黒魔導士の血脈   作:永遠の炎

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もうちょっと原作前の話やろうかと思ったけど、上手く書けなかったのでもう原作入ります。

あとあるキャラについてまだ伏せておきたい事もあったので。


鉄の森編
鎧の魔導士


 X784年

 

 最近、以前から憧れていた魔導士ギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に加入した星霊魔導士のルーシィはギルドに出された依頼を掲示する依頼板(リクエストボード)で仕事を探していた。

 

「う〜ん、魔法の腕輪探しに、呪われた杖の魔法解除(ディスペル)、占星術で恋占い……火山の悪魔退治!?あ、コレ指名されてる。えと…カキって人宛てだ。それにしてもギルドの依頼って色々あるのね」

 

 するとギルドの看板娘であるミラジェーンがルーシィに声をかける。

 

「気に入った仕事があったら私に言ってね。今はマスターもオーガストさんもいないから」

 

「あれ?本当だ」

 

 いつもは揃って酒飲んで孫の自慢話合戦して笑ってる老人二人の姿が無い。その理由についてミラジェーンは述べる。

 

「定例会があるから暫くいないのよ」

 

「定例会?」

 

「地方のギルドマスター達が集って定期報告をする会よ。評議会とは違うんだけど、図にした方が良いかな?リーダス、光筆(ヒカリペン)貸してくれる?」

 

「ウィ」

 

 ルーシィに魔法界の詳しい組織図を解説する為、ミラジェーンは近くにしたリーダスという魔導士から空中に文字や絵を書ける魔法アイテム、光筆(ヒカリペン)を借りて解説を始める。

 

「魔法界で一番偉いのは政府との繋がりもある魔法評議院ERAの評議員10人。魔法界における全ての秩序を守る為に存在するの。犯罪を犯した魔導士を裁くのもこの機関なの。その下にいるのがギルドマスター。評議会での決定事項をギルドの魔導士達に通達したり、各地のギルド同士のコミュニケーションを円滑にしたり、私達を纏めたり。まぁ大変な仕事よ」

 

「知らなかったなぁ、ギルド同士の繋がりがあったなんて」

 

 分かりやすく説明を受けたルーシィは思わず感心してしまう。魔導士ギルドに憧れていたは良いが、どうやらまだ詳しい実情などは知らなかったらしい。

 

「ギルド同士の連携は大切なのよ。幽鬼の支配者(ファントムロード)はこれを大分疎かにしてるの。あそこは規模が他と比べて段違いだから大した襲撃を受けてないけど、基本的にはこれを疎かにしていると突け入る隙になるの。そうすると……」

 

「黒い奴等が来るぞォォォ!!」

 

「ひいいいいっ!!」

 

 ミラジェーンとルーシィの会話に後ろから入って驚かせる魔導士が一人。ギルドでもぶっちぎりの問題児、ナツ・ドラグニル。火の滅竜魔法を使う滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だ。

 ルーシィがこのギルドに入るきっかけにもなった魔導士だ。

 

「うひゃひゃひゃひゃ!なーにビビってんだよルーシィ!」

 

「もォ!おどかさないでよ!」

 

「ビビリルーシィ、略してビリィーだね!」

 

「変な略称つけんなっ!!」

 

 ルーシィに変な略称を付けたのは何故か喋る青い猫、ハッピー。彼も妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士であり、翼を生やして空を飛ぶ魔法を使う。

 

「でも黒い奴らは本当にいるのよ。連盟に属さず、評議院にも認可されていないギルドを闇ギルドっていうの」

 

「あいつら法律無視だからおっかねーんだ」

 

「あい」

 

「じゃあいつかアンタにもスカウト来そうね」

 

 良く仕事などの行く先々で建物を壊したり、全焼させたりと基本何かぶっ壊して逃げるという問題を起こすナツはある意味闇ギルドと大差無かったりする。

 

「つーか早く仕事選べよ」

 

「前はオイラ達が勝手に決めちゃったからね。今度はルーシィの番」

 

「冗談!チームなんて解消に決まってるでしょ」

 

