その叫びが周囲の注目を集めるが、それでも《紅蓮の皇女》は止まらない。
「自分たちが勝手に決めつけた格付けを、枠を一方的に押し付けて自分たちが諦めている事を認めない。勝手に諦めるだけならまだ構わないわよ。だけどそれを理由に、自分が諦めたことを押し付けて上を目指している
「言ってたじゃないッ。他人に何を言われても、諦めないって!そんなイッキとならどこまでも上を目指していけるって思ったのよ!だったらこんな奴らに言われたくらいで、そんな、諦めたような顔するんじゃないわよッ!アタシに勝ったのは、アタシが憧れたのは、・・・・アタシが好きになったのは、いつだって 上を向いて、自分自身を誇り続ける黒鉄一輝という
遠目にだけど解る。《紅蓮の皇女》の叫びが、今まで俯いていた一輝さんを救ったと。
だって、そうでもなければと一輝さんが自分のこぶしで自分の顔面を、音が響く程に強く殴りつけたりなんてしないから。
「ありがとう。ステラ。・・・・いい活が入った」
そして一輝さんは再び自分の
それから先は一方的だった。
《森》に囲まれた状況でどこから矢が飛んでくるかなんて解らない筈なのに、受け止めていた。
「剣術を盗むってのは真似るだけじゃなく、型や太刀筋から積み重ねられた歴史を紐解き、そこに至る思想をくみ取り根幹に座す“理”を暴き返すということ。つまり人間性そのものを盗んだ」
そう西京先生は言っていた。普通は無理だ。やれと言われたところで大抵は不可能だと答える。でも、一輝さんは肯定した。
「別に姿が見えなくても、桐原君がどこにいるかなんて足跡を辿れば難しいことじゃない。傷を受けた順番は手順を、角度は方角を、威力は距離を教えてくれる。だから後はいつも通り。構造を、行動を、趣向を辿り理解すれば・・・・・・ありとあらゆる行動全てが手に取るようにわかる」
「くるなあああぁああぁぁああッ!!」
悩んでいる間も試合は続く。
《狩人》が百の鏃による無差別範囲攻撃を放つも、全てを知っている一輝さんには当たらない。
「止まれ止まれ止まれ止まれ!止まれってのがきこえねえのかよぉおぉぉお!?ふざけんなこのボクがFランク風情に負けられるか!お前みたいなクズと違って僕は期待されてんだ!」
《狩人》がどんなに叫ぼうとも一輝さんは止まらない。少しずつ確実に距離を詰めていく。
「な、なあ!もうやめよう!そんな刃物で人を斬ったら大変だろっ!?イヤだイヤだイヤだ!?そ、そうだジャンケンで決めよう!!友達じゃないかッ!!」
「・・・・・・・・」
「わかった、わかったから!負け!ボクの負けでいいから痛いのはいやだあああぁぁぁぁあああぁぁぁぁあ!!」
衝撃音と共に煙が広がりリングを覆い尽くす。煙が晴れると、 《狩人》は鼻の頭から一筋の血を流し、ゆっくりと倒れた。
『桐原静矢、戦闘不能!勝者、黒鉄一輝!!』
レフリーが一輝さんの勝利を宣言した。
観戦している生徒がざわついている中、私は静かに訓練場を離れ帰宅しようと歩いていた。
「・・・・・・」
私は・・・・・空戸那澄は、その言葉が、黒鉄一輝という人間を恐ろしく感じた。別に《狩人》に同情した訳ではない。ただ、黒鉄一輝という|騎士の戦い方が、私にそう感じさせた。だってさっきの戦いで彼が暴いたのは、人間の『
わからない。一輝さんの戦い方が間違っているとは思わない。だって努力の結果だから。彼がそこに至った理由など知らない私が否定出来る内容ではない。だけど、何も持っていなかった私には空戸春澄こそが父であり師であった。
「・・・・・はぁ」
どうして観ようと思ったんだろう。あの時、『偶には同居人の言葉に従おうかな』なんて思わなければ、こんなことを考える必要なかったのに。
「・・・・最悪」
いっそのこと、このまま帰らずに出歩いてしまおうか。 いやでもそれだと、あの世話焼きの同居人が探しに来るに決まっている。そうなったら理由を求められるだろう。なら面倒は避けて、帰宅しよう。
「・・・・・」
最近慣れてきた道を歩く。特に変わった景色ではないけど、それでもこれを見れるのはお父さんのお陰。あの日私を送り出してくれなかったら、私は今ここにはいなかった。せめて礼を言いたかった。隣でに歩いて欲しかった。一緒に付いてきて欲しかった。もし、私があの日素直に従っていれば、頼まなければ、会わなければそんなことにもならなかったかもしれない。
渡された紙に従って、一番上に書かれていた場所に向かった。そこで会った人は空戸春澄に救われたことがあると言っていた。その恩に報いる為に移動に協力してくれた。
(ん、どうした嬢ちゃん?ここは嬢ちゃんみたいなのが一人で来ていいような場所じゃないぞ?・・・・・・探してる人がいるけど名前がわからない?その持ってる紙に書いてあんじゃないのか?読み方がわかんない?仕方ないな手伝ってやるから見せてみな。なんだ、俺のことだったのか。しかしなんで俺を・・・ってそうかあいつ絡みか。話はわかった、ついてきな)
次に着いたところで空戸春澄に手伝ってもらったことがあると言っていた。その礼として国を渡る手続きをしてくれた。
(おっ、ちょっとアンタ落とし物だぞ?礼なんかいいのに丁寧だな。人を探してる?紙に書いてある?あぁ、それは俺のことだ!この紙に書いてある名前、また懐かしい名前だな。いいぞ、滅多にないあいつの頼みだ引き受けた!)
