いつかを夢見て、私は騎士を目指す   作:怠惰ご都合

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前回から2ヶ月ちょい、間隔が空きましたが投稿ですね。
えっと、その、すいません。
決して忘れてたとかではないんです。忘れてた訳ではぁ!
・・・・仮に忘れてたとしても言えるはずないじゃないですか、アハハ(ハイ、すいません。その通りですね)


いつかの思い出

 「って感じでそのまま何事も無く帰れるはずだったのに。だからあの時言ったのに〜、人の言うことをちゃんと聞いとけば良かったんですぅ」

 

 「そういう事は、もっと真面目な雰囲気の中で伝えるモンでしょう!」

 

 「おいそこの二人、、さっきからごちゃごちゃうるせぇぞ!」

 

 近くにいた男がアサルトライフルを構えて怒鳴りだす。

 

 「・・・・・・っ!?」

 

 「痛い思いしたくなかったら、黙ってろ!」

 

 「・・・・は、はい」

 

 ライフルを構えた集団で囲んでおきながら、騒ぐなと。なんとも無理な話である。

 

 

 

 

 

 

 遡ること、1、2時間前。

 買い物を終えた二人が帰ろうとした矢先の事だった。

 突然、バタバタという足音が、近づいてきた。

 音のする方ヘ顔を向けると銃を持った男たちが向かってきていた。

 

 「な、なんなの?なんかのサプライズ?」

 

 「・・・・」

 

 走り寄ってくる男たちを見て、動揺する紗奈と静かになる那澄。

 

 「ねぇ、知ってるなら教えて?何かある、の?」

 

 「・・・・彼らの指示には何も言わずに従って。お願い」

 

 紗奈は状況を把握できていない様子で、一方で那澄は何かを考えている雰囲気。

 お互いが、違うことを意識していた。

 

 「・・・・彼らは、《解放軍(リベリオン)》よ。下手に抵抗すれば、解るわよね」

 

 「そ、そんな!?」

 

 《解放軍(リベリオン)》。それはこの世で最も知られた犯罪組織の名称。

 伐刀者(ブレイザー)を『選ばれた新人類』、それ以外の人間を『下等人類』として位置づけ、その選民思想をもって『伐刀者(ブレイザー)は力ない民衆を守るべし』とする今の社会構造の破壊を目論んでいる。

 『選ばれた新人類』たる伐刀者(ブレイザー)が『下等人類』を支配するという彼らだけの楽園を手にするために。

 

 「世界各国で有名なテロリストよ。正直、遭遇したくなかったわ」

 

 「・・・なら、なんで落ち着いていられるの?」

 

 「少し、訳ありなのよ」

 

 「おいそこの二人!今から俺の言うことに従ってもらおうか!」

 

 「・・・・・・・ゴメン、とにかく今は静かにしてて」

 

 そして二人は男に言われるがまま、再びフードコートに戻ることとなった。

 そして監視されたまま、今に至る。

 もう一度言おう。

 なんとも無理な話である。

 

 この状況下で二十人以上のライフル持ちを相手にできるほど、自分は戦い慣れていない。

 かと言って紗奈と協力すれば良いという話でもない。

 現に紗奈は怯えており、まともには動けはしないだろう。

 伐刀者(ブレイザー)とはいえ、結局は人間。

 空腹になるし、疲れもするし、傷が深ければ死ぬ。

 ただ少しだけ魔力を操る事ができるだけで命の危険は平等である。

 そんな時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「大きくなったなぁ、那澄」

 

 一人の男が軽薄な笑みを浮かべながら、ライフル持ちの男たちを掻き分けて近寄ってきた。

 

 「・・・・ふん」

 

 途端に那澄は、自分の表情が強張るのを感じた。

 すぐに持ち直したが、それすらも見透かしたかのように男は歩みを止めず、遂に 

目の前の距離感まで迫ってきた。

 

 「おいおい、随分と薄情だなぁ!せっかく久しぶりにあったんだ、もっと喜べよぉ」

 

 「・・・・っ!」

 

 「ア、アンタ誰よ」

 

 男の態度に苛ついたのか、急に態度が変わった那澄を助けようとしたのか、口を開いたのは紗奈だった。

 

 「あん?なんだお前」

 

 男はそれが意外だったのかゆっくりと腰を下ろして、紗奈と視線を合わせた。

 

 「か、勘違いしないで、聞いてるのは私!ほら、とっとと答えなさいよ!」

 

 精一杯反抗しているが、恐怖している事が声の震えから感じられる。

 

