いつかを夢見て、私は騎士を目指す   作:怠惰ご都合

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前回からきっちり1ヶ月間隔での投稿に、若干ドヤってます(なお、相手が誰かは不明)
・・・・・嘘ですスイマセン。本当はもう2〜3日くらい前に投稿するつもりでしたが、「もう少し文字数増やそう、いやでもそれだと次に繋げにくいし・・・・・」という、割とどうでもいい葛藤に時間を取られてました(・・・・要はサボりです)


痛い思いと引き換えに

 「・・・・・何よ、眠いんだけど」

 

 目の前が急に明るくなる。今の今まで自分を優しく包み込んでいた毛布が剥ぎ取られ、装備を失った体に心地良い風と眩しい日光当たり、ベッドで横になっている自分を嫌そうに見下ろす同居人が絶えず圧を発している。

 

 「今日の予定、覚えてるわよね?」

 

 「あ〜はいはい覚えてる覚えてる。じゃおやすみ」

 

 素早く毛布を取り返し、日光と視線を遮るように頭を覆う。嗚呼、なんて素晴らしいの暗闇。やっぱり私を癒やしてくれるのはアナタだけよ。涼しい風、心地良い暗闇、そして程良い眠気、こんなにもベストコンディションなのに寝ないなんて勿体ない。

 

 「あっ、ちょっと起きなさいよ!なんでこんな時に限って素早いの!まずは毛布を手放しなさい!?」

 

 「こんな状況で睡眠を満喫しないとか・・・・人生損してるよね」

 

 「アンタの価値観で私の人生決めてんじゃないわよ!?勝手に人の損得決めつけるとか、アンタいつからそこまで偉くなったのよ!?そういう文句はせめて直接目を見て言いなさいよ!」

 

 「・・・・・・・・・・・くぅ」

 

 「だから寝るな!」

 

 「・・・・くぅゆ・・・しゃい」

 

 「寝ながら返事しないの!うるさいって何よなんで私が」

 

 「・・・・・・・」

 

 「面倒くさいからって黙るんじゃないわよっ!」

 

 「じゃあ何よ。言っておきますけど人の睡眠妨げるほどの重要事項なんでしょうね?じゃないと許さないからね」

 

 「へぇ~大きく出たものねぇ」

 

 「・・・・何よ、さっさと教えなさいよ。変に勿体ぶるなら聞かないから」

 

 「一輝さん主催で訓練するんですって・・・・室内プールで」

 

 頭まで覆うつもりでいた毛布が止まる。室内プール、プールだけでも縁がないのに室内プール。今までにも行ってみたいと思うことはあっても、実際に行けたことはない。だから行きたいところだ・・・・・が、二度寝を諦めたくない。

 

 「ぅ・・・・いやでも、ぅあ〜」

 

 「ちなみに二度寝はいつでも可能だけど、プール練は今回だけみたいよ。あと時間も押してるから決めるなら早くしてよね」

 

 「・・・・・・・決めた」

 

 えぇ決めたわよ。この私にしては珍しくばっさり決めてやったわよ。この潔さに恐れ慄くがいいわ。ふっふっふ、同居人の尊敬の眼差しが拝めると思うと頬が緩んで仕方ないわね!(毛布を頭から被ってるから見えないんだけね)

 

 「聞かせてもらおうじゃない」

 

 「二度寝してるからその間におんぶで運んでおいて」

 

 「いい加減にしなさい!」

 

 ばっ!、と勢いよく毛布が剥ぎ取られ、眩しいと呻くより先に頭部に物凄い衝撃が走った。その結果、睡眠とは別の意味で目の前が真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮を出て集合場所に向かうと既に全員集まっていた。

 

 「ごめん、遅れたわ」

 

 「まだ時間になってないから大丈夫だよ。寧ろ皆が早すぎるくらいだからね、ゆっくり向かっても間に合うよ」

 

 あぁ、一輝さんがどこまでも優しくて逆に申し訳なくなってくるわ。

 

 「那澄さんは・・・・聞かない方がいいよね」

 

