いつも通りルミナスのバーで過ごしていると、カルナが呼びに来た。
「ガクト、女王様から召集だ。なんでも俺とお前だけらしい。」
何か悪いことでもしたのかな、と思いながらリザを連れて城へ戻る一行。
王室へと入ると、そこには大きなテーブルと椅子が並べられ、エイリーンが座っていた。
「さ、どうぞ座って?」
エイリーンが声をかけ、3人が座ると、
「遅いぞお前たち!!エイリーンが呼んだんだからもっと早く来い!!」
と大きな声が椅子の裏からする。
その正体は黒猫に翼が生えた魔物であり、女王様のペットであるモアだ。
モアはエイリーンを護衛するために国に召喚された生物で、見かけに反して強大な魔力を持っている。炎を自在に操るので、怒らせると怖い。
「まぁまぁ。モア、少し落ち着きなさい。」
エイリーンがげんこつをモアに一発入れると、モアは気絶してその場に崩れ落ちた。
召喚獣を一撃で倒す女王のげんこつ、おそるべし。
「で、女王様。私たちが召集された理由は一体何なのでしょう。」
カルナが聞くと、エイリーンはあっと思い出しような表情で椅子に急いで腰掛ける。
するとこう語りだした。
「私は帝国との戦争を望みません。もちろんあちらから襲撃したらこちらも応戦しますが、こちらからは攻撃したくないのです。だからこそ、その理想と同じ思いを告げたガクト、あなたを騎士団長に任命したんですよ。」
ひとまず3人は胸をなでおろした。
しかしエイリーンが語ったことは確かだ。皆戦争を求めてなどいない。戦わない平和なときを過ごせることが一番だと思っている。
「そこで、停戦協定を結ぶことを目標として活動していく方針を固めたいのです。あなたたちなら、きっと納得させられますよね。なんとか騎士団の方々に話を付けてください。私はもう、誰も失いたくないですから…。」
エイリーンはそう語ると、席を立った。
一通り話が終わり、3人が王室を出ると、エイリーンは昔のことを思い出す。
国民全員が忘れられない10年前の帝国襲撃。もちろんエイリーンもそれは同じだ。
自分の最愛の夫と娘をその時に失ったからだ。しかしエイリーンはその時、帝国に人質として囚われており、夫と娘の死を確認したのは事件の数日後になった。
ルミナスにより帝国から救われたエイリーンはすぐに病室へと運ばれ、その後ルミナスは最後に襲われた村、シュカ村へと急いだのだった。
「あんな悲劇、もう繰り返してはいけない…。この世界に平和が訪れますように。」
いつものように、空に向けて祈りを捧げた。
エイリーンの理想を聞いた3人は騎士団を集め、指示を伝える。
騎士団の団員達は納得し、停戦協定を目指して団結した。
ガクトはリザと戦いの訓練をしていた。
リザはまだ幼い少女だが、モアにも匹敵する魔力を持っていて、立派な魔導師になりつつあった。
「私の魔法でも、人は救えるかな?」
リザはガクトに問いかける。
大声で笑った後、ガクトは
「そんなの当たり前だろ。」
そう言って頭を撫でた。
一方その頃…
「さぁ…襲撃の時間だ。」
帝国の魔の手が近づいていることに、誰も気が付くことはなかった。