 「おいガキ!なんて口ききやがる!いいかぁ、この人はなぁ・・・・・」

 

 沙奈の態度が気に入らなかったのか周りにいた男の一人が、銃を構えて怒鳴り出した。 

 

 「はははっ、いいねぇ、その反抗的な態度!いいだろう、その勇気に免じて、お前の質問に答えてやるよ」

 

 対して男は笑いながら、その怒号を止める。

 

 「し、しかし・・・・・」

 

 その反応が意外だったのか、尚もライフル持ちの男は何かを言おうとする。

 

 「・・・おいそこのお前、聞こえなかったのか?この俺が“構わない”って言ってんだが?」

 

 その瞬間、今までの軽薄な笑みは突如として消え、次に現れたのは怒気だった。 

 

 「・・・・・・っ、すいません!」

 

 睨まれた男は、申し訳なさそうに元の位置に戻った。

 

 「あぁゴメンゴメン・・・・・・で、何だっけ?あぁそうそう、君の質問に答えてやるって話だったな」

 

 そして男は先程と同様の、軽薄な笑みを再び浮かべて沙奈に話しかけた。

 

 「さぁ、どうぞ」

 

 「・・・・アンタ、解放軍(リベリオン)なんかやるより、俳優に転職した方が人気出るんじゃない?」

 

 「ははは、よく言われるんだよなぁ、それ。これは割と目指してみるのもアリかもしんねぇな」

 

 「・・・・アンタ、ホントに何なの?」

 

 「俺かぁ?俺はなぁ・・・・」

 

 「・・・・・いいからさっさと消えてよ。さっきから鬱陶しいのよ」

 

 彼の言葉を遮ったのは、今まで黙っていた那澄。

 

 「おいおい、しばらく黙ってたと思ったら今度は“消えろ”だって。随分な口を聞くようになったじゃないか」

 

 「・・・・っ!?」

 

 男は体制をそのままに、那澄の顔を覗き込んだ。

 目を合わせないように慌てて顔を背ける那澄。

 その反応が再び男を笑顔にした。

 

 「相変わらず、冷てぇ反応してくれんのな。・・・・・・お父さん、悲しいぜぇ。はっはははぁ!」

 

 その言葉を聞いた途端、那澄は男を睨み、隣では紗奈が驚いた顔で男を見上げていた。

 

 「あぁ、そうだよ、その表情!懐かしねぇ!」

 

 その一言を皮切りに、目の前の男の顔は、あの時死んだはずの晴澄、そっくりに変わっていた。

 

 「・・・・・兄、さん?」

 

 「なんだお前、アイツの妹だったのか。そいつぁ良かったな、感動の再開だぜぇ!」

 

 あまりのことに驚きを隠せない紗奈に対して、男は愉しそうに笑う。

 

 「・・・・・・お願いだから消えて、よ。彼女は何も・・・・知らないのよ」

 

 「なぁんだぁ、それならそうと早く教えろよ。もう知ってるモンだと思ってたぜ」

 

 「・・・・・お願い・・・・・します」

 

 気付けば那澄は泣いていた。

 泣きながら目の前の男がいなくなる事を願っていたのだ。

 

 「・・・そうだなぁ、確かに今日はコイツらの引率に来ただけだしぃ、最後までいろと言われた訳でもないし。いいだろう、また会おうぜ」

 

 「・・・・・・・っ!」

 

 「・・・那澄」

 

 そして男の顔はいつの間にか、元に戻っていた。

 再び軽薄な笑みを浮かべて、男は立ち上がる。

 周りのライフル持ちの男たちは止めようとせず、男は悠々と去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 例の男が去ってから暫く経った時だった。

 

 「お母さんをいじめるなぁーーーっ!!」

 

 突然、大声が響いた。

 声のする方向ヘ顔を向けると、小学生くらいの少年が銃を構えた(解放軍)《リベリオン》の一人がアイスクリームを投げつけた。

 

 「何しやがるこのガキぃぃぃぃ!!」

 

 決して攻撃力など持たないはずのソレだが、相手を激昂させるのには十分過ぎる程の効果を持っていた。

 

 激怒した兵士は、少年に対して容赦なく蹴りを見舞った。

 

 「あぐっ」

 

 「シンジッ!」

 

 少年の母と思われる二十代後半程の女性が人質の輪から飛び出してきた。

 少年の弟か妹を身籠っているのだろう。

 だが身重な身体を感じさせない速さで、それほどまでに必死な動きで女性は少年と兵士の間に入り込んだ。

 

