アインズ様がNPCに感謝を伝えて慰労しようとする話(仮題) 作:冥咲梓
本日のアインズ番メイドが来訪者の名前を告げる。
「デミウルゴス様でございます」
「そうか。入室を許可する」
「――デミウルゴス、お呼びとのこと。馳せ参じました、アインズ様」
「ふむ。よく来たな、デミウルゴスよ。では面談を始める前に――これは面談を行う者全員に行っているのだが、私の許可無く私に触れたりしないと誓えるか?」
アインズが問いかけると、デミウルゴスは優雅に胸に手を当てて頭を下げ、応える。
「はっ。アインズ様の許可無くアインズ様に触れたりしないと誓います」
「よろしい」
アインズは人払いをし、ソファ席に移動する。まずアインズが座り、向かいの席に座るように勧める。
「失礼致します」
「うむ。まずはデミウルゴスよ、改めてお前の働きに感謝する。そしてこのような時間を持てることを嬉しく思う」
「光栄にございます。また、このようにアインズ様とのお時間をいただけること、私にとりましても僥倖にございます」
「・・・今日は支配する者とされる者ではなく、できれば親子のような対話ができればと思う。よろしく頼む」
「はっ。畏まりました」
「さて、お前のレポートによると、日曜大工が趣味だそうだな。その上それに使う道具も全てお前自身が手作りをしているとは」
「その通りでございます」
「素晴らしいな。私は残念ながらあまり器用ではなくてな。全くの初心者だと思って木工細工を教えてもらいたいのだが」
「木工細工でございますか?」
「うむ。私が魔法で作り出せるものは金属の硬さを持つものばかりであろう。だからか、木のぬくもりを好ましいと私は思うのだ。できれば何か物を入れるか、飾れるかできるものが作れると良いのだが」
「さようでございましたか。なるほど木工で物を入れる・・・では」
そういってデミウルゴスは紙を取り出し、そこにさらさらと絵を描いた。
「このようなものではいかがでしょうか?」
「これは・・・できたら素晴らしいが本当に私にできるのか?」
「多少時間はかかると思われますが、必ずできます」
「そうか?お前がそういうのならばこれを目標に作るとしよう」
「はっ」
「で、具体的にどうすればいいのだ?」
「まず、どのような大きさのものを作られますか?」
「うむ、このくらいのものが入れられるようにしたいのだが」
「なるほど。そういうことでしたら、アインズ様さえよろしければ私の作業場にいらっしゃいませんか?あちらでしたら、先ほどアインズ様のお話にもありました私が作成した工具が多数ございます」
「良いのか?邪魔ではないか?」
「邪魔など!!少々散らかっておりますが、よろしければ是非お越しください」
「うむ、では行くか。デミウルゴス、こちらへ」
「はっ」
立ち上がり、同じく立ち上がり近寄ってくるデミウルゴスの腕に手を添え指輪を起動させる。
―――第七階層
(しまったぁ!!!)
反射的に王者の姿勢を取ってはいるが、内心誰も見ていなければ頭を抱えてうずくまりたい気持ちでいっぱいだ。
作業場がどこにあるのかを全く聞かずに転移してしまった。
ここになかったらどうしよう。
だが、デミウルゴスが何も言わないところを見ると正解なのか?
入り口付近に転移した為すぐに紅蓮が気づき敬服の姿勢(?)を取ろうとする。
「紅蓮、今日はアインズ様と私の面談の日なのだよ」
「うむ、その通りだ。挨拶は不要だ」
紅蓮はしずしずとそのまま元の位置に潜っていく。
「デミウルゴスよ、何も聞かずに転移してしまったがこの第八階層にお前の言う作業場があるという認識で間違っていないか?」
「はい、その通りでございます」
「すまなかったな」
「何をおっしゃいますか。私の説明不足でございますので謝罪すべきは私の方かと」
「それこそ何を言うのだ。ウルベルトさんに確かこの階層に色々な隠し部屋を作ったと聞いていたのでな。その中の一つかと思ったのだが」
「ご賢察の通りでございます」
「そうか。では案内してくれるか?」
「畏まりました」
暫く歩くと崩壊した神殿の奥に玉座が見える。
その後ろの空間で何やら操作をすると、離れたところで何か音が聞こえた。
「こちらでございます」
何もないように見える空間にデミウルゴスが触れると暗闇が現れる。
どうやらこの中のようだ。
デミウルゴスが先導し、中に入る。
二人とも暗闇を見通す眼を持っているので問題はない。
少し進んだところでさらに何やらデミウルゴスが操作をし、そういった作業を繰り返してようやく扉が現れた。
