガクトは安心して家に戻った。