『ザーザー』
屋上へ出る前は気づかなかったが扉を開けると雨が降っていた。
まあ関係ないんだけど。軒下にいればいいだけだし。
「面倒だなー」と独り言を呟く。
別に雨は嫌いじゃない。
こう雨の匂いというか空気というか……なんて言ったらいいか分からないけど兎に角天気の中では好きな方だと思う。
……そういえばあの時も同じ様な天気だったな。
♦
「あーくそ暇だな」
入学して程なくした頃。俺は授業をサボっていた。
別に深い意味はない。単純に先公が嫌いなだけだ。
あいつ俺にだけ難癖付けてくるからな……
そもそもの原因がこの容姿だ。
不良みたいな金髪。そのおかげで学校に変な噂が流れるわ生活指導に目を付けられるわ。生徒にも教師にも煙たがられる。
髪染めてる人なんざ俺以外にもいるだろ!なんで俺だけなんだ!
ため息をつく。
此処はつい最近見つけた俺のサボりスポットだ。
普段は鍵が締めてあるらしいが裏技でチェーン自体が外れるようになっている。
セキュリティとしてはどうかと思うがこうしてベストプレイスとなっている。
コーヒー片手に空を見上げる。
唯一此処だけが落ち着ける空間だ。
穏やかな雰囲気に包まれる……がその時。
『ガシャン!』
屋上の扉が開く。
やばい……閉めるの忘れてた……誰だ一体。
慌てて身を潜めると目の前に現れたのは。
「……なんだあいつか」
二宮飛鳥。あいつとは入学当時からずっと険悪な状態が続いている。
まああんなことがあったらそうなるか。
……それにしても一体こんな所で何やってるんだ?
まだ授業時間終わってないはずだろ?
腕に着けている時計を確認する。
そこに記されている通りまだ放課後には早い時間だった。
壁から覗くような形で見ているとこっちへ近づいてきた。
ってまずいまずい……!
「……何だキミか」
「……俺で悪かったな」
案の定遭遇してしまった。
そりゃこんな閉鎖的な場所ならバレるに決まっている。
「なんでお前みたいなのが此処にいるんだ……さっさとクラスに帰れ」
いやマジで切実に。
そもそもまだ授業中のはずだろ。こんな所に来るなよ。
「……それはキミも同じだろ?自分の事は棚に上げて他人には偉そうに言うのかい?」
「いいんだよ俺は。誰も俺の事なんて興味ないだろ」
あの先公も俺の事嫌いだしな。
最低限テスト受ければ赤点はないだろ。
二宮が俺の近くに座ってきた。……というかこいつ俺の事嫌いじゃないのか。
「そうか……ならボクも平気さ。……似たようなものだし」
「あ?それはどういう事だ」
納得がいかない。
俺とは違ってこいつは普通に日本人だ。
特に差別されるようなことは……ってああそういう事か。
「ボクはこんななりだろ?だから他の奴らは奇特な視線を向ける。男は可愛いモノを見る目で見てくるし女はそんなボクを嫌悪の対象とする……だからこんな場所は嫌なんだよ」
「……それが嫌なら普通の格好にすればいいだろ」
「それは駄目だ」
そう言うとあいつはいきなり立ち上がった。
「ボクは自分に嘘はつきたくない。だから……誰が何と言おうがコレを辞めたりはしない。……キミも似たような理由だろ?」
「……ああ、そうかもな」
そうだ。俺自身今の環境が嫌なら髪を黒く染めればいいだけの話だ。
だけど絶対しない。
この金髪はばあちゃんから受け継いだ。俺の誇りだ。
それをたかが教師から言われただけで染める?ふざけるな!