 先日ナツとハッピーと共に行った初仕事の件でルーシィはかなり不満があったようで、組んだチームの解消を申し出てしまう。

 ナツとハッピーはその理由が分からないようだ。

 

「何で?」

 

「前回の仕事、金髪の女だったら誰でも良かったんでしょ!?」

 

「何言ってんだ。その通りだ」

 

「ホラー!!」

 

 おまえが何言ってんだと言いたくなるナツの肯定の言葉にルーシィは怒り心頭。しかし屈託無い笑顔で述べられた次の言葉に怒りは消え失せてしまう。

 

「でもルーシィを選んだんだ。良い奴だから」

 

「……もう」

 

 するとギルドの入り口の方から大きな声が響いた。

 

「ただいまー!」

 

 ギルドに入って来たのは金髪の青年だった。その姿を確認したギルドのメンバー達は一斉に騒ぎ出した。

 

「カキじゃねぇか!!」

 

「おおっ!帰って来たか!!」

 

「何ィ!?カキー!俺と勝負しろぉーー!!」

 

「いきなりだねナツ……」

 

「S級を一週間で片付けて来たのか……」

 

「流石は兄貴!漢だ!!」

 

 カキ・ヴァーミリオン。このギルドでもトップクラスの実力を持つ魔導士だ。ルーシィも週刊ソーサラーの記事で彼の事を何度か見た事がある。

 

(確か異名は……炎魔(イフリート)、だっけ。ナツと同じ火の魔導士かな?)

 

 仕事から帰って来たらしいカキはまっすぐルーシィ達…正確にはミラジェーンのいるギルドのカウンターの方へと歩いて来て、荷物を床に置いた。するとミラジェーンが笑顔でカキに話しかける。

 

「カキ、お帰りなさい」

 

「ただいま。ミラ、なんか飯作ってくれ。腹減ってさ」

 

「あらあら。分かったわ。ちょっと待っててね」

 

 いつも笑顔のミラジェーンだが、ルーシィにはカキと話している時はどうも少し雰囲気が違うように見えた。何というか生き生きしているというか、嬉しそうだ。

 ミラジェーンに料理を頼み、ギルドのカウンターに座ったカキは自分達の様子を見ていたルーシィに気付いた。

 

「ん?見ない顔だな」

 

「新入りのルーシィです!よろしくお願いしますカキさん!」

 

 先日、カキはギルドに星霊魔導士の新入りが入ったという話を聞いた。仕事の都合で中々その新入りとの顔合わせは叶わなかったが、どうやら今回は丁度居合わせたタイミングで帰って来れたらしい。

 

「そっか。噂の新入りは君か。さん付けも敬語もいらねーぞ。俺はカキ・ヴァーミリオンだ。よろしくな」

 

「カキー!勝負しろっつってんだろーー!!」

 

「ナツおまえ、そればっかだな」

 

 空気を読まずに両腕に炎を纏って飛びかかってきたのはナツ。

 まぁそんな突撃、カキには通用しない。飛びかかってきた所をタイミングを合わせて顎にアッパーカット。ぶっ飛ばされたナツは宙を綺麗に舞いながら後ろのテーブルに激突。というか落下。

 何はともあれカキはあっさりとナツを返り討ちにした。

 

「ぐぱーーー!?」

 

「だはははっ!ダッセーぞナツ!」

 

「んだとコラァ!!挑む勇気もねぇ癖に好き勝手言ってんじゃねーぞ変態野郎!!」

 

 瞬殺されたナツを笑うのは彼にも引けを取らない問題児、グレイ・フルバスター。氷の造形魔導士。あと何故かすぐに服を脱ぐ露出魔である。彼はどうもナツと些細な事で大喧嘩する程仲が悪く、ほぼ毎日のように殴り合いの喧嘩を繰り広げている。

 

 とにかく馬鹿にされたナツはグレイに食ってかかり、グレイはグレイで変態呼ばわりされたのが気に食わないのか、ナツに向かってメンチを切る。パンツ一丁で。

 

「アァ?今変態っつったか釣り目ヤロー!!」

 