 「・・・・・そうしてくれると助かるわ」

 

 「別に引きずっても構わないではないですか。いずれお兄様の悩みの原因となるのならば、多少痛い目に遭って今から反省して貰わなければ私の気が済みません」

 

 珠雫が汚いものを見るような目で那澄を見つめている。まぁ私も少なからず同じ気持ちではあるけど、今それを言い出したら、より時間を押してしまうだろう。今は何も言うまい。ただ、少しばかり雑に運んでも許される気もする。

 

 実は自分から申し出た。というのも少しでも強くなれるならと、あと那澄の怠け癖を鍛え直そうとか思ったり思ってなかったりするけど、まぁそれは置いといて。

 

 「まぁとにかく、皆集まったことだし行こうか」

 

 幸いなことに、一輝さんも深くは気にしないでいてくれるからこのままにしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ぅ、ここ・・・・・・は」

 

 「やっっっと起きたのね!あまりにも反応ないから少しばかり不安だったけど、まぁなんにしても手間が省けて良かったわ。今朝も言ったけどここは一輝さんたちが訓練のために借りたプールよ。ほら納得したらこれに着替えなさい」

 

 買ったことを覚えてはいても、どうせ準備してないだろうと思って、事前に用意しておいて良かった。案の定、状況を把握できてない様子だから急がせる。

 

 「・・・・これは?」

 

 「前に買っておいたでしょう?勝手に悪いとは思ったけど、持ってきたの。あなた、準備してないだろうと思ったから」

 

 どうせ文句でも言うつもりなのだろう。渡した水着を数秒間見つめた後、顔を上げて真っ直ぐ視線を合わせてきた。

 一体何を言われるんだろうかと身構えていると・・・・

 

 「まぁお姉様、感謝いたしますわ!」

 

 「・・・・・・」

 

 あまりのことにそのまま固まってしまった。

 

 「どうかされたのですか?」

 

 「・・・・・・い、いえ」

 

 「はっ、私としたことが謝罪からするべきでしたわ!?。申し訳ありませんお姉様!処罰は如何様にも!」

 

 これは一体どういうことなのだろう。普段の那澄からは想像出来ないことが溢れていた。あの(・・)那澄が開口一番に感謝の言葉を口にするなんて。それに、面と向かって謝罪をするなんて!何よりその言葉遣い何処から引っ張り出してきた!?

 

 「お姉・・・・様?」

 

 「な、なんでもないわよウン!そうそれに着替えて上からそのシャツを着ればいいからね!じゃあ私は先に行くから、ちゃんと来るのよ!?」

 

 慣れない呼ばれ方に背中がムズムズする。必死に堪えながら、それをバレないように慌てて答える。

 

 急いで水着に着替えて、その上から渡したのと同じ無地のシャツを着て更衣室を出る。

 まさかのドッキリという可能性もなくはないが、私の知ってる那澄ならもっと色々と仕掛けてくるだろうから今回は違うだろう。なら一体何が原因でこうなってしまったのか・・・・・いや思い当たる節があるといえばあるが、そんな都合のよい展開など認めれない。とにかく、急いで一輝さんたちに伝えないと!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 更衣室を出て真っ先に会ったのはステラだった。今は誰かに伝えなければと焦っていたから特に気にしなかった。

 

 「あれ、早いのね。那澄はもう起きたの?」

 

 「え、えぇそうなの・・・・・じゃなくて!いやでもその通りなんだけど、今はそれどころじゃなくて!?」

 

 「・・・・・何がどうしたのかわからないけど、取り敢えず落ち着きなさい。それと、そんなに慌てなくても私は逃げないからゆっくり話してくれると助かるわ」

 

 「う、うん。わかったわ!」

 

 確かにその通りだ。焦っていては伝えたいものも正確に伝えられない。息を整えるために深呼吸を数回繰り返す。

 

 「・・・・・・・・はぁ〜。ありがとう、落ち着いたわ」

 

 「別に、感謝されるほどのことじゃないから気にしなくていいわ。それで、さっきは何を言いかけたのかしら?」

 

