気づけばすっかり夜になっていた。
しかしそう簡単に入れるはずもなく…。
「団長様!誰ですかその汚い少女は!!」
鎧に身を包んだ門番が焦りながら言った。
リザからは少し元気がなくなったように見えた。頭を抱えながら、ガクトはこう答える。
「この子は俺の義理の妹でな!実は少し前から引っ越してたんだが、い、家から追い出されちゃったらしくてよ~!」
まるで大根役者のごとく下手くそな演技をしてみたが門番の目つきはより鋭くなり、
「まさか誘拐ですか…!団長様がそんなことするなんて信じられません!!」
完全に誤解だ。まぁ半分間違ってはいないのだが、とてもガクトには言い訳が思いつかず、二人は困っていた。
するとそこに、カルナがやってくる。カルナはガクトに耳打ちして、
「何があった。その子は誰なんだ!」
と囁く。状況はあとで説明するからとりあえずこの子を俺の妹にしてくれとだけ頼み、カルナはため息をついて門番へと駆け寄る。
「あの子はガクトの血は繋がっていないが親族だぞ。しばらく預かることになったんだから仕方のないことだろう。女王様には俺から説明しておく、だから大丈夫だ。」
そう言うと門番は頭をさげ門を開ける。
カルナは二人を手引きして3人はガクトの部屋へと向かったのだった。
「さぁ、説明してもらおうか。その子は誰なんだ。」
カルナが落ち着いて問いかける。
ここまであった経緯を説明し、ひとまず納得してもらったが、ガクトとカルナに疑問が残る。
それはリザが口にした「初めから私は一人だから」という言葉が気になっていた。
ガクトからしてみれば、やむを得ない事情とはいえ、ただ一人の家族であった父親と引き離してしまったのだ。ガクトは反省してただ謝る。
しかし少女は驚きの言葉を口にした。
「気にしてないよ。だってあの人は4人目の父親だから。」
想像していなかった言葉に驚きを隠せない二人は一斉に聞く。
「どういうことなんだ、君の本当の家族は!!」
そう聞くと、少女は少し笑って昔の話をした。
今から10年ほど前、王国に起きたルーヴェティア帝国の襲撃。
そのとき被害を受けた城下町では何千人もの死者が出た。
リザは当時2歳。記憶もまばらでうっすらと覚えているが、リザの父親は惨劇を見せないために目隠しをして、こっそりと近くに居た夫婦に向け放れの民家へ逃げてくれ、この子を頼むと伝え、リザは見知らぬ家族とともに遥か遠くに地にある田舎町へと逃げた。
リザは義母から両親は死んだ。代わりに私たちが育てる、それだけ言われて育ってきた。リザという名前もその時に義母から付けられた名前だ。
しかしある日、リザが10歳になったころ。突如押し入ってきた盗賊によってリザの義理の両親が殺された。
こいつはまだ若い。そう言われてリザは盗賊に連れていかれ、奴隷として生活させられることになる。
やがて1年が経ち、盗賊のアジトは国によって破壊され、盗賊は解散した。
その中の一人がリザを連れていき、ガクトと出会うことになる。
「これが私の過去。私は本当の両親の名前も、顔も覚えていないの。」
悲しすぎる現実に二人は落胆していた。同時に怒りも沸いた。
「俺が必ず君の本当の家族を見つける。」
すぐに立ち上がりガクトはそう言った。
リザの目隠しが濡れる。リザは笑ってガクトに抱き着くのだった。
ガクトとカルナはリザを連れて、女王エイリーンがいる王室へと向かう。
エイリーンは目を見開き駆け寄った。
「まぁ!!なんて麗しい子なのかしら…。その子が噂で聞いた子なのね。いいわ、好きにお城を使ってください。」
優しく微笑んでリザを抱きながらそう言うと、リザは浴室へと連れていかれた。
翌日。ガクトはリザに自身の過去を打ち明ける。
「俺も同じくらいの年に父親がいなくなった。俺の場合は仕事で村から出て行ったんだけどな。」
ガクトの過去を知り、同じような境遇だとわかったリザはより一層安心して、
「私の弱い魔法でよかったら、支えるからね。」
ただそう言ってルミナスのバーへと走っていった。
後を追うようにガクトも走って向かっていった。
「はい、リザちゃんにはこのオレンジジュースな。」
メガネをかけ完全にバーテンダーとなった元騎士団長が、飲み物をふるまう。
今日も仕事をせずゆっくりと平和な時間を過ごす現騎士団長。
こんな日が続けばいいのにな、と思うばかりだった。