黒魔導士の血脈   作:永遠の炎

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お久しぶりです。またマイペースに更新していけたらいいなと思います。


その列車はナツを乗せて行く

 マグノリア駅にて、エルザの帰還から一夜明けた翌日、駅のホームでナツどグレイはいつものようにメンチの切り合いをしていた。よくもまぁ飽きないものである。

 

「何でエルザみてーなバケモンが俺達の力を借りてえんだよ」

 

「知らねえよ。つーか助けなら俺とカキで十分だっつーの!」

 

「じゃあオメーらだけで行けよ!俺は行きたくねえ!!」

 

「じゃあ来んなよ!そんで後でエルザに殺されちまえ!!」

 

 メンチ切って、安い挑発にお互いが乗って殴り合いの喧嘩を始めるナツとグレイ。その余波で周囲の露店を壊してしまう。そんな二人をルーシィが怒鳴って止める。

 

「迷惑だからやめなさい!もおっ!アンタ達何でそんなに仲悪いのよ!」

 

「ナツとグレイだからな。今更そこにツッコミを入れてもな」

 

 ルーシィの隣で傍観していたカキはナツとグレイを止める気は無いようで何処吹く風。どちらかと言うとこんなマイペースな連中を集めてエルザが何をする気なのか気になるので同行している。

 

「というかなんでルーシィがいるんだ?」

 

「ミラさんに同行を頼まれたの。ナツとグレイがエルザさんの見てないところで喧嘩するだろうから仲を取り持ってほしいって。だから仕方なくね」

 

 あくまで仕方なくと強調するルーシィ。それを見たカキは彼女がツンデレに見えた。

 

「本当は一緒に来たかったのか?」

 

「まさか!てか仲を取り持つならカキとハッピーもいるじゃない。私いらなかったんじゃ……」

 

「はっはっは!あの二人はアレで良いんだけどな。でも多分いらないなんて事はないぜ」

 

 ルーシィが同行する理由は分かったがハッキリ言ってあまり意味はない。カキの言う通りナツとグレイはアレで正常だからだ。しかしだからと言ってルーシィのいる意味がないわけではない。例えば……ツッコミとか。

 

「……何かしら。今かなり不名誉な扱いをされた気がするわ」

 

「ハッピー、こういうのなんて言うっけ?」

 

「自意識過剰って奴だよコレー!」

 

「アンタ達ね……」

 

 どこまでも自分をおちょくろうとするハッピーとそれに乗るカキ。もしかしてカキもナツやグレイと大差ないのではないかと思っていたら今回この問題児達をこの場に集めた女騎士が到着した。

 

「すまない。待たせたか?」

 

「荷物多っ!?」

 

「アレ全部食料らしいぜ」

 

「ええっ!?」

 

 一番遅れてやって来たエルザだがルーシィのツッコミ通り、異常な量の荷物を牽引していたハートクロイツ製のトランクを山程積み重ねて台車の上に固定している。そんなに何を入れているのかと思えばカキ曰く全て食料らしい。

 

「ん?君は昨日ギルドにいたな」

 

 エルザはそんなツッコミを気にする事なくルーシィの存在に気付く。一応会話自体は初めてなので自己紹介する。

 

「新人のルーシィと言います。ミラさんに頼まれ同行する事になりました。よろしくお願いします」

 

「そんな畏まる必要はねーし、敬語もいらねーぞ。ナツみてーに接した方がエルザとしてもやりやすいだろうし」

 

「ああ。さん付けもいらない。エルザで良い。それにしてもギルドのみんなが騒いでいた新人とは君の事か。傭兵ゴリラを指一本で倒したと聞く。頼もしいな」

 

「えっ!?」

 

「エルザ、違うだろ。傭兵ゴリラをお得意の星霊魔法で倒したんだろ?」

 

(補正してくれたのは有り難いけど倒したのナツだし!?)

