ヤンデレが怖いので炎帝ノ国に入って弓兵やってます。 作:装甲大義相州吾郎入道正宗
はい、もう数話で終わります。
最後のSGはメイプルです。
これはきっと夢だ。
「ごめんね、楓…。私はこの人と結婚するの」
親友の理沙が、綺麗なウェディングドレスを着て私に告げる。
その横には大好きなお兄ちゃんが寄り添うように並んで密着していた。
そんなのは見た事ない。そんなのはあり得ない。
迫られる事はあっても、決して自分から女の人にアプローチを掛けないのが、お兄ちゃんなのに。そんなのまるで、理沙だけが特別みたいに映る。
ーーーどうして二人は、私から離れるの?
「これからもずっと、貴方を愛しています…」
ミィが、お兄ちゃんと抱き合ってキスをしている。
軽く唇を合わせる挨拶みたいなやつじゃなくて、恋人同士がする深い口づけ。
私より背が高いミィは少し顔を上げるだけで顔が届き、私に出来なかった事を平然と見せつけた。
二人の視線はお互いだけを見つめて、私は蚊帳の外。
お兄ちゃんは何度も見せつけるみたいにキスを繰り返す。
ーーーどうしてそれを、私にしてくれないの?
「貴方は選ばれなかったの。諦めなさい」
メルトリリスさんが、縛られたお兄ちゃんに腰掛けている。
だけど肝心のお兄ちゃんは、まるで嫌がる雰囲気もなく喜んで従うように無言のまま踏まれていた。
何でも許してくれるのは私だけの権利だ。私だけが特別だから許されるのに……どうして勝手に自分だけの物にするの?
ーーーそれは私の物なのに。
小さい頃は私達だけの世界だった。
それがいつの間にか色んな人が群がって、惑われて勘違いされて、とっても可哀想なお兄ちゃん。
一番始めから好きだったのは私なのに。お情けで相手をしてもらってるだけなのに。どうしてそんなにお兄ちゃんを困らせるの?
行かないで、行かないで私を置いて行かないで。
そんな女より、私が、私こそがーーー。
あぁ…だったらもう。
いらない。
そんな奴らは、いらない。
この世界でお兄ちゃんと結ばれるのは、私だけでいい。
理沙は私を裏切る。
ミィは私から奪う。
メルトリリスは私を苛立たせる。
いらない。いらない。いらない。いらない!!
恋とか、愛とか、どうでもいい。お兄ちゃんさえ側に居てくれば、私は何もいらないんだ。
二人だけでいい。二人きりになれるなら何でもする。
ここ最近の寝不足や倦怠感を吹き飛ばすほどに、私の中で力が満ちるのを感じる。
そうだよね。私は我慢する必要なんてなかったんだ。
物心ついた時から一緒に遊んで一緒に成長して。いつだって私を守ってくれたお兄ちゃん。
幼稚園の時、のんびりし過ぎているからって誰もおままごとに付き合ってくれなかった所に来てくれた。かくれんぼをする時は隠れる場所を探してもらって二人で身を寄せ合った。
小学校の時、私達をからかう男子がいじめてくると先生より早くお兄ちゃんが助けてくれた。泣いちゃう時も落ち着くまでずっと側に居てくれる。
中学生の時、お兄ちゃんに告白する女子がいた。でもそんなのはおかしい。あり得ない。だから断ったんだよねお兄ちゃん? だって隣に必要なのは私だけなんだから。
そうだ。昔みたいに戻ればいい。先に進む必要なんて無い。今の余計な関係も捨てちゃえばいいんだ。
お兄ちゃんと私だけで、これからも死ぬまで生きていければ、もう何も起こらないし、誰も邪魔しない。あの頃こそが完璧だったんだ。
私は遂に答えに至った。
私は、本条 楓は。何があっても彼から離れない。
例え死が二人を別つとも、私達は永遠に寄り添う。
『えぇ、それで良いのです。その激情を餌に、貴方を苗床に。多くのプレイヤーデータが集まる次の機会で…』
『私は再生しましょう』
「うぅん…う〜ん」
「甘噛みされてもダメージ判定があるのか…」
第三層に位置する街の上空で、巨大なシロップに乗ったメイプルとアーチャーが膝枕をしながら浮かんでいる。
最近、本格的に睡眠不足になりつつあるメイプルは、NWO内なら寝れるのでは? と相変わらず突飛な思いつきでイベント前で忙しい彼を呼びつけた。
無論、そんな無茶な要請を断ろうとさせる事実上の上司であるミィだったが、無自覚シスコンのアーチャーは今度詫びを入れるからと、またフラグを立ててメイプルを優先してしまう。
その結果は見ての通り。子守唄を聞かせる事もあやす必要も無く、膝に頭を乗せて笑みを浮かべたと思いきや、そのままコテンと眠ってしまう。
時折むずがるように身動ぎするが、痒そうな所をゆっくり撫でてやると緩んだ顔が更にフニャフニャになって安らかな寝息を立てる。