 「おいガキィ!何してくれてんだぁ!」

 

 「オイ一体何してやがる!勝手な事してんじゃねぇよ!」

 

 「うっせえ!このガキ、新世界(ユートピア)の《名誉市民》たる・・・・・のズボンを汚し・・・・て!タダじゃ・・・・ねぇ!」

 

 「だから・・・・・してんじゃ・・ねぇって!・・・・・さんキレんだろうが!オマエだけ・・・、俺らにまでと・・・・・来るだろうがよぉ!」

 

 「・・・・・ぁ・・・・・うぅ」

 

 「ちょっと・・・那澄、ね・・・ぇ!ねぇっ・・・・てば!」

 

 兵士の怒号が、隣で自分を呼びかける紗奈の声が、次第に遠くなっていく気がする。

 意識が薄れていく中で、最後に聞いたのは勢いよく鳴り響く銃声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・・ねぇ」

 

 「ん、どうかした?」

 

 「・・・・もう一週間経つんだけど」

 

 「まぁそうだな」

 

 少女が・・・・那澄が春澄と出会ってから一週間。

 二人は寝転がって空を見上げていた。

 

 「確かに、天気がいいのは結構な事よ」

 

 「そうだろう」

 

 「ただ見上げているだけ清々しい気持ちになるし、眠くなってくるもんね」

 

 「そうだろう、そうだろう」

 

 春澄は目を瞑ったまま、満足気に何度も頷く。

 

 「で・も・ねぇ!」

 

 「・・・・んぉ」

 

 頷いていると、突如として那澄の声が近くなる。

 ゆっくり目を開けると、こちらを覆いかぶさるように那澄顔を覗き込んでいた。

 

 「んぉっ!・・・・・だっ!?」

 

 「・・・・・きゃっ!?」

 

 驚いて起き上がると額に強い衝撃が走った。

 それと同時に可愛らしい声が聞こえた。

 

 「・・・・ぬぐぅぅぅぅぅあぁぁぁぁ!?」

 

 「うぅぅぅっ・・・・」

 

 20過ぎの男のやかましい叫びと、10歳の少女の悲鳴が周囲に響き渡る。

 

 「・・・・・っ、だ、大丈夫か?」

 

 「い、痛い・・・・・です」

 

 素早く振り向くと、彼女は涙を浮かべてこちらを見上げていた。

 あまりに予想外な事で戸惑っているのか、敬語になっているがこれは伝えるべきか。

 

 「っじゃない!・・・・・・い、痛いわよ!」

 

 自分で気付いたのか、慌てて言い直すその姿が少し可笑しかった。

 

 「・・・・・はははっ!」

 

 「な、何よ!?」

 

 「いやいや、慌てて言い直すのが年相応だなぁと」

 

 「はぁ!?わかるように言ってよ!」

 

 「可愛い反応するんだな、と思ってさ」

 

 「・・・・・な、は、はぁっ!?」

 

 次第に赤くなるその反応が、再び笑いを誘った。

 

 「はっはははははっ!」

 

 「い、いつまで笑ってんのよっ!?」

 

 「いやぁ悪い悪い」

 

 一頻り笑った春澄は、笑った事を謝罪する。

 

 「ホントに謝ってるの!?」

 

 「ホントホント。ホントにすまないと思ってるさ」

 

 「・・・・・どうだか」

 

 その反応に、那澄はむすっとした顔で見続けてくる。

 

 「どうしたら信じてくれるかなぁ。・・・・・・そうだ、笑ったお詫びに、ほらこっちおいで」

 

 改めて座り直して、彼女に向き直る春澄。

 そして両手を広げて那澄に来るように伝える。

 

 「・・・・・何のマネよ」

 

 「何ってそりゃあ、お詫びだお詫び。どうした、遠慮してんのか?」

 

 「・・・・・そんなの要らないわよ」

 

 口では要らないと言いつつも、那澄の目は正直だ。

 チラチラとこっちを見ては頭をブンブンと横に振っている。

 正直になりたいけど、恥ずかしくて見栄を張る。

 そんな年相応の葛藤が、可愛いらしく思えるが、口にしてはまた怒ってしまうのだろう。

 

 「・・・・まったく」

 

 仕方ない、そう思って立ち上がり、ゆっくりと那澄に近づく。

 

 「なっ、ちょっと何よっ!?」

 

 急いで身構えるも、なんだかんだで逃げようとしない那澄。

 

 「これで、いいかなっと」

 