「事実だろーがタレ目ヤロー!!」

 

「うわ〜、レベル低……」

 

「それがナツとグレイです」

 

「相変わらずだな。この調子じゃ今年も受験できねーんじゃねーの?」

 

 ナツとグレイのやり取りに呆れていると指輪の魔法を使うロキがいつものように今度はルーシィに対してナンパを仕掛けていた。

 

「ルーシィ、僕と愛のチームを結成しないかい?今夜二人で」

 

「嫌よ」

 

「君って本当綺麗だよね。サングラスを通してもその美しさだ。肉眼で見たらきっと目が潰れちゃうな……。ははっ」

 

「潰せば?」

 

 週間ソーサラーでは彼氏にしたい魔導士ランキングでも上位ランカーのロキだが、ルーシィは一向に靡かない。大体の女の子はロキに口説かれて骨抜きにされる事が多いので珍しいと言えよう。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の女魔導士は基本ロキの口説きをスルーする傾向にはあるが。

 

 ジャラリとルーシィが腰に下げていた星霊の鍵がロキの目に映る。すると分かりやすくロキは狼狽える。

 

「も、もしかして君、星霊魔導士!?」

 

「そうだけど?」

 

「お?金色の鍵。黄道十二門と契約してんのか。しかも三つ」

 

「な、なんたる運命の悪戯!ごめん、僕達はここまでにしよう!!」

 

 そう別れを告げてロキは逃げて行った。残されたルーシィはただ困惑するのみ。

 

「何か始まってたのかしら……」

 

「ロキは星霊魔導士が苦手なんだとよ。理由は知らねーが」

 

「どうせ昔女の子絡みで何かあったのよ。それよりカキ、お待たせ!」

 

「おう。サンキューなミラ。……ロキの奴、その内背中刺されんじゃねーかな?」

 

 ミラジェーンが作ってくれたパスタを口に運びつつ、カキは女関係で近い内に痛い目を見そうな仲間を案ずる。するとそのロキは慌てて帰って来た。

 

「なんか帰って来た」

 

「遂に刃物で襲われたか?」

 

「不味いぞ!ナツ、グレイ!」

 

「「あ?」」

 

 未だに喧嘩を繰り広げていたナツとグレイに対し、ロキは本気で恐怖に震えながら叫ぶ。

 

「エルザが帰って来た!!」

 

「「あぁ!!!?」」

 

 ナツとグレイの顔が恐怖に染まった。いや、彼ら二人だけではない。カキとミラジェーンを除くギルドのメンバーのほぼ全員がビビり散らしていた。新入りのルーシィだけが状況を把握できていない。

 

 ズシン……という化け物でも歩いているかのような足音が響く。そうしてギルドに入って来たのは巨大な角を片手で抱えた緋色の髪をした女騎士だった。

 

 彼女こそ妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女魔導士、エルザ・スカーレットだ。

 

「今戻った。マスターとオーガストさんはおられるか」

 

「二人共定例会よ。クローバーの街に行ってるわ」

 

「そうか」

 

「つーかエルザ、そのバカでかい角は何だ?」

 

 誰もが気になっていた謎の角についてカキが尋ねる。

 

「これか。討伐した魔物の角に地元の者が飾りを施してくれてな。綺麗だったのでギルドへの土産にしようと思って持って帰ってきたのだ。迷惑か?」

 

「デカくてスペース取るからちょっと邪魔じゃないか?ギルドの中だとみんな暴れるからナツ辺りが壊しちまいそうだし」

 

「む。そうか……では置き場所を後で考えねばな」

 

(((カキがいて良かった〜)))

 

 ギルドの魔導士は大半がエルザを恐れてしまっている為、彼女に堂々と意見できる者は少ない。マスターであるマカロフとオーガストを除いてはカキともう一人くらいしかいないのが実情である。他にも彼女に臆さない者もいるにはいるが、こんな事で意見するなどガラじゃないような人物だ。

 

「それよりおまえ達、また問題ばかり起こしているようだな。マスターやオーガストさんが許しても私は許さんぞ」

 