かなり上空を飛んでいるせいで街の喧騒は遠く離れ、二人きりの時間がのんびりと流れていく。シロップは決められた順路を旋回しているので衝突する心配もない。
ゆったりと流れる時間での膝枕。自然と考えるのはメイプルの事だ。
幼い頃から一緒だったから兄妹のように仲が良いと、今でも彼女は思っているだろう。
しかし、事実は違う。アーチャーが明確に兄であろうとしたのは小学生最後の夏で肝試し擬きで騒動が起こってからだ。
それまでの彼はメイプルの事を手間の掛かる幼馴染として扱うのに苦労していた。
いや、むしろ実の妹の世話を含めて彼女を煩わしいと思っていた時期すらある。彼とて一般人である以上、人並みに思春期を迎えて苛立ちや喜びを覚えてきた。その最中に身近な人物がいるとしたら、対応が変わってくるのは必然だろう。
この頃から女性に対して無碍に扱う事を嫌うドンファン気質を持っていたアーチャーは、明確に口には出さないが、いつまでも精神的に成長しない彼女を持て余していた。
何事にも限度がある。もしサリーと出会って役割を分担しなければ、そのまま自然消滅し、将来仲の良かった友人程度で関係が終わっていたかもしれないのだ。
もし、この話をメイプルが耳にすれば間違いなく彼女は現実を受け入れられず、心を無くしてもおかしくない。
ただ、そうはならなかった。
先の通り肝試しの一件以降、彼は母親から『ある教え』を受けてメイプルの兄貴分を自覚した。すると自然と対応は柔らかくなり、驚くほど波長が合うようになる。
今はどれだけシスコンと卑下されても、無意識に彼女を守ってしまうくらいに大事に想うほどに。
アーチャーの女誑しと女難の相は天性のものだ。けれども彼が特定の相手を選ばないのは何も優柔不断だとか、この関係が心地良いからという理由ではない。特に後者は絶対にあり得ない。そして選ばないのには最大の理由がある。
本人だって、無自覚なのだ。
彼は本条 楓をずっと好きだったから。
苦労したのは、好きな女の子が無防備に近づくから。
煩わしいのは、自分の気持ちに気付いてくれないから。
持て余すのは、今の関係を変えたかったから。
昔や今の関係ではなく、もっと先を二人で歩みたかった。
彼女一人を守る為のお題目として正義の味方を掲げた心根は、今も変わらず在り続ける。
ロールプレイでエミヤを選んだのは、『間桐桜を救うたった一人の正義の味方』に憧れたからこそ。
秘める事も無くただ自覚出来ない恋慕は、長い年月のお陰で拗らせて彼女を大切な妹としかみていない。
アーチャーとは、英霊エミヤに憧れた一般人に過ぎない。
けれどもその精神性は、とある結末を選んだ彼と同様に他の全てを投げ出す程に熱く、固く、血潮は鉄のように、心は硝子のように精錬されて生まれた想いなのだ。
ただ問題なのは彼を想うあまり、集まった女性全員が『他の女を選んだ程度』で止まらない事だ。
ほぼ間違いなく、選ばれた側に危害を加えるか、アーチャー自身を狙うだろう。下手に言い出せば取り返しのつかない事になる。
これに関しては全面的に彼が悪いのだが、本来ならば相思相愛になれたメイプルにとって不幸としか言いようが無い。
そんなチグハグだらけの二人は風に揺られて共にいる。
ここはゲームの世界。
危険な事なんて、どこにもないのだからーーー。
「ーーーさて、気を取り直して状況を整理しようか」
今は第四回イベントの真っ最中。
良くないハッスルを白昼堂々かましたミィに自省を促してから、自陣の発令所代わりに設置された円卓を囲む。
その場所には既に主要メンバーであるミザリーとマルクス。
そして最近何故か奇行を繰り返してミザリーに告白を敢行し、当然のように失敗して人格が変わった元団員D。彼はキャラクターを死ぬ気で作り直し、別人になりすまして軍師ポジションで居座っている。
「整理など不要です。計略は一点突破。ーーー自爆しかありえませんな」
「なぜそんな結論に…」
「この人本当に軍師なの? 自爆以外の作戦聞いた事ないけど」
「ふむ…まぁそれが効果的なのは認めるが…」
「そ、そうなのか?」
元団員Dこと陳宮の言葉は続く。
「元より、このイベントは限られたオーブをより多く集めた者が勝つ戦いです。そしてそれはギルドメンバーが0になれば消滅する有限の資源。だから皆、手早く集めようとしていますが…」
「…団員の多い炎帝ノ国ではそのリスクが限りなく低い。団員を一人でも潜伏させれば良い訳だからな。加えて攻撃の範囲を広げる事も可能なら取れる策略がある。という事だな」
説明に相槌を打つアーチャーに陳宮は満足そうに頷くと、自軍の団員数と周辺地域に位置するギルド拠点の数や規模をマップに広げて再確認していく。