 そうね、今なら正しく伝えられるはずよ。えぇ決して取り乱してはいけないの。もちろん、相手を動揺させないように配慮しながらよ。

 

 「内容を聞いたら混乱するかもだけど、出来るだけ取り乱さないでね。実は・・・・」

 

 「お待たせしましたわ、お姉様!?」

 

 やはり聞き慣れない言葉遣いを口にしながら駆け寄ってくる那澄が視界に入った途端、諦めてしまった。

 

 「・・・・・間に合わなかった」

 

 「?」

 

 もう遅い。状況を理解してもらい、身構えてもらおうとしたが全てが遅かった。もう、どうしようもない。

 

 「あら那澄、思ったより体調良さそうね」

 

 「あらステラ様、ご機嫌よう!ふふっ、その水着よく似合っておりますわね!」

 

 「・・・・・・・・は?」

 

 今までの那澄を見た人なら、普通はそうなるわよね。同じ部屋で生活してる私でさえ未だに理解できていないのだから、ステラの反応も頷ける。

 

 「本日は人数が多く忙しい中、私達の参加を認めてくださり感謝いたしますわ」

 

 「な、何これ・・・・ちょっと、沙奈に一体何が起きてるの?」

 

 「私にもよくわからないの。今はまだ整理できてないから、後でまとめて伝えるわ。ごめんね」

 

 「・・・・・取り敢えず、私は先に行って一輝たちに伝えてくるわね」

 

 「・・・・・・・えぇ。でもなるべくいつも通りでね。他にも人がいるから迷惑がかからないように」

 

 「わかったわ」

 

 ステラが一輝さんの方へ歩いていくと何やらざわついている。

 

 「おおおおぉぉおおっ〜!」

 

 見た途端、全てを理解した。そう、ステラの水着が原因だったのだ。あのスタイルであの水着、加えてモデルさながらの歩き方が人の目を惹きつけている。

 

 「おおぉぉおおおぉぉおおおっ!」

 

 再び何人かの男性の声が重なる。珠雫は愛くるしいスマイルにおとなし目な水着を着ていて、可愛らしさを引き立たせていた。

 

 「おおおぉぉおおおっ!」

 

 次は日下部さんだった。正直あまり接点はないが、活発な雰囲気と周りを明るくする笑顔で周りを騒がせていた。

 

 「ああああぁぁああぁああっっ!?」

 

 最後の歓声というか絶叫は・・・・うんまぁ、アリスの水着なんだけど何も言うまい。深く説明したらいけない気がする。どうして悲鳴が、とかそういうのは知らない方が身のためである。

 

 「・・・・・じゃなくて!」

 

 「お姉様、どうかなさいまして?」

 

 「・・・・・大丈夫よ、なんともないから」

 

 「でしたら安心しましたわ!」

 

 「そういう那澄は体調悪いとかない?人混みで酔ったとか」

 

 「まあっ!?お姉様が心配して下さるなんて嬉しいですわ!」

 

 「・・・・大丈夫なの?」

 

 「問題ありませんわ!強いて言うなら、少しばかり頭がズキズキするくらいですわ。でもおかしいんですの。だって心当たりがないんですもの」

 

 「・・・・・・・・・・そう」

 

 原因、絶対それよね。今朝の頭突きしか心当たりないわ。

 

 「でも、それ以外にはなんともありませんから心配ありませんわ。ねぇお姉様、早く行きましょう?」

 

 頭突きの影響でお嬢様化してた・・・・・なんて言ったら信じてくれるだろうか?いや、願うしかない。信じよう、それで納得してくれることを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おおおおぉぉぉおおおぉぉっ!?」

 

 一輝さんたちの元へ向かうと、再び周囲で歓声が上がる。

 私達は水着の上に薄いシャツと、ステラたちとはまた違った装い。流石に色までお揃いは嫌だと那澄が言うものだから、水着は異なる。

 