国を渡った先で会った人は衣食住、身の安全を保障してくれた。なにやら空戸春澄という男に雑に扱われたことがあるらしいが結果的に助けられ、恩を返す為に匿ってくれた。
(え、キミ迷子なの?・・・・まぁここ入り組んでるし当たり前か。出口ならこの道真っ直ぐだから早めに行った方がいいよ。ここ、暗くなると物騒だから。・・・・・違うの?行きたい場所がある?なんだウチじゃん。でもなんでキミが探してるの?良かったらその紙見せてくれない?・・・・・・・なんだ、そういうこと。相変わらず人を振り回すのが得意なんだな。あぁゴメン違う違う、別にキミがどうこうじゃないから。ちょっとこれを書いたやつと色々あってね。いいよちょっと複雑な気持ちだけどキミを匿ってあげる)
そうして空戸春澄という男に関わったことのある人達に協力してもらい、それらを繰り返すうちにこの学園へと入学していた。
不思議なのは、お世話になった人達全員が、空戸春澄に感謝していたことだ。印象や思い出を語ってもらえば無愛想だとか、薄情だとか、冷血だとかそんなことばかりだったのに、最後には皆同じ事を楽しそうに教えてくれて、悲しんでいた。
(変な父親だっただろう?自由というか子供っぽいというか。今はどうしてる?・・・・・・なんていうか最期まで自由なんだな、やっぱり。結局探しものは見つかったのか?そうかい。ならさぞや満足気だっただろう。・・・・・ずっと人を振り回してばっかりで、しょうがない奴だな)
思い出しながらでも体は動く。学生寮へと到着し階段を上がり廊下を進み鍵を差し込み扉を開ける。元々荷物を持っていなかったこともあり、特に動くわけでもないから着替えを済ませ向かったベッドで横になる。
紙に書かれていたのは人や地名だったけど、それでも全てに行けた訳ではない。唯一行けなかった場所、それは空戸春澄の実家だった。
(まぁ、遅かれ早かれ学園関係で会うだろうとは思ってけど、こんなに早く機会が訪れるなんて思ってなかったわ。しかもクラスどころか部屋まで一緒になるとか、お父さんなら大笑いするでしょうね)
空戸春澄とは何もかもが違う同居人だけど、唯一共通しているのは、笑ったときの雰囲気。自分だけでなく、相手の心も穏やかにしてしまうアレだけは同じだった。二人のソレが同じだけに、僅かに嫉妬してしまう。まるで自分だけ置いていかれたかのような焦燥感に襲われる。解ってる、それは表に出してはいけないのだと。だからあまり接触しないように、行動してといういるのに。こっちの気持ちを知らない同居人が向こうから寄ってくるのだから困ったものだ。
(そこも似てるなんて、嫌になるわね)
気付いてほしくないのに、何もかも理解したように踏み込んできて。頼んでないのに、勝手に解決しちゃって。
ガチャリと扉の開く音と共にバタバタと足音が聞こえてくる。
「ちょっと那澄、あなた結局来なかったじゃない!しかもあなた時計の針イジってたわね、そのせいで恥ずかしい思いしちゃったじゃない!ねぇ聞いてるの!?」
あぁほら、また勝手に踏み込んで来る。せっかく人が関わらないでいようと思っていたのに、それを邪魔してくる。
「ちゃんと行きましたぁ。後は時計の針とか心当たりないんですけど。私が動かしたなんて証拠でもあるの?」
「そのセリフが何よりの証拠でしょう!」
あぁほら騒がしくなった。その雰囲気がお父さんを思い出させる。まるで今も身近にいるかのように錯覚させる。タイミングが悪かったな、だってこのモヤモヤがなんなのか、もうお父さんに聞けないじゃない。
今回で原作1巻での話は終わりです。次回からは2巻の話に入っていきますが実はまだ構想が固まってなかったりします(遠い目)つまり全ては1ヶ月後の自分にかかっているのです。
えっ、前回ランキングどうこう言ってた《狩人》のシーンが短いですのはどういうことつもりですかって?
・・・・・・・それではまた次回!