 

 自己紹介からこんな事実とは異なる噂話が横行している事を教えられると誰が思うか。しかも結局誤解は解けてない。だがそんなのは序の口に過ぎなかった。

 

「あとミラから聞いたけど、エバルー公爵の31年に渡る悪事を暴いて汚い金で雪山に建てられた人工強化バルカンの屋敷を粉々にぶっ壊したらしいな。すげーじゃん」

 

「それ程とは……力になってくれるなら有り難い。よろしく頼む」

 

(どんだけ尾ヒレ付いてんのよーー!?しかも色々とごちゃ混ぜになってるし!?)

 

 何故か過大評価されている事に戦慄するルーシィ。ていうかなんだ人工強化バルカンの屋敷って。

 

「まぁ星霊魔導士なら戦力的な意味でも補助でも頼りになりそうだしな」

 

 星霊には多種多様な個体がおり、持つ魔法も千差万別。用途に応じて違う星霊を呼び出せるのは強みだろう。ルーシィがどんな星霊と契約しているのかは知らないが、エルザやカキにもできない事をできる可能性は大いにある。

 話が終わるとグレイとの喧嘩を一旦終わりにしたナツがズカズカとエルザの前にやって来る。

 

「エルザ」

 

「なんだ?ナツ」

 

「何の用事かは知らねーが、今回は着いて行ってやる。条件付きでな」

 

 その言葉にグレイ、カキ、ハッピーは少なからず驚く。普段からエルザにビビっているナツがそんな強気な発言をしたのだ。

 

(……いや、そんな驚く事でもねーな。普段から勝負しろーってエルザ含めて誰彼構わず挑んでるし)

 

「バ、バカ!お、俺はエルザの為なら無償で働くぜっ!!」

 

「え…グレイ、おまえエルザの事好きなの?」

 

「んなわけあるかっ!!」

 

「いやそんな奴隷宣言するからさ……」

 

 背後で何やらコントを繰り広げるグレイとカキを気にする事なくナツはビシッと指をエルザに突き付ける。

 

「帰ったら俺と勝負しろ!あの時とは違うんだ」

 

(……最後に挑んだの、エルザが前の仕事行く三日前くらいじゃなかったか?)

 

 そんな大して期間を空けてもいないが、リベンジできるだけ腕が上がっているようにも見えない。しかしナツは自信だけはあるようでまっすぐにエルザの目を見て言っている。こういうところは素直に好感が持てる。どうせ負けるだろうけど。

 

「オ、オイ!早まるなっ!死にてえのか!?」

 

「……仲間を失うのは辛い事なのにな」

 

「負けどころか死ぬの確定!?」

 

 自殺志願者とも取れるナツを止めようとするグレイ。ナツの敗北と死を確信したカキ。あんまりな決め付けにツッコむルーシィ。

 そしてナツの挑戦を聞いたエルザは微かに微笑みながら答える。

 

「確かにおまえは成長した。私は些か自信がないが……良いだろう。受けて立つ」

 

「自信がねえって何だよっ!本気で来いよな!」

 

「フフ、分かっているさ。だがおまえは強い。そう言いたかっただけだ」

 

 エルザとの勝負の確約が取れたナツはグルリと首を回して今度はカキを指差す。

 

「勿論カキもだぞ!!」

 

「別に良いけど、おまえ昨日俺に瞬殺されてなかった?ま、いっか。グレイもやるか?」

 

「い!?いやー俺はまだ二人に勝てる気しねぇから良いよ」

 

「そうかい。なら良いや。……ナツ、勝負の出来次第で今年の試験におまえを推薦してやるよ」

 

「何ィ!?」

 

「やれやれ、なんだかんだ言っておまえが一番ナツ達に甘いんじゃないか?」

 

 カキの発言にグレイは「やっぱ受けときゃ良かったか?」とでも言いたげな表情になり、エルザは少しだけ肩を竦める。そしてナツは目をギラギラさせて頭部からメラメラと暑苦しい炎を噴出する。

 

「本当か!?約束だぞカキ!!燃えてきたぁぁっ!!」

 

◆◆◆◆◆◆◆

 

 列車の中、あんな宣言の後にも関わらずいつものように乗り物酔いでグロッキーなナツ。そんなナツを見てみんなが口々にナツの現状について考えを述べる。因みに窓際からナツ、ハッピー、グレイの順で座り、向かい側をまた窓際からエルザ、ルーシィ、カキの順で座っている。