 いやまあ、正直那澄の水着姿に歓声が上がるのは解るけど、なんで私まで?正直、私はそこまで水着に自信ががある訳でもないのに、一体なぜ?・・・・・よそう、深く考えるのは後回しだ。今考えるべきは、一輝さんたちにどう説明するか、これに限る。

 

 「お待たせして申し訳ありません、一輝様。悪いのは着替えに手間取った私です。お姉様は待っていて下さっただけなのです。ですからお姉様には怒らないで下さいませ!」

 

 「えっと・・・・・・・その、これは?」

 

 「・・・・・・!」

 

 一輝さんが目線で訴えてくる。そうよね、それが当然よね。でもお願い、後で絶対説明するから今だけは合わせて!

 私も目線で必死に答える。お願い、伝わって!

 

 「・・・・・一輝様?」

 

 那澄には見えないように、コクコクと何度も頷く。

 

 「・・・・はっ、はい!?いえ別に僕たちもそんなに待ってた訳じゃないですから気にしないで下さい!?」

 

 「本当・・・・ですか?」

 

 那澄が瞳を潤ませて確認している。すごい、本当に別人なのかもしれない。こんな反応、今までに一度も見たことないから、未だに同一人物なのか信じられないわ。

 

 「・・・・・うん」

 

 「ありがとうございます!お姉様、私珠雫さんたちと一緒してきてよろしいでしょうか!?」

 

 「えぇ、迷惑かけないようにね」

 

 「勿論ですわ!」

 

 嬉しそうに笑いながら歩いていく那澄を見ていると、一輝さんが静かに聞いてきた。

 

 「・・・・・・一体何が起きたのか、聞いてもいい?」

 

 「・・・・・・・・・・・・あなたの理解が早くて、私としても非常に助かるわ」

 

 さっきからずっとそのことを考えてた私が、それを断れるはずもない。これ以上、那澄による被害者を増やさないためにも、一刻も早く現状を知ってもらわないと。

 

 「ちなみにどんな経緯でああなったの?」

 

 「あまりにも巫山戯たことを言い出すものだから、ちょっと物理的に。そのせいで私も頭がズキズキしてて」

 

 「・・・・・・・・・・・うん?」

 

 どうやらいい加減すぎて伝わらなかったらしい。私も最初から理解されるなんて思っていなかったから、もう一度、今度は簡単に説明する。

 

 「ざっくり説明するなら、頭突きした。これに尽きるわ。というかこれしかないの」

 

 「・・・・・・頭突きであんなに変わるものなの?」

 

 それは同感。なにしろ私でさえも現在進行系で把握できてないんだから。

 

 「・・・・・ノーコメント。というか深く考えるだけ損すると思うの。一体誰の教育でああなってしまったんでしょうね」

 

 「あぁ・・・・そうなんだ」

 

 とはいえ、理解はしたが納得は出来ないのも事実。しかし那澄という存在を許容するにはそれしか方法がないというのが現実である。割り切るしかない、というやつだ。

 幸いなことに、周囲には人が沢山いて、一輝さんが悩んでいても特に騒がれることはない。

 

 「・・・・・ステラたちには僕から説明しておくけど、それでも納得はしてくれないと思う。特に珠雫辺りが詳しく聞いてくるだろうけど、そうなったら補足してくれる?」

 

 「・・・・・本当に感謝してるわ」

 

 それでも一輝さんがここまで接してくれるのは、彼が根っからの正直者であるが故だろう。心苦しいが、頼らせてもらおう。ステラたちの元へ向かうために足を動かすが、隣を歩く一輝さんの表情はやはり暗くなっていた。

 

 

 

 

 

 

 




というわけで今回から原作2巻の話に入っていきます。ちなみにですが、もうとっくに察しているかと思いますが、そう今回の話では、ほぼ沙奈の視点で進んでおります。理由としては、今まで那澄に振り回されてきた&選抜戦に出場している(とはいえ、実は今のところそれらしい描写はないですが)沙奈を書くことで多少は進めやすくなるのかな、という非常に自分勝手なものだったりします。
それではまた次回。
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