 那澄の正面まで辿り着いた春澄は、ゆっくり座って静かに抱き寄せる。

 

 「い、ちょっ!?はっ、ねぇって!?」

 

 「はーい、落ち着いてねぇ。さぁさぁ、痛いの痛いの飛んでいけー」

 

 「・・・・・・」

 

 「痛いの痛いの飛んでいけー」

 

 遂に正直になったのか、那澄が静かになった。

 こっそり那澄の顔を覗き込むと、その顔は再び赤くなっていた。

 

 「・・・・・落ち着いた?」

 

 コクン、と那澄が頷いたのを確認して、春澄は彼女の頭を撫でる。

 

 「よーしよし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「・・・・いつまで撫でてるつもりよ?」

 

 「あれ、もういいの?」

 

 先程までのしおらしさは何処へ行ってしまったのか、もういいと言わんばかりに那澄は身を捩る。

 

 「早く離してよ、窒息するじゃない」

 

 「そんなぁ、もう少しだけダメ?」

 

 離れたい彼女と、離したくない自分。

 

 「なんで私へのお詫びなのに、そんなに物足りないみたいな反応になるのよ?」

 

 「・・・・・娘成分の補充。間に合わないとお父さん倒れちゃう」

 

 「勝手に変な成分を作るな。取り込むな」

 

 「・・・・・はーい」

 

 渋々彼女を開放する。

 立ち上がった那澄はゆっくりと伸びをした。

 

 「でもまぁ・・・・・・」

 

 顔を背けて、彼女は恥ずかしそうに呟いた。

 

 「倒れられても困るから、たまによ。“たまに”なら・・・・・許可してあげなくもない、わよ」

 

 恥ずかしがりながらも、嬉しそうに那澄はそう言った。

 

 「それは・・・・嬉しいな。お父さん助かるよ」

 

 彼女の顔を見て笑ってしまった。

 

 「・・・・なんで笑ってんのよ?」

 

 「正直なんだなぁ、って」

 

 「・・・・・うっさい」

 

 「ゴメンゴメン。・・・・・・それで?」

 

 「何よ?まだ笑い足りないって言うの?」

 

 「違う違う、用があったから話しかけてきたんだろ?」

 

 「・・・・そうだったわ」

 

 どうやら彼女は思い出したようだ。

 いや、今までの態度は別に、はぐらかすためにやったとかじゃないんだ。

 ホントに偶然なんだ。

 

 「もう一週間経つじゃない」

 

 「あぁ、そうだな」

 

 確かに那澄が俺に『戦い方を教えて欲しい』と頼んできてから今日で一週間が経つ。

 彼女と会ってから話を聞く限り、どうやら嘘を言っているようには思えなかった。

 それに今では、一週間前のように『希望なんてない』とかそんな類の雰囲気は感じられない。

 なら、俺も改めて向き合おう。

 

 「だから、ね。私に戦い方を・・・・・・」

 

 「いいよ」

 

 「教えて欲し・・・・・えっ?」

 

 「いいよ」

 

 「え・・・・・でも、前までは、ほら?」

 

 返事があまりにも予想外だったのか、彼女は動揺している。

 その動揺している姿が微笑ましく思えて、もう少し待ってみようかと思った。

 でもせっかくの機会だから、正直に伝えよう。

 

 「前までは、『とにかく生きていればいい』みたいな事を考えてるように見えてたから、引き受けなかったんだ」

 

 「なら・・・・どうして」

 

 「那澄さ、さっき笑ってたじゃん。痛い事は“痛い”って声に出してたし、照れてたじゃん」

 

 「そ、それは」

 

 「きっかけは何であれ、一週間前・・・・初めて会った時には無かった事じゃないかな?」

 

 「・・・・・・」

 

 彼女は静かに頷いたのを確認して、俺は続けた。

 

 「だから、“いいよ”って言ったんだ」

 

 「よく・・・・見てるのね」

 

 恥ずかしそうに、彼女はそう言った。

 

 「それはもう。まだ一週間だけど、これでも“那澄の父親”なんでね」

 

 「・・・・・ありがとう、お父・・さん」

 

 「じゃあ、今日はもう暗くなりそうだから。明日から少しずつ開始だ」

 

 気付けば太陽が沈みかけている。

 

 「・・・・うん!」

 

 てっきり文句を言われるかと思ったが、意外にも那澄は笑顔で従った。

 

 




次回の投稿は・・・・・・どうしましょう。
正直、今のところは決めてないです。
それでもまぁハイ、ナントカシマス。
では、また次回

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