黒魔導士の血脈   作:永遠の炎

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プレヒトがオーガストを捨てなかったら?

これはそんな「もしも」のお話。


プロローグ
運命の分岐点


 X697年、アースランド

 

 イシュガル大陸の永世中立国・フィオーレ王国、マグノリアの街にギルドホームを構える魔導士ギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)。そのギルドの地下にて二代目ギルドマスター、プレヒト・ゲイボルグは思い悩んでいた。

 

「………そんなバカな……この反応は……」

 

 アンクセラムの黒魔術。別名矛盾の呪い。対象者を不老不死とし、その者が生命を尊く思えば思う程、周囲の生命を奪うという呪い。生命を奪わない為には生命の尊さを忘れなければならない。

 しかしその呪いによって不老不死になったはずが、死んでしまった女性がいた。

 

 メイビス・ヴァーミリオン。フィオーレ王国の魔導士ギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の初代ギルドマスターだ。

 いや、もしかしたら生きている可能性はある。少なくともその心臓は生きている。動いてはいないが微かな魔力は残っていた。故にプレヒトは意識を失ってしまったメイビスを蘇生する為に蘇生用の魔水晶(ラクリマ)の中に彼女の身体を封じた。

 

 彼女を蘇らせる研究の傍ら、プレヒトはある重大な事実に気付いた。

 

「メイビスの体内に生命が……」

 

 動かなくなったメイビスの身体の中に新たな生命が芽生えていたのだ。つまり彼女は子供を身篭っていた。

 彼女の見た目は幼く可憐な少女だが、それは不老不死だから。ちゃんと成長した上で生きていれば二十代前半といったところだろう。そこは問題ではない。

 

 アンクセラムの黒魔術によって呪われた状態で身篭ってしまっていたのが問題なのだ。

 

「………放っておくべきか…殺すべきか、生かすべきか……」

 

 今メイビスの中にある赤子がアンクセラムの呪いによって今にも死んでしまうかもしれない。無事に取り上げる事ができたとしてもその子供もまた母同様にアンクセラムの呪いにかけられているかもしれない。

 

「殺すか、生かすか、殺すか……」

 

 もし、赤子もその呪いにかけられていれば殺す手段などない。それは分かっている。最悪なのはその赤子からアンクセラムの呪いによる死の捕食が解き放たれるかもしれない事だ。

 

「………生かす…か…」

 

 結局プレヒトは非情になりきれなかった。自分にとっても恩人であり、大切な仲間であるメイビスの子をあのまま放ったらかしにする事も殺す事もできずに出産の時を迎えてしまった。

 

「メイビスの子……父親はゼレフなのか……」

 

 取り上げた子供を見てプレヒトは頭を抱えた。この赤子にはありとあらゆる問題が付き纏っている。

 

「しかしいつの間に……いや、メイビスもこう見えて成人の女…。問題はそこではない。この子をどうしたものか……」

 

 幸い生まれた赤子にはアンクセラムの呪いはかけられてはいなかった。それは良い。しかしまた別の問題が沸いてしまった。

 

「光とも闇ともつかぬ強大な魔力……生かしたのは過ちか……」

 

 メイビスと黒魔導士ゼレフ。ある種の魔法における天才二人の間に生まれた子供。故に生まれ持ったその魔力は赤子という事を度外視してもあり得ない程に強大なものだった。

 

 こんな強大な魔力を持つ子供を正しく教え導けるのか……。プレヒトにはそんな不安があった。それにメイビスは既に死んだと公表している。彼女の蘇生が叶うならば話は別になるが、この子の出自をギルドの仲間達にどう伝えれば良いものか。

 

「………どうする?」

 

 メイビスの子を殺す事はできない。ならば捨てるか?育てるか?

 

 ここが運命の分岐点となった。ここで捨てるという決断を下された子供は疎まれ、誰からも愛される事なく、無の境地へと至った。

 しかし、この世界では違った。捨てられたという「もしも」が存在するならば、捨てられなかった、育てられたという「もしも」もまた存在するのだ。

 

 そしてプレヒト・ゲイボルグはその赤子を育てるという『選択』をした。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

 ぼくにはうまれたときからのきおくがありました。なんでしっているのかというと、ぼくにはそれだけのまりょくがあったから。

 

 ぼくのなまえはぼくのおとうさんとおかあさんがはちがつにであったことからなづけられました。

 

 おかあさんはもうこのよにはいなくて、おとうさんはぼくのことをしりません。でも、それでもよかったのです。

 

 プレヒトはおとうさんもおかあさんもいないぼくをそだててくれました。ギルドのみんながかぞくだとおしえてくれました。だから、おかあさんがもういなくても、おとうさんにあえなくても、ぜんぜんさびしくはありませんでした。