 

「鬱陶しいから別の席行けよ。つーか列車乗るな!走れ!」

 

「うぷ……」

 

「毎度の事だけど辛そうね……」

 

「ちったぁラクサスを見習って欲しいもんだ」

 

「アレは痩せ我慢だけどね」

 

 乗り物酔い体質のナツにとって列車は地獄だろう。せめて眠る事ができれば多少は楽になるのだろうが、襲い掛かる吐き気はそれすら許してはくれない。

 そんなナツを見て何を思ったのかエルザはナツに優しく話しかける。

 

「全く仕方のない奴だ……。私の隣に来い」

 

「あい……」

 

「どけって事なのかしら」

 

 エルザの隣に来るという事はそこに座っているルーシィが自然とどかされる。ナツとルーシィの座る位置が入れ替わったところでエルザは乗り物酔いで苦しむナツの鳩尾に容赦なく拳を叩き込んだ。

 

「!?」

 

「少しは楽になるだろう」

 

「痛いだけじゃね?」

 

 ダメージを与えて気絶させる事で乗り物酔いを軽減させる事を目的としたのだろうが、急所に激痛を走らせたので大差ないだろう。

 絶句するグレイとルーシィ。エルザにドン引きする事なく普通に接しているのはカキだけだ。

 

「そういえばあたし、妖精の尻尾(フェアリーテイル)ではナツの魔法しか見た事ないかも。カキとエルザはどんな魔法を使うの?」

 

「エルザの魔法は綺麗だよ。血がいっぱい出るんだ。相手の」

 

「綺麗なの?それ」

 

「血はともかく、発動するところは俺も綺麗だと思うぞ。とくに天輪」

 

 ハッピーの発言に同意したカキだがそんなカキの発言にグレイは呆れたような目をしながら一応の忠告をしておく。

 

「おまえミラちゃんの前でそれ言うなよ」

 

「魔法褒めただけだろ?」

 

「他の女褒めんなって言ってんだよ」

 

「別に私の魔法は大した事はない。それにグレイの魔法の方が綺麗だと思うぞ」

 

「確かにそうだな。グレイの魔法も綺麗だよな。ショーとかできそうだし」

 

 これまた同意するカキ。一見意見がないようにも見えたルーシィだが、次の瞬間にはカキの意見に納得する。

 

「そうか?」

 

 グレイは試しに両手を合わせて魔力を練る。すると彼の手元には氷で形を作られた妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章が現れた。

 

 氷の造形魔法。氷を生み出し、それに形を与える魔法だ。好きな形の氷を生み出せる創造性の高い魔法だが、特定の形を物に与えるという事はそれ以外の形を奪い取る魔法でもある。

 妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士達の使う魔法の中でもダントツで芸術性の高い魔法だろう。カキがショーができそうだと言ったのも頷ける。

 

「わぁ!」

 

「氷の魔法さ」

 

 そこでルーシィはある点に気づいた。普段から喧嘩ばかりのナツとグレイだが使う魔法が全くの対局であるのだ。

 

「あ!炎と氷!だからアンタ達仲悪いのね!可愛いー!」

 

「そうだったのか?」

 

「どうでもいいだろ!?そんな事。つーかカキとは別に仲悪くねェ!!」

 

 ルーシィに弄られて少し照れ臭そうに突き放すグレイ。どうやら少しばかり自覚はあったらしい。

 そして話を終わらせようと出されたカキの名前にルーシィが反応した。

 

「え?カキ?……そういえばまだカキの魔法は教えて貰ってないわね。カキは炎魔(イフリート)っていうくらいだし、やっぱり火の魔法?」

 

「正解。ホレ」

 

 カキが右手を前に出すと掌から薄紫色の炎が出る。これがカキの使う炎の魔法だ。

 

「なんかナツの魔法とは色が違うわね」

 

「似たような魔法ではあるんだけどな。ナツのと同じでちょっと特殊なんだ。因みに教えてくれたのはじーちゃんだ」

 

「じーちゃん?」

 

「オーガストさんだ。カキはオーガストさんの実の孫だからな」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