 話の矛先はギルドの問題児達へと向かう。誰もがビクリと肩を震わす。エルザの説教は彼女の威圧感から一種のホラーも同然なのだ。

 

「カナ、何という格好で飲んでいる。ビジター、踊りなら外でやれ。ワカバ、吸殻が落ちているぞ。ナブ、相変わらず依頼板(リクエストボード)の前をウロウロしているのか?仕事をしろ」

 

 次々と名指しで説教される。名前を呼ばれた者はバツが悪そうに俯く。その姿はさながら風紀委員と注意される生徒の図である。

 

「マカオ!……はぁ」

 

「何か言えよ!」

 

 名前を呼ばれてもノーコメントで終わる者も偶にいる。

 

「全く世話が焼ける。今日のところは何も言わずにおいてやろう」

 

(随分色々言ってたような…)

 

 ルーシィはツッコみたかったが、何となく怖かったのでやめた。

 

「……ところでカキ、ラクサスはいるか?」

 

「いや、こないだ雷神衆を連れてS級クエストに行った。結構難しいのにな。経験積ませて今年の試験であいつらの内誰かに資格を取らせたいんだってよ」

 

「何ーー!?今年選ばれんのは俺だぞーー!!」

 

 話を聞いてたらしいナツが後ろで喚いているが無視。

 

(多分来年には10年クエストに挑戦するつもりなんだろうな。そん時は俺も同行するよう言われたし、S級三人いれば流石にマスターもじーちゃんも許可出すだろうって腹かな)

 

 目当ての人物がいないと知ったエルザは少し考え込むとすぐ近くにいた問題児二人に白羽の矢を立てた。

 

「ふむ。ではナツとグレイ」

 

「「あい!?」」

 

 名前を呼ばれた事で再び震え上がる火竜と露出魔。喧嘩をしていた先程とは打って変わり、肩を組んで仲良しアピールを始める。

 

「や、やあエルザ……お、俺達今日も仲良し…良く、や、やってるぜぃ」

 

「あい」

 

「ナツがハッピーみたいになった!!」

 

 ダラダラと冷や汗を流して棒読みな台詞を言うグレイだが、何故かエルザはそれをそのまま鵜呑みにする。

 

「そうか。親友なら時には喧嘩もするだろう。しかし私はそうやって仲良くしているところを見るのが好きだぞ」

 

 どう見ても不自然なのだが、エルザから見て震え上がって肩組んで仲良しアピールするナツとグレイは極自然なものらしい。その様子を見てカキは必死に笑いを堪えている。

 

「べ、別に親友って訳じゃ…」

 

「あい」

 

「こんなナツ見た事ないわっ!」

 

 大体みんなエルザが怖いのだ。ナツは昔喧嘩を挑んでボコボコにされ、グレイは裸で出歩いてのを見つかりボロ雑巾にされ、ついでにロキはエルザを口説こうとして半殺しにされたという説明をミラジェーンがルーシィに話す。

 

「実はカキとナツとグレイ、三人に頼みたい事がある」

 

「……頼み?」

 

「ああ。仕事先で少々厄介な話を耳にしてな。本来ならマスターかオーガストさんの判断を仰ぐところなんだが、いないのであれば早期解決が望ましい。三人の力を貸して欲しい。着いて来てくれるな?」

 

「え!?」

 

「はい!?」

 

「……俺は構わねーが、おまえ程の奴が助けを必要とする程なのか?」

 

「ああ。出発は明日だ。準備をしておいてくれ。詳しくは移動中に話す」

 

 誰も彼もが困惑する。あのエルザが誰かの助力を求めるところなど初めて見るのだ。それはカキとて同じ。流石にエルザから協力を求められるとは夢にも思っておらず、内心かなり驚いていた。

 

 ナツとグレイはあまりの事に言葉を失っている。そんな中、ミラジェーンはこの四人の組み合わせに何か思うところがあったようで驚愕を露わにしていた。

 

「カキにエルザに……ナツとグレイ。今まで想像した事も無かったけど、これって……妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チームかも」

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