 

 ぼくはこどものときからしあわせでした。マカロフとヤジマ、ロブというおともだちができました。

 ボブ、ゴールドマイン、ポーリュシカにレイス……みんながおともだちであるとどうじにかぞくでした。おかあさんがつくってくれた妖精の尻尾(フェアリーテイル)がぼくのかぞく。なによりもいちばんたいせつなものでした。

 

 プレヒトとウォーロッドはぼくにとってのおやでした。ちのつながりがなくても、かぞくになれるとおしえてくれた。ぼくをそだててくれた。だからゼレフとメイビスがうみのおやなら、プレヒトとウォーロッドがそだてのおやです。

 

 そしてつきひがながれてギルドをやめてしまうひとや、しごとでしんでしまうひともでてきました。それでもギルドにあたらしくくるひとみんながかぞくです。

 

 プレヒトはマカロフとぼくに妖精の尻尾(フェアリーテイル)をたくしてたびにでました。にどとかえってはこないとぼくにはわかりました。

 

 だから、これからはぼくとマカロフがギルドのこどもたちのおやです。

 

 ぼくはギルドでそだちました。ギルドのみんなにそそいでもらったあいじょうを、けっしてわすれません。ぼくも、ギルドのこどもたちにあいじょうをそそいでいきていきます。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 ??年後

 

 マグノリアの街の秋の収穫祭。この時期になるとこの街にギルドホームを構える魔導士ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)幻想曲(ファンタジア)という一大パレードを行う事が伝統となっている。

 

 幻想曲(ファンタジア)とはギルドの魔導士達が総出で魔法によるパフォーマンスを行うという形のパレードだ。

 

「じーちゃん!見て見て!今日の幻想曲(ファンタジア)で俺これ着るんだ!!」

 

「……うむ。似合っておるぞ、カキ」

 

 目の前の少年に「じーちゃん」と呼ばれた老人はニッコリと笑いかけながら頷く。どうやらこの老人と少年は祖父と孫の関係のようだ。

 孫……カキという少年ははしゃぎながら祖父に嬉しそうに今夜の幻想曲(ファンタジア)での衣装を見せつけていた。

 

「あとねあとね!昔ラクサスがマスターに言ってたらしいんだけど、俺もパレード中にじーちゃん見つけられるか分かんないから、このポーズ取るから!」

 

 カキは右手を上げて人差し指を上空に向けて立てた。親指は別方向を真っ直ぐに指している。それを見てカキの祖父は数年前の幼馴染の自慢話を思い出す。

 

「そいつは確か、マカロフが自慢しておった……」

 

 姿が見えなくとも、遠く離れていようとも、いつでもをギルドの仲間を、家族を見ている。ずっと見守っている。そんな意味が込められたルーティンだ。

 歳のせいか、涙腺が緩む。あんなに小さかった孫が幼いながらもこうしてギルドの魔導士となって立派に幻想曲(ファンタジア)に参加しようとしている。自分も歳を取る訳だ。

 

 ニカッと笑うカキの頭を祖父は力強く、しかし優しく撫でる。

 

「俺、頑張るから!見ててね!じーちゃん!!」

 

「うむ!ちゃんと見ておるぞ!」

 

 オーガスト・ヴァーミリオン。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士として隠居後、幻想曲(ファンタジア)にて孫の晴れ舞台を観る。




ナツは夏、オーガストは8月……ゼレフの血縁者の名前は夏の季節から来てるので主人公は「夏季」にしました。ゼレフに会ってないのに「オーガスト」の名前を付けられたのはご都合主義です。
んん?ファントムのジョゼとか天狼島でのハデス戦とか、逆にどうやって苦戦すれば良いのかな?

オーガスト・ヴァーミリオン
聖十大魔道序列一位。妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスターメイビスの息子にして主人公の祖父。プレヒトに捨てられる事なく、血の繋がった親はいなかったものの、妖精の尻尾(フェアリーテイル)を家族とし、確かな愛情を注がれて育った。マカロフとは幼馴染。アルバレス建国などに携わってないので原作より“若干”実力は劣る。

カキ・ヴァーミリオン
主人公。妖精の尻尾(フェアリーテイル)初代マスターメイビスの曾孫。オーガストの孫。外見は特に考えてないけどメイビス譲りの鮮やかな金髪である事だけは間違いない。年齢とか諸々は下記のアンケートの結果次第で決めます。

ヒロインは誰にする?

  • ルーシィ
  • エルザ
  • ミラジェーン
  • ウェンディ
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