こいつも似たような事情を抱えていたのか。
……こいつとなら上手くやっていけそうだな。
「まあ、あの時の事は忘れないからね。許してあげるものか」
「前言撤回。お前嫌いだわ」
♦
「……最悪だ」
ある日の放課後。俺は教師に呼び出されていた。
その結果サボった罰として課題の提出を要求された。
……くそ教師め。
あの後、俺と二宮は屋上で話し合う関係になった。
と言っても知り合い以上友達未満な感じだけど。
二宮も話し相手が出来た程度にしか思っていないだろう。
廊下の窓から外の景色を見ると灰色の空が。
さっきまでは晴れていたんだけどな。この様子じゃ雨が降りそうだな……傘持ってないけど。
更に憂鬱になる。
考え事をしていたせいか気が付くと目的である教室に着いていた。
はあ……さっさと帰る『ガシャン!』
開けようとするがその前に誰かに開けられてしまう。
俺の目の前に立っていたのは二宮だった。
「なんだお前か。こんな時間までどうした?」
「……」
何も言わずに立ち去っていく。
教室の中には何人かのクラスメイトがいた。
……そういう事か。
最近二宮はあるクラスメイトからいじめを受けている。
事の発端は数日前。一人の男子から告白されたあいつはそれを断った。
それが原因でその男子を好きだった女子が腹いせに行為に及んだとのこと。
他の生徒はあいつが気に食わないのか対象にされたくないのか……それに関せずといった様子で傍観しているだけだった。
俺も何回か二宮に聞いてみたんだけどな……何も話してくれない。
……取り合えず、
「こっちが先だな」
『……』
教室に残っている奴らを睨みつける。
別にどうこうするつもりはない。
俺は関係者じゃないし。ここでしゃしゃり出るのは間違いだろう。
「……まあ覚悟はしておけよ。あいつが許そうが俺は許さない」
それだけ言うと教室を出る。
俺だっていじめを受けていた側だしムカついている。
だがあんな奴より二宮の方が優先だ。……何処に行ったんだ。
♦
「ハァ……やっと見つけた」
探し回る事数分。二宮は屋上に居た。
外はいつの間にか雨が降っていたがそれに関わらずあいつは独り立っていた。
「何してんだ?さっさと帰るぞ」
返事がない。
……あームカつくな!
雨に濡れるのも構わずに傍へ近寄る。
「聞いてんのか?早くしないと風邪ひくぞ」
「……ボクに構わないでくれ」
「あ?」
何言ってんだこいつ?
「最初から分かっていたさ……ボクという存在は他とは相容れないという事に。それがはっきりと目に映っただけ。……それだけだ」
「……」
哀しそうに、自分に念じるように呟いた。
結局俺はあいつの事を理解してはいなかった。
……お前がそういうなら言うことはない。
何も言わずに屋上を立ち去る。さっさと帰って飯でも食べるか……
「ってんな訳あるかよ!」
「……っ!」
二宮に攻寄ると肩を掴む。
他とは相容れない存在?ふざけんな!
それなら他の人とは違う俺はどうなる?!それは俺自身も否定する言葉だぞ!
「なんだ?お前は他人に言われたからって簡単に諦めたりするのか?!……違うだろ!」
「……ならどうすればいいんだ」
二宮は俯きながら言葉を零す。
「俺がいる」
「……え?」
「俺がいるって言っているだろ!誰が何と言おうとお前はお前だ!それを否定する奴がいるなら教師だろうが何だろうが相手してやる!」
「俺がお前の存在を証明してやるよ!」
……勢いあまって言ってしまった。
だが後悔はしてない。してたまるか。
静寂に包まれる。
聞こえるのは雨の音、二人の息遣い。
先に話を切り出したのは二宮からだった。
「……いいのかい?」
「さっきも言っただろ」
「……キミまで酷い目に合うかもしれない。それはボクが許さない」
二宮は離れようとするがその前に速人は彼女を抱き寄せた。
「別に今の状況も変わりはない。……俺を信じろ。お前を信じている俺を」
「……ありがとう」
♦
「……懐かしいな」
結局教室にある監視カメラからいじめがバレたのか主犯である女子は別の学校へ転校した。
……加害者に優しい日本で良かったな。
あの後俺達は友達になった。
それからというものほぼ毎日飯を食べたり会話したりしている。
そのせいで男子からは殺意の対象になっているが……
「また今日もいるのかい?キミも物好きだね」
「悪うござんしたね」
こいつもこいつで俺としか話さないし。
良くもやってくれたな過去の俺。
……っていつの間にいたんだ。
「……さっさと帰るぞ。風邪をひいたらたまったもんじゃない」
「そうだね」
立ち上がって背伸びをする。
空は雨に覆われているがいつかは晴れる。
この痛い少女に祝福を。
あとがき――
色々と忙しくて遅れました……
その割にはシリアスな雰囲気となって困惑中な私です。……シリアス苦手なのにな。
今回は何か急ぎ足になってしまいましたが許して!!
さてと、今回は3000字いきました。ぱないの!
お気に入りも111人突破したし……やばいな。
評価9を下さいましたレヴィ0910様、Life〆様、一天地六様、その他皆様ありがとうございます!
もう感謝の極みどころか二重の極みです!
次回から夏休み編になりますが授業が始まった関係で更新ペースが落ちます。
……なるべく週一ペースでできたらいいな。
例のごとくアンケートを実施します。皆様の一票が次話になるぞ!
それでは皆様感想評価お気に入りよろしく!!
夏休み編は……
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王道を往く海ですかね
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じゃけん夏祭り行きましょうね~
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ライブに(いいよ)こいよ!