「副団長の仰る通り、我らにリタイアはありえません。ならばより多くのオーブを集めるよりも、ギルドそのものを狙い逆転の目を潰すのが上策かと…」
示す先は小規模ギルドに分類される拠点ばかりだ。
「中規模、大規模ギルドは同士討ちを期待して放置致しましょうか。情報もだいぶ集まりましたのでここが攻め時。そして自爆時。より確実に敵を殲滅する為にも、さっきまでギルドだったものを、辺り一面に転がしてみせましょう」
「怖いなーうちの軍師…」
「え〜と、そのアーチャーさんこれは…」
「要約するとだ。被害を考えず自爆覚悟で特攻し、ポイント先行で逃げ切る作戦だな。乱暴だが少なくとも愚策ではないだろう」
「お褒め頂き感謝の極み…」
「いや、褒めてはいないが…まぁいいか。ミィ、この作戦についてどう思うかね」
ミィというカリスマの元に集まった炎帝ノ国では、全ての決定権は彼女に委ねられている。…実際にはアーチャーのさじ加減で幾らでも意見を変えるミィなので本当は機能していないのだが。
それでも人の上に立つ以上、自分で必死に考えて決断を下さなくてはならない。
必要以上に悩む姿を見せないよう彼女は勢いよく指示を飛ばす。
「陳宮の策を採用する。各班に伝令を飛ばし、強襲部隊として再編成させよ。マルクスは万が一を考えてオーブ防衛のトラップを増設し、いつでも逃げれるようにしておけ。ミザリーは緊急時の援軍としてこの場に待機。陳宮は好きなだけ団員を使って状況把握。アーチャーは……私と共にギルドを潰しに行こう!」
最後に本音が混じっていたが、概ね作戦はうまくいきそうだと安堵するアーチャー。
それぞれが与えられた任務を全うすべく散らばっていく。
また二人きりになったミィとアーチャーだが、今度ばかりは真剣に話し合う。
「さて、わざわざ私とミィの二人という事は、撤退を含めた強行偵察が目的とみたが…違うかね?」
「ふっ…正解だ。ここから向かう先は団員を引き連れては被害が増える一方だからな、機動力に優れた者でなければ務まらん」
「…ならば、集う聖剣か」
「あぁ。個人戦力、ギルド規模を比較すればまともに戦う相手ではないだろう。しかし、今回のイベント前にペインが宣誓した内容が真実なら今のうちに手札だけでも開示しておかねばなるまい」
大四回公式イベント開始直前。
運営からの説明とカウントダウンが始まる前に集まった参加者達に向けて、ペインが大々的に喧伝してみせる。
今現在でも長距離チャットが使用不能のバグが放置されたまま迎えたイベントはプレイヤー達の創意工夫で伝令や魔法での狼煙、不遇と呼ばれていた弓使い達を雇って矢文で連絡を取るなど、多様性を生み出す事態となった。
そして多くのプレイヤーに意思を伝えるならば、集まる場所へ短距離通信のアクセサリーを装備させた団員を各所に配置して音声放送を飛ばすというやり方があった。
「ーーーまずはいきなりの非礼を詫びよう。俺の名前はペイン。集う聖剣というギルドのマスターを務めさせて貰っている。…さて、自己紹介も長々とするものでは無いし。早速本題に移ろう」
ペインの口調は冷静そのものだ。だからこそ、次に口から出た言葉にほとんどのプレイヤーが度肝を抜かれる事になった。
「今イベントにおいて、我々『集う聖剣』は全ギルドに対して宣戦布告を行う。共闘して挑むもよし、単独で攻め込むもよし。全ての挑戦をこの聖剣に誓って受け入れよう!」
全ギルドVS集う聖剣
有り得ざる戦況に自らを置くペインはいったい何を思うのか。
そして、メイプルの運命とは…。
次回、ヤンデレが怖いので炎帝ノ国で弓兵をやってます。
最終決戦。
電脳世界とヤンデレの暴虐。正義の味方。
苦しいからこそ、愛している。
よし、じゃあ失踪しても許されるな!
大丈夫。他の人がヤンデレ物書いてくれるから…。
(座に還る作者)
ここまでのお話で気になった点をお教え下さい。
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Fate味が強すぎる
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文章が未熟で読みにくい
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ヤンデレ要素が足りない。理解出来ていない
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展開が雑。
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キャラ改変が酷い