「遠くまでご足労をおかけし申し訳ございません」
「何を言うのだ。秘密基地みたいでなかなか楽しかったぞ」
「おぉ、そう言っていただけるとウルベルト様もお喜びになるでしょう」
「そうだとも。さて、この先が作業場か?」
「はっ。ではご案内いたします」
そこは文字通り作業場という名称にふさわしい場所だった。
アインズには名前がわからないが、様々な道具、材料が整然と置かれている。
「少々散らかっており申し訳ございません。本来なら先に片付けるべきなのですが、アインズ様をお一人でお待たせする方が良くないと思いまして」
「何を言うのだ。私が急に言い出したのだからそのようなことを気にする必要は無いぞ。それに全く散らかっていないと思うが」
「慈悲深きお言葉、誠にありがとうございます」
先程から同じようなやり取りを繰り返しているな。
「デミウルゴスよ。言ったであろう。今日は親子のように、とな」
「は。申しわけ・・・いえ、ありがとうございます」
「うむ。まぁその子たるお前に今日は教えて貰うわけだがな」
「は。精一杯務めさせていただきます」
「こちらに木材がございます。先ほどおっしゃっていた大きさですと、このあたりの板を切って組み合わせるのが良いのではないかと」
「なるほど」
「もしかすると板を作るところからをご希望かもしれませんが」
「いやいや、私にそれは無理だろう」
「さようでございますか。では板を切るわけですが、のこぎりを使用されたことは?」
「無論ない」
「では。のこぎりはご覧いただいたようにこちら側とこちら側で刃の付き方が異なります」
「おぉ、そのようだな」
「はい。そして目的によってどちら側を使用するかが異なります」
「ふむ」
「こちらの、刃の間隔が荒い方は、木目に平行に切断する場合に用い、角度はやや寝かせるようにします。また、こちらの、刃の間隔が細かく詰まっている方は、木目に対して垂直の方向に切断する場合に用い、やや立てるようにします」
「ふむ。ということはそもそも木目をよく見て、どのように切るかを考え、それに合わせてどちらを使用するかを考えるということだな」
「その通りでございます」
「このように線を引き、それに合わせて切るわけですが、線の上を切ると刃の幅の分小さくなってしまいます」
「ふむ、この線のすぐ外側に沿うように切るのだな」
「さすがはアインズ様。その通りでございます」
「また、のこぎりは、引くと表現されますように、引く時にこそ切れるものでございます。それゆえ引く時に力を入れるとうまく切れます」
「なるほど。こういう感じか?」
「はい。板がずれるのを防ぐためにこちらをお使いください」
「これもお前が作ったのか?」
「さようでございます」
「さすがだな。どう使えばいいのだ?」
「はい、このように・・・するとずれるのを抑えられます」
「おぉ、これは切りやすくなったな」
「あー、デミウルゴス。これから作るものだが、この設計図(?)を見ると、釘は使わないのか?」
「はっ。釘は見栄えがよろしくありませんので使用しないつもりでございます」
「・・・そうか。ちょっと釘を打ってみたかったんだが、わかった」
「!!!!申しわけございません!!すぐに!!すぐに書き直します!!!」
「聞こえてしまったか。いや、そこまでする必要はない」
「ですが」
「うむ、そこでだ、端材があれば、そこに少し釘を打ってみて良いか?」
「端材など!」
「いや、それで十分だ。ちょっとやってみたかっただけだから」
「畏まりました。すぐにご用意致します!」
端材と釘、金づちが用意される。
良く聞くシチュエーションは、釘と誤り手を打ってしまうというものだ。
金づちは殴打武器に相当するだろう。殴打脆弱のわが身には正直非常に怖い。フレンドリーファイヤーが有効な今なら己でかなりのダメージを被ることもあり得る。
無論、金づちは武器としてのレベルはないはずなので、上位物理無効化が働いている今、ノーダメージの可能性は高い。
武器と判断された場合は装備できないはずだが、道具として使用した結果誤って自分の手を打ってしまった場合にそれは殴打武器の使用と判定されうるのだろうか。
手を打ちそうになった瞬間にすっぽ抜けるのだろうか。
一つ実験が必要だな。だが少し怖いので、
念のため上位物理無効化をきっておく。
どういう判定がされるか不明な為だ。
端材の上に釘を左手で立て、右手で金づちを構える。今のところすっぽ抜ける様子はない。
(よし!)
まずは普通に叩いてみる。もちろん正しくは叩くではないのは承知だが、これは実験なのだ。
トン!
金づちは手からすっぽ抜けることもなく、普通に釘の頭を叩いた。
「アインズ様」
「ん?」
「その、金づちの使い方についてのご説明は不要でしょうか」
「あぁ、もちろん必要だが、しばし待て。今少し実験したいことを思いついてな」
再度釘を左手で持ち、右手で金づちを構える。
次は左手を狙ってみるか。
(よし!)
スポーン!
パシッ!!
「デミウルゴス、ナイスキャッチ!」
「なるほど、そういうことでございましたか」
「うむ、そうだ。悪いがもう少し待ってくれるか?」
デミウルゴスから金づちを受け取り、再び構える。
次はやみくもに打ってみる。偶然当たりそうになった場合どうなるのか。
トン!トントン!トントントン!スポーン!!!
パシッ!
「おぉ、さすがはデミウルゴス」
「はっ」
「うむ、これでわかったぞ。いや、デミウルゴス、待たせて済まなかったな」
「いえ、非常にアインズ様が楽しそうで何よりでございます」
「あぁ、楽しかった。では、本番だ。教えてもらえるかな?」
「もちろんでございます」
―――ナザリック地下大墳墓 アインズの私室
アインズは報告書を書いていた。
報告書といってもむろん誰かに見せる為のものではない。
面談はすれば終わりというものではない。
良かった点、悪かった点を洗い出し、次に生かさねばならないのだ。
アインズは今日のデミウルゴスとの面談を思い出す。
ついデミウルゴスを放置して実験をしてしまったがあの実験についてはここでしかできないものだったので仕方がない。
それ以降で取り戻せたと信じたい。
デミウルゴスの設計が上手だったのと、アインズの几帳面な性格が幸いして意外と良いものができた、と思う。
飾り気はないが、良い木材を使用しているのでそれほど違和感なく使えるはずだ。
「デミウルゴス、お前のおかげで満足のいくものができた。礼を言う」
「お役に立てましたなら何よりです」
「うむ、何よりも楽しかったぞ。お前も楽しめたなら良いのだが」
「私ももちろん楽しませていただきました」
「それならば良い。ふむ、これは今日の記念にお前にやろう」
「こ、このような素晴らしい逸品を?」
「これが素晴らしいとしたらお前の設計と指導が良かったということだ。できたらお前に使ってもらいたい」
「ありがとうございます。喜んで使わせていただきます」
少しでも癒しになってくれることを祈る。
―――ナザリック地下大墳墓 第九階層 副料理長のバー
カラン。
来客のベルがなり、常連客の一人、デミウルゴスが入ってきた。
「おや、今日は確かアインズ様との面談の日では?」
「あぁ、ピッキー。そうだとも。先ほど終わってね。良い時間を過ごせたよ」
「それは何よりです」
いつもの席に座ったデミウルゴスは何やら木で出来た箱のようなものを取り出し眺めている。
「それは?」
「あぁ、これは今日アインズ様がお作りになったものだよ」
「おぉ!それは素晴らしいものですね」
「あぁ。シンプルだが実に美しい。アインズ様がイメージしたものを私がデザインし、それをアインズ様がお作りになられた。大工仕事は初めてということで不遜にも私が手ほどきをさせていただいたのだよ」
「それは・・・至福の時間を過ごされましたね」
「あぁ。その上この素晴らしい作品を下賜された。今日の記念にね」
「なんと!さすがはアインズ様。慈悲深い」
「ふふ、つい自慢してしまったよ。ここに寄ったのはちょっとその余韻に浸りたくてね」
「ここを選んでいただいた事を感謝します」
「では、付き合ってくれるかい?」
「えぇ、もちろん」
「では、至高の御方に」
「「乾杯」」
―――ナザリック地下大墳墓 第七階層 デミウルゴスの私室
デミウルゴスはインベントリから取り出したものを棚に慎重に置く。
万が一、億が一にでも傷をつけてはならない。
そしてその中にもう一つインベントリから取り出したものを入れる。
これで完成だ。そのはずだ。アインズ様が想定されていたのはこれのはず。
創造主が創造し、アインズ様が譲り受け、そして下賜されたもの。
王国から取り戻したもの。
銘板を作りましょう。これに相応しいものを。まずは素材からですね。
銀色の尾がゆらりと楽しそうに揺れた。
金づちあたりは当然独自設定です。
もちろんデミウルゴスの作業場とか隠し部屋うんぬんも独自設定です。
いつもとちょっと終わり方が違うような。
次はあの人かあの人を書き途中なのでそれを仕上げたい。でも別の人も書きたい気持ちもあります。
いつもながら亀更新ですがよろしくお願いします。
タイトルはどうしたらいいでしょうか
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今のタイトルの(仮題)を外す
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一瞬だけ使用した「感謝と慰労」にする
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まだ(仮題)のままにしておく