刀神   作:SIーZUー

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これは1人の鍛冶師とそれを取り巻く不思議な者達の物語


本編
プロローグ:鍛冶師


早朝。小鳥達の鳴き声が聞こえ始める時間。

春真っ只中の今の時期でもこの時間帯ともなると気温は低く肌寒いと感じる。

しかしこの空間は外の気温と異なりむしろ蒸し暑いくらいである。

そこでは男が1人赤く熱された鉄の棒を一心にリズム良く叩いていた。

 

鉄は叩く度に少しずつ形を変えていき、時に余分な部分が削れてより洗練される。

 

その様は一打ち毎に己の魂を注ぎ込むようであった。

 

そうしていくうちに熱を失い元の黒鋼に戻った鉄を高温の竈にくべる。

しばらくして竈から取り出した鉄を再び叩いていき形を変えていく。

 

その作業を何度も何度も繰り返し刀としての形になると大量の水が入った瓶にその鉄を入れる。

瞬間大量の水蒸気が沸き立ち視界を覆う。しかし数秒もしたらそれらは消え失せる。

瓶から鉄を取り出し砥石に当て研いでいく。

鉄と砥石が擦れる音だけがその空間に響き渡り鉄が刀として製錬されていく時間が過ぎていく。

 

何往復か目に男は研ぐのを止め新たに生まれた刀の調子を見る。

重さ、刃渡り、刀身の反り、刃の厚み、鋭さ。それら全てを念入りに確かめていく。

 

「よし。良い出来だ。柄と鞘は朝食の後に作ってやるから楽しみにしときな」

 

満足気に言いまだ柄も無い刀を作業台の刀置きに置く。

一通りの作業で凝り固まった体を伸びと共に解しているとふと後方の入口に気配を感じた。

 

「ん、雪美さんか」

「はい。おはようございます刀真さん」

 

振り返ると入口付近の椅子に座る白い着物を着た白髪の女性。銀鏡雪美(しろみ ゆみ)が薄く微笑みながらこちらを見ていた。

 

「見てたんなら声掛けてくれてもよかったんだがな。朝食待たせてしまっただろう?」

「ふふっ。あまりに真剣に作業しておられたので声をかけるのがはばかれてしまいまして。それにさほど待っていませんよ」

 

そうか。ならよかった。と男、御剣刀真(みつるぎ とうま)は返しながらタオルで汗を拭きながら入口の段差を上がり雪美と並んで木造の廊下を歩いていく。

 

「今日の朝食はなんだい?」

「今日は鮭の塩焼きとアサリの味噌汁、ほうれん草のおひたし、だし巻き玉子ですよ」

「お、だし巻きか。雪美さんのだし巻きは美味いからなぁ。朝食が楽しみだ」

 

着物の袖を口元に当て薄く笑みながら雪美は喜んで頂けて私も嬉しいですと返す。

その姿は彼女の清らかな雰囲気と合わさりとても美しく感じる。

 

「あ、刀真さん。汗拭き終わったのでしたらタオルをお渡し頂いてもよろしいですか?」

「ん。いつものね。お願いするよ」

 

刀真は汗を吸い取って少し濡れたタオルを雪美に手渡す。

雪美はタオルを受け取ると自らの掌に数個の()()()()を生み出しタオルに包む。

即席の氷袋の完成である。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとう。…あぁ一火照った体にはやっぱこれだなぁ」

 

刀真は受け取った即席氷袋をうなじに当て気持ちよさげな声を出す。

 

「そう言って頂くと()()冥利につきますわ」

 

そう。彼女はかの有名な雪を司る妖怪、雪女なのだ。

 

これは1人の鍛冶師と不思議な数多の妖達の物語




どうも雪女が好きな作者のSIーZUーです。
雪女との恋愛(ここ重要)をしつつバトルしていく物を描きたいです。
趣味投稿なので投稿は不定期かつ作者は飽き性なので続くかも分からないような作品ですが暇潰し程度に読んでいってくださると嬉しいです。
…感想があると作者のモチベが上がって投稿が続くかもしれません。

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