 普段からマスターであるマカロフと一緒に酒ばっか飲んでるじいさんだがやはり魔導士としてはかなり優秀らしい。少なくとも孫に魔法を教え、その孫がギルドでも上位の魔導士になっているのだから。

 カキの掌から現れた薄紫色の炎。それをグレイはジロっと見ていた。

 

「……」

 

「どうしたのよグレイ?」

 

「……いや、何でもねぇ」

 

 カキの魔法を見て少し複雑そうな表情を浮かべたグレイだが、それに気付いたルーシィに指摘されてすぐに話題を変える。

 

「それよりエルザ、そろそろ本題に入ろうぜ。一体何事なんだ?おまえ程の奴が他の誰かの力を借りたいなんてよっぽどだぜ?」

 

「そうだな、話しておこう」

 

 それからエルザは語り出す。先日、仕事を終えた帰り。オニバスの街で魔導士が集まる酒場に寄り、ある会話を聞いたらしい。その話によるとララバイなる魔法が封印されていて、魔導士達はそれをどうにかして持ち出そうとしていたらしい。

 

「封印されてる魔法を?」

 

「ララバイ……」

 

「子守歌……眠りの魔法か何かかしら」

 

「分からない。しかし封印されているという話を聞く限り……」

 

「碌な魔法じゃねぇだろうな」

 

「何よりそれを話している連中が問題だった。その連中は闇ギルド、鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士達だった。私は奴らが話している会話に出たエリゴールという名前を思い出すまで気付けなかった」

 

「死神エリゴールか……」

 

「し、死神!?」

 

「ああ。暗殺系の依頼ばかりを遂行し続け、付いた異名だ。本来暗殺依頼は評議会の意向で禁止されているのだが、鉄の森(アイゼンヴァルト)は金を選んだ。結果6年前に地方ギルド連盟を追放され、闇ギルドとなった」

 

 昨日闇ギルドについて説明を受けたルーシィの顔は目に見えて青くなる。鳥肌も立つ。ダラダラと汗も掻く。それも当然の事だ。要は犯罪組織に関わる案件なのだから。

 

「ルーシィ、汁いっぱい出てるよ」

 

「汗よ!」

 

 オニバス駅に着いて下車しながらも話は続く。

 

「当時の鉄の森(アイゼンヴァルト)のマスターは逮捕され、解散命令を出されても従わずに非合法な仕事を続けている。ま、闇ギルドの典型例だな。今回も封印された魔法を勝手に持ち出そうとしてるし」

 

「不覚だった。あの時エリゴールの名に気付いていれば全員血祭りにしてやったものを……!!」

 

「その場にいた連中だけならエルザ一人で何とかなったかもしれねぇ。だがギルド一つ丸々相手となると……「エルザなら勝てんじゃね?」……確かに」

 

 事情は分かったが別に俺達いらなかったんじゃね?カキもグレイもそう思った。だってエルザ強いし。

 

「とにかくこれらの事実は看過できん。鉄の森(アイゼンヴァルト)に乗り込むぞ」

 

「面白そうだな」

 

「来るんじゃなかった」

 

「汁出すぎだって」

 

「汁言うな」

 

「まずは情報収集か。燃えてきたって奴だな、ナツ。………ナツ?」

 

 なんだかんだで乗り気なグレイとカキ。ルーシィは流石に怖がっているが。カキはこの話を聞いた以上は一番燃え上がっていそうな滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の名を呼ぶが返事がない。

 

 というかこの場にナツがいない。

 

 先程述べたがもうすでにオニバスの街に着いた事で一行は列車から降りている。しかしナツは乗り物酔いで碌に動けない上にエルザに腹を殴られて気を失っていた。

 

 誰かに背負って貰わねば降りられるはずがない。

 

 カキもエルザもグレイもハッピーもダラダラと嫌な汗を流す。そして沈黙の中、恐る恐るルーシィがとある可能性を指摘した。

 

「もしかして……ナツ、列車に置いて来ちゃった?」




アニメの最後のop、「more than like」だけどアレってRAVEの最終決戦にも合いそうな気がする。というかあっちの方が合ってません?
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