いつの間にか遠くまで来ていたようで、脚が重たくなったように感じるのは、きっと雨の中走った為だけではないだろう。
「また一人に・・・・・なっちゃった」
誰も返してくれないと解っていながら、それでも呟かずにはいられなかった。
さっき貰ったばかりの紙には不格好な字で『那澄へ』とだけ書かれていた。
『いきなりこんな事を言われても迷惑だとは思うが言わせて欲しい。すまない、こんな行動を取ってしまって、君に寂しい思いをさせてしまって。今まで君の居場所になると誓って行動してきた。最初は変なヤツだなと思っていたが、それでも何日も続けていく間に自分の心が満たされていく事に気付いたんだ。いつだったか探し物を見つける為に旅をしていると話したと思うが、皮肉なことに長年探し続けてやっと見つけたと思ったらこんな近くにあったんだ。話が逸れたな、本当は最後まで面倒を見るつもりだったんだが、俺自身の過去にやった行動、その報復に那澄を巻き込みたく無かったんだ。キミ自身がどこからやってきたかなんてそんな些細なことはどうでもいいんだ。ただ、キミの事が大切だから、巻き込みたくなくて遠ざけた・・・・とはここで伝えたところで“何を今更”と納得してくれないかもしれないね。これからは2枚目の紙に書いてあるところに向かってそこで過ごして欲しい。迎えに行くことは難しいかもしれないが、君の無事を祈っている。最後に、こんな身勝手な人間の事なんて思い出したくないというのであれば、名前は変えてくれて構わない。ただ、コレは言わせて欲しい。君に”那澄”という名前をつけさせてくれて、家族として過ごさせてくれて、ありがとう』
見慣れた字に、言葉足らずな文面。それは間違いなく、父からの手紙だった。
「・・・・・自分勝手なのは遺伝なのね、きっと」
こんなこと言われたら変えたくないって思うに決まってるじゃない。立派な名前付けてもらって、色んなこと教えてくれて、これからのことまで考えてくれて。お礼をするのは私の方だってのに、言い逃げなんてズルいじゃないの。
その後は手紙に書かれていた住所に順番に向かい、これまた記載されていた年月に従って移動した。今の《破軍学園》に入学するまでの期間を様々な国や土地、場所に住み込みという形で色んなことを教えてもらった。どこであっても雑に扱われるなんてことはなく、誰もが父の事を想って泣いてくれた。素直に残念がる人も文句を言う人も、静かに頷く人も誰もが、最後には皆感謝していた。ただそれだけで私も嬉しくなった。血の繋がりなんて皆無な筈なのに、誰もが父の意思を尊重し私を迎え入れてくれた。そうして私は生きる術を教わり、知り、感謝し、今につないでいる。
正直なところ、七星剣武祭なんて興味無いわけでその為の選抜戦だって必要ないのに、なんでこんなにも絡んでくるのよこの同居人は。
「本当にしつこいわね、何度も言わせないで。いい、次が最終通告よ?」
「しつこいのはどっちなんだか解ってないの?何度言われようとも私の意思は変えられないってことを教えてあげる」
「いい加減、選抜戦を観に来なさ・・・・」
「断る」
「最後まで聞きなさいよ!」
誰が何と言おうと私の
「・・・・・」
どうやら諦めがついたようね。さっさと最初からそうしていれば良かったものを。さぁ早く観戦でもどこへでも行けばいいじゃない・・・・・って!?
「なんで毛布剥ぐのよっ!?」
「最初からこうすれば良かったのよ。話し合いなんて生温い考え改めていれば、こんなに時間を無駄にせずに済んだのに。うぅっ、ごめんね那澄、不甲斐無いお姉ちゃんを許して!」
「そう思うなら早く私の
「じゃあ早く起きなさ・・・・」
「それはヤダ」
「だから最後まで聞きなさいっての!」
・・・・今日も今日で不毛な1日が始まった。
そんなわけで久しぶりの投稿はプールの翌日から始まりましたが、以降の話も実は纏まってなかったりしてます。多分今年中には続きを投稿するとは思いますので、よろしくお願いします。
それではまた次回。