「ようやく来たな。俺たちは必ず勝って取り戻すんだ。」
「えぇ。私たちの国を、みんなの思いを、必ず取り返しましょう。」
「そうだなぁ!ここまで来て負けるわけにはいかねぇもんな!」
「カルナよ…遅くなった姉を許してくれ。必ず助け出す!」
四人は決意を胸にし、仲間達を見る。ゼオン、ムラマサ、カスミ、ディアは頷き、森へと歩き出した。
森に入ってからかなりの時間が経ち、もうすぐ抜けられるところまで来たが、夜になったため休息を取ることにした。
キャンプをし、皆が睡眠を取っている中、ガクトは眠れないでいた。
木に腰掛け、夜空を眺めていると、背後から大きな剣が襲いかかってくる。
「なんだ!?」
「チッ、外したか。」
その男はフィルゲイラ島の地下室で見た黒い鎧の男だった。
「お前!あの時の!」
「あぁ、ここまで来たらあとはお前さえいなければ俺の目的は果たされるからな、死んでもらう。」
ガクトは銃と盾を構えて戦う。
しかし男の力は圧倒的ですぐに反撃されてしまう。
「ぐあっ!こんなところで…死ぬわけには!」
「諦めが悪いな、さっさと死ね!」
黒い鎧の男は左手に魔力を集め、それを闇魔法に変えて放った。
「うぁああ!」
ガクトは耐えきれず弾き飛ばされる。それと同時に反動で男の鎧兜は弾け飛ぶ。
男がガクトに大剣を突き刺そうとすると、目が覚めたリザが身を挺して庇う。
「やめて!!」
「っ…!!リザ…!やめろ…。」
男は少しの沈黙の後そう言って、剣を下ろす。
ガクトとリザが男の顔を見ると、その男はガクトと同じ顔をしていた。
「俺…なのか?髪は黒くなっているが…顔は俺と同じだ。」
「そうだ。俺はお前だ。お前になるために、俺はお前を殺しに来た。」
仲間達が皆起きてきて、彼を見る。もう一人のガクトはルリナとヴォイスを見て、少し落ち着いた様子で話し始めた。
「俺は…ずっとお前達を見張ってきた。俺がこの世界に来たのは、お前達がハイ島へ向かう時だ。俺は別世界線のガクト。この世界ではカルナが闇の結晶によって悪に染まってしまったが、俺は自らが悪に染まった。暗黒の騎士となった俺は、力が抑えられず、その場にいた仲間を含めてほとんどの人間を殺戮したみたいでな。もちろんカルナやリザ、ヴォイスやルリナも皆俺が殺してしまったんだ。気がついた時にはその事実だけが残っていて俺は絶望したよ。でもグラムは世界線を渡る装置を開発していた。それでこの世界線へと渡って、俺は俺自身を殺して成り代わることで、理想の未来を手に入れようとしていたんだ。」
一行はその話を聞き、沈黙する。
少し間が空いて、ガクトが口を開く。
「それで、今お前の元の世界はどうなっているんだ?」
「誰もいないさ、人が消えた世界だ。俺の手によって。正確には気がついた時には全て俺が殺していたらしい。」
「だったら、戻る必要もないな。ここに居ればいい。俺の仲間に俺がいるってのはおかしな話かもしれないが、俺とお前は同じであり別の人間だ。」
「何を言っているんだ…?俺はお前を殺そうとしているんだぞ?仲間だと…どうしてそうなる。」
「俺様もそれでいいと思うぜ、別に何もガクトを殺して成り代わる必要なんてねぇじゃねぇか」
「俺も同意だな。データ上は別の人間として扱われている。」
各々がもう一人のガクトの存在を認めて、話を進めていると
「じゃあ決まりだな、俺たちと一緒に、この世界で暮らせばいいさ。こっちでは平和を取り戻そうぜ、俺!」
ガクトはもう一人のガクトの肩を叩き、笑う。
「…フフ。面白い。そうだな、別に俺は俺自身に復讐をしたいわけじゃない、メシアに復讐したいだけだ。わかった、俺も同行させてもらう。それと、俺の魔力を少し分けてやるから少しは元の力を取り戻したらどうだ?」
もう一人のガクトに魔力を供給され、ガクトはもう一度武器を召喚できるようになった。エイリーンにもらった盾をまた召喚できるようになり、喜んでいた。
「でもよぉ、ガクトが二人じゃ名前がややこしくなるんじゃないかのぅ?」
「我も同じことを考えていたぞ、ムラマサ。」
ムラマサとカスミの質問に一行が悩んでいると、ディアが提案する。
「じゃあ、もう一人のガクトだし、影みたいなもんだからシャドウとかどうかしら!かっこいいし!」
「おいおい、安直だな、俺の新しい名前だぞ?」
「私もいいと思う!シャドウ!」
「リザにそう言われたら仕方ないな…。じゃあ俺は今日からシャドウだ。よろしくな。そうと決まれば、さっさと森を抜けるぞ。」
一行は森を抜け、城の前へと辿